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携帯ゲーム機&ノートブックに変形できるDIYポータブルPC「ONEXPLAYER 2」だけでいい

「ONEXPLAYER 2」。15万7,700円~

 テックワンは携帯ゲーム機、ノートブックとして利用可能な「DIYボータブルUMPC」と謳うWindows PC「ONEXPLAYER 2」を3月31日に発売する。PC本体はキックスタンドを備えたタブレット端末で、ゲームコントローラやカバーキーボードを装着することでさまざまな用途に活用できる。ガジェッター心をくすぐりまくるマシンだ。

 今回は詳細スペック、外観、使い勝手、AV品質、そして最も気になるパフォーマンスについてじっくりレビューしていこう。

ポータブルゲーム機←→ノートPCの超変形マシン!「ONEXPLAYER 2」はゲーマーとミニノート好きをどちらも納得させられるのか?

 脱着式キーボードでミニノートPCに、スタイラスペンでお絵かきタブレットになる8.4型ポータブルゲーミングPC「ONEXPLAYER 2」をライブ配信でも解説します。仕様、特徴の解説、使い勝手や質感のチェック、そして気になるベンチマーク結果報告や実動デモも交えてお届けします。解説はジャイアン鈴木氏、MCはPADプロデューサーの佐々木です。

メモリ、ストレージ容量、カラーの異なる6モデルを用意

 ONEXPLAYER 2はOSに「Windows 11 Home 64bit」、CPUに「AMD Ryzen 7 6800U」(8コア、16スレッド、最大4.7GHz、Zen3+、6nmプロセス)を採用。GPUはCPU内蔵型で「AMD Radeon 680M」(12コア、2.2GHz、RDNA 2)となる。

 メモリは16GBまたは32GB(LPDDR5-6400)、ストレージは1TBまたは2TB(PCIe Gen3 x4 M.2 2280 SSD)を搭載。システム構成としては、メモリ、ストレージ容量の異なる下記の3モデルを用意。さらにスノーホワイトとミッドナイトブラックのカラーバリエーションがあるので、製品ラインナップとしては6モデルが存在するわけだ。

  • 16GB/1TB:15万7,700円
  • 32GB/1TB:17万2,900円
  • 32GB/2TB:18万8,100円

 ディスプレイは8.4型IPS液晶(2,560×1,600ドット、358ppi、60Hz、sRGB 100%、グレア、ペン対応、タッチ対応)を採用。サウンド面では、HARMAN AudioEFXがチューニングしたステレオスピーカーを内蔵している。ただし、Webカメラとマイクは省略されている。ノートブックモードで使える本製品ではぜひ搭載してほしかったところだ。

ディスプレイは8.4型IPS液晶(2,560×1,600ドット、358ppi、60Hz、sRGB 100%、グレア、ペン対応、タッチ対応)を搭載

 インターフェイスはUSB 4×1、USB 3.2 Type-C×1、USB 3.0 Type-A×1、microSDメモリーカードリーダ×1、3.5mmイヤフォンジャック×1を用意。Type-C端子が、USB 4とUSB 3.2と規格が異なるので、運用の際には注意が必要だ。ワイヤレス通信はWi-Fi 6E(11ax)、Bluetooth 5.2をサポートしている。

 本体サイズ/重量は、コントローラ込みで約310×127×23~40mm/約848g、本体のみで約208×127×23mm/約709g。65.5Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間はゲームプレイ時に約3時間、オフラインビデオ再生時に約8~9時間と謳われている。

 同梱品はACアダプタ、電源ケーブル、コントローラ、説明書類となっているが、記事執筆時点では先行予約特典として「ONEXPLAYER 2専用カバーキーボード」、「オリジナルスリーブケース」が用意されている。ただし特典は告知なしに終了になるとのこと。購入を検討しているのであれば早めに決断することをおすすめする。なお「4096段階デジタルスタイラスペン」(3,630円)は別売りだ。

背面にはキックスタンドを装備。また大型の冷却ファン、ヘリンボーンデザインの銅製ヒートパイプを内蔵しており、効率的に冷却できると謳われている
上面にはmicroSDメモリーカードリーダ×1、USB 3.0 Type-A×1、USB 4×1、3.5mmイヤフォンジャック×1、下面にはUSB 3.2 Type-C×1を用意
両側面にはコントローラと接続するための金属接点を配置
左コントローラにはビューボタン、左スティック、方向パッド、Xbox Game Bar起動キー、右コントローラにはメニューボタン、ABXYボタン、右スティック、キーボードモードとマウスモードの切り替えボタン、LEDライトの点灯/消灯ボタンを用意
コントローラを握っている際には背面のファン部分などに指がかかることはない。左右背面のボタンを押すと、コントローラをスライドさせて取り外せる
コントローラ上面にはLB/LTボタン、RB/RTボタン、本体上面にはシステム設定アプリ「GAME CENTER」を呼び出すTURBOボタン、コンビネーションキー、電源ボタンが配置
コントローラはS字型のフォルムで造形されており、安定したグリップ感、スムーズな操作性を得られる
本体、カバーキーボード、スタイラスのパッケージ
左上から本体、コントローラ、カバーキーボード、USB ACアダプタ、USB Type-Cケーブル、説明書、スタイラスペン、スタイラスペン充電用ケーブル、ペン先、ペン先取り出しツール。なおキーボードカバー、スタイラスペンは本体には含まれていないので注意
コントローラは本体に同梱
今回は借用できなかったが、別売の「ワイヤレスジョイスティックコネクター」に装着することで、2.4GHz、Bluetooth経由でのワイヤレス接続にも対応している(※製品公式サイトより転載)
カバーキーボードはブラックのみ。スノーホワイトに合わせたカラーもほしかったところだ
USB Type-Cケーブルの長さは実測120cm。USB ACアダプタのプラグは収納できないタイプだ
USB ACアダプタの型番は「FC175C」。仕様は入力100-240V~2A、出力5V 3A、9V 3A、12V 3A、15V 3A、20V 5A、PPS3.3-20V 3.25A
「4096段階デジタルスタイラスペン」にはスタイラスペン充電用ケーブル、ペン先、ペン先取り出しツールが含まれる
ペン先には硬さの異なる3種類が用意されている
本体の実測重量は713.5g
コントローラの実測重量は146.1g
カバーキーボードの実測重量は151.3g
USB ACアダプタとUSB Type-Cケーブルの合計実測重量は205.5g
スタイラスペンの実測重量は14.4g

携帯ゲーム機としての使い勝手はコントローラ一体型と遜色なし

 ONEXPLAYER 2の売りは、コンパクトであり、なおかつコントローラを装着することで従来の2in1 PCより多くのスタイルで利用可能になったこと。ゲーム機、ノートブック、タブレット、お絵描きタブレットとさまざまなモードで活用できるので、出張や旅行時の荷物をグッと減らせる。

 本製品の主な用途はゲーム機だが、ジョイスティックには自社開発のアルゴリズムが採用され、デッドゾーンやドリフトの減少を実現していると謳われている。また、LB/RBボタンは約0.2~1mmのキーストローク、LT/RTボタンは約8.1mmのリニアストロークが設定されている。さらに3軸加速度センサーと3軸ジャイロセンサーが内蔵されているので、対応ゲームではモーションコントロール機能を利用できる。携帯ゲーム機としての使い勝手はコントローラ一体型と遜色ない。

コントローラ、カバーキーボード、スタイラスペンを組み合わせることで、ゲーム機、ノートブック、タブレット、お絵描きタブレットとして利用できる
キックスタンドを最も開いた状態でのディスプレイの角度は実測132度。画面を少し起こすことは可能だが、これ以上は倒せない
ジョイスティックには自社開発のアルゴリズムが採用。デッドゾーンやドリフトの減少を実現している。LB/RBボタンは約0.2~1mmのキーストローク、LT/RTボタンは約8.1mmのリニアストロークが設定。操作感は良好だ

 カバーキーボードは英語配列で、キーピッチは実測15.5mm前後、キーストロークは実測2.0mm前後が確保されている。キーピッチが狭いのは確かだが、文字キーはすべて等幅に揃えられており、音引き、句読点もワンタッチで入力できる。Enterキーが小さいのには慣れるのに時間がかかるが、見た目以上に入力しやすいキーボードだと感じた。

カバーキーボードは英語配列
キーピッチは実測15.5mm前後
キーストロークは実測2.0mm前後と深め
キーピッチが狭いぶん慣れは必要だが、キーが等幅に揃えられ、配置も素直なので意外と打ちやすい

 8.4型、2.5K(2,560×1,600ドット)のIPS液晶ディスプレイの色域については「sRGB100%」とスペック表に記載されているが、カラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で実測したところ、sRGBカバー率は95.1%、sRGB比は105.3%、AdobeRGBカバー率は73.6%、AdobeRGB比は78.0%、DCI-P3カバー率は77.6%、DCI-P3比は77.6%という値が出た。

 カタログスペックの「sRGB100%」は、sRGBカバー比が100%を超えているということで、丸めた数値を記載しているのかもしれない。もしくは貸出機と製品版で液晶パネルが異なる可能性も考えられる。

8.4型、2.5K(2,560×1,600ドット)のIPS液晶ディスプレイはわずかに青みが強い印象だが、色調整で補正できる範囲だ
実測したsRGBカバー率は95.1%、sRGB比は105.3%
AdobeRGBカバー率は73.6%、AdobeRGB比は78%
DCI-P3カバー率は77.6%、DCI-P3比は77.6%
IPS液晶パネルを搭載しているだけに、隣にいる人もゲーム画面を楽しめるだけの広視野角を実現している

 一方、ちょっと驚かされたのがサウンド品質。コンパクトなボディで最大84.4dBという音圧を実現しているのも凄いが、音質がなかなかよいのだ。スピーカーはHARMAN AudioEFXがチューニングしているとのことだが、音の方向を正確に把握することが必要なFPSやTPS系ゲームでなければ、本体スピーカーだけでプレイしても十分な没入感を得られると思う。

YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生した際の音圧レベルは最大84.4dB(50cmの距離で測定)

Ryzen 7 6800U搭載機としては順当なパフォーマンスを発揮

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は同じく「AMD Ryzen 7 6800U」を搭載する「AYANEO 2」とベンチマークスコアを比較してみた。

「HWiNFO64 Pro」で取得したONEXPLAYER 2のシステムの概要
ベンチマークは性能(TDP)を28W、GPUクロックスピードを「高」、CPU最大ステータスを「100」、冷却ファンの回転数を「100」に設定して実施している

 まずCPU性能については、ONEXPLAYER 2はAYANEO 2に対して、「Cinebench R23.200」のCPU(Multi Core)で103%、CPU(Single Core)で99%相当のスコアを記録した。Cinebench R23.200実行中にはクロック周波数が大幅に下がることはなかった。

Cinebench R23.200
Cinebench R23.200実行中のCPU温度は最大82.6℃、平均79.16℃、クロック周波数は最大3,258.8MHz、平均3,214.17MHz
Cinebench R23.200実行中の消費電力は最大52.3W、平均49.59W、アイドル時の平均は13.14W

 3Dグラフィックス性能については、ONEXPLAYER 2はAYANEO 2に対して、「3DMark」の各ベンチマークで95~114%相当のスコアを記録している。9本のベンチマーク項目中6本で上回っているので、3Dグラフィックス性能についてもONEXPLAYER 2のほうが高い性能を発揮できていると言える。

3DMark v2.25.8056

 一方、総合ベンチマーク「PCMark 10」と3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」ではスコアが逆転し、ONEXPLAYER 2はAYANEO 2に対して、PCMark 10 Scoreで97%、ファイナルファンタジーXIVで93~96%相当のスコアに留まっている。

 この原因についてはあくまでも推測となるが冷却システムの違いにより、比較的短時間で終わるベンチマークについてはONEXPLAYER 2、長時間負荷がかかり続けるベンチマークについてはAYANEO 2のほうが良好なスコアを記録している可能性がある。

PCMark 10 v2.1.2574
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 なお実際のゲームでどのぐらいのフレームレートが出るのか「Cyberpunk 2077」で試したところ、2,560×1,600ドットで平均21.1fps、1,920×1,080ドットで平均32.4fps、1280×720ドットで53.6fpsとなった。もちろん画質をもっと下げればフレームレートを向上させられるが、重ためのゲームをプレイするなら1,920×1,080ドットまたは1,280×720ドットで留めておいたほうがよさそうだ。

Cyberpunk 2077の解像度別フレームレート

 ストレージ速度については、CrystalDiskMark 8.0.4のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)で3,497.03MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)で2,791.57MB/sを記録した。PCIe Gen4 x4接続のSSDであればもっと高いリード、ライト性能を発揮できるが、コンパクトなボディに収めることを考えると、PCIe Gen3 x4接続のSSDのほうが発熱は少なくて信頼性の点で有利なのだろう。

CrystalDiskMark 8.0.4のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は3,497.03MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)は2,791.57MB/s

 本体の発熱については「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」を連続で10分間実行したあとに計測してみたが、ディスプレイ面の最大温度は42.1℃、背面の最大温度は39.9℃
となった(室温20.8℃で測定)。実際に握る部分はゲームコントローラなので、本体の発熱を不快に感じることはなさそうだ。

3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」実行中のディスプレイ面の最大温度は42.1℃(室温20.8℃で測定)
背面の最大温度は39.9℃
USB ACアダプタの最大温度は44.0℃

 バッテリ駆動時間については、ディスプレイ輝度、ボリューム50%の状態で、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(1,920×1,080ドット、標準品質、ノートPC)をバッテリ残量5%までループ再生したところ、1時間56分43秒動作した。ちなみに50%まで充電するのには38分19秒、フル充電するには2時間21分19秒かかった。さらに長時間外出先でゲームをプレイしたいのならモバイルバッテリを用意しよう。

ゲームだけでなくノートブックとしても活用できるUMPCのなかで最注目の1台だ

 ONEXPLAYER 2はAMD Ryzen7 6800Uを採用しており、現時点において最高パフォーマンスで3Dゲームを楽しめるゲーミングUMPCだ。なおかつ先行予約特典ではあるがノートブックとしても快適に利用できる専用カバーキーボードが用意されている。

 16GBメモリ、1TBストレージ、ゲームコントローラ、そして「現時点」で専用カバーキーボードも付いて157,700円という価格は、ほかのゲーミングUMPCと比べるとお買い得感が高い。

 ゲームだけでなく、ノートブックとしても活用できるUMPCを探しているのであれば、ONEXPLAYER 2は最注目の1台と言える。