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第13世代Coreシリーズを搭載したミニPC「Venus NPB7」、メンテナンス性の高さもうれしい

第13世代Coreシリーズを搭載するMINISFORUMの「Venus NPB7」

 ミニPCの分野では、すっかりおなじみとなった「MINISFORUM」。搭載CPUやAPU、外部GPUの有無などでいくつかのシリーズを展開しており、今回紹介する「Venus NPB7」(以降NPB7)は、IntelのノートPC向けCPU「Core i7-13700H」を搭載する高性能モデルだ。

 末尾に「H」が付くこのCPUは、主にゲーミングノートPCやクリエイター向けノートPCに搭載されることが多い。性能面も気になるところだが、こうした高性能なCPUを小型筐体でしっかり冷却できるのか、動作音はどうなのかなど、さまざまな角度から検証していこう。

高性能なCPUも強力な冷却システムで安定動作

 Venus NPB7が搭載するCore i7-13700Hには、Performanceコア(高性能コア、Pコア)が6基、Efficientコア(高効率コア、Eコア)が8基組み込まれており、合計で20スレッドに対応する。ノートPC向けの第13世代Coreシリーズの中では、末尾に「HX」が付く最上位モデルに次ぐ位置付けとなり、前述の通り性能重視のノートPCに搭載されることが多い。

メーカーMINISFORUM
製品名NPB7
OSWindows 11 Pro
CPU(コア/スレッド数)Core i7-13700H(14コア20スレッド)
搭載メモリ(空きスロット、最大)DDR5 SODIMM PC5-38400 8GB×2(なし、64GB)
ストレージ(インターフェイス)512GB(PCI Express 4.0)
拡張ベイ2.5インチシャドウ×1
通信機能IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth v5.2
主なインターフェイス2.5Gigabit Ethernet×2、HDMI×2、USB 4.0(DisplayPort Alt Mode対応)×2、USB 3.2(Type-C)×1、USB 3.2×4
本体サイズ(W×D×H)127×127.5×54.7mm
重量609g(実測値)
直販価格11万6,900円(キャンペーン価格で93,520円)

 高性能なCPUだけに発熱も大きく、基本的な発熱の目安となるベースパワーは45W、スペック上の最大ターボパワーは115Wにも達する。基本的にこの数値が大きければ大きいほど消費電力や発熱は大きくなり、冷却システムへの負担も大きくなる。

 こうした大きな発熱を処理するため、NPB7では銅製ヒートパイプとアルミフィンを組み合わせた高性能なCPUクーラーを搭載する。さらに通気口の位置を工夫することで、効率的に外気を取り込み、発生した熱気を筐体の外に素早く逃がす仕組を備える。

NPB7の紹介ページでは、CPUクーラーの形状や風の流れなどが確認できる
左側面の大きめな吸気口から外気を取り込み、右側面下部と背面下部にある排気口から熱気を排出するエアフローになっている

 メモリはDDR5メモリを採用している。Core i7-13700H自体は比較的低価格なDDR4メモリにも対応するし、DDR4メモリを利用するミニPCもまだ多いが、性能と将来性を考えるならDDR5メモリのほうが有利だ。またM.2スロットは帯域幅の広いPCI Express 4.0に対応しており、PCパーツショップなどでも購入できる高速なM.2対応SSDが利用できる。

 ディスプレイ出力端子は、HDMIが2個とUSB 40Gbpsポートが2個で合計4個という構成だ。またこれらすべてのポートで、4K解像度(3,840×2,160ドット)でリフレッシュレート60Hzの映像出力に対応する。高解像度な4Kディスプレイを複数台接続し、マルチディスプレイ環境を作りたいユーザーにはうれしい構成だろう。

 有線LANポートも2個装備しており、どちらも2.5Gigabit Ethernet対応だ。最新の第13世代Coreシリーズを搭載することもあり、基本的なインターフェイス構成はかなり充実している。

前面にはUSB 3.2対応のType-Aポートを2個、Type-Cポートを1個装備する
背面には映像出力端子としてHDMIを2基とUSB 40Gbpsポートを2基、Type-AのUSB 3.2ポートを2基搭載するほか、2.5Gigabit Ethernetポートも2個装備する。下部のスリットは排気口の1つ
背面の電源供給端子に挿すACアダプタ。出力は120W対応で比較的大きめ

 ちょっとおもしろいのが、内部へのアクセス方法だ。天板は2点ロック式で固定されており、天板手前にある2カ所のロック部分を押すとロックが解除され、天板が外れて内部にアクセスできる。メモリやSSDの交換といったメンテナンス作業を非常に簡単にできるのはおもしろい。今まで検証してきたミニPCの中でも、トップクラスに拡張作業がしやすいモデルだった。

天板の前面に近い部分を2カ所押し込むとロックが外れる
天板を外すとメモリスロットやSSD用のM.2対応スロットにアクセスできる
SSDはPCI Express 4.0対応の高速モデルであり、発熱も大きいので小さなファンが付いていた

 側面フレームには、サラリと手触りのよいアルミ素材を採用。負荷の高い作業を行なっても、このフレーム部分が暖かくなることはなかった。シルバーを基調としたカラーリングやシンプルなデザイン、そしてコンパクトということもあって、置き場所を選ばず利用できる。

 ちなみに以前からMINISFORUMが販売していたミニPCと比べると、サイズはかなり小さくなっている。下の写真は2021年に発売された同社の「EliteMini HM80」と比較したものだ。HM80を男性の手のひらに乗せると、おおむね全体が隠れるくらいのサイズ感となる。当時はそれでも小さいと感じたのだが、今回のNPB7は手のひらに載せると指先が見える。進化を感じる部分の1つである。

左がEliteMini HM80(幅と奥行きは約15cm)で、右がNPB7(幅と奥行きは約13cm)。厚みはどちらも約5.5cmでほとんど変わらない
NPB7は、手のひらに載せて指で側面を掴めるサイズ感

CPUコアとGPUコアの両方が強い!

 冒頭でも紹介した通り第13世代Coreシリーズの高性能モデルを搭載することもあり、やはり一番気になるのは性能面だろう。

 基本的な性能を比較する対象としては、まず同じMINISFORUMの現行モデル「NAB6」を取り上げる。NAB6では、1つ世代が古い第12世代Coreシリーズの「Core i7-12650H」を搭載する。

 同じノートPC向けCore i7シリーズに属しており、下3桁の型番が近い上に末尾にHが付くため、第12世代Coreシリーズの中では位置付けがCore i7-13700Hに近い。ただしEコアの数が少なく内蔵GPUのグレードも低いため、世代の違い以上に差が付く可能性はある。

MINISFORUMのNAB6

 もう1つはデルテクノロジーズの「XPS 13 Plus」を取り上げる。これは、第12世代Coreシリーズの「Core i5-1240P」を搭載した高性能モバイルノートPCだ。デルテクノロジーズだけではなく、さまざまなメーカーのモバイルノートPCで搭載されており、そうしたモデルとの性能差にも注目したい。

デルテクノロジーズのXPS 13 plus
CPUとGPUのスペック簡単比較
CPUGPU
MINISFORUM Venus NPB7Core i7-13700H(14コア20スレッド)Intel Iris Xe Graphics
MINISFORUM Venus NAB6Core i7-12650H (10コア16スレッド)Core UHD Graphics
デル・テクノロジーズ XPS 13 PlusCore i5-1240P(12コア16スレッド)Intel Iris Xe Graphics

 まずはよく利用されるアプリを実行し、その使用感を比較できる「PCMark 10」のScoreを見てみよう。Scoreが大きければ大きいほど性能が高い。総合Scoreがもっとも高かったのはNPB7で5,705。今までテストしてきた高性能なミニPCに並ぶScoreであり、ほかの項目でも総じてNPB7のScoreは高い。

PCMark 10

 3Dグラフィックスの描画性能を検証できる「3DMark」では、DirectX 12ベースの「Time Spy」、DirectX 11ベースの「Fire Strike」、DirectX 12ベースだがより軽量でCPU内蔵GPU向けのテストである「Night Raid」を実行した。これもScoreが高いほうが性能が高い。

3DMark

 このテストでも全体的にNPB7の強さが光る。内蔵GPUのグレードが低く、実行ユニットの数も少ないNAB6との違いは妥当なところだが、NPB7と同じくIntel Iris Xe Graphicsを搭載するXPS 13 Plusとの比較でも、NPB7はかなり上をいく。

 と言うのも、NPB7が搭載するCore i7-13700Hの内蔵GPUは、実行ユニットが96個で最大動作クロックは1.5GHzだ。一方でXPS 13 Plusが搭載するCore i5-1240Pの内蔵GPUは、実行ユニットが80個で最大動作クロックは1.3GHzだ。

 またノートPCとミニPCでは搭載できるCPUクーラーのサイズや性能が違うわけで、実際の動作クロックにも違いが生じている可能性は高い。同じアーキテクチャのCPU内蔵GPUを利用していても、スペックやメーカーの設定次第で、このように大きな性能差が生じることはある。

 動画エンコードソフトの「TMPGEnc Video Mastering Works 7」を利用したテストでは、ほぼ純粋なCPUコア部分の演算能力を検証できる。実行したのはH.264/AVC形式とH.265/HEVC形式へのエンコードで、処理時間が短いほど性能が高い。

TMPGEnc Video Mastering Works 7

 もっとも短い時間で作業を終えたのはやはりNPB7。CPUコアの世代が違うということもあるが、NPB7が搭載するCore i7-13700HではPコアを6個、Eコアが8個で20スレッドに対応する。

 一方でNAB6が搭載するCore i7-12650Hは、Pコアは6個で同じだがEコアが4個で16スレッド対応だ。こうした部分が影響しているのだろう。ほかのPCと比べるとコア数が少なくクロックが低いXPS 13 Plusは、やはりこうしたテストでは厳しい結果になる。

 PCゲームへの適性をチェックするため、いくつかの実際のPCゲームに関するベンチマークテストも実行してみた。

 ファイナルファンタジー14での使用感を検証できる「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク」では、解像度がフルHD(1,920×1,080ドット)で「標準品質(デスクトップPC)」の設定だとScoreは9,796だった。平均フレームレートも約69FPSと、コマ落ちは見られない。

 ただし同じ解像度で「最高品質」の設定だとScoreは5,000まで低下した。平均フレームレートも約35FPSという結果であり、この設定で遊ぶには少々厳しそうだ。

標準品質(デスクトップPC)のテスト結果
最高品質のテスト結果

 UBIソフトの「レインボーシックス シージ」は、比較的描画付加の低いPCゲームであり、解像度がフルHDならグラフィックスの設定が[最高]でも平均FPSは71FPS。[中]では93FPSに達し、スムーズな描画でプレイを楽しめる。

 同じくUBIソフトの「ファークライ6」はかなり描画負荷の重いPCゲームであり、さすがに厳しい。解像度をフルHD、グラフィックスの設定をもっとも低い[低]にしても平均FPSは36FPSにとどまっており、テスト中も画面がギクシャクとして見にくい状況が続く。グラフィックスの精細さをウリにする最新のPCゲームだと、厳しいことが予想される。

レインボーシックス シージでグラフィックス設定を[最高]にしたときの結果
ファークライ6でグラフィックス設定を[低」にしたときの結果

軽作業時はほぼ無音、消費電力も低い省エネなミニPC

 このように基本性能の高さが光るNPB7だが、動作音や温度も気になるところだろう。まず動作音についてだが、アイドル時はもちろん、書類作成や動画配信サイトの動画再生、Webブラウザを利用した情報収集などの軽作業では、ほぼ無音と言ってよい状態だった。大きめなCPUクーラーによる放熱効果はかなり高そうだ。

 もちろん今回行なったベンチマークテストなど、負荷の高い状況では「ファーン」という風切り音が鳴る。ただし掃除機のような耳障りな音ではないし、ベンチマークテストが終わればすぐに音はもとの状態に戻る。総じて静かなPCと言ってよいだろう。

 温度については、CPUコア部分に高い負荷をかける「Cinbench R23」のマルチスレッドテスト中の最高温度と、CPUコアとGPUコアの両方に負荷がかかる3DMarkの「Stress Test」(テスト内容はTime Spy)の最高温度を計測した。Cinbench R23のテスト時間は約10分、3DMarkのStress Testは約20分だ。

 アイドル時のCPU温度は45℃。自作PCをたしなんでいるユーザーだとちょっと高めに感じるかもしれないが、ノートPCなら普通の数値だ。Cinbench R23中は84℃まで上がったが、以降はCPUのクロックが下がって70℃前後で移行した。3DMark時は75~80℃の間を細かく上下するようなイメージだった。

 おおむね不安を感じるような数値ではなく、安心して利用できるだろう。消費電力は、アイドル時で9.7W、Cinbench R23中は最初の10秒程度は100W前後まで上がったが、すぐに下がり70~72Wと言った状況だった。3DMark時は、描画負荷が高い場面で70~75Wを上下していた。

 Cinbench R23のような状況があるため、ACアダプタの出力は120W必要なのだろう。とはいえ実際の性能を考えれば、かなり省エネのPCと言ってよいのではないだろうか。

 このように高い性能を兼ね備えながらも省エネで冷却性能も高い本機は、ミニPCの見本とも言うべき存在だ。自宅やオフィスでメインPCとして利用するのはもちろん、モバイル液晶ディスプレイと組み合わせてモバイル環境で利用するのもお勧めだ。

 ACアダプタがちょっと大きいのは難点だが、作業用の拠点ごとにACアダプタやキーボードなどを用意しておけば、軽量な本体のみを持ち歩くだけでよい。これまで何台もミニPCをレビューしてきたが、その中でも最上級の1台と言ってよいだろう。