Hothotレビュー
カジュアルに持ち運べる円形サブ液晶搭載スマホ「Unihertz TickTock-E」
2022年9月2日 06:17
数々のユニークな端末をリリースしているUnihertz。その最新作が「TickTock-E」だ。2021年末に発表し、本機の上位に当たる「TickTock」は同社初となる円形のサブ液晶を搭載しながら、5G対応に対応するという意欲作であったが、TickTock-Eはその廉価版に相当する。今回はサンプルをいただいたので、簡単にレポートしていこうと思う。
ちなみに現在は予告ページのみ出されている状況だが、9月中にも正式発表する予定としている。価格は200ドルを切る見込み。
円形サブ液晶搭載のエントリーモデル。上位との違いは?
上位モデルのTickTockについての改めておさらいすると、SoCに5G通信に対応したDimensity 700を採用しながら、背面に360×360ドットの円形サブ液晶を搭載。なおかつIP68防水防塵仕様により、高い耐久性を誇るモデルであった。性能的にはミドルレンジの域を出ないのだが、Unihertzの製品ラインナップの中ではフラグシップに位置付けられた。
TickTock-EはこのTickTockの円形サブ液晶搭載という特徴だけを受け継ぎつつ、SoCをHelio P35に変更して5G対応を省いた。また、防水防塵も省略することで低価格化を図り、いわばTickTockとは対極にあるエントリー向け製品にあると言える。
両製品の主な違いは下表を見比べていただきたいのだが、こうした主要部分に加え、メモリやストレージ容量、液晶解像度なども微妙にスペックダウンしている点には要注意である。その一方でカメラのセンサーは共通で、赤外線ポートやNFCのサポートは維持されており、機能的には見劣る点が少ない。また、Androidバージョンは12へと進化しているのがポイントだと言えるだろう。
もっとも、低スペック化によって重量は75gも軽量化され、薄型化も実現でき、だいぶ一般的なスマートフォンに近づいた。それでも重量級であることには変わりないのだが、210g超えのゲーミングスマートフォンを3台常時持ち歩いている筆者にとって特に違和感はなかった(比較対象が間違っているが)。
TickTock-E | TockTock | |
---|---|---|
SoC | Helio P35 | Dimensity 700 |
メモリ | 4GB | 8GB |
ストレージ | 64GB | 128GB |
メイン液晶 | 1,600×720ドット/6.517型 | 2,340×1,080ドット/6.5型 |
サブ液晶 | 240×240ドット/1.28型 | 360×360ドット/1.3型 |
OS | Android 12 | Android 11 |
バッテリ | 6,000mAh | 6,000mAh |
メインカメラ | 4,800万画素(Samsung GM1) | 4,800万画素(Samsung GM1) |
NFC | 対応 | 対応 |
赤外線ポート | 対応 | 対応 |
microSDカード | 対応 | 対応 |
防水防塵 | 非対応 | IP68 |
2Gバンド | 2/3/5/8 | 2/3/5/8 |
3Gバンド | 1/2/4/5/6/8 | 1/2/4/5/6/8/19/34/39/BC0/BC1 |
4Gバンド | 1/2/3/4/5/6/7/8/ 12/13/17/18/19/20/25/26/28A/28B/ 66/34/38/39/40/41 | 1/2/3/4/5/7/8/ 12/13/17/18/19/20/25/26/28A/28B/ 34/38/39/40/41/66 |
5Gバンド | 非対応 | 1/2/3/5/7/8/12/20/25/28/ 38/40/41/66/77/78 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 78×167×11mm | 85.6×176×14.9mm |
重量 | 233g | 308g |
また、本体デザインはブラックカーボンファイバー調の背面とガンメタル色フレームから、ストライプ入りブルーの背面とライトシルバー色のフレームに変わったのもポイント。タフネスというよりスポーティーな印象となった。上下のとんがりもなくなり、だいぶ大人しくなった。
ちなみにTickTockという名前自体は、時計のチックタック音をモチーフとしていると思われ、背面の円形サブ液晶の主な使用用途は時計、それもアナログの盤面……を想定しているのだろう。TickTockではヘアラインが入った円形ベゼルであったのだが、TickTock-Eでは周囲にローマ数字がエンボス加工で入っており、“時計らしさ”が増している。
裏返したままでも時間の確認などがサクッとできるサブ液晶
注目のサブ液晶の機能だが、これは上位のTickTockと変わらない。時計表示という基本機能をはじめ、通知の表示、音楽の操作、カメラの操作が可能。TickTockにはなかった機能として「コンパス」が加わった(TickTockはファームウェア更新で対応するかもしれないが、筆者手元の機材では確認できなかった)。
なお、TickTockでは音楽アプリがプリインストールされていたが、筆者が入手した端末には入っていなかった。もっとも、これも設定で任意の音楽アプリの操作を指定できるので問題はない。というか音楽ストリーミング配信がメインの時代、必要性がなかったのかもしれない。
サブ液晶を活用し、高画質な背面カメラで自撮りを行なうこともできる。もっとも、プレビュー画面では四隅は円形によりトリミングされるので、くれぐれもフレーミングには注意したい。
設定は従来通り、設定の「サブスクリーンの設定」から行なう。先述の音楽アプリの指定のほか、点灯方法や消灯までのタイムアウト、時計の盤面変更(これは時計表示時のダブルタップでも変更できるが)やカスタマイズなどが行なえる。ちなみに盤面はTickTockから少しブラッシュアップして、Unihertzのロゴが入るようになった(これもアップデートされるかもしれないが)。
スマートフォンを裏返して机に置くかどうかは人それぞれだが、どちら向きで置いてもすぐに時計や通知にアクセスできるのはやはり便利だ。もちろん、TickTock-Eの場合、実用性はさておき、ビジュアル性や趣味性、アクセサリ性が強いのは従来と同様なのだが。
ただ少し気になったのは液晶解像度だ。TickTockの1方向あたり360ドットから240ドットへと33%ほど削減となったわけだが、これが予想外にも目に見えて違いドットが目立つ。特にアナログの盤面はかなり細部までデザインに凝っているし、針が斜めだとジャギが気になってくる。若干白っぽさもあり、このあたりはエントリーモデルとしての割り切りが必要である。
ちなみにメインの液晶も解像度が低くなっていて、最大輝度や視野角もTickTockには敵わず、写真などを見るとやはり精細感や彩度に欠ける。とは言え、これは解像度に関しては目を近づけてTickTockと比較しなければ分からない程度だし、テキストの閲覧がメインなら差し支えないレベルではある。
カスタマイズ可能なボタン、指紋センサーや赤外線リモコン機能は継承
本体左側には赤色のボタンを2基備えている。これはプログラマブルボタンで、サブ液晶の点灯をはじめ、アプリの起動や懐中電灯の点灯、スクリーンショットといったショートカットの割り当てが可能。Unihertzの製品はほぼ一貫してプログラマブルボタンを搭載しているが、このシンボルは廉価版でも継承しているわけだ。
右側には指紋センサー兼電源ボタンと音量調節ボタンを搭載している。これもTickTockから継承している。指紋センサーの反応は悪くなく誤認識はあまりないが、触ってから画面が点くまでワンテンポ置く感じである。このあたりはSoCの性能が絡んでいるのだろう。
また、赤外線ポートを活かした赤外線リモコン機能も備えている。アプリ自体は「Zaza Remote App」で、多数の家電を操作できる。同社の代表作とも言える超小型スマホ「Jelly 2」でもこの機能は搭載しているが、本体の大きさの関係でやや操作しにくかったのは否めないだろう。その点TickTock-Eは普通のリモコンに近いサイズ感で利用できる。
なお、有線ポートはUSB Type-Cのみで、3.5mmミニジャックはない。パッケージにはUSB Type-C→3.5mmステレオミニジャック変換が付属しているので、これを使うことになる。近年はBluetoothで接続するイヤフォンが増えているし、3.5mmミニジャックの排除はトレンドの1つでもあるので致し方ない。
メインカメラはTickTockのSamsung GM1センサーを継承している。1/2インチとエントリー向けスマートフォンとしては大型であり、補間により4,800万画素の出力も可能ではあるが、画質的は平凡である。試用時点では露出補正が±1EVしか選択できないほか、暗所の白いオブジェクトは白飛びしやすい印象である。製品リリースまで改善を望みたい。
性能はあくまでもエントリーレベル
最後にベンチマークとして、Antutu Benchmark v9.4.4とGeekbench 5の結果を掲載する。ただし、Antutu Benchmarkでは通常版の3Dテストが行なえずLite版となったほか、Geekbenchの「COMPUTE」も33%から先に進まなかったためCPUのみの計測である。
Antutuは122,888、Geekbench 5はシングルコアが178、マルチコアが928。フラグシップゲーミングスマホで採用例が多いSnapdragon 8 Gen1では、Antutuは100万前後が当たり前、Geekbench 5はそれぞれ1,100と3,500超えなので、はっきり言って勝負にならない。
特にGPUの差は顕著で、「ウマ娘」といったメジャーな3Dタイトルではカクカクした動作になる。Helio P35にはRogueのコードネームで知られる「PowerVR GE8320」というGPUが内蔵されているわけだが、リリースが2017年と5年前と古く、そもそもの位置付けがローエンド向けなので性能的に振るわないのは致し方ないだろう。
一般用途でもフラグシップのようなサクサク感はなく、ワンテンポ遅れる印象。データのロードやレンダリングに時間がかかっている印象だ。メモリも4GBのため、多数アプリを開くとレスポンスがやや悪くなる。もっとも、SNSの使用やWebブラウジング程度ならストレスが溜まることはない。また、3Dでもそれほどハイエンドなグラフィックスを駆使するタイトルでなければ十分プレイ可能だ。
性能が犠牲となったが、バッテリ駆動時間は優秀。WebブラウジングやSNS、ライトなゲームをする程度なら、丸2日間は使えそうな印象だ。メイン機がバッテリ切れを起こした際のサブ機として使うなら、頼もしい存在になりそうである。
Helio P60クラスの性能は欲しかったが、ガジェヲタは心くすぐられる存在
本機よりサイズが小さいJelly 2で、一般使用にはまったくストレスを感じさせないレベルのHelio P60を搭載していたので、Helio P60がUnihertzの端末における採用の最低ラインかな……と思っていた。しかし、さらにその下のHelio P35を採用してきたのは正直筆者の予想外だった。
もっとも、そもそもTickTockはバリバリ3Dゲーム向けの端末ではなく、カジュアルな用途、そしてデザイン的に他社と大きく差別化を図るのが目的だった(と思われる)ので、ユーザーがゲームをしないならいっそHelio P35を採用して低価格化しようと判断したのだろう。あのアプリもこのアプリもと欲張るならTickTock-Eはやや力不足だが、Webブラウジングやメールチェック、電話程度ならまったくもって十分である。
普段、Snapdragon 888搭載スマートフォンを使っている筆者だが、この1週間強の試用でTickTock-Eに愛着が湧いてしまい、よく手にするようになった。やはり他社と一線を画す背面にサブ液晶を搭載するデザインに魅力を感じたからであろうか。過去に理由もなく一目惚れで買った三洋電機の「A5503SA」を選んだ理由を思い起こさせてくれる、そんな機種だった。