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RTX 3060搭載で15万円。GIGABYTE製ゲーミングノート「G5」は6コアCPU&144Hz液晶など高コスパの1台だった

GeForce RTX 3060搭載なのにエントリー向け?

GIGABYTE「G5 KD-52JP123SO」。店頭価格15万円前後

 GIGABYTEは15.6型ゲーミングノート「G5 KD-52JP123SO」を12月11日に発売した。同社は高性能ゲーミングPCブランドとして「AORUS(オーラス)」を展開しているが、本機はそのラインナップとは別で、公式サイトでは「GIGABYTE Gaming」というカテゴリに含まれている。同社のラインナップでは比較的エントリー向けのゲーミングPCとなるだろう。

 店頭価格は15万円前後で、エントリー向けの価格帯ではある。しかしGPUはGeForce RTX 3060を搭載。GPU最大消費電力は105Wで、スペック的にはエントリークラスに収まらないパワーがある。コストパフォーマンスの高さにも期待しながら、実機をテストしていきたい。

ゲーミングPCに求められるスペックを一通り押さえた構成

 「G5 KD-52JP123SO」スペックは下記の通り。

【表1】G5 KD-52JP123SOの主な仕様
CPUCore i5-11400H(6コア/12スレッド、2.7~4.5GHz)
チップセットIntel HM570
GPUGeForce RTX 3060(GDDR6 6GB)
メモリ16GB LPDDR4-4266
SSD512GB(M.2 NVMe)
光学ドライブなし
ディスプレイ15.6型非光沢液晶(1,920×1,080ドット/144Hz、IPSパネル)
OSWindows 11 Home
汎用ポートUSB 3.1 Type-C、USB 3.1、USB 3.0、USB 2.0
カードスロットSDXC
映像出力HDMI 2.0、Mini DisplayPort、USB 3.1 Type-C
無線機能Wi-Fi 6、Blunetooth 5.2
有線LANGigabit Ethernet
その他HDカメラ、デュアルアレイマイク、音声入出力など
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)361×258×31.6mm
重量約2.2kg
店頭価格15万円前後

 CPUは6コア12スレッドのCore i5-11400H、GPUはGeForce RTX 3060、メインメモリ16GBという組み合わせ。ゲーミングノートとしてはミドルクラスのスペックだ。

 ストレージは512GBのM.2 NVMe SSDのみ。昨今の大容量化したゲームを考えると少々物足りないが、M.2 NVMe/SATAが1スロット、2.5インチが1スロット空いており、将来的に2台のストレージを追加できる余裕がある。

 ディスプレイは15.6型のフルHDで、IPSパネルを採用。リフレッシュレートは最高144Hzとなっており、ゲーミングノートとしてはまずまずの性能と言える。また映像出力としてHDMI 2.0、Mini DisplayPort、USB 3.1 Type-Cの3つを同時に使用でき、本体のディスプレイと合わせて計4台のディスプレイを表示できる。

 ネットワーク周りでは、Gigabit Ethernetと最大2,402MbpsのWi-Fi 6を搭載。端子類はUSB 3.1 Type-Cを始め4基のUSB端子のほか、ヘッドフォンとマイクで独立したミニジャックを備えるなど、汎用性も高い。OSはWindows 11をプリインストールしたモデルとなる。

高負荷でも安定した性能を発揮。FPSも高画質&高リフレッシュレートでプレイ

 続いて実機でパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは以下のベンチマークだ。

  • PCMark 10 v2.1.2532
  • 3DMark v2.21.7324
  • VRMark v1.3.2020
  • PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator
  • ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
  • FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
  • STREET FIGHTER V ベンチマーク
  • Cinebench R23
  • CrystalDiskMark 8.0.4

 本機は専用ソフト「Control Center 3.0」で動作モードを設定できる。標準では「エンターテイメント」の設定で、ほかに「パフォーマンス」、「省電力」、「静音」の計4種類が選べる。内蔵ファンの回転数をカスタマイズできるツール「Fan Speed Setting」も用意されている。

 今回のテストでは、「PCMark 10 v2.1.2532」に限り4つの動作モードで測定。ほかのテスト、およびバッテリテストについては標準設定となる「エンターテイメント」を利用した。

「Control Center 3.0」で4つの動作モードを選べる
【表2】ベンチマークスコア
エンターテイメントパフォーマンス省電力静音
PCMark 10 v2.1.2532
PCMark 106,1356,2865,7255,659
Essentials9,2069,5299,0188,819
Apps Start-up score11,81312,51411,78411,785
Video Conferencing Score7,4737,6237,0026,972
Web Browsing Score8,8409,0718,8898,349
Productivity8,2488,3558,6378,841
Spreadsheets Score10,04410,11010,79211,476
Writing Score6,7746,9066,9136,812
Digital Content Creation8,2528,4686,5406,307
Photo Editing Score10,79211,3578,6919,377
Rendering and Visualization Score10,12610,3416,7066,005
Video Editing Score5,1435,1714,8004,456
Idle Battery Life4時間21分
Modern Office Battery Life3時間53分
Gaming Battery Life1時間12分
3DMark v2.21.7324 - Time Spy
Score7,456
Graphics score7,468
CPU score7,389
3DMark v2.21.7324 - Port Royal
Score4,396
3DMark v2.21.7324 - Fire Strike
Score17,823
Graphics score20,078
Physics score20,041
Combined score8,876
3DMark v2.21.7324 - Wild Life
Score43,069
3DMark v2.21.7324 - Night Raid
Score43,124
Graphics score74,418
CPU score12,748
3DMark v2.21.7324 - CPU Profile
Max threads5,827
16-threads5,675
8-threads5,023
4-threads3,417
2-threads1,809
1-thread916
VRMark v1.3.2020 - Orange Room
Score9,564
Average frame rate208.50FPS
VRMark v1.3.2020 - Cyan Room
Score6,548
Average frame rate142.74FPS
VRMark v1.3.2020 - Blue Room
Score2,260
Average frame rate49.28FPS
PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット13,592
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(最高品質)
1,920×1,080ドット15,076
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(高品質)
3,840×2,160ドット3,292
1,920×1,080ドット7,728
Cinebench R23
CPU(Multi Core)8,434pts
CPU(Single Core)1,468pts

 ゲーム系のベンチマークテストを見ると、ディスプレイ解像度であるフルHDでは「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」で「快適」の評価。ほかは最高評価となっており、フルHDでのゲームプレイには十分な安心感がある。GeForce RTX 3060で105Wを使うというだけのことはある。

 またCPU系の結果も良好。「3DMark」の「CPU Profile」を見ると、全コアを使いきる状態ではCPUクロックが約4.1GHzでぴたっと安定していた。CPUの冷却には比較的余裕があるのが分かる。

 動作モードに関しては、グラフィックス系で高負荷がかかるものは「省電力」や「静音」の設定でパフォーマンスの低下が大きい。CPU系に関してはほとんど落ち込みが見られないので、3Dゲームなどグラフィックス系の処理を使う際のバランス調整として使うのが良さそうだ。

 バッテリ持続時間は、低負荷で4時間前後、ゲーミングで1時間強とやや短い。本体サイズからして長時間のバッテリ駆動は考慮されていないと思われるが、ちょっとした打ち合わせなどに持ち出す程度ならば問題はないだろう。

 ストレージはSamsung製SSD「MZVL2512HCJQ-00B00」が使われていた。PCIe 4.0に対応した「PM9A1」シリーズの製品で、シーケンシャルリードは5GB/sを超える。文句なしの高速ストレージで、大容量のゲームも快適にプレイできるだろう。

CrystalDiskMark 8.0.4

 実際のゲームのテストとして、「Fortnite」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度はディスプレイと同じ1,920×1,080ドット、画質はいずれも最高設定とし、「Apex Legends」のテクスチャストリーミング割り当ての項目のみ、本機のVRAM搭載量に合わせて1段階下げて「最高(VRAM:6GB)」とした。

【表3】ゲームのフレームレート
Fortnite
平均85.544fps
下位90%77.989fps
下位95%74.729fps
下位99%46.923fps
Apex Legends」
平均142.696fps
下位90%128.385fps
下位95%123.365fps
下位99%116.307fps

 「Fortnite」では、平均フレームレートが約86fps、下位95%でも約75fpsとなった。実際のプレイでもフレームレートの低下を感じることはなく、とても快適にプレイできた。ただディスプレイのリフレッシュレートが144Hzであることを考えると、もう少し画質を下げてフレームレートを優先するのもいいだろう。

 「Apex Legends」では、平均フレームレートがリミットの144fpsに近いところまで出ており、下位99%においても約116fpsで、プレイ環境としては申し分ない。わずかなフレームレートの低下も許さず144fpsで維持したいのであれば、こちらももう少し画質を下げるという手はあるものの、体感できるほどの差はなさそうだ。

ノートPCとして高品質なデキ

シンプルな外見でビジネス向けにも使える

 続いて実機を見ていく。筐体色はマットブラックで統一されており、装飾と呼べそうなものは天面にGIGABYTEの白いロゴがあるのみ。前面と側面をよく見るとエンボス加工された柄が入っているが、さほど目立つものではなく、全体としてはビジネス向けにも使える地味な外観だ。

 重量は約2.2kg、厚みも31.6mmとそこそこな大きさだけに、持つと見た目通りの重さは感じる。筐体の剛性は高く、ねじれやたわみは感じられない。ただディスプレイ裏の天面がやや弱く、押さえるとかなり簡単にへこむ。カバンにほかの荷物と一緒に入れたりする際には、しっかりしたカバーがあると安心できる。

 液晶は落ち着いた色味で派手さはないが、非光沢処理がしっかりしていて目に優しい。IPSパネルで視野角も広く、色相変化も見られない。144Hzのリフレッシュレートで、ゲームだけでなくWebブラウザのスクロールなど普段使いもスムーズ。残像感も少なく、エントリークラスのゲーミングディスプレイとしては十分な性能だ。

144HzのIPSパネルを採用したディスプレイ。普段使いでも満足のいく品質だ
視野角も十分に広い

 キーボードはアイソレーションタイプで、15.6型の筐体サイズを活かし、テンキーありのフルキーボードを採用。方向キーがエンターキーの下に入る配置が若干特殊ながら、テンキー以外の文字キーはほぼ正方形を確保している。キーストロークはノートPCとしては標準的で、しっかりしたクリック感を持たせながらも打鍵音を抑えている。

 キーボードバックライトも搭載しており、専用ソフトでキーボード全体の色と明るさ4段階+バックライトオフの調整ができる。未使用時にバックライトを自動で切るスリープタイマーも時間設定が可能。

 さらにキーボードやマウスにマクロ機能を与えるツール「FLEXIKEY」も搭載。マクロは入力遅延時間の記録と調整も可能。マウスはメーカーを問わず設定できる。

 タッチパッドは大きめで使いやすい。ボタン部も分かれたベーシックなスタイルで、特に違和感なく使える。

テンキーありのキーボード。キートップは正方形で大きく、打ちやすい上に静音仕様
タッチパッドはオーソドックスなもの。キーボードバックライトも搭載
キーボードバックライトは色や明るさを調整できる
キーボードやマウスでマクロが使える「FLEXIKEY」

 端子類は背面と、左右のやや手前側に配置されている。マウスと干渉する右側面にはMini DisplayPortが配置されており、使用予定のある人には邪魔になる可能性がある。左右の奥側は排気口となっているため、冷却重視にした影響で端子の配置に妥協が見えるデザインだ。

左側面はUSB×2、ヘッドフォン端子、マイク端子
右側面はUSB×1、Mini DisplayPort、SDXCスロット
前面はインジケータがある。ストレージのアクセスランプも搭載
背面はUSB Type-C、HDMI、Gigabit Ethernet、電源端子
底面は大きなスリットが空いているように見えるが、実際にスリットがあるのは左右の内蔵ファン付近だけ

 スピーカーは底面左右にある。ステレオ感はそこそこにあり、音量もしっかり出ているので、普段使いでは問題はない。ただ音質の面では、低音はほとんど出ておらず、人の声などの中音域もこもり気味。高音だけは気持ちよく響くので、ゲームプレイでの違和感は少ないが、音楽鑑賞には物足りない。

 排熱処理は、底面の左右から吸気し、背面と側面奥から廃棄というエアフロー。騒音はアイドル時にはGPUファンの回転が止まり、CPUファンがゆっくり回る状態で、ほぼ無音に近い。静かなオフィスでの使用でも特に問題はないだろう。

 高負荷になるとファンの回転数が上がり、ホワイトノイズ系の風切り音が聞こえてくる。音質はあまり耳触りではないものの、CPUをフルに使うような3Dゲームをプレイすると音量はかなり大きくなる。スピーカーの音を大きめにすれば何とか遊べるが、細かい音を聞き分けるにはヘッドフォンがあった方がいい。ここはGPUの消費電力と性能が高い分のトレードオフだ。

 なおツール「FAN SPEED SETTING」でファンの回転数をカスタマイズできる。「Control Center 3.0」で動作モードを変えた方が手っ取り早いが、CPUとGPUの温度ごとのファン回転数を細かく調整できるので、自分の利用環境に合った形で調整するのもいいだろう。

「FAN SPEED SETTING」を使ってファンの回転を調整可能

 キートップへの熱伝導は、高負荷時にはキートップ全体に波及する。特にキーボード中央は、触れるとはっきり温かさを感じる。熱いと感じるまではいかないが、夏場や神経質な人は気になりそうなレベルではある。

 ACアダプタは180W出力。大出力なのでそれなりの重さと大きさはあるが、厚さは本体より薄く、コンパクトな方だと感じる。

ACアダプタは180W出力。比較的薄く邪魔にならない

ベーシックな設計にミドルクラスのスペックでコスパを高めた1台

普段使いもするゲーミングノートとして見るのがよさそう

 昨今のよく研究されたゲーミングノートと比較すると、性能に比してファンの回転音がやや大きめだったり、キートップへの熱伝導の処理が甘かったりと、ゲーミングPCとしての作り込みに欠ける部分はある。

 本機がエントリークラスと名乗っているのは、性能よりもデザインの面なのだろうと思われる。排熱処理や騒音低減などに真面目に取り組むと、一般的なノートPCのデザインから大きく外れていき、その分だけ価格も上がってしまう。そういうものが欲しいなら「AORUS」ブランドを見てもらえればよく、こちらは何よりコストを優先するということだ。

 とは言え安かろう悪かろうというほど、本機の設計が悪いわけでもない。冷却性能が高く高負荷でも安定した性能を発揮しているし、キーボードも広く打ちやすい。液晶も144Hzの高リフレッシュレートで、画質も十分なレベル。ゲームパッドや外部キーボードなどを使うのであれば、キートップへの熱伝導のデメリットは解消できるし、後から何とかなる部分もある。

 主にオフィスユースや学習用など低負荷での使用が前提で、ゲームもそこそこな性能で遊びたいという人であれば、コストパフォーマンスの高さで納得できる範疇だ。特に今はデスクトップ向けのビデオカードが極めて高価なので、その分ゲーミングノートが割安に見えるという状況でもある。あまり持ち運びをしない人でも、本機の性能で間に合うのであれば十分満足できるのではないかと思う。