Hothotレビュー
スマホが生活必需品となった中国で6.9型の「Xiaomi Mi Max 3」を試す
2019年2月9日 06:00
2019年1月末に従兄弟の結婚式に参列するため、中国に行く機会があったのだが、そのさいにGearbestより提供いただいたXiaomiの6.9型液晶搭載スマートフォン「Mi Max 3」を試す機会があったのでご紹介したい。
急激なデジタルトランスフォーメーションでスリが“廃業”に追い込まれる中国
いまや中国で生活するうえで欠かせないのがツールがスマホだ。その重要性は、もはや単なる“モバイルできるコミュニケーションツール”という枠をとっくに超え、生活必需品となっている。
たとえば、買い物するさいの決済はもちろんスマホで行なう。大半がAliPayかWeChat Payだ。日本でスマホ決済というとあくまでもオプション的な位置づけで、対応するか否かは店次第といったところだが、中国では店舗を構えず道端で商売する人ですらスマホ決済に対応している。そうした道端の商人から買い物するさいに現金を出すと、「釣り銭はないけど、いいか?」と言われるぐらいだ。
身分証や運転免許証の類も、いまやスマホのアプリに統合されている。こういった証明書類は、基本的には1つの番号もしくIDでしかないので、そのIDと顔が一致すればよく、カードなどのかたちで物理的に存在しなくても良いのだ。中国ではあらゆるシステムが政府のシステムにネットワークで接続しているため、身分を明らかにする必要があるシーンにおいて、番号さえ提示できれば良い。だからそのIDを覚えてくれるスマホさえあれば良いのである。
深センなどの都市部のレストランでは、紙のメニューを見て店員を呼んで注文するのではなく、机に貼られたQRコードをスマホで読み取り、飛んだ先のサイトで注文すると料理が運ばれてくる仕組み。もちろん決済もスマホである。ケンタッキーなど日本人にとってお馴染みのチェーン店でも、アプリで注文/決済してカウンターで料理を受け取るだけのシステムを導入しており、実質待ち時間はゼロになっている。
ちなみに、お金の電子化によって“廃業”に追い込まれたのがスリである。人の財布をこっそり盗んでも、そこには現金が入っていない。かと言ってスマホを盗めば良いというわけでもない。財布が盗めるとしたらスマホ決済に慣れていない年寄りだが、そんな人の財布には端金しか入っていない。しかも中国の公共場所は、あらゆる場所に監視カメラがあって逃げ場はないので、スリはほぼ根絶してしまったのだ。
日本にいると、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉は、生産性云々、ビジネス云々に使われることが多く、自分たちの生活にあまり関係ないイメージが強い。しかし本来、デジタルトランスフォーメーションは「ITがあらゆる面で生活を良い方向に変化させる」ことである。このデジタルトランスフォーメーションが、この2~3年のあいだに中国で急激に行なわれたわけだが、あらゆる面で利便性が向上し、社会の安全性が向上したのは言うまでもない。
そのデジタルトランスフォーメーションのキーとなっているのが、スマホというわけである。だから中国では2017年~2018年にかけて、スマホのデザインや性能、機能面が大きく邁進したのだ。日本に大きく進出したHuaweiやOPPOといったメーカーはもちろんのこと、今回レビューするXiaomiもその1つだと言っていい。
Mi Max 3の大容量バッテリや大画面が頼もしい
従兄弟の結婚式で1週間の滞在が決まり、そのさいに中国で使えるスマホとして、Mi Max 3をレビューしたいと願い出たのは筆者のほうである。その理由の1つ目が大容量バッテリ。本機は5,500mAhのバッテリを内蔵しており、ほぼ2日間の利用が可能とされているからだ。
筆者が今回訪れたのは広東省興寧市で、父親の故郷である。SIMにはChina Unicomの香港ローミングSIMを利用した。親戚もキャリアとしてChina Unicomを使っているため、ある程度実績はあるのだが、いかんせん父親の実家はかなり田舎のほうであり、信号に不安があったため、大容量バッテリに越したことはないと思った次第だ。
もう1つの狙いは大画面。老眼がかなり進んでいる70歳の伯父や86歳祖母に、娘の写真などを見せるのに、6.9型画面のMi Max 3のほうが有利だと思ったのである。
結論から言ってしまうと、Mi Max 3は期待に応えてくれた。5,500mAhの大容量バッテリは1日の使用ではなんら問題なく、寝ているあいだに満充電にしておけば、その日はバッテリを心配する必要はまったくなかった。農村部に行くと、電波のつかみが悪いためか若干バッテリ消費が増加する印象だが、たとえ夜充電しなくても、通常の利用頻度であれば2日目も難なくクリアできる。2日の利用で20%を下回っても、10%を切ることはなかった。
大画面も役に立った。伯父や祖母に娘の写真を見せたり、娘とビデオチャットをさせてみたところ、しかめっ面で画面を凝視することなく、自然に楽しく会話できた。画面が大きいことは、やはりいいことだ。
片手運用は難しいが、思った以上に持ちやすい
紹介する順序が逆となってしまったが、パッケージはこれまでのXiaomi製品と同様にシンプルなものである。これまで筆者がレビューした「Mi 6」や「Mi MIX 2S」といった上位モデルと唯一違う点は、ケースが付属しないところ。ただ本機は金属筐体のため、ガラス筐体のMi 6やMi MIX 2Sほどデリケートではなく、多少ラフに扱っても大丈夫という印象を受けた。
また、Mi 6やMi MIX 2Sは、その素材ゆえ、裸のまま平らでないところに置くと、すぐに滑り落ちてしまったのだが、Mi Max 3は非常に安定しており、滑り落ちる心配をしなくて済む。
画面は6.9型というほぼ7型に近いサイズだが、解像度は2,160×1,080ドットということで、アスペクト比は18:9と縦に長い。このため、16:9の一般的な7型タブレットほど広くはない印象である。16:9のコンテンツを表示させても、左右に大きく黒帯が生じるため、6.9型という数字ほどのインパクトはない。とは言え、通常のアプリの利用や、ゲームをプレイする分には、やはり広く感じられる。
大画面によって懸念されるホールド感だが、アスペクト比が18:9で狭額縁設計ということもあり、思った以上に持ちやすい。側面から見ると、液晶パネル面がバスタブ構造の背面カバー面からかなり浮いており、「もうちょっと薄ければなぁ」と思われるかもしれないが、背面カバーのエッジ部が緩やかなラウンド形状になっているため、見た目以上に薄く感じられ、オッと思わせるほどだ。
ただ、筆者の手は大きいほうだが、片手だけでの操作は難しく、ほとんどのシーンでは両手で操作しなければならなかった。これはサイズゆえに仕方ないところである。やや気になるのは電源ボタンの位置と軽さで、ヒョンなことですぐに押下してしまう。個人的には、音量ボタンの上部に配置して、もう少し硬さがあっても良かったのではないかと思う。
カメラ画質やスピーカーの音量は少し残念
液晶はNTSC比84%の色域が謳われているが、確かに鮮やかで美しい、Mi MIX 2Sの液晶に比べると黒が浮いており明るめな印象だが、本機が3万円前後のモデルだと考えれば十分満足のいく仕上がりだ。
背面カメラは画素サイズが1.4μmの1,200万画素+500万画素デュアルレンズカメラを搭載し、絞りはF1.9とされている。低価格帯のスマートフォンでは開ループ方式によるAFが一般的だが、本機は閉ループを採用し、高速なAFが可能だ。昼間のみならず夜間の撮影も試してみたが、確かにAF速度が気にならず、サクサク撮影できた。
こうしたコダワリがある一方で、画質はちょっと残念なレベル。ノイズは少ないが全体的にのっぺりしているし、全体的に明るめに撮れるので人物の場合はいいのだが、明暗差があるシーンだとすぐに白飛びしてしまうのが気になった。
また、近景は問題ないが、遠景は「ホントにピントがあっているのか?」と思えるほどボケてしまう。感覚的には、2m先にピントが合ってて、そこから先は「パンフォーカスにお任せします」的な印象だ。もしかしたら筆者が所持している個体の問題かもしれないし、ソフトウェアのバグなのかもしれないが、仮に後者である場合は改善の余地があるだろう。とは言え、本機はそこまでカメラ性能について注力した製品でないため、致し方ないところでもある。
筐体が大きいためスピーカーの音も大きめ……と思ったのだが、これも予想に反してやや物足りない印象だった。というのも、ビデオチャットのさいに音量を最大にしても、会話している人が多い家のなかや、人や車が行き交う街のなかで、相手の声を聞き取りにくかったからだ。
中国人は比較的大声で会話することが多いせいかもしれないが、中国メーカー製だからこそそこを配慮してもらいたかったところである。とは言え、Xiaomiはすでにこの問題を認識しているようで、Mi Max 3よりあとにリリースされたMi MIX 3では、最大音量時でも再度音量+ボタンを押すと、音量をさらに27%引き上げる機能が搭載されている。願わくばMi Max 3にも実装してもらいたいところである。
MIUI 10実装もAndroid 8.1どまり。性能はミドルレンジの域
本機は当初、Android 8.1ベースのMIUI 9を搭載して出荷されたのだが、のちにMIUI 10をベースとしたものにアップグレードされた。ちなみにフラグシップモデルのMi MIX 2Sでは、MIUIが9から10になったタイミングでAndroid 8.1から9へアップグレードされたのだが、Mi Max 3はAndroid 8.1ベースのままMIUI 10となっている。
そのため、MIUI 10の特徴である自然の音を利用した通知音や、フル画面ジェスチャー、縦方向にスクロールするタスクスイッチャーなどは実装されている。MIUIは設定画面や通知領域を含むかなり深い部分までカスタマイズが入っているため、筆者はAndroid 8.1なのか9なのかをあまり意識する必要がなかった。
性能の参考としてAntutu Benchmarkを実施してみたが、119,764というスコアを記録した。Snapdragon 845搭載のフラグシップ端末の多くが30万近いスコアをマークしているため、どうしても見劣りしてしまうが、ストレージの違い(eMMC vs UFS)やGPU性能の違いを考慮すれば妥当だろう。
実際に使用してみると、WebブラウジングやSNS、軽めの3Dゲーム、動画視聴程度なら難なくこなせる印象だった。唯一、microSDカードに写真を保存するに設定すると、ギャラリーやカメラの写真プレビュー、アプリ内での写真の選択で若干もたつく印象があったのだが、これは筆者が利用したmicroSDの性能が低い可能性もある(とは言え、一応は64GBのSanDisk Ultraなのだが……)。
中国に頻繁に行く機会があるなら備えておきたいセカンドスマホ
残念ながら、本機も日本国内で無線関連の機能を合法的に使える技適に準拠していないので、日本国内においてはメインのスマホになりえないのだが、中国に行く機会があるのなら備えておきたい機種である。
というのも、一応、冒頭のほうで筆者が挙げたChina Unicomの香港ローミングSIMは、中国の情報規制に引っかからず、FacebookやTwitter、YouTube、Googleのサービスはひと通り問題なく使えるのだが、それらが中国の事情に適しているかどうかと言われれば別。中国で地図を見るなら「高徳地図」、日本語から中国語への翻訳変換を使うなら「百度輸入法」、そして電子決済するなら「WeChat」ぐらいは入れておいたほうがいい。ただ、これらのアプリを利用するさいは、住所録や端末の位置など、センシティブな情報へのアクセスが求められるため、国を跨いだプライバシー保護の観点から、普段日本で使い慣れている端末にインストールすることは、積極的におすすめしにくいからだ。
先述のとおり、中国のスマホアプリは基本的にプライバシーを犠牲にする代わりに、利便性向上を図るサービスを充実させているわけだが、日本や欧米諸国のユーザーはこの傾向を嫌うだろう。しかしこうしたアプリを利用しないと、中国国内ではかなり不便であることには変わりなく、それならば中国国内で利用するためのセカンドスマホを用意しておいたほうがいい、というわけだ。
Mi Max 3が中国国内で使うセカンドスマホに適している理由は、一にも二にも5,500mAhの大容量バッテリ。言葉が通じず見知らぬ土地なら、必然と翻訳や地図、カメラといったスマホの出番が増えるはずで、そういった意味でも大容量バッテリは心強い。一方で大画面は、人を選ぶと思うが、ほぼ7型タブレットの代わりになると言え、大画面で動画コンテンツを消費したいニーズにもある程度応えられる。そういう意味でもMi Max 3は心強い味方だ。