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コイツはカッコイイゲーミングノートだ!RTX 3060/144HzでAAA級ゲームも快適な「HP Victus 16-e0167AX」を使ってみた

HPのVictus 16。今回試用したアドバンスモデル(Victus 16-e0167AX)の直販価格は20万9,000円から

 HPが新たなゲーミングブランド「Victus」を立ち上げた。同社のゲーミングブランドと言えば「OMEN」だが、VictusはそのDNAをベースにしつつ手軽にゲーム体験ができることを目指しているという。OMENがハイエンド向け、Victusがカジュアル向けという棲み分けになっていくと見られる。

 Victusからは複数のモデルがすでに発表されているが、今回はAMDのCPU採用モデルとしては最上位の「Victus 16-e0167AX」を試用する機会を得た。アドバンスモデルと位置付けられているもので、8コア/16スレッドのCPU、リフレッシュレート144Hzの液晶、GPUにはGeForce RTX 3060 Laptopを搭載とゲームはもちろん、クリエイティブな作業にも対応できる汎用性の高いノートPCに仕上がっている。

 現在予約受付中で、直販価格はRyzen 5 5600HとGeForce GTX 1650 Laptop搭載の「モデレートモデル」が13万2,000円から、Ryzen 5 5600HとGeForce RTX 3050 Laptop搭載の「モデレートプラスモデル」が15万4,000円から、そして今回取り上げるRyzen 7 5800HとGeForce RTX 3060 Laptop搭載の「アドバンスモデル」は20万9,000円からとなる。

Ryzen 7 5800HとRTX 3070の強力コンビ

 Victus 16-e0167AXは、CPUにAMDのRyzen 7 5800Hを採用。8コア/16スレッド仕様とマルチスレッドに強いのはもちろん、シングルスレッド性能にも優れるZen 3アーキテクチャによって、アプリを選ばず高い性能を発揮できる。

 TDPは45WとノートPCとしてはやや高めだ。メモリはDDR4-3200が16GB(8GB×2)、ストレージは高速なNVMe SSDが512GBとゲームプレイには十分な容量が確保されている。

CPUは8コア16スレッドの「Ryzen 7 5800H」を搭載。ブースト時には最大4.4GHzまで上昇する

 ゲーミングPCで最も重要になるGPUにはGeForce RTX 3060 Laptopを搭載。モバイル向けのRTX 30シリーズではミドルレンジに位置付けられているが、CUDAコアは前世代のモバイル向けRTX 2060の1,920基から3,840基と倍増している。モバイル向けRTX 2080でも2,944基だったので、これがいかに強烈な数か分かるだろう。

 ビデオメモリはGDDR6が6GB、バス幅は192bitとこのあたりはミドルレンジらしいスペックと言える。GPU電力とブーストクロックはノートPCの設計によって異なるが、本機は電力95W、ブーストクロック1,425MHzに設定されていた。仕様上は電力115W、ブーストクロック1,703MHzまで設定できるが、熱設計と動作音のバランスを考えてやや抑えめにしているのだろう。

 実際、ベンチマークやゲームプレイといった高負荷時でもゲーミングノートとしては動作音が大きくない部類で、非常にナイスなバランスの電力とクロック設定と感じた。また、当然ながらRTXシリーズなので、レイトレーシングやDLSSもサポートする。

GPUにはモバイル向けのGeForce RTX 3060 Laptopを搭載
電力は95W、ブーストクロックは1,425MHzに設定されていた
【表】HP Victus 16-e0167AXの仕様
CPURyzen 7 5800H(3.2GHz~4.4GHz)
メモリDDR4-3200 16GB
ストレージ512GB SSD
GPUGeForce RTX 3060 Laptop
液晶1,920×1,080ドット表示対応16.1型
OSWindows 11 Home
インターフェイスUSB 3.0 Type-C×1、USB 3.0×2、HDMI、SDカードリーダ、Webカメラ、ステレオスピーカー、音声入出力端子
無線Wi-Fi 6、Bluetooth
本体サイズ370×260×23.5mm(幅×奥行き×高さ)
重量約2.48kg

シンプルでカジュアルなデザイン

 続いて、本体をチェックしていこう。同社のOMENブランドはゲーミングPCらしい力強さを感じるデザインがメインだが、Victusブランドでは白を基調としたカジュアルなデザインを採用。ゲーム以外の用途にも使いやすくなっている。ディスプレイ部分だけを黒にすることで、ちょっとディスプレイが浮いたように見えるのが個性的な部分だ。

 16.1型と大きめの液晶を備えていることもあり、本体の重量は公称で約2.48kg、サイズは370×260×23.5mm(幅×奥行き×高さ)と重くて大きめではあるが、厚さがそれほどないのでスマートに見える。

ゲーミングPCだが、仕事や学業にも使いやすいカジュアルなデザイン
ヒンジ部の内側から上部分がブラックになるツートンカラーが特徴的
ディスプレイは最大でここまで開く

ミュートランプが便利なキーボード

 キーボードはオーソドックスな日本語配列で使いやすかった。キーピッチは約18.7mmと十分な幅が確保されており、キーストロークは約1.5mm。テンキーもあるので仕事にも使いやすい作りだ。

 左下の「Fn」キーとファンクションキーを組み合わせることで、輝度や音量の調整、キーボードバックライトやタッチパッドの有効/無効の切り換えなどが実行できる。さりげないがミュート(F5キー)を有効にすると、そのキーの右上にあるオレンジ色のランプが点灯するのが便利だ。タッチパッドは実測で約125×85mm(幅×奥行き)とかなり大きいサイズだ。

キーボードは日本語配列
キーピッチは約18.7mm
テンキーも備えている
タッチパッドは約125×85mm(幅×奥行き)と広い
キーボードはバックライトを搭載。白色のみで発光パターンの変更や明るさの調整には対応していない

液晶は非光沢のフルHD、Type-CはUSB PDには非対応

 液晶は16.1型のフルHD(1,920×1,080ドット)解像度だ。表面は非光沢で、IPSパネルを採用しており視野角も広い。輝度は250cd/平方mでHDRには非対応だ。144Hzの高リフレッシュレートに対応しており、一般的な60Hzに比べて1秒間に2.4倍ものコマ数を表示可能で、FPS/TPSにおいて敵の動きを捉えやすくなる。

 ディスプレイ上部には92万画素のWebカメラ、デュアルアレイマイクを搭載。底面にはステレオスピーカーを備え、自分の声以外のノイズをカットするノイズキャンセリングアプリも用意されており、Web会議にも向いている。

ディスプレイは16.1型のフルHD液晶
IPSパネルを採用しており、視野角は広い
リフレッシュレートは144Hz
ディスプレイ上部には92万画素のWebカメラとマイクを内蔵する
ステレオスピーカーは底面に搭載

 インターフェイスは左側面にGigabit Ethernet、HDMI出力、USB 3.0、USB 3.0 Type-C(DisplayPort出力対応)、ヘッドセット端子、SDカードスロットを搭載。右側面にはUSB 3.0×2を用意している。

 また、無線LANはWi-Fi 6(最大2.4Gbps)に対応し、Bluetooth 5.2もサポート。付属のACアダプタは200Wでサイズは大きめ。重量は実測で616gだった

左側面にGigabit Ethernet、HDMI出力、USB 3.0、USB 3.0 Type-C(DisplayPort出力対応)、ヘッドセット端子、SDカードスロット
右側面にUSB 3.0×2
ACアダプタは200W出力でサイズは大きい
ACアダプタの重量はケーブル込みで616g

ゲームにもクリエイティブ用途にも使える性能

 次にベンチマークで基本性能をチェックしてみよう。ベンチマークは「PCMark 10」、「3DMark」、「Cinebench R23.200」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「ドラゴンクエストX ベンチマーク」、「CrystalDiskMark」だ。

 本機には「静」「初期設定」「パフォーマンス」と3つの動作モードが用意されているが、ここではパフォーマンスに設定してテストを行なっている。また、比較対象としてCPUに4コア/8スレッドのCore i7-11370H、GPUにGeForce RTX 3050 Laptopを搭載するASUSのノートPC「Vivobook Pro 16X OLED」を用意した。

付属アプリの「OMEN Gaming Hub」で動作モードを設定できる
【表】ベンチマーク結果
HP Victus 16-e0167AXVivobook Pro 16X OLED
PCMark 10
PCMark 10 Score6,1585,882
Essentials8,6939,134
App Start-up Score9,37913,437
Video Conferencing Score7,6927,018
Web Browsing Score9,1088,082
Productivity8,4299,013
Spreadsheets Score9,81010,230
Writing Score7,2447,942
Digital Content Creation8,6506,710
Photo Editing Score12,0278,160
Rendering and Visualization Score11,1107,385
Video Editting Score4,8445,014
3DMark
Time Spy7,9564,540
Fire Strike18,3359,935
Port Royal4,542405
Wild Life44,60016,348
Night Raid41,95618,609
Cinebench R23.200
CPU(Multi Core)10,8746,951
CPU(Single Core)1,4141,553
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
1,920×1,080ドット 高品質(デスクトップPC)16,56012,557
1,920×1,080ドット 最高品質16,24511,699
ドラゴンクエストX ベンチマーク
1,920×1,080ドット 標準品質20,95818,951
1,920×1,080ドット 最高品質20,93718,752
SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測
1M Q8T1 シーケンシャルリード3,496.873,552.98
1M Q8T1 シーケンシャルライト2,891.212,991.84
1M Q1T1 シーケンシャルリード2,258.392,311.75
1M Q1T1 シーケンシャルライト2,616.682,125.66
4K Q32T1 ランダムリ-ド567.53445.05
4K Q32T1 ランダムライト450.97421.36
4K Q1T1 ランダムリ-ド54.0567.35
4K Q1T1 ランダムライト123.72134.67

 PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動の「Essentials」で4,100以上、表計算/文書作成の「Productivity」で4,500以上、写真や映像編集「Digital Content Creation」で3,450以上が快適度の目安となっているが、すべて大幅に上回っている。特にDigital Content Creationの結果が優秀だ。

 ゲームに関しては、ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク、ドラゴンクエストX ベンチマークともにフルHD解像度かつ最高画質設定で十分快適にプレイできるスコアを出した。

 ストレージは、PCI Express 3.0 x4接続のNVMe SSDを搭載。シーケンシャルリードが3,496.87MB/s、シーケンシャルライトが2,891.21MB/sとPCIe 3.0 x4接続としては十分高速だ。ゲームのロード時間に不満を感じることはないだろう。

 動作モード別の性能もテストしておこう。3DMarkを実行したところ、スコアが高い順にパフォーマンス、初期設定、静となった。特に静モードは、ファンの音は非常に小さくなるがGPUの動作クロックを大幅に落とすので、3D性能はガクンと下がる。静かな場所で使うためのモードとし、ゲームをプレイする時はパフォーマンスにしておくのがよいだろう。

動作モード別のスコア

 ここからは、GeForce RTX 3060 Laptopの実力を見ていこう。人気FPSで144Hzの高リフレッシュレート液晶を活かせるフレームレートが出せるのか、グラフィックに凝った重量級ゲームがどこまで遊べるかチェックしたい。動作モードはすべてパフォーマンスモードに設定している。

 まずは、人気FPSの「レインボーシックス シージ」と「Apex Legends」から。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能で測定、Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動したさいのフレームレートを「CapFrameX」で計測している。

レインボーシックス シージの測定結果
Apex Legendsの測定結果

 レインボーシックス シージなら最高画質でも平均237fps、Apex Legendsでも平均166fpsと144Hzの高リフレッシュレートを十分活かせるフレームレートが出ている。Apex Legendsは画質を中程度まで落とせば、最小(1%)も169fpsまで上昇し、常に高フレームレートの維持が可能だ。FPSで勝ちを目指せる性能を持っていると言ってよいだろう。

 では、重量級と言えるゲームではどうだろうか。ここでは、オープワールドレースゲームの「Forza Horizon 5」、人気FPSシリーズの最新作「Call of Duty: Vanguard」、オープンワールドRPG「サイバーパンク2077」を用意した。

 Forza Horizon 5はゲーム内のベンチマーク機能で測定。Call of Duty: Vanguardはキャンペーンモードをプレイしたさいのフレームレートを、サイバーパンク2077は街中の一定コースを移動したさいのフレームレートをそれぞれCapFrameXで測定している。

Forza Horizon 5の測定結果
Call of Duty: Vanguardの測定結果
サイバーパンク2077の測定結果

 Forza Horizon 5は、レイトレーシングにも対応する美麗なグラフィックのレースゲームで、最高画質となるエクストリーム設定では快適なプレイの目安である平均60fpsに届かない。しかし、画質を1つ下げた最高設定なら平均75fpsまで上昇した。

 Call of Duty: Vanguardは、最高画質のウルトラ設定でも平均72.9fpsと快適なプレイが可能だ。

 発売から1年以上が経過しながら、2021年12月でも最重量級のゲームであるサイバーパンク2077だが、最高画質のレイトレーシング:ウルトラ設定(DLSSはバランス設定)でも平均56.1fpsとたまにカク付くシーンはあるものの、十分プレイできるフレームレートを出している。本機はフルHD解像度ということもあり、重量級ゲームも高画質で楽しむことが可能だ。

 ゲームプレイ中のCPU/GPUの温度とクロックもチェックしておこう。ここではサイバーパンク2077を10分間動作させたときの、CPU/GPUクロック、CPU/GPU温度を「HWiNFO 7.14」で追っている。

サイバーパンク2077を10分間動作させたときのCPU/GPUの温度
CPU/GPUのクロック

 CPUのクロックはゲームの状況によって大きく変化しているが、4.1GHzから4.7GHzで動作することが多い。GPUはほぼ1,710MHzで安定。設定上のブーストクロックは1,425MHzだが、ゲームプレイ時はそれ以上のクロックで動いているのが分かる。

 CPU温度は最大で94℃、おおむね80℃台だ。GPUはほぼ64℃前後としっかり冷えている。これだけの冷却力を確保しながら、ゲーミングノートとしては動作音がそれほど大きくない点は非常に評価したいところだ。

 CPUが8コア/16スレッドということでクリエイティブ性能もチェックしておきたい。ここでは「UL Procyon」のLightroom ClassicとPhotoshopで画像編集処理を行なう「Photo Editing Benchmark」とPremiere Proで動画編集やエンコード処理を行なう「Video Editing Benchmark」を実行した。

 ここでも比較用としてASUSのVivobook Pro 16X OLEDを用意した。クリエイティブ向けとして展開しているノートPCだけに比較対象としてはちょうどよいだろう。

【表】クリエイティブ用途でのベンチマーク結果
Victus 16-e0167AXVivobook Pro 16X OLED
UL Procyon Photo Editing Benchmark
Photo Editing5,6485,305
Image Retouching5,4085,733
Batch Processing5,8994,910
UL Procyon Video Editing Benchmark
Video Editing4,7243,935

 Photo Editing BenchmarkのImage Retouching以外は、すべてVictus 16-e0167AXのスコアが上回った。ゲーミングノートではあるが、クリエイティブ系の用途にも対応できるだけのスペックを持っているのが分かる。

カジュアル系ゲーミングノートと見せかけて汎用性バツグンの仕上がり

 8コア16スレッドのCPU、GeForce RTX 3060 Laptopの組み合わせは、FPSで高フレームレートが発揮でき、AAA級のタイトルも高画質で楽しめるだけの性能に加えて、クリエイティブ用途にも使えるパワーがあり、非常に汎用性の高いノートPCに仕上がっている。

 カジュアルなデザインから、仕事にも遊びにも使いやすく、Victusブランドはいきなりいい製品を投入してきたな、と素直に思ってしまった。

 なお、当初は2020年内発売とされていたが、来年3月までに販売開始予定というかたちで延期されてしまったようだ。世界的な半導体不足による影響かは不明だが、完成度が高いだけに早く登場することを切に願う。