Hothotレビュー
有機ELで高性能なCore i7-12700Hを搭載。ASUS Vivobook 15X OLEDを試す
2022年7月14日 11:00
薄型でスタイリッシュなノートパソコンは、組み込める冷却装置の関係であまり高性能なCPUは搭載できない傾向がある。とは言え、せっかくノートPCを買うのだから、ユーザーとしてはできる限り高性能なCPUを搭載してほしいというのも分かる話だ。
こうした欲張りなニーズに応えるべくASUSが投入するのが、「Vivobook 15X OLED X1503ZA」だ。薄さ20.2mmというモバイルノートに近いサイズ感ながら、高性能なゲーミングノートで利用されることが多い「Core i7-12700H」をCPUとして搭載。また発色に優れる有機ELのディスプレイを採用し、さまざまな用途で活躍できるノートPCに仕上げられている。
ゲーミングノート向けのCore i7-12700Hを搭載
Vivobook 15X OLED X1503ZAは、15.6型の有機ELディスプレイを搭載するホームユース向けのスタンダードノートPCだ。同梱されるOfficeアプリの違いにより2モデルラインナップされるが、搭載するCPUやメモリ容量、ストレージやディスプレイなど、基本スペックは同じである。
【表1】Vivobook 15X OLED X1503ZAのスペック | |
---|---|
OS | Windows 11 Home |
液晶ディスプレイ(表示方式) | 15.6型(有機EL) |
CPU | Core i7-12700H(14コア20スレッド) |
メモリ | 16GB |
ストレージ | 512GB(PCI Express 3.0 x2) |
Webカメラ | 92万画素 |
通信機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 |
主なインターフェイス | HDMI×1、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.0×2、USB 2.0×1 |
バッテリ駆動時間 | 約7.5時間 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 356.8×227.6×20.2mm |
重量 | 約1.7kg |
実売価格 | 15万9,800円(WPS Office 2 Standard Edition付き) 18万9,800円(Microsoft Office Home and Business 2021付き) |
ノートPC向けの第12世代Coreシリーズでは、ノートPCのセグメントによっていくつかのグレードが設定されている。多くのスタンダードノートPCやモバイルノートでは、末尾に「U」が付くモデルを採用する。もう少し性能を重視したモデルでは、末尾に「P」が付くモデルを採用することが多い。
Vivobook 15X OLED X1503ZAが搭載する「Core i7-12700H」は、先ほど紹介した末尾にPが付くモデルよりもさらに性能を追求するモデルである。高性能コアは6コア12スレッド、高効率コアは8コア搭載しており、合計で14コア20スレッドに対応する。
前述の通り、本来はゲーミングノートに搭載されるグレードのCPUであり、この手のスタンダードノートPCに搭載されることは稀だ。そのため、ほかのスタンダードノートPCと比べると性能面では大きくリードしている。
こうした高性能CPUを搭載するわりに、比較的薄型でコンパクト、そして15.6型としては軽量な筐体を採用することにも注目したい。サイズは356.8×227.6×20.2mm(幅×奥行き×高さ)。特に液晶のフチは非常に狭く、箱から出す時にも「14型だったかな?」と思ったくらいだ。
奥行きは、筆者が普段利用しているレノボの14型モバイルノート「ThinkPad T14 Gen1(AMD)」(奥行きは227mm)とほとんど変わらない。ただ幅は15.6型らしいサイズなので、普段このノートPCを持ち歩く時に使っているインナーケースには収まらないのだが、一般的なビジネスバッグなら収納できるだろう。
圧倒的な有機ELディスプレイの表現力
有機ELディスプレイの画質は、まさに圧巻の一言。液晶ディスプレイと比べると、その鮮やかさ、コントラスト、引き締まった黒などの表現力は段違いだ。YouTubeで都会の夜景の動画を表示していると、3D表示をしているわけでもないのに不思議な立体感を感じる。
解像度は2,880×1,620ドットと、あまり見たことのないタイプだ。15.6型の液晶ディスプレイだとフルHD解像度(1,920×1,080ドット)が一般的なので、デジタルカメラやスマホで撮影した画像はより精細に表示できる。スケーリングについては「200%」が推奨設定だったが、個人的には175%が一番使いやすいように感じた。
またHDR表示や120Hzのハイリフレッシュレートにも対応しているのも特徴だ。Vivobook 15X OLED X1503ZAではCPU内蔵GPUを利用するため、PCゲームをハイリフレッシュレートで楽しむというわけにはいかない。しかしカーソルの挙動やブラウジング中のスクロールなど、一般的な操作でも表示の速さは体感できるし、有機ELの卓越した画質もあって、最適の環境となり得る。
近年は液晶ディスプレイの表示クオリティも向上しており、IPSパネルを搭載しているモデルなら色再現性や色調のコントラストにも不満を感じる場面はなくなってきている。しかし有機ELの表示品質は、そうした高性能な液晶パネルをも大きく上回る。家電量販店の店頭で実際に見て確かめてほしい。
キーボードは、テンキーを右側に装備するフルキーボードタイプだ。ただ奥行きがやや短めなせいか、カーソルキーやバックスペースの右にある「¥」、最上段のファンクションキーなど細身のキーも多い。とは言え一般的には利用頻度が高いキーではないので、タイプミスにつながることはないだろう。
左側面にはUSB 2.0ポートを1基備える。右側面にはUSB 3.0のType-Cを1基、USB 3.0ポートを2基、HDMI、ACアダプタ用の充電端子を装備する。Type-Cはデータ転送専用で、映像出力やUSB PD対応の充電機能はサポートしない。ちょっと残念なポイントだが、Core i7-12700Hの性能を100%発揮するためには、専用のACアダプタが必要なのかもしれない。
高品質なマイクとAIを活用し、人の話し声以外の音を低減する「AIノイズキャンセル」機能も便利な機能だ。テレワークとWeb会議の普及で、ビジネスマンにとってはこうした機能が非常に重要になっている。またオンライン授業の機会が増えた学生にとっても、見逃せない機能だ
ASUS独自のユーティリティとして「MyASUS」というツールがインストールされている。ここからバッテリ充電の設定、ファンの動作モード、有機ELディスプレイを保護するためのスクリーンセーバー、そしてAIノイズキャンセルの設定など、さまざまな設定が行なえる。利用状況に合わせて必要な設定を行ないたい。
デスクトップ向けCPUと比べても遜色のない性能を発揮
高性能なCPUを搭載するノートPCではあるが、Webブラウズや書類作成、音楽再生や動画配信サイトの視聴といった軽作業時の動作音はかなり静かだった。後述するベンチマークテスト中にはそれなりの動作音になるが、それでもテストが終わればすぐに静かになる。
最後に、いくつかのベンチマークテストを実行した結果を紹介する。PCMark 10 Extendedの総合Scoreは、一般的なA4ホームノートPCと比べるとワンランク上の数値だった。ビデオカードを搭載しないデスクトップPCと比べても遜色のないスコアであり、搭載するCore i7-12700Hの性能の高さが反映された結果と言える。
【表2】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 Extended v2.1.2563 | |
PCMark 10 Extended score | 4,867 |
Essentials | 9,759 |
Productivity | 6,909 |
Digital Content Creation | 6,639 |
Gaming | 3,390 |
PCMark 10 Battery Test v2.1.2563 | |
MODERN OFFICE | 5時間49分 |
3DMark v2.22.7359 | |
Time Spy | 1,559 |
Fire Strike | 3,970 |
Night Raid | 14,410 |
Cinebench R23.0 | |
CPU | 11,243 pts |
CPU(Single Core) | 1,712 pts |
CrystalDiskMark 8.0.4 | |
Q8T1 シーケンシャルリード | 2,231.16 MB/s |
Q8T1 シーケンシャルライト | 1,095.06 MB/s |
Q1T1 シーケンシャルリード | 1,786.57 MB/s |
Q1T1 シーケンシャルライト | 923.7 MB/s |
Q32T16 4Kランダムリード | 408.29 MB/s |
Q32T16 4K ランダムライト | 460.44 MB/s |
Q1T1 4Kランダムリード | 66.9 MB/s |
Q1T1 4K ランダムライト | 161.43 MB/s |
TMPGEnc Video Mastering Works 7 ※3分のフルHD動画をH264/AVCとH.265/HEVC形式で圧縮 | |
H.264/AVC | 2:04 |
H.264/AVC(Quick Sync Video有効) | 0:43 |
H.265/HEVC | 4:44 |
H265/HEVC(Quick Sync Video有効) | 0:50 |
3DMarkのScoreは、最新のIntel製CPU内蔵GPUを利用するノートPCとほぼ同じ結果と言ってよい。最新のPCゲームを高精細な設定でプレイするには正直厳しいが、負荷が軽めのゲームなら設定を調整すれば遊べるだろう。ブラウザゲームなどは問題ない。
CPUの性能を反映しやすいCinebenchやTMPGEnc Video Mastering Works 7の結果は、デスクトップPC向けCPUとほぼ遜色のない結果となった。もはや「ノートPC向けだから性能が低い」というのは時代遅れな考えであり、ノートPCでも性能面では十分になってきた。
PCMark 10のバッテリ駆動時間テストについては、最近のノートPCとしては比較的短めで、外出先でもバリバリ使うというのは厳しい。高性能なCPUを搭載しているということもあるが、有機ELディスプレイの影響も大きいのだろう。もともと、そこまでモバイルでの利用を想定したモデルではない。
CrystalDiskMark 8.0.4で計測したストレージのリード/ライト性能は、予想したとおり最新のノートPCと比べるとやや低めの数値だ。とは言えWindows 11やアプリの操作感には影響はないし、起動やスリープからの復帰も高速に行なえる。
以上、さまざまな面から検証してきたが、ベンチマークテストの結果を見れば基本性能の高さは折り紙付き。しかも有機ELディスプレイによる表示性能の高さもあり、あらゆる場面で快適に使える万能形のノートPCに仕上げられていると感じた。
Web会議なども含め、さまざまな業務を快適に行ないたいビジネスマンはもちろん、学校での作業やエンターテインメントを自宅で楽しみたい大学生や高校生にとって、最適な選択肢となることは間違いないだろう。