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水冷/空冷両対応なゲーミングノート「G-Tune H5-LC」の実力を検証
2022年7月15日 06:24
マウスコンピューターが展開するゲーミングPCブランド「G-Tune」から、同ブランド史上初となる水冷ゲーミングノート「G-Tune H5-LC」が発売された。空冷での単体利用も可能な15.6型ゲーミングノートに、容易に着脱可能な水冷BOXを組み合わせたG-Tune H5-LCは、空冷ノートPCの限界を超える強力な冷却性能で、CPUやGPUからより多くのパワーを引き出せる。
今回は、G-Tune史上初の水冷ゲーミングノートであるG-Tune H5-LCがどのような製品に仕上がっているのかを確認しつつ、水冷の効果をノートPC単体利用時との比較を通してテストする。
着脱可能な水冷BOXを組み合わせた「水冷ゲーミングノート」
G-Tune H5-LCは、15.6型のゲーミングノート本体と、着脱可能な外付け「水冷BOX」を組み合わせた製品で、空冷と水冷を融合したハイブリッドな冷却システムが内蔵されている。このため、水冷BOXを接続した水冷ゲーミングノートとしての利用だけでなく、ノートPC単体で空冷での利用も行なえる。
まずは、ノートPC本体のスペックから確認していこう。
G-Tune H5-LCのノートPC本体には、Intelの14コア(6P+8E)/20スレッドCPU「Core i9-12900H」と、GPUに「GeForce RTX 3070 Ti Laptop」が搭載されており、ディスプレイには240Hz駆動の15.6型WQHD(2,560×1,440ドット)液晶パネルを採用。多くのゲームを動作させられるパワーを備えたプロセッサと、高速かつ高精細なディスプレイを搭載したハイスペックなゲーミングノートだ。
1TBのNVMe SSDやDDR5-4800メモリを32GB(16GB×2)搭載した標準構成での価格は36万9,800円。筐体サイズは360.2×243.5×28mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約2.27kg。
【表1】G-Tune H5-LCのスペック | |
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OS | Windows 11 Home |
CPU | Core i9-12900H(6P+8Eコア/20スレッド) |
dGPU | GeForce RTX 3070 Ti Laptop(8GB) |
iGPU | Iris Xe Graphics |
メモリ | 32GB DDR5-4800(16GB×2) |
ストレージ | 1TB NVMe SSD(PCIe 4.0 x4接続) |
ディスプレイ | 15.6型WQHD液晶パネル(2,560×1,440ドット、240Hz駆動) |
有線LAN | 2.5Gigabit Ethernet |
無線機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5(Intel Wi-Fi 6 AX201) |
USB/Thunderbolt | Thunderbolt 4、USB 3.1、USB 3.0×2 |
そのほかのインターフェイス | ヘッドフォン出力、マイク入力、HDMI、Webカメラ(100万画素/Windows Hello対応)、SDカードリーダー(UHS-I対応) |
水冷BOX関連の付属品 | 水冷BOX、水冷チューブ、冷却水、注水ボトル、漏斗、排水アタッチメント |
バッテリ | 93Wh、約7.5時間駆動(JEITA 2.0) |
ACアダプタ | 280W |
本体サイズ | 360.2×243.5×28mm(幅×奥行き×高さ) |
本体重量 | 約2.27kg |
キーボードには、キー単位でカラーを制御できるRGB LEDバックライトを備えたテンキー付き日本語キーボードを搭載。キーピッチは約18.8mmで、キーストローク約2mm。
キーボード面にはボタン一体型のタッチパッドが搭載されているほか、右上に配置された電源スイッチの隣に「動作モード切り替えスイッチ」が用意されている。これは、G-Tune H5-LCの動作モードを「静音」、「バランス」、「パフォーマンス」の順で切り替えるもので、ユーティリティの「Mouse Control Center」でも変更できる。
G-Tune H5-LCが備えるディスプレイは、240Hz駆動のWQHD液晶パネル。高速駆動と高精細を両立したゲームに好適なパネルで、高性能なCPUとGPUに相応しい表示能力を備えている。ディスプレイはCPU内蔵GPU(iGPU)と接続されており、標準で可変リフレッシュレートが有効化されている。
ディスプレイの上部には、Windows Helloの顔認証に対応した100万画素のWebカメラや、マイクが配置されている。
空水冷のハイブリッド冷却システム。外付け水冷BOXの冷却水補充はセルフ方式
G-Tune H5-LCの水冷BOXは、ラジエーターやポンプ、冷却ファンなどを内蔵したユニット。水冷チューブでノートPC本体と接続した上で、水冷BOXに冷却水(精製水)を充填することで水冷システムとして利用可能となる。
水冷BOXの付属品には水冷チューブのほか、冷却水とそれを充填するためのボトルや漏斗、水を抜くときに利用する排水アタッチメントが用意されている。
マウスコンピューターより提供いただいたPC内部写真をみると、水冷チューブ接続ポートから伸びるパイプはCPUやGPUを冷却するヒートシンクと接続されており、循環する冷却水がこれらのヒートシンクから熱を吸い上げる設計となっているようだ。
水冷BOXは、ACアダプタを接続するための電源入力端子と、ノートPCに電力を供給するための電源出力端子を備えており、デイジーチェーン接続することでノートPCと水冷システムに電源供給を行なえる仕様となっている。
また、水冷BOXにはBluetoothが搭載されており、ノートPC本体とペアリングすることでユーティリティの「Mouse Control Center」から制御可能となる。ユーティリティ上では、ファンスピードやLEDの制御が行なえる。
水冷BOXを取り外す際は、Mouse Control Centerで水冷BOXの切断を実行したあと、ノートPC本体の接続ポートから水冷チューブを取り外す。水冷チューブを再接続すれば再び利用することが可能だが、水冷BOXを持ち運ぶ際や1カ月以上利用しない時は、排水アタッチメントを使って水を抜く必要がある。
水冷BOX利用時とノートPC単体時の性能を比較
ここからは、ベンチマークテストを使ってG-Tune H5-LCの性能をチェックする。実行したベンチマークテストは、「Cinebench R23」、「Blender Benchmark」、「3DMark」、「PCMark 10」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」。
今回のテストでは、G-Tune H5-LCの動作モードを「パフォーマンス」に設定し、ノートPC単体で稼働させた「空冷時」と、水冷BOXを接続した「水冷時」のスコアを比較。水冷方式による冷却が性能に与える影響をチェックする。なお、水冷BOXのファンスピードは60%に設定している。
CPU性能を計測するCinebench R23では、CPUの全コア全スレッドを活用するMulti Coreにおいて水冷時が空冷時を約5%上回った。Single Coreでは水冷時が僅かに低いスコアとなっているが、CPU負荷が低いため冷却強化の効果が発揮されなかった結果、誤差程度のスコア差しか生じなかったものと考えられる。
Blender Benchmarkでは高負荷なテストを3つ続けて実行するためか、最後に実行されるclassroomにおいて、CPUで約3%、GPUでも約2%、それぞれ水冷時が空冷時を上回っている。一方で、3DMarkのCPU Profileでは、実行時間の短いテストを高負荷から低負荷へと順番に実行していくためか、空冷時と水冷時で大きな差はついていない。
ファイナルファンタジーXIVベンチマークでは、フルHDで約2%、WQHDで約3%、それぞれ水冷時が空冷時を上回るスコアとフレームレートを記録した。
3DMarkでも、バスインターフェイスの帯域幅を測定するPCI Express feature test以外では、水冷時が空冷時をおおむね3%程度上回っており、水冷BOXの利用による冷却の強化がベンチマークテストにおけるG-Tune H5-LCの性能を向上させることが確認できた。
実際のゲームで水冷BOXの効果をチェック
ここからは、実際のゲームを使ってG-Tune H5-LCの性能と、水冷BOXの効果を確認していく。テストしたタイトルは「フォートナイト」、「レインボーシックス シージ」、「Apex Legends」、「Forza Horizon 5」、「エルデンリング」。
なお、これらのゲームでは「可変リフレッシュレート」が有効な状態では、フレームレートが60fpsで頭打ちになる現象が生じたものがあるため、テスト時は可変リフレッシュレートを無効にしている。
フォートナイト
フォートナイトでは、描画設定を「最高」にして、フルHDとWQHD解像度で平均フレームレートを計測した。いずれも3D解像度は100%で、グラフィックスAPIはDirectX 12。
空冷時の平均フレームレートがフルHDで116.5fps、WQHDで81.1fpsであったのに対し、水冷時はそれぞれ122.2fpsと86.0fpsを記録しており、空冷時の結果を5~6%上回った。
レインボーシックス シージ
レインボーシックス シージでは、描画設定「最高」をベースにスケーリングを「100」にして、フルHDとWQHD解像度でベンチマークモードを実行した。テスト時のグラフィックスAPIはVulkan。
空冷時のフレームレートが、フルHDで273fps、WQHDは185fpsであったのに対し、水冷時はそれぞれ283fpsと197fpsで、空冷時の結果を4~6%上回った。
Apex Legends
Apex Legendsでは、描画設定を可能な限り高く設定した状態のフルHDとWQHD解像度で、平均フレームレートの計測を行なった。テスト時はフレームレート上限を300fpsまで解放している。
ここでは、空冷時の平均フレームレートはフルHDで167.0fps、WQHDは125.9fpsだった。これに対し、水冷時はそれぞれ176.7fpsと132.3fpsで、空冷時の結果を5~6%上回っている。
Forza Horizon 5
Forza Horizon 5では、描画設定を最も高い「エクストリーム」に設定して、フルHDとWQHD解像度でベンチマークモードを実行した。
空冷時のフレームレートが、フルHDで85fps、WQHDは72fpsであったのに対し、水冷時はそれぞれ89fpsと76fpsで、ここでも空冷時の結果を5~6%上回った。
ベンチマークテスト実行中の温度やクロックをチェック
モニタリングソフトのHWiNFO64 Proを使って、Cinebench R23(Multi Core)とファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(WQHD/最高品質)を実行した際のモニタリングデータを取得し、CPUとGPUの温度やクロックをグラフ化してみた。
Cinebench R23のMulti Coreを実行した場合、CPU温度が空冷時はサーマルスロットリングの作動温度である100℃に達しているが、水冷時は最大でも85℃と15℃も低い温度となっている。水冷による冷却の強化は、CPUを温度リミットの制約から解放しており、常に105W前後の電力を消費しながら、空冷時より高いCPUクロックで動作していた。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク実行中の温度は、空冷時ではCPUが平均83.2℃、GPUが平均80.4℃だった。これに対し、水冷時はCPU温度が平均61.8℃、GPUは平均57.3℃となっており、それぞれ20℃以上も平均温度が低下している。
平均CPUクロックにはそこまで大きな差がないものの、平均GPUクロックは空冷時の1,414MHzに対して、水冷時は1,514MHzと100MHzほど高い。
水冷BOXを利用したことによる冷却性能の強化は、CPUとGPUの温度を大きく引き下げており、それによってサーマルスロットリングの発生によるクロックの低下を防ぎ、GPUのブーストクロックを引き上げている。ノートPC単体でも優れた性能を発揮しているG-Tune H5-LCだが、水冷BOXはCPUとGPUから温度リミットという枷を外し、より多くの性能を引き出すことに成功している。
また、水冷BOXによる冷却の強化は、G-Tune H5-LCの動作音を引き下げる役割も果たしている。
ファイナルファンタジーXIVベンチマーク実行中の騒音値を計測してみたところ、空冷時が54.8dBAであったのに対し、水冷時は42.0dBAと大幅に低い数値を記録した。体感的にも明らかに水冷BOX使用時の方が静かであり、静粛性の高さも水冷ゲーミングノートの魅力であると言えよう。
プロセッサを温度リミットから解放する水冷BOX。自宅でゲームをプレイする機会の多いゲーマーにおすすめ
G-Tune H5-LCは、水冷BOXを利用することでCPUやGPUを温度リミットから解放して、最大級の性能を引き出すことができた。そのゲーミング性能とディスプレイの表示能力は、ハイスペックゲーミングノートと呼ぶに相応しいものであり、多くのゲーマーが満足できる実力を備えている。
ノートPC単体でも優れた性能を発揮しており、重量的にも持ち運ぶことは可能なレベルにあるが、水冷BOX自体は持ち運びに適したものではない。頻繁にPCを持ち歩くユーザーより、自宅などの拠点でゲーミングノートを使う機会の多いユーザーにマッチする製品であると言えるだろう。