Hothotレビュー
性能で勝るiPad Proもいいけど、カラフルなiPad(第10世代)のほうもいいじゃん!
2022年11月19日 06:19
Appleはエントリークラスのタブレット「iPad(第10世代)」を10月26日に販売開始した。新モデルでは2020年11月に初投入された「A14 Bionic」をSoCに採用し、画面は4隅が丸い「Liquid Retinaディスプレイ」を搭載。またカラーは2色から4色へと増やされ、端子はLightningからUSB-Cに変更された。エントリータブレットとして魅力的な製品に仕上げられている。
今回は前モデルからどう進化したのかや、最上位タブレットの「12.9インチiPad Pro(第6世代)」とベンチマークスコアを比較して、どのくらいのパフォーマンスを備えているのかをレビューしていこう。
4隅が丸いディスプレイで上位機とほぼ変わらないデザインを実現
iPad(第10世代)はOSにiPadOS 16、SoCにA14 Bionicを採用。メモリは4GB(ベンチマークソフトのデバイス情報で確認)、ストレージは64GBまたは256GBを搭載している。
【表1】iPad(第10世代)、iPad(第9世代)のモデル別直販価格一覧 | ||||
---|---|---|---|---|
iPad(第10世代) | iPad(第9世代) | |||
- | Wi-Fi | Wi-Fi+Cellular | Wi-Fi | Wi-Fi+Cellular |
64GB | 6万8,800円 | 9万2,800円 | 4万9,800円 | 6万9,800円 |
256GB | 9万2,800円 | 11万6,800円 | 7万1,800円 | 9万1,800円 |
ディスプレイは10.9型で2,360×1,640ドットのLiquid Retinaディスプレイを採用。第1世代のApple Pencilに対応する。ディスプレイの4隅が丸く、Touch IDが本体前面から本体上部に移動されたことで、iPad Pro、iPad Air、iPad miniとほぼ同じフォルムとなった。ぱっと見でエントリー機と気づく人は少ないはずだ。
カメラは広角カメラ(1,200万画素、F1.8、29mm)と、フロントカメラ(1,200万画素、F2.4、14mm、視野角122度)を搭載。広角カメラが前モデルの800万画素から1,200万画素に高解像度化されたうえ、フロントカメラがディスプレイ上部から右側……横置きした際の上部に移動された。横置きしてビデオ通話する場合に自然な構図で撮影できるわけだ。
インターフェイスはUSB-Cと、Smart Connectorを搭載。端子形状はLightningからUSB-Cに変更されたが、通信速度はLightning(USB 2.0、480Mbps)と同じ。「iPad mini(第6世代)」は5GbpsのUSB 3.0となっていたので、この点は残念だ。ワイヤレス通信はWi-Fi 6、Bluetooth 5.2で、Wi-Fi + Cellular版は5G通信に対応する。
本体サイズは約179.5×248.6×7mm、重量はWi-Fiモデルが477g、Wi-Fi+Cellularモデルが481g。28.6Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間はWi-Fiでネット利用/ビデオ再生時に最大10時間、モバイルデータ通信でネット利用時に最大9時間とされている。ボディは100%再生アルミニウム製。カラーはシルバー、ブルー、ピンク、イエローの4色が用意されている。
【表2】「iPad(第10世代)」、「iPad(第9世代)」のスペック | ||
---|---|---|
製品名 | iPad(第10世代) | iPad(第9世代) |
OS | iPadOS 16 | iPadOS 15 |
CPU | A14 Bionic (高性能コア×2+高効率コア×4を搭載した6コアCPU、4コアGPU、16コアNeural Engine) | A13 Bionic (高性能コア×2+高効率コア×4を搭載した6コアCPU、4コアGPU、8コアNeural Engine) |
メモリ | 4GB | 3GB |
ストレージ | 64GB、256GB | |
ディスプレイ | Liquid Retinaディスプレイ(10.9型、2,360×1,640ドット、264ppi、True Toneディスプレイ、輝度500cd/平方m、sRGB、耐指紋性撥油コーティング、第1世代のApple Pencil) | Retinaディスプレイ(10.2型、2,160×1,620ドット、264ppi、True Toneディスプレイ、輝度500cd/平方m、sRGB、耐指紋性撥油コーティング、第1世代のApple Pencil) |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2 | Wi-Fi 5、Bluetooth 4.2 |
WWAN | 5G | LTE |
インターフェイス | USB-C(USB 2.0相当)、Smart Connector | Lightning(USB 2.0相当)、Smart Connector |
カメラ | 広角カメラ(1,200万画素、F1.8、29mm) フロントカメラ(1,200万画素、F2.4、14mm、視野角122度) | 広角カメラ(800万画素、F2.4、31mm) フロントカメラ(1,200万画素、F2.4、14mm、視野角122度) |
バッテリ容量 | 28.6Wh | 32.4Wh |
バッテリ駆動時間 | Wi-Fiでネット利用/ビデオ再生:最大10時間、モバイルデータ通信でネット利用:最大9時間 | Wi-Fiでネット利用/ビデオ再生/オーディオ再生:最大10時間、モバイルデータ通信でネット利用:最大9時間 |
本体サイズ | 約179.5×248.6×7mm | 約174.1×250.6×7.5mm |
重量 | Wi-Fiモデル:477g Wi-Fi+Cellularモデル:481g | Wi-Fiモデル:487g Wi-Fi+Cellularモデル:498g |
セキュリティ | Touch ID(指紋認証) | |
カラー | シルバー、ブルー、ピンク、イエロー | シルバー、スペースグレイ |
価格 | 6万8,800円~ | 4万9,800円~ |
エントリー機にはもっと安価な純正キーボード、スタイラスペンがほしい
本製品をフルに活用するために入手したいアイテムがキーボード「Magic Keyboard Folio」(3万9,800円)と、スタイラスペン「Apple Pencil(第1世代)」(1万4,880円)。前者はiPad(第10世代)専用の周辺機器で、キーボードとキックスタンドを備えたパックパネルで構成されている。
キーピッチは実測18mm前後、キーストロークは1mm。Magic Keyboardと同じくシザー構造のキースイッチが採用されており、薄型ながら打鍵感は良好だ。ただし、バックライトを搭載していない点は留意してほしい。
スタイラスペンはApple Pencil(第1世代)に対応。第2世代のように、ワイヤレス充電、マグネット取り付け、ダブルタップによるツール切り替えには対応していないが、ピクセルレベルの精度、傾きと圧力を感知するセンサー、低レイテンシーというスタイラスペンとしての基本機能について違いはないようだ。少なくとも両者を使い比べてみて、筆者は書き味に違いを感じなかった。
充電に「USB-C - Apple Pencilアダプタ」が必要という点はやや手間だが、主に自分のデスクで利用するのであれば、2,000円前後で販売されているサードパーティ製のApple Pencil(第1世代)用充電スタンドを購入するといいだろう。
両周辺機器ともに必須アイテムだが、悩ましいのが価格。6万8,800円からのiPad(第10世代)用の周辺機器としては、Magic Keyboard FolioもApple Pencil(第1世代)もかなり高価だと言わざるを得ない。個人的にはエントリー向けの周辺機器であれば、キーボードは2万円、スタイラスペンは1万円を切る価格で提供してほしい。
エントリー向けタブレットとしては申し分ないカメラ画質
本機には、背面に広角カメラ(1,200万画素、F1.8、29mm)、前面にフロントカメラ(1,200万画素、F2.4、14mm、視野角122度)が搭載されている。
まず広角カメラの画質についてだが、エントリー向けタブレットとして申し分ない。iPhoneのように「ナイトモード」は搭載されていないが、夜景も明るく、手ぶれもなく撮影できた。スキャン用途としてだけでなく、記念写真を撮影する際にも十分活用できるクオリティだ。
フロントカメラについては明るさや発色は自然だが、大画面で見るとノイズの多さがやや気になった。ただし主にビデオ通話、Web会議で利用するなら、多少のノイズが問題になることはない。健康的な肌色で写れば十分だと思う。
最上位機と比べてどのぐらいの性能を発揮するのか?
最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は下記のベンチマークを実施している。
- 総合ベンチマーク「AnTuTu Benchmark V9.1.2」
- CPU/GPUベンチマーク「Geekbench 5.4.4」
- マシンラーニングベンチマーク「Geekbench ML 0.5.2」
- 3Dベンチマーク「Basemark Metal Free 1.0.7」
- 3Dベンチマーク「3DMark Wild Life Extreme Unlimited mode」
- ストレージベンチマーク「JazzDiskBench」
- iMovieで実時間5分の4K動画を書き出し
- YouTube動画を連続再生した際のバッテリ駆動時間
比較対象機種としては「12.9インチiPad Pro(第6世代)」を採用している。違いは下表の通りだ。
【表3】iPad(第10世代)と12.9インチiPad Pro(第6世代)の違い | |
---|---|
iPad(第10世代) | 12.9インチiPad Pro(第6世代) |
A14 Bionic (高性能コア×2+高効率コア×4を搭載した6コアCPU、4コアGPU、16コアNeural Engine) | Apple M2 (高性能コア×4+高効率コア×4を搭載した8コアCPU、8コアGPU、16コアNeural Engine) |
今回は、iPad最上位端末と比べて、どのぐらいのパフォーマンスを発揮するのかという視点からご覧いただければと思う。
まずCPU性能に注目してみると、iPadはiPad Proに対して、AnTuTu BenchmarkのCPUは66%、GeekbenchのMulti-Core Scoreは46%のスコアを記録している。コア自体の性能差に加えて、iPad Proのほうが高性能コアは2コア多いことから、このような差となったわけだ。
さらに大きな差がついたのはGPU性能。iPadはiPad Proに対して、AnTuTu BenchmarkのGPUは44%、GeekbenchのComputeは38%、Basesmark Metal FreeのOverallは31%、3DMark Wild Life Extreme Unlimited modeのOverallは35%のスコアを記録している。こちらもコア自体の性能差に加えて、「iPad Pro」は2倍のコアを搭載していることから、CPU性能よりも大きな差となって表れたわけだ。
マシンラーニング性能を計測するGeekbench MLでもiPadはiPad Proの67%に留まっている。
ただし、これらベンチマークスコアの差が実際のアプリの処理速度にストレートに表れるとは限らない。Apple製「iMovie」で5分の4K動画を書き出してみたが、iPadはiPad Proの約1.11倍の所要時間しかかかっていない。
もちろんCPU、GPU、Neural Engineをフル活用するように最適化されたアプリで、4GBには収まりきらない大容量データを処理するような作業では両者に大差が開くことだろう。
とは言えiPadに採用されている「A14 Bionic」は、2年前のフラグシップスマートフォンに搭載されていたSoCだ。5分の4K動画を195.2秒(3分15秒20)で書き出しできているのだから、多くの方にとって必要十分なパフォーマンスを備えていると言えよう。
なお、バッテリ駆動時間については、ディスプレイの明るさ50%、音量50%でYouTube動画を連続再生したところ42,873秒(11時間54分33秒)動作した。カタログスペック以上のバッテリ駆動時間を発揮したわけだ。
性能に勝る上位機よりカラフルな「iPad(第10世代)」がほしい方も多いのでは?
iPad(第10世代)はなんと言ってもシルバー、ブルー、ピンク、イエローに彩られたボディが非常に魅力的だ。上位機のほうが性能は上回っていると分かっていたとしても、カラフルな本製品がほしい!……という方も多いのではないだろうか?
処理性能、カメラ画質、USB-C、Wi-Fi 6、5G、Magic Keyboard Folio、4隅の丸いLiquid Retinaディスプレイなどなど進化点が多岐に渡るiPad(第10世代)は、非常に魅力的なエントリーモデルと言えよう。