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有機ELに見惚れるクリエイター向けノート!「Vivobook Pro 16X OLED」

ASUSのVivobook Pro 16X OLED。価格は21万9,800円

 ASUSからクリエイター向けノートPC「Vivobook Pro 16X OLED」が発売された。CPUに第11世代のCore i7プロセッサ、GPUにGeForce RTX 3050 Laptop GPUとスペック面に加えて、強烈なインパクトを与えるのが有機ELディスプレイの採用だ。圧倒的な色表現はそれだけで買う価値アリと思わせるほど。クリエイティブ作業をより快適にする独自の「ASUS DialPad」も面白い。さっそくレビューをお届けしよう。

Core i7-11370とRTX 3050の組み合わせ

 Vivobook Pro 16X OLEDは、CPUにIntelの第11世代CoreプロセッサCore i7-11370Hを採用。4コア8スレッド仕様でTurbo Boost時は最大4.8GHzまで動作クロックが上昇する。TDPは35WとモバイルCPUとしてはやや高めだ。

 メモリはDDR4-3200が16GB、ストレージはNVMe SSDが512GBとなっている。一般的な用途であれば十分だが、動画編集を考えるとやや心許ない。しかし、Thunderbolt 4ポートもあるので、高速な外付けストレージで対応は可能だ。

CPUは4コア8スレッドのCore i7-11370Hを搭載

 GPUにはGeForce RTX 3050 Laptop GPUを搭載。CUDAコアは2,048基、ビデオメモリはGDDR6の4GB。ブーストクロックはノートPCの設計によって異なり、本機では1,035MHzで電力は50Wとかなり抑えめの設定だ(GPUの仕様上ブーストクロック1,740MHzの電力80Wまで設定できる)。

 ゲーム向けではないので、GPUの性能追求というよりもクリエイティブ系アプリのGPU支援機能を活用するのが目的だろう。GPUのドライバーとしてクリエイター向けの「NVIDIA Studio Driver」が標準でインストールされていることからも分かる。

GPUにはモバイル向けのGeForce RTX 3050 Laptop GPUを搭載
電力は50W、ブーストクロックは1,035MHzに設定

 ASUSでは、メーカーの通常保証に加えて、製品購入後30日以内にMyASUSにユーザー登録すれば無料で加入できる「ASUSのあんしん保証」が付くのが特徴。これは有効期限は1年で、利用回数は1回だが、故障原因一切不問で送料、検証費、作業費、部品代の8割をASUSが負担し、ユーザーは2割の金額を負担するだけで修理が行なえるというもの。クリエイティブ向けということで、仕事で使う人も多いと考えられるモデルだけにこれは安心のポイントと言えるだろう。

【表】Vivobook Pro 16X OLEDの仕様
CPUCore i7-11370H(2.3GHz~4.6GHz)
メモリDDR4-3200 16GB
ストレージ512GB SSD
GPUGeForce RTX 3050 Laptop GPU
液晶3,840×2,400ドット表示対応16型
OSWindows 11 Home
インターフェイスThunderbolt 4、USB 3.0、USB 2.0×2、HDMI、microSDカードリーダ、Webカメラ、ステレオスピーカー、音声入出力端子
無線IEEE 802.11ax、Bluetooth
本体サイズ360.5×259×18.9~19.5mm(幅×奥行き×高さ)
重量約1.94kg

シンプルなデザインで幅広い用途に使える

 続いて、本体をチェックしていこう。シルバーを基調としたシンプルで無駄のないスッキリとしたデザインで、場所を選ばず使いやすい。本体の重量は公称で約1.94kgでサイズは360.5×259×18.9~19.5mm(幅×奥行き×高さ)と、16型の液晶を備えているだけにやや大きめだが、厚みがないのでスリムな印象を受ける。

 2kg近くと持ち運び向きではないが、バッテリ駆動時間は約14.2時間と非常に長く、モバイル用途にも対応が可能だ。このほか、米軍用のMIL規格準拠とスリムながらタフなボディになっている。

シルバーを基調としたスリムでシンプルなデザイン
ディスプレイは最大でここまで開く

主役は「有機EL」ディスプレイだ

 Vivobook Pro 16X OLEDで一番インパクトがあるのは「有機EL」ディスプレイを採用していることだろう。画面比率16:10で解像度は3,840×2,400ドットのWQUXGA。16:9の画面比率が主流だったノートPCだが、最近では縦方向の解像度をアップしてWebサイトや文書を見やすくするのがトレンドだ。

 有機ELは色の表現力に優れているのが強み。Vivobook Pro 16X OLEDもデジタルシネマ向けのDCI-P3色域100%、Windowsの標準的なsRGB色域133%、正確な色彩表現ができるPANTONE認証取得などにより、豊かな色彩表現に対応。まさにクリエイティブ向けと言える部分だ。

 コントラスト比は1,000,000:1、輝度500cd/平方mとどちらも非常に高く、加えて黒は0.005cd/平方mと完ぺきに近い黒を表現可能なので、一般的な液晶に比べて驚くほどメリハリの効いた画面になる。それは一瞬画面を見るだけで感じられるレベル。動画にしてもゲームにしてもあまりにもシャキッとした色表現にうっとりしてしまう。

 また、応答速度は0.2msとこの部分でも液晶に比べて優れており、ブレのない映像を楽しめる。そのほか、HDRにも対応する。

 有機ELは残像が焼き付きやすいのが弱点だが、アイドル状態が続くと特別なスクリーンセーバーを起動して発光による焼き付きリスクを減らす「Pixel Refresh」、ユーザーが気付かないレベルでピクセルをわずかに移動させて同じイメージの定着を減らす「Pixel Shift」といった機能を用意して対策を施している。

ディスプレイに有機ELを採用し、鮮やかな画面を実現
視野角も広く、横から見ても変化は非常に小さい
MyASUSアプリに有機ELの保護機能を用意している
リフレッシュレートは一般的な60Hz

 ディスプレイ上部には92万画素のWebカメラとマイクを内蔵、底面には2W×2のステレオスピーカーを搭載。周囲のノイズを抑えて音声をクリアにする「AIノイズキャンセリングマイク」、スピーカーから声以外のサウンドを除去する「AIノイズキャンセリングスピーカー」といった機能も用意しており、Web会議にも対応しやすい。

 インターフェイスは左側面にUSB 2.0×2、右側面にUSB 3.0、HDMI出力、Thunderbolt 4、microSDカードスロット、ヘッドセット端子を備える。

 また、無線LANはIntel AX201によるWi-Fi 6(最大2.4Gbps)に対応し、Bluetooth 5.1もサポート。付属のACアダプタは120Wでそれなりに大きい。またThunderbolt 4経由の充電に対応しているので、外出先でACアダプタがなくてもUSB Power Delivery(PD)の充電器を使って充電も可能だ。

ディスプレイ上部には92万画素のWebカメラとマイクを内蔵する。シャッター付きで物理的にカメラを隠すことも可能だ
ステレオスピーカーは底面に搭載
左側面はUSB 2.0×2のみ
右側面にUSB 3.0、HDMI出力、Thunderbolt 4、microSDカードスロット、ヘッドセット端子
ACアダプタは120W出力
ACアダプタの重量はケーブル込みで441g

Adobeアプリと相性のよい「ASUS DialPad」

 キーボードは、クセのない日本語配列で使いやすく、テンキーも備えているのでオフィスワークにも向いている。バックライトも内蔵しており暗い場所でも作業しやすい。

 ファンクションキーは標準だと、ミュート、音量調整、輝度調整、キーボードバックライトの調整、画面キャプチャといったホットキーとして動作するが、「Fn」キーと「Ecs」キーを押すことで従来のファンクションキー優先にサッと切り換えも可能だ。

キーボードは日本語配列
キーピッチは実寸で約19mm
テンキーも備えている
タッチパッドは実寸で130×85mm(幅×奥行き)と非常に広い
キーボードはバックライトを搭載

 特徴的なのが「ASUS DialPad」機能を備えたタッチパッドだ。右上の丸印から左下へとスワイプするとASUS DialPadがタッチパッドの左上に浮かび上がる。これは仮想的にダイヤル操作を実現するもの。

 ASUS DialPadの中央をタッチすると画面左上にメニューが表示され、割り当てられた機能を実行できる。例えば、システム音量を選べば、ASUS DialPadの周囲を指でなぞることでダイヤルを回すように音量の調整が可能、といった具合だ。

 本領を発揮するのがクリエイティブ系アプリとの組み合わせだ。Adobeのアプリと相性がよいとしているだけに、筆者が使う限り、PhotoshopやLightroom Classic、Premiere Proを起動すると、自動的にASUS DialPadへと様々な機能が割り当てられる。

 分かりやすいものとしては、Premiere Proの「時間軸の調整」だろう。ASUS DialPadの周囲をなぞることで映像をコマ単位で送ったり戻したりできるので、編集点を探すのに便利だ。

ASUS DialPadはタッチパッドの左上に表示される
ASUS DialPadの中央をタップすると画面にメニューが表示される
Premiere Proで「時間軸の調整」を選べば映像をコマ送りしたりと動画編集のジョグホイール的な使い方もできる

 付属の「ProArt Creator Hub」を使えば割り当てる機能や処理の変更もできる。マクロのように特定のキーボード動作を登録できるので、頻繁に使う処理を登録して作業の効率化を狙うといったことも可能だ。

 リアルなダイヤルほど滑らかな操作は難しいが、自分の作業にマッチしたショートカットを登録していける楽しさがある。このほか、Microsoftホイールデバイスとして動作させることにも対応しており、擬似的なSurface Dialとしても使える。

ProArt Creator Hubアプリを使えば割り当てる機能のカスタマイズが可能だ

ゲームも十分に楽しめる性能

 次にベンチマークで基本性能をチェックしてみよう。ベンチマークは「PCMark 10」、「3DMark」、「Cinebench R23.200」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「ドラゴンクエストX ベンチマーク」、「CrystalDiskMark」だ。

 本機には、ファン設定としてウィスパー、スタンダード、パフォーマンスと三つのモードが用意されているが、ここではパフォーマンスに設定してテストを行なっている。また、比較対象としてCPUには8コア16スレッドのCore i7-11800H、GPUにはGeForce RTX 3050 Laptop GPUを搭載するユニットコムのゲーミングノート「LEVEL-15FX150-i7-NASX」を用意した。

【表】各種ベンチマーク結果
Vivobook Pro 16X OLED LEVEL-15FX150-i7-NASX
PCMark 10
PCMark 10 Score5,8826,451
Essentials9,13410,240
App Start-up Score13,43714,566
Video Conferencing Score7,0187,819
Web Browsing Score8,0829,428
Productivity9,0138,891
Spreadsheets Score10,23010,703
Writing Score7,9427,386
Digital Content Creation6,7108,003
Photo Editing Score8,1609,753
Rendering and Visualization Score7,3859,641
Video Editting Score5,0145,452
3DMark
Time Spy4,5405,559
Fire Strike9,93511,823
Port Royal405673
Wild Life16,34830,829
Night Raid18,60940,929
Cinebench R23.200
CPU(Multi Core)6,95113,362
CPU(Single Core)1,5531,523
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
1,920×1,080ドット 高品質(デスクトップPC)12,55713,571
1,920×1,080ドット 最高品質11,69912,414
ドラゴンクエストX ベンチマーク
1,920×1,080ドット 標準品質18,95124,630
1,920×1,080ドット 最高品質18,75224,582
SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測
1M Q8T1 シーケンシャルリード3,552.98MB/s2,243MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト2,991.84MB/s1,160MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード2,311.75MB/s1,952MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト2,125.66MB/s1,159MB/s
4K Q32T1 ランダムリ-ド445.05MB/s558MB/s
4K Q32T1 ランダムライト421.36MB/s525MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド67.35MB/s72MB/s
4K Q1T1 ランダムライト134.67MB/s120MB/s

 PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動の“Essentials”で4,100以上、表計算/文書作成の“Productivity”で4,500以上、写真や映像編集“Digital Content Creation”で3,450以上が快適度の目安となっているが、すべて約2倍のスコアを出しており、一般的な用途で性能不足を感じることはないだろう。

 ゲームに関しては、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「ドラゴンクエストX ベンチマーク」ともフルHD解像度かつ最高画質設定で十分快適にプレイできるスコアを出している。

 ストレージは、シーケンシャルリードが3,552.98MB/s、シーケンシャルライトが2,243MB/sと十分高速。これならば大容量の映像ファイルでも快適にやり取りできる。

 クリエイター向けということで、実際にAdobeのアプリやMicrosoft Officeを使って様々な処理を実行して性能を測る「UL Procyon」の結果も掲載する。

【表】UL Procyonのベンチマーク結果(Vivobook Pro 16X OLED)
UL Procyon Photo Editing Benchmark
Photo Editing5,305
Image Retouching5,733
Batch Processing4,910
UL Procyon Video Editing Benchmark
Video Editing3,935
UL Procyon Office Productivity Benchmark
Office Productivity5,068
Word6,566
Excel4,221
PowerPoint6,067
Outlook3,038

 4コア8スレッドのCPUとGeForce RTX 3050の組み合わせと考えれば順当なスコアだ。ディスプレイが有機ELと美しいだけに、8コア16スレッドなどもうワンランク上のCPUを搭載して、少し高いスコアが出るとうれしいのだが……と思うのは贅沢すぎか。

 続いて、ゲームでの性能も試しておきたい。負荷の軽いタイトルして人気FPSの「レインボーシックス シージ」、負荷が重めのタイトルとして発売されたばかりのオープンワールドレースゲーム「Forza Horizon 5」を試して見た。なお、ゲームに関してはGPUのドライバーを「GeForce Game Ready Driver」に切り換えている。

ゲームプレイ時のFPS。レインボーシックス シージの場合
Forza Horizon 5の場合

 レインボーシックス シージはWQHD解像度でも最高画質で平均123fpsと、余裕で快適にプレイできるフレームレートを出した。一方で、さすがに4K解像度ではGPUのパワー不足で平均30fpsまで落ち込んでいる。

 Forza Horizon 5は重めのゲームなので解像度はフルHDだけでテスト。画質“高”でも平均56fpsと十分プレイできるフレームレートを出しており、ブーストクロックが抑えめ設定のGeForce RTX 3050ではあるが、フルHD解像度なら最新ゲームもそれなりに高画質で楽しめるだけのパワーはあると言ってよいだろう。

 最後に冷却力もテストしておこう。CPUとGPUの両方に大きい負荷がかかるゲーム「サイバーパンク2077」を10分間プレイしたときの、CPUとGPUの温度とクロックを「HWiNFO v7.14」でチェックしている。

サイバーパンク2077プレイ時のGPUとCPUの温度推移
CPUとGPUのクロック推移

 CPU温度は最大94℃まで達しているが、おおむね80℃台に収まっている。GPUは最大でも65.8℃とまったく問題の無い温度で、しっかりと冷えている。

 CPUの動作クロックはおおむね4.2GHzから4.7GHzで動作、GPUはほぼ1,740MHz動作となった。ゲーム中はブーストクロックの1,035MHz以上で動いているのが分かる。負荷がかかるとファンの騒音は大きめになるが、動作クロックが極端に落ちるシーンもなく、冷却力に不安なしと言ってよいだろう。

仕事でも遊びでも活躍できる美しきノート

 コントラストの効いたメリハリのある映像が楽しめる有機ELは、フォトレタッチや動画編集はもちろん、動画の視聴やゲームも楽しくなるディスプレイだ。ASUS DialPadで作業効率のアップを探るのも楽しく、仕事でも遊びでも活躍できる1台だ。CPUパワーがもう少しほしいところではあるが、画面の美しさを重視する人にとってはピッタリと言える。