Hothotレビュー

今までにないクリック感がゲームプレイも変える! 東プレ初のマウス「REALFORCE MOUSE」をレビュー

REALFORCEブランドに初のマウスが登場

REALFORCE MOUSE(3月19日発売、店頭予想価格19,000円前後)

 筆者は15年ほど前から「REALFORCE」のキーボードを使用している。自宅用に1台、ゲームプレイ用のテンキーレスを1台、さらにGAME Watchの記者時代に自腹で購入して会社に持ち込んだ1台で、3台とも全キー30gの軽荷重モデル。いずれも故障どころかキートップの文字のかすれすらなく、現役で使用している。

 REALFORCEの特徴は、静電容量無接点方式のスイッチによる独特なキータッチだ。物理的な接点がなく、バネを押し込むような機構になっているため、キーを押しはじめて底に当たるまで荷重の変化が滑らか。クリック感がなくリニアなタッチ、とも表現される。筆者はこのキータッチと、ほかにはない軽荷重モデルの存在、そして圧倒的な耐久性の高さから、REALFORCEシリーズを長らく愛用している。

 そのREALFORCEブランドから、これまでなかったマウス製品が発表された。この「REALFORCE MOUSE」は、REALFORCEの特徴である静電容量無接点方式のスイッチを、左右ボタンに採用している。同社は静電容量無接点方式のスイッチを採用したマウスは世界初としている。

 東プレは数年前からゲーミング向けのキーボード製品も手掛けており、マウスに目が向くのも必然ではある。ただキーボードとマウスはまったくの別物。またREALFORCEはおおむね2万円以上する高価格のキーボードだが、「REALFORCE MOUSE」も店頭予想価格が19,000円前後と、他社のハイエンドゲーミングマウスに並ぶ高価格となっている。

 たとえ筆者のようなREALFORCEファンのゲーマーでも、前情報なしで購入するのは少々躊躇するだろう。果たしてどんな製品に仕上がったのか、REALFORCEファンやゲーマーが納得できる製品になっているのか、筆者の目線でチェックしていきたい。

Made in Japanの軽量ゲーミングマウス

 まずは「REALFORCE MOUSE」のスペックを見ていこう。本機はREALFORCEブランドで初のマウスなので「REALFORCE MOUSE」と呼べば通じるが、今後のために製品型番「RFM01U11」も記しておく。

【表】REALFORCE MOUSE(型番 : RFM01U11)のスペック
解像度100~12,000dpi(10dpi刻み)
最大速度450ips(11.43m/s)
最大加速度50G
光学センサーPixArt PMW3360
スイッチ耐久性5,000万回
ボタン数6
本体サイズ(長さ×幅×高さ)122×67×42mm
インターフェイスUSB 2.0
ケーブル長約1.8m
重量約83g(ケーブル含まず)
店頭予想価格19,000円前後

 光学センサーはPixArt PMW3360を採用し、解像度は最大12,000dpiで、専用ソフトウェアを用いて100dpi刻みで調整可能。ソフトウェアなしの場合でも、ホイール手前のボタンで400/800/1,600/3,200の4段階に調整できる。またレポートレートは底面のスイッチで、125/500/1,000Hzの3段階で調整が可能だ。

 左右ボタンのスイッチの耐久性は5,000万回としている。一般的なスイッチと異なり物理的接触がないことから、非常に高い耐久性を実現するとともに、スイッチの劣化により発生するチャタリングを起こさないとしている。

 本体重量は約83gと軽め。ケーブルも直径2.8mmの極細ケーブルを採用するとともに、マウスの付け根部分をやや上向きにすることで、ケーブルからの反発動作や引っ掛かりが起こりにくいように配慮されている。

 なお本製品は、キーボードのREALFORCEシリーズ製品と同様、相模原事業所で生産する国内製造品だという。日本製のマウスというだけで、じつは結構めずらしい。

「IntelliMouse Explorer 3.0」に似ているがアレンジも多数

「IntelliMouse Explorer 3.0」風の外装

 では実物を見ていこう。形状は往年の名機「Microsoft IntelliMouse Explorer 3.0」とそっくりで、ホイールや左側面にある2つのサイドボタンの位置もほぼ同じ。裏面に楕円形のソールを使っているところまで同じだ。

 ただしサイズはひとまわり小さくなっており、とくに奥行きがかなり短くなっている。成人男性としてはやや小さめの筆者の手でも、マウスに手を乗せるような感じにはならず、手のなかにすっぽり納まってくれる。また本体色は黒で、LEDが仕込まれたREALFORCEの文字も見える。

 底面のセンサー位置は、本体のほぼ中央部。全体から受ける印象は、とてもオーソドックスに見える。REALFORCEブランドで最初のマウス製品だけに、奇をてらわずベーシックな仕様を求めたのだろうと思う。

 とは言え、古臭いというわけではない。小さめのサイズは日本人に合わせたものだし、軽量であることや、しなやかな極細ケーブル、側面のエラストマー素材による滑り止めなど、現代のトレンドをきちんと押さえ、マウスを使う人の目線に立って手を加えている。

 とくに軽量なことと、側面のエラストマー素材のおかげで、親指と中指で軽くつまむように持ち上げられるのが快適だ。サイズ的にはまだ小さいとまでは言えないが、がっしり掴んで使う必要はなく、好みの持ち方に合わせられる。

サイドボタンは左側面に2つ。エラストマー素材で滑り止め加工されている
右側面にはボタンはない。こちらも滑り止め加工済み
底面中央にセンサー。その右下にあるスイッチでレポートレートを切り替えられる
極細ケーブルで取り回しがいい

軽くて静か! 今までにないタッチの左右ボタン

見た目は普通のボタンだが、タッチは一般的なマウスとはかなり違う

 そしてもっとも注目したいボタン部分。一般的なマウスのボタンは、スイッチを押し込むときのはっきりしたクリック感と、カチカチという音がする。本機のボタンは擦過音のようなかすかな音がするだけで、抵抗なくスムーズに沈んでいく。

 筆者は静音仕様のスイッチとして、Kailh製のスイッチを採用したものを触ったことがあるが、あちらは音がほとんどないだけでなく、クリック感もほぼないため、押せているのかわからないような曖昧な手ごたえだった。それに対して、本機は少ないながらも底打ちのときのクリック感があり、入力の不安感がない。

 筆者が持っているREALFORCEキーボードの静音仕様に近いタッチだが、もっと静かでストロークも短い。REALFORCEの静音30g仕様を好む筆者としては、「なぜ今までのスイッチがなかったのか!」と言いたくなる。キーボードもマウスも静かになって、PCを使用中の雑音が大幅に減り、想像以上に快適だ。

 強いて言えば、筆者の好みではボタンはもっと軽くてもいい。現状でも軽いクリック感だが、そのおかげで疲れにくいかと言うと、数時間使ってみても差を感じるほどではない。とは言え筆者が好むキーボードの全キー30gというのも、多くの人には軽すぎて好まれないとも聞くので、いきなり超軽いタッチの製品を出す冒険は必要ないとも思う。

 マウスのボタンとしてはストロークは心持ち深めだが、違和感があるほどでもない。またスイッチの特性上、底打ちする前に入力を受けつけており、クリックの反応はむしろ速まっているように感じる。

 なおサイドボタンやホイールは一般的なスイッチを使用していると思われる。ホイールは左右のチルトがなく、前後回転とクリックができるもの。クリック音はあるが、ホイールを回す音はひかえめだ。サイドボタンのクリック音は比較的大きめながら低く響きにくい音質で、全体として静音にこだわった設計になっているのがわかる。

軽さ、持ちやすさ、静かさのすべてがゲームに恩恵を与える

本体の軽さと滑り止めのおかげで、持ち上げる操作がとても楽だ

 次はFPSのエイミングトレーニングソフト「Aim Lab」で、基本となる「Spidershot」をプレイし、操作感をチェック。筆者が普段使っているロジクール製の年代物「G9x」と交互に使用してみる。速度はどちらも2,000dpiに設定。

 「G9x」はかなりコンパクトなマウスなので、比較的大型になる「REALFORCE MOUSE」はちょっと動かしにくく感じる。ただ重量は30g近く軽いので、連続で的を狙っていると、だんだん軽量の「REALFORCE MOUSE」のほうが動かしやすく感じられてくる。

 スコアを見ると、「REALFORCE MOUSE」から「G9x」に持ち替えると必ず正確度が下がり、再び「REALFORCE MOUSE」を持つと正確度が上がる、というデータが見られた。後半に集中力が増してきたとき、軽さや持ち上げやすさが功を奏してか、思いどおりに狙えていると感じるのは「REALFORCE MOUSE」だった。

 ただ「REALFORCE MOUSE」を使用時に、思わぬところで2連射してしまうことが何度かあった。ボタンが軽く、リニアなタッチのため、焦って手に力が入ると無意識にボタンを押してしまっていることがあるようだ。慣れれば問題はなくなると思うが、やはり普通のマウスとはタッチが違うのを実感させられる。

 次にアクションゲームの「Diablo III」をプレイ。当たり前にプレイできるだけだろうな……と思って遊びはじめたのだが、驚くことにプレイ感がまったく違う。本作は移動や攻撃など多くの操作をクリックで行なうのだが、それらの音がほとんど聞こえないことで、ゲームの音が邪魔されない。

 敵との戦闘シーンでは派手なエフェクトと大きな音が出るのだが、それ以外のタイミングではむしろ静まり返るという、ホラー系の怖さがある。しかし実際にはつねにカチカチカチカチとクリック音がしており、プレイヤーとしても何ら違和感を持っていなかった。

 本機でプレイすると、ゲームの静かなシーンをそのまま体験できる。もう何年も前に出たゲームだが、「こんなにサウンドのメリハリが効いたゲームだったのか」と今更気づかされた。一言で言えば、ゲームへの没入感がまったく違う。

 ほかにもFPSなどの対戦ゲームでは、敵の位置を音の情報から知ることもできる。そこで本機のように静かなマウスを使えば、音への集中力を高められるだろう。もっとも、一般的なマウスでもヘッドセットで大音量を出してしまえばいいのだろうが、筆者のようなヘッドセット嫌い派としては、本機の静音性は本当にありがたい。

「Aim Lab」の3周目のスコア比較。普段使っている「G9x」にも問題は感じない
「REALFORCE MOUSE」に持ち替えると、必ず正確度が上がった

わかりやすさ重視のカスタムツール

6つのボタンのうち、左右ボタン以外の4つにはさまざまな機能を割り当てられる

 本機の機能をカスタマイズするツール「REALFORCE Software」も用意されている。

 「Button」タブでは、左右ボタンの入れ替えと、ホイールやサイドなど残り4ボタンの機能変更ができる。ボタンの機能にはマクロという項目もあるが、Ctrl+CやAlt+F4といったショートカットキーの一部が設定できるのみで、ユーザー独自のコマンドを保存できるわけではない。

 「LED」タブは、本体のロゴとインジケータに内蔵のLEDの色と輝度を調整できる。色は7色から選択でき、輝度は3段階に調整できる。ただ輝度を一番低くしてもロゴの光り方はかなり明るく、動作確認用として光らせるだけならもう少しひかえ目な設定がほしい。なおロゴとインジケータを個別に光らせない設定も可能なので、小さいインジケータだけを光らせる手はある。

 「Sensor」タブは速度とリフトオフ・ディスタンスの設定ができる。速度は100dpiから12,000dpiまで100dpi刻みで設定可能。リフトオフ・ディスタンスはLowとHighの2段階に調整できる。

 設定が済んだら、画面右上にあるボタンでマウス本体に保存できる。記憶できるプロファイル(設定)は1つだけで、複数のプロファイルをマウス側で切り替えたりはできないが、「REALFORCE Software」上でプロファイルの保存、読み込みはできる。

 ゲーミングマウス用のツールとしてはさほど機能は多くないが、最低限必要な機能は押さえてある。またタブ切り替えで見た目にわかりやすいUIになっているのも評価できる。

LEDの色や明るさを変更できる。ただ輝度を最低にしても結構明るい
速度とリフトオフ・ディスタンスを設定可能

ゲームにもデスクワークにも、集中を妨げない静音マウス

 本機の特徴を改めてまとめると、静かで高耐久なボタン、比較的軽量な筐体、オーソドックスながら日本人に合わせた形状、といったところ。なかでもボタンは仕組みも手触りも、本機以外にはない斬新なものだ。

 おすすめしたいのは、まずは静かなマウスを探している人。ゲームサウンドの邪魔をしないというのもあるし、デスクワークに少しでも集中したい人にもいい。一般的なマウスがいかにカチカチとうるさいかが、本機を使うと本当によくわかる。

 また高耐久性のスイッチも期待できる。静電容量無接点方式のスイッチを搭載したマウスは初とは言え、REALFORCEブランドのキーボードで高耐久性は証明されている。単純になかなか壊れないだけでなく、チャタリングが発生しないと謳っているのは、ゲーマーにとっては注目に値する。

 あとはそういったメリットでもって、19,000円前後という価格に納得できるかどうかだ。キー以外に故障しうる場所がないキーボードはいいが、マウスは左右ボタンだけでなくホイールやサイドボタンも壊れるし、動きが大きければケーブルの断線も起こりやすくなる。ソールが削れて滑りが悪くなることもあるが、これは「IntelliMouse Explorer 3.0」の交換用ソールが流用できそうに見えるのでまだいい。

 あまりサイドボタンやホイールを多用しないゲームであればさほど心配はないし、激しい動きが少ないデスクワークなどでも不安はない。また普段から比較的高価なゲーミングマウスを使っていて、チャタリングに悩まされて買い替えることが多い人は、本機を一度試してみる価値はある。

 マウスのタッチは大きく好みが分かれるのは間違いないが、筆者は数時間の使用のうちに慣れてしまった。もし本機の導入に対する不安がタッチの違いだけなのであれば、怖がらずに使ってみることをおすすめしたい。ベーシックなデザインを採用しており、用途を問わず活躍できるので、買って後悔しにくい製品であることは間違いない。

 そして筆者がREALFORCEの全キー30gのキーボードを愛用しているように、「このマウスじゃないとダメ」という人を多く生みそうな予感がある。この先もREALFORCEシリーズのマウスを見てみたい、という期待を抱かせる1台だ。