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ビューティカメラにもなる!?3Kディスプレイのコンバーチブル2in1「Spectre x360 14」

Spectre x360 14

 第12世代Coreプロセッサ搭載のノートPCはメーカー各社からかなりの数が出そろい、購入にあたっては機能/性能面を見るだけでは決め手に欠けるという状況にあるように思う。そこへ9月2日、日本HPからただ高性能なだけではない個性的な2in1「Spectre x360 14」が登場した。デザインはもちろんのこと、Webカメラ機能やソフトウェア面にもこだわった1台になっているようだ。

カラーリング、素材感、ポート位置など、こだわりが感じられる筐体デザイン

 今回試用したSpectre x360 14は、ディスプレイに3,000×2,000ドットの有機ELタッチディスプレイを搭載する同シリーズのフラグシップ(パフォーマンスプラス)モデル。直販価格は27万5,000円で、2020年に発売されたモデルの後継機種となるものだ。

試用したのは3,000×2,000ドット有機ELタッチディスプレイのパフォーマンスプラスモデル
360度開くことができる
テント状にするのもOK
ペンで描きやすい、もしくは動画などが見やすいスタイルにも

 コンバーチブルな2in1ノートPCとして、ディスプレイ部を反対側に360度開くことができ、タブレットライクなタッチ操作や、付属の充電式アクティブペンによる手書きにも対応している。モデル名に「14」とあるものの、ディスプレイサイズは13.5型で、14型クラスのノートPCよりはわずかに小さめ。

65WのACアダプタ(USB Type-C端子)が付属
コンパクトに持ち運び、配線できるL字タイプのコネクタも同梱
ぴったり入る専用スリーブケースも付属
付属の充電式アクティブペンは、一部をスライドさせることで充電端子(USB Type-C)が現れる
ペンは内蔵マグネットでディスプレイの右側面に貼り付けられる

 ただ、アスペクト比3:2で縦にやや広いことから、縦スクロールのアプリを使うことが多いビジネス用途や、写真/動画編集用途では都合がよい。さらに写真/動画編集の面では、DisplayHDR 400に対応し、DCI-P3比100%の色域をもつことも利点だろう。13.5型で3:2というのは、持ち運びのしやすさも考えたときのディスプレイ性能のバランスとしてもなかなか適切に思える。

DisplayHDR 400対応、DCI-P3比100%の有機ELディスプレイ

 そして、一見オーソドックスに見える外観だが、デザインは各所にこだわりが感じられる。ボディカラーはブラウン感のあるアッシュブラックで内側も外側も統一され、筐体エッジ部分がカーブしていることで柔らかな印象を受ける。

ボディカラーはブラウンも感じさせるアッシュブラック

 重量は約1.39kgと超軽量というわけではないが、ソリッドな金属筐体で剛性は高く感じられ、所有感も満たしてくれる。英数字が大きくプリントされたキーボードは、シンプルで親しみやすさがあり、しかしだからといって安っぽくはない。約19mmのフルピッチとなっており、タイプ音は静かではあるものの、強めの反発力できっちりタイプしていける感覚が味わえる。

英数字が大きくプリントされたキーボード
タッチパッドも大きめ

 面白いのはポート類の位置。たとえば2つあるUSB Type-C形状のポートは、1つは右側面にあるが、もう1つは右奥の角に設けられている(同じく左奥の角にはヘッドセット端子がある)。この角のポートにケーブルを差し込むと、必然的に斜め奥方向へ飛び出ることになるため、その手前にあるUSBポートと干渉しにくく、外付けマウスなどを使うときにもケーブルが邪魔になりにくい。

右側面と角にUSB Type-C形状のThunderbolt 4ポートがある
左側も同じように側面にUSB Type-Aポート、角にヘッドセット端子
角のポートにケーブルを接続すると斜め奥に逃げる形になるため、邪魔になりにくい

 ディスプレイ側の角とのクリアランスは少ないため、コネクタ部の大きいケーブルや幅のあるUSBデバイスは差し込めなかったりするが、日常の使い勝手を少なからず高めるデザイン上の工夫と言えるだろう。

ビューティカメラ風の機能もあるWebカメラ

 マシンスペックは、CPUに第12世代Core i7-1255U(Alder Lake、10コア/12スレッド、最大4.7GHz、Processor Base Power 15W)を搭載し、GPUはCPU内蔵のIris Xe Graphics。メモリは16GB(LPDDR4x-4266)、メインストレージは1TB NVMe SSD(PCI Express 4.0接続)と、基本性能にはある程度余裕がある構成だ。

第12世代Core i7-1255Uを搭載。ハイパフォーマンスであることを意味するEvoを冠するモデルとなる

 インターフェイスはThunderbolt 4が2ポートに、USB 3.1が1ポート。それにmicroSDカードスロット、ヘッドセット端子を装備する。Thunderbolt 4は2ポートともにUSB PDによる充電と、DisplayPort Alternate Modeによる外部モニター出力に対応する。

 充電しながら使う場合は1ポートが必ず占有されてしまうことから、ポート数の少なさはやや心もとなく感じる部分。左側面のUSB 3.1ポートも、本体の薄さの影響からか収納式になっているため、厚みのあるUSBメモリなどは使いにくい。このあたりはUSBハブやドッキングステーションなどを併用したくなるところだ。

USB 3.1ポートは収納式。厚みのあるデバイスを使うときのためにUSBハブなどを用意しておきたい

 ネットワークはWi-Fi 6/6E対応、内蔵Webカメラは500万画素のHP True Vision 5MP IRカメラとなっていて、Windows Helloの顔認証に対応する。キーボード右手前には指紋センサーも設けられており、こちらもWindows Helloの指紋認証として利用可能だ。

内蔵WebカメラはWindows Helloの顔認証対応
キーボードには指紋センサーも配置

 今回の新型の特徴の1つとして挙げられるのが、この内蔵Webカメラ周りの機能。前世代が92万画素だったところを500万画素にまで高性能化しているのもそうだが、プリインストールの「HP Command Center」内にある「GlamCam」というツールを使うことで、ユニークな画質調整などが可能になっているのがポイントだ。

 GlamCamで使える機能は「オートフレーム」「ライティング補正」「外観フィルタ」の3つ。このうちオートフレームは、人物の顔/姿を自動認識し、カメラの映像内に収まるようにフレーミングしてくれる機能。たとえば少し離れた場所にいるときは、その人物をフォーカスするようにズームインしてくれる。Web会議でプレゼンするようなときに活躍してくれるだろう。

オートフレーム機能。少し離れたところに移動すると……
追従してズームインする

 ライティング補正は、周囲の明るさに応じて映像全体の明度などを調整する機能で、薄暗い部屋でも人物の顔を視認しやすいレベルにしてくれる。が、そもそもカメラの暗所性能が高いせいか、部屋をかなり暗くしても補正なしで明るく映し出してくれる。オンにすると、ほどほどに明るい部屋でもさらに顔色がよくなるように見えるので、見栄えをできるだけよくしたいときに使いたい。

ライティング補正オフ。これでも室内照明をオフにした薄暗い状態
ライティング補正オンにしたところ。顔色が少し変わったのが分かる

 最後の外観フィルタは、これまでのWebカメラにも標準でありそうで、あまりなかった機能かもしれない。人の肌をきれいに見せる、いわゆるビューティカメラみたいなものだ。3段階あるうち1段階目でも十分に滑らかな肌になり、最も効果の高い3段階目はかなり「作った感」の強いものになる。ビジネス上のWeb会議ではほどほどにしておいたほうがよさそう、かも。

外観フィルタオフ
外観フィルタオン。1段階目
外観フィルタオン。3段階目

PCの機能/性能を活かせるオリジナルソフト

 DisplayHDR 400などに対応したディスプレイを搭載し、さらにはアクティブペンを付属していることもあって、それらを活かせるソフトウェアがいくつかプリインストールされている。

 1つは「HP QuickDrop」で、スマートフォンとPCの間で写真をはじめとするデータのやりとりを容易にするもの。スマートフォン側にも同じ名称のアプリをインストールして連携すると、一方のデバイスに保存しているファイルを選ぶだけで、写真1枚なら瞬時(Wi-Fi環境ならほぼ1秒以内)にもう一方のデバイスへアップロードされる。スマートフォンでその場で撮影した写真も即PCにアップロードできるので、本機を写真プレビュー用外部モニター的に駆使したりもできる。

HP QuickDrop。写真くらいのファイルサイズなら瞬時にアップロードされる

 2つ目は取り込んだ写真を管理する「PHOTO MATCH」というアルバムツール。たくさんある写真の中から効率よく目的のものを探し出せるよう、被写体の顔をAIで認識し、同じ人物の顔が写っている写真をピックアップしてくれる機能をもつ。人物ごとに写真を整理したいときに便利なはずだ。

PHOTO MATCH。人物の顔を認識して、同じ人物が写っている写真をピックアップする

 HPオリジナルのツールではないが、ほかのPCやスマートフォンなどを外部モニター化する「Duet Display」や、お絵描きツールの「Concepts」もインストール済み。映像出力専用の端子がなく、USBポート経由で映像出力するにしてもポートが少ない本機においては、ワイヤレスでも外部デバイスに映像出力できるDuet Displayは特に有用だろう。

お絵描きツールConcepts
ワイヤレスでもデュアルディスプレイ環境を構築できるDuet Display。複数のOS環境に対応する

標準的な性能だが、騒音の少なさが好印象

 ベンチマークテストの結果は、第12世代Core i7としては標準的なスコアとなった。実用ソフトの性能を測る「PCMark」やゲーム性能を見る「3DMark」については、モバイル向けの中では性能が最も高いとされるCore i7-12700Hよりは若干劣るといった程度。

 GPUを活用するRAW現像ソフトの「DxO PhotoLab」や動画編集ソフト「Davinci Resolve」については、やや力不足な傾向はあるが、コンパクトなモバイルノートとして考えれば十分以上の性能を有している。内蔵SSDも、PCI Express 4.0接続なりの良好な性能だ。

 なお、「PCMark 10」のバッテリテスト「Modern Office」は何度か実行してみるも中断されてしまったため、測定不可とした。スペックシート上ではバッテリ稼働時間は今回のパフォーマンスプラスモデルが最大11時間30分、それ以外のモデルが最大16時間となっている。いずれにしろ通常の使用範囲では、1日のビジネスアワー程度なら余裕でこなせることだろう。

「PCMark 10 Extended」の結果
「PCMark 10 Applications」の結果
「Cinebench R23」の結果
「3DMark」の結果
「CrystalDiskMark」の結果
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果
「DxO PhotoLab 5」のRAW現像結果(50枚のRAW画像を現像処理するのにかかった時間)
「Davinci Resolve」の動画エンコード時間(4K/60p/4分、およびフルHD/60p/2分11秒)

 それなりに高い性能を発揮してくれるにもかかわらず、稼働中の冷却ファンのノイズは少なく、高負荷時であっても耳障りにならない程度に抑えられている。高音成分のない、低周波な音なのも好印象だ。静かな環境で長時間仕事するときでもストレスなく使い続けられるだろう。

HP Command Centerでは冷却ファンの動作をカスタマイズできるが、わざわざ「静」にしなくてもノイズは元々少ない

プレミアムな性能を誇るモデルながら30万円を切る価格

 第12世代Coreプロセッサ搭載機が各メーカーでほぼ一巡し、横並びの性能となってきた中、選ぶ側としてもより個性を求めたくなるタイミングかもしれない。その意味で、360度開くコンバーチブル、かつタブレットとしても使える2in1で、見栄えだけでなく実用上の工夫も盛り込んだ筐体デザインとし、Webカメラほかソフトウェアにも独自性を盛り込んだ「Spectre x360 14」は、積極的に候補に入れたくなるモデルだ。

 外部インターフェイスの物足りなさは、USBハブやドッキングステーションでカバーできるとはいえ、外出時にセットで持ち運ぶことまで考えると少し面倒かもしれない。ただ、気になるところはそれくらいで、発色の鮮やかなタッチ/ペン対応の高解像度有機ELディスプレイは、総合的な生産性を高めてくれそうな予感もする。法人としては、導入しやすい30万円を切る価格、という点も魅力に感じるのではないだろうか。