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7万円台のハイエンドスマホ「POCO F4 GT」。Wi-Fi 6E対応、フル充電17分
2022年8月10日 06:28
7万円台からのSnapdragon 8 Gen 1搭載スマートフォン
Xiaomiの独立ブランドとして展開するPOCOより、6.67型スマートフォン「POCO F4 GT」が発売された。POCOブランドの日本展開は本機が初めてで、Snapdragon 8 Gen 1を搭載したフラグシップモデルとなる。
メモリ/ストレージ構成の違いで、8GB/128GBと12GB/256GBの2モデルを展開。価格は7万4,800円、8万4,800円と割安だ。前者は直販および楽天、後者はAmazonでの取り扱いとなる。
ソフト/ハードの両面でゲーミングを意識した部分が多く、高性能なAndroidゲーム端末が欲しい人もターゲットにしているようだ。デザインも遊び心があるユニークな製品となっている。こちらの実機をお借りしたので、ゲーム機能を含め使用感を見ていく。
120W充電やWi-Fi 6Eに対応
今回お借りしたのは、「POCO F4 GT」の12GB/256GBモデル。8GB/128GBとの違いはメモリ/ストレージのみとなっている。12GB/256GBモデルでのスペックは下記の通り。
【表1】POCO F4 GT(12GB/256GBモデル)のスペック | |
---|---|
OS | MIUI 13 for POCO(Android 12ベース) |
プロセッサ | Snapdragon 8 Gen 1 |
メモリ | 12GB(LPDDR5) |
ストレージ | 256GB(UFS 3.1) |
ディスプレイサイズ | 6.67型AMOLED(有機EL) |
ディスプレイ解像度 | 1,080×2,400ドット(120Hz) |
ディスプレイ輝度 | 800cd/平方m(HDR10+) |
背面カメラ | 約6,400万画素(メイン、IMX686、1/1.73型センサー)、約800万画素(超広角)、200万画素(マクロ) |
前面カメラ | 2,000万画素(IMX596) |
NFC | Google Pay対応(FeliCa/おサイフケータイは非対応) |
GPS | GPS(L1+L5)、GLONASS(G1)、Galileo(E1+E5a)、BeiDou(B1I+B1C+B2a) |
センサー | 近接、360度環境光、色温度、ジャイロスコープ、加速度計、電子コンパス、IRブラスタ、指紋、フリッカー、SAR |
無線LAN | Wi-Fi 6E |
Bluetooth | 5.2 |
5G | NSA+SA、n1/3/5/7/8/20/28/38/40/41/77/78 |
4G | LTE FDD:1/2/3/4/5/7/8/12/17/18/19/20/26/28 LTE TDD:38/40/41(2,545~2,650MHz) |
3G | WCDMA:1/2/4/5/6/8/19 |
2G | GSM:850/900/1,800/1,900MHz |
汎用ポート | USB Type-C |
SIM | Nano SIM×2 |
3.5mmオーディオジャック | なし(USB Type-C to 3.5mmイヤフォンアダプタ付属) |
防水・防塵 | IPX3、IP5X |
バッテリ容量 | 4,700mAh |
本体サイズ(高さ×幅×厚さ) | 162.5×76.7×8.5mm |
本体重量 | 210g |
価格 | 8万4,800円 |
Snapdragon 8 Gen 1に12GBのLPDDR5メモリという、現行製品としてハイエンドなスペック。ストレージは256GBで、外部メモリーカードスロットはない。ストレージは下位モデルで128GBとなるため、容量不足の不安から12GB/256GBモデルが人気なのかもしれない。
ディスプレイは6.67型の有機ELで、リフレッシュレートは最大120Hz。タッチサンプリングレートはさらに4倍の最大480Hzとなっている。この辺りもハイエンドの性能だ。
背面カメラはメインと超広角、マクロの3点セットになっており、メインは約6,400万画素と高精細。前面カメラも2,000万画素ある。
通信機能は、5GのほかWi-Fi 6Eにも対応。日本国内ではまだ使用できないが、Wi-Fi 6E対応のWi-Fiルーターの国内発表も近く各社が予定しているようで、端末側が対応を表明しているのは先々を考えると安心だ。
バッテリ容量は4,700mAh。内部で2,350mAhのセル構造に2分割することで最大120Wの急速充電に対応し、専用充電器が付属する。フル充電まで17分、高負荷のゲームをプレイしながらでも27分で済むとする。
NFCには対応するが、おサイフケータイは非対応。また防水防塵機能も搭載していない。本体重量は210gとやや重めだが、昨今のハイエンド機としては標準的だ。
高速な指紋センサーや4基のスピーカーで良好な使用感
では実機を見ていこう。本体色はステルスブラック、ナイトシルバー、サイバーイエローの3色展開で、今回お借りした端末は、最も派手な印象のあるサイバーイエロー。
色の違いは背面のみで、画面側を上にして置くとブラックに見える。背面は金属的なツヤがあり、濃いめのゴールドと言ってもよさそうな色味だ。おもちゃっぽさはなく、名前にあるサイバーな雰囲気に、不思議とかわいらしい印象がある。人とは違う端末を求める人なら男女問わず合うのではないかと思う。
サイズ感はやや大きめで、特に横幅が広め。成人男性としては手がやや小さめの筆者だと、片手で持って操作するのにはギリギリ許容範囲。厚さは8.5mmと比較的薄いので、フィット感は悪くない。ただし裏面上部にあるカメラ部分が1mmほど突出している。カメラの周辺がレンズ面よりわずかに高いので、レンズに傷がつきにくいよう配慮はされているが、気になるならケースを使用したほうがよさそうだ。
ディスプレイは自然な色味で美しい。有機ELだけあって残像感もなく、ゲームプレイでもキビキビした映像だ。解像度は縦長のフルHD+で標準的。より高い解像度を求めるのでなければ、特に不満のない性能といえる。
ディスプレイガラスには、Corning製Gorilla Glass Victusを採用。加えて、最初から液晶保護フィルムが貼られている。フィルムは試供品とされているが、透明度は高く、指滑りもまずまず。特にこだわりがないなら、そのまま使っても問題ない。
ケースも標準で付属。透明なソフトケースで、端子部やスピーカーなど必要な部分は開放されている。またカメラの突出部に合わせて周辺がより高くなり、置いた時に端末部が触れないようになっている。背面と触れる部分はシボ加工され、密着模様が出ない配慮も。ケースとしては十分な品質だ。
指紋センサーは、本体右側にある電源ボタンが兼ねている。センサー感度は極めて良好で、かなり雑に電源ボタンを押すようにしても瞬時に認証される。ただ端末を手に取る時に触れやすい場所にあるため、指以外の場所が振れても即座に認証プロセスが走り、端末のバイブレーションが作動するのがやや気になる。
スピーカーは端末の上下にツイーターとウーファーを各1基内蔵し、合計4基のスピーカーが搭載されている。横持ちで使うと、ステレオ感はかなりしっかりとある。音質も良好で、ゲームはもちろん動画視聴などにも十分使える。マイクは上下と左側面の3カ所に搭載。持ち方を問わず安定して音声を入力できるとしている。
充電は付属の充電器を使うと、即座に高速充電が始まる。画面には120Wの文字と、充電量が0.01%単位で表示され、みるみる充電量が増えていくのが示される。小数点以下2桁まで表示するのはずるい気もするが、充電が超高速なのは確かだ。
充電器の出力は、通常出力が5V/3A、高速出力が3.6~20V/3~6Aとある。USB PDに準拠した表記ではなく、充電器にはQuick Charge 3.0のマークが確認できる。スマートフォン用の充電器としては大きめのサイズだが、120W出力と聞かされればむしろ相当コンパクトに見える。
L/Rボタンを出し入れできる「Magnetic pop-up trigger」を搭載
次にゲーム関連の感触を見ていく。機能面での注目点は、冷却システム「LiquidCool テクノロジー 3.0」と、ゲーム向けツール「Game Turbo」、追加ボタン「Magnetic pop-up trigger」の3つ。
基本的なゲームの動作については、横持ちで遊ぶオンラインFPS「Apex Legends Mobile」を試したところ、ゲームの動作はまったく不満なく、最後まで快適にプレイできた。サウンドも上質で、プレイ環境としては最高峰と言える。
冷却については、プレイを開始してまもなく、裏面全体が均一に温かくなる。プレイ中も熱いというほどまで温度は上がらないが、気になる程度にはなる。Snapdragon 8 Gen 1は発熱が大きく、なるべく広い範囲を使って放熱力を高めているのだろう。
公式サイトにあるLiquidCool テクノロジー 3.0の説明では、4,860平方mmのデュアルベイパーチャンバーを、6,904平方mmの冷却素材に伝えて複数層で放熱するとされており、広範囲が温かくなる使用感とも合致する。ほかにもいくつかのゲームを試したが、少なくとも動作が不安定になることはなく、放熱自体はそれなりにできているようだ。
ゲーム向けツール「Game Turbo」はプリインストールされているアプリで、表向きにはランチャーのようにふるまう。ゲームをインストールするとGame Turboアプリに登録され、アプリ内のゲーム一覧から起動できる。
これに加えて、各ゲームの動作モードを設定できる。1つはGPU設定で、画質、フレームレート、パフォーマンスの3点で、どれを優先するかを選べる。画質を落としてフレームレートを取る、逆に画質を上げる、あるいはパフォーマンスを落として節電するといった設定がある。フレームレートや画質の手動設定もできる。
さらにタッチの精度も調整可能。スワイプの反応や連続タップの感度を好みに応じて調整できる。高感度なのは「プロモード」だそうだが、こちらも個別に調整が可能。
この2つの設定は、ゲームごとに設定ができる。このゲームは発熱が多いと思ったら、フレームレートは維持したまま画質を下げて発熱を減らす、といった手も使える。
さらにゲーム中にパフォーマンスを上げる調整も可能。Game Turboに登録されたゲームを起動すると、画面左上に白い線が現れる。そこを右にスワイプするとオーバーレイメニューが表示される。その中にある「ブースト」を押すと、画面のフレームレートが表示される。さらに「パフォーマンス」スイッチをオンにすることで処理性能を上げられるが、消費電力と発熱が増えるとしている。これらはいつでもオン/オフできる。
Magnetic pop-up triggerは、右側面に備えられた2つのボタンのこと。右側面の上下にあるスイッチを動かすとボタンが飛び出してくる。普段は平面だが、必要な時には磁力でポップアップするボタンだ。想定しているのは横持ちにした際に左右の人差し指で押すスタイル。ゲーム機で言うところのL/Rボタンだ。
早速ボタンをポップアップさせて「Apex Legends Mobile」を動かしてみたが、ボタンを押しても特に反応はない。似たゲームで「Fortnite」も試したが状況は変わらず。ゲーム側が勝手に認識してくれればラッキーで、そうでなければゲームパッドとして認識させるのかと思ったが、そう簡単にはいかないようだ。
では実際にどう使うかというと、ゲーム起動後に「Game Turbo」のオーバーレイメニューを表示し、「ポップアップトリガー」をタップする。すると「[L]を設定」、「[R]を設定」のボタンが出るので、どちらかをタップ。続いて丸いマークが出るので、好きな位置へ移動させる。
このマークを設定した位置が、L/Rボタンを押した時にタップしたと認識される。たとえば「Apex Legends Mobile」なら、Rボタンを射撃のタップ位置に設定すれば。Rボタンを押すことで射撃できる。操作精度が劇的に上がるのでずるいかなと思うが、元々ゲームパッドにも対応しているタイトルなので問題ないだろう。いずれにしても、決まった場所をタップすることがあるゲームであれば、L/Rボタンを存分に活用できる。
Snapdragon 8 Gen 1搭載機としては性能は低めながら、温度管理は厳格
実際の性能を見るため、各種ベンチマークテストを実施した。使用したのは、「Geekbench 5.4.4」、「AnTuTu Benchmark v9.4.2」、「3DMark」、「PCMark for Android」。
【表2】ベンチマークスコア | |
---|---|
「Geekbench 5.4.4」 | |
Single-Core Score | 1,201 |
Multi-Core Score | 3,489 |
「AnTuTu Benchmark v9.4.2」 | |
Score | 945,393 |
CPU | 210,094 |
GPU | 410,937 |
MEM | 167,123 |
UX | 157,239 |
「3DMark」 | |
Wild Life Extreme | 2,468 |
「PCMark for Android」 | |
Work 3.0 performance | 13,080 |
Work 3.0 battery life | 10時間24分 |
Storage 2.0 | 28.871 |
「AnTuTu Benchmark v9.4.2」のデータによると、端末温度は実行前が33.4℃、実行後が42.1℃。最高温度になるまでぐっと上がって、そこから急に平坦になっている。スコアも旧世代に負けるほどではないにせよ、Snapdragon 8 Gen 1搭載機としてはやや低めになっている。ベンチマークテストで最高の性能を出すよりも、温度管理と使用感を重視しているのがうかがえる。
Game Turboの設定で「パフォーマンス」をオンにしてみたところ、AnTuTu BenchmarkではCPUとGPUのスコアが1~2%程度上昇した。劇的な性能アップとは言えないものの、ある程度は効果が望めるようだ。
ストレージは「PCMark for Android」のデータによると、シーケンシャルリードで1,072.38MB/s、シーケンシャルライトで1,206.66MB/sと、1GB/sを超えるのが確認できた。スマートフォン向けのストレージとしては十分な値だ。
普段使いに十分、マクロも搭載の3眼カメラ
ゲーミング端末ではあるが、カメラも簡単にチェックしておく。基本的に約6,400万画素のメインカメラで撮影し、超広角時は約800万画素、マクロ撮影用に200万画素のカメラで切り替えることになる。
メインカメラは4:3の4,624×3,472ドットが最高解像度で、ほかに1:1、16:9、フル(スクリーン比率と同じ)が選べる。新型コロナウイルスの第7波の真っ最中ということで、サンプル写真は近所を回って撮影した。この日は猛暑日に迫る晴天で、直射日光が当たり続ける端末はゲームプレイ時の比ではないほど熱くなったが、カメラアプリの動作に問題は一切出なかった。
写真を見ると、全体的にやや青が弱めで黄色っぽいかなとも思うが、変に強調し過ぎてもおらず、自然な印象で撮影できている。解像感も高く、細部までしっかり見える。普段使いでこの画質なら文句はない。
ズームは10倍まで対応。2倍までは自然に寄れる印象だが、4倍以降は細部の描写がはっきりとつぶれていく。
逆に0.6倍を選ぶと超広角に切り替わり、撮影画像は3,264×2,448ドットになる。こちらは青の色味も出ていて、写真の印象はいい。ただ細部はメインカメラの方がずっと精細だ。
右上のアイコンからメニューを出してマクロを選ぶと、マクロカメラに切り替わる。撮影画像は1,600×1,200ドット。被写体から3cmくらいまで寄って撮影でき、背景は大きくボケるので、おもしろい写真を撮影できる。ただ画質はメインカメラにかなり劣り、場合によってはメインカメラの2倍ズームで撮影した方が精細な映像になる。画角は違うので、被写体に応じて使い分けるとよさそうだ。
ほかにも撮影モードがある。たとえば「ポートレート」を選ぶと、画面にエフェクトを加えたシネマティック効果や、色味を変えるフィルター、ボケ味を足すF値調整が使える。ここでのF値は画像処理によるもので、実際のF値とは別のようだ。また撮影モードを「プロ」にすれば、シャッタースピードやISO感度などを調整した撮影もできる。
安価でも欠点なし。ゲームにも普段使いにも無難な仕上がり
本機を一通り使ってみて感じた印象は、「全体的にほどよい」だ。ハイエンドSoCを搭載する安価なゲーミング端末は、サイズやデザイン、機能などで何かしらネガティブに感じる点があるものだが、本機は性能優先で極端に重量が増したりせず、高音質なスピーカーを搭載し、十分な性能のカメラも搭載。特徴的なゲーム機能を持つだけでなく、普段使いにも不満がない形に仕上げている。
120Wの高速充電も使用感を引き上げてくれる。朝起きて充電を忘れていたとしても、最大17分でフル充電してくれるなら何の不安もない。バッテリ自体はそれほど長時間持つ印象ではないが、ゲームを長時間プレイしたりしない限り、1日持たないということはないだろう。フィルムやケースが最初から用意されているのも、特にこだわりがないならその分安く上がるし、フィルムを綺麗に貼る手間がないだけでもありがたい。
デザイン面は好みが分かれるのは当然としても、実物を見ると今回お借りしたサイバーイエローでも派手過ぎるとは感じない。めずらしい色味なのは確かなので、ただ好みに合うかどうかだけの話だ。ほかの色ならよりベーシックな印象になるだろう。
強いて弱点を挙げるなら、防水/防塵がやや弱め、Felica非対応といった辺りだろう。逆に言えば、そこが許容できれば、良好な使用感と高いコストパフォーマンスで満足度はかなり高いはずだ。