Hothotレビュー

Quadro P3000搭載の15.6型モバイルワークステーション「MousePro NB9」

~4コアCore i7とWindows Hello対応指紋センサーを搭載

MousePro NB9

 株式会社マウスコンピューターから登場した「MousePro NB9」は、15.6型液晶搭載のモバイルワークステーションである。

 モバイルワークステーションは、3D CADやCAEなど、CPUやGPUに負荷がかかるアプリケーションに最適な製品であり、HD動画の編集などを行なうクリエイターにも向いている。

 MousePro NB9は、搭載メモリやストレージなどの違いによって、4モデルが用意されているが、ここでは最上位の「MousePro-NB991Z-M2-1710」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

モバイルワークステーションとしてはスリムで軽いボディを実現

 まずは、MousePro NB9の外観から見ていこう。筐体は、直線を基調としたシンプルでオーソドックスなデザインである。天板やキーボード面には金属素材が採用されており、質感も高い。

 本体サイズは、380×255×24.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約2.2kgであり、モバイルワークステーションとしては、かなり薄くて軽い部類だ。もちろん、つねに携帯するためのマシンではないが、持ち運んでクライアントの前でプレゼンをしたり、打ち合わせをするにも向いている。

MousePro NB9の上面。シンプルなデザインで、質感も高い
MousePro NB9の底面
MousePro NB9の試用機の重量は、実測で2.199kgであった

32GBメモリやQuadro P3000搭載など、モバイルワークステーションならではの高性能

 モバイルワークステーションは、その用途上、一般のノートPCよりも高いスペックが求められる。MousePro NB9は、全モデルがCPUとしてCore i7-7700HQ(2.8GHz)を搭載する。

 Core i7-7700HQは、4コアの第7世代Coreプロセッサであり、Hyper-Threadingテクノロジにより、最大8スレッドの同時実行が可能である。また、動作クロックも定格は2.8GHzだが、TurboBoostテクノロジーにより最大3.8GHzで上昇する。

 一般的なノートPCに搭載されているCore i7は、ほとんどが2コアであり、シミュレーションなどのCPU負荷の高い作業では性能不足を感じることもあるが、4コアCPU搭載のMousePro NB9なら余裕がある。

 モバイルワークステーションと通常のノートPCの最大の違いは、搭載GPUにある。通常のノートPCでは、CPU内蔵GPUを利用するか、外付けGPUを使う場合も、NVIDIAならGeForceシリーズを搭載しているが、モバイルワークステーションでは、ワークステーション用GPUを搭載するのが一般的だ。

 NVIDIA製品の場合、Quadroシリーズがワークステーション用GPUとなる。QuadroシリーズとGeForceシリーズは、どちらも基本アーキテクチャは同じだが、ドライバの最適化対象が異なり、Quadro用ドライバはOpenGLベースの3D CADソフトや動画編集ソフトなどに最適化されているのに対し、GeForce用ドライバはDirectXベースのゲームソフトに最適化されている。そのため、OpenGLベースのソフトでは大きな性能差が出ることがある。

 また、Quadroでは「NVIDIA Mosaic」と呼ばれるマルチディスプレイ技術が搭載されており、最大8画面まで(製品によって異なる)のマルチディスプレイ出力が可能だが、GeForceでは最大4画面までとなる。MousePro NB9では、GPUとしてQuadro P3000が搭載されている。

 Quadro P3000は、Pascal世代のモバイルワークステーション向けGPUであり、1,280個のCUDAプロセッシングコアを内蔵、ビデオメモリは6GBである。NVIDIAのモバイルワークステーション向けGPUとしてはミドルハイに位置する製品であり、負荷の高い作業も快適に行なえる。また、MousePro NB9では、Mini DisplayPort×2とHDMI×1を備えており、本体の液晶とあわせて、4画面出力に対応することも魅力だ。

 メモリはモデルにより容量が異なり、今回試用した最上位モデルでは、32GBの大容量メモリが搭載されている(下位モデルでは16GBまたは8GB)。

 薄型ノートPCでは、最大メモリが8GBでそれ以上増設できない製品も多いが、大規模なデータを扱うシミュレーションや高解像度動画の編集などは、メモリを多く消費するため、8GBでは足りないことが多い。32GBあれば、そうしたアプリケーションでも十分であろう。

 またストレージとしては、M.2の512GB SSDと、2.5インチの960GB SSDを搭載する、贅沢な仕様となっている。

 M.2 SSDは、NVMe対応(PCI Express x4接続)であり、非常に高速な転送を実現している。2.5インチSSDは、SATA 6Gbps接続であるが、データやアプリケーションの保存には十分な速度であろう(NVMe対応SSDがCドライブ、SATA 6Gbps接続SSDがDドライブとなっている)。

 そのほかのモデルでは、M.2 256GB SSD+1TB HDDや、480GB SSDのみ、500GB HDDのみという構成になっている。

試用機のデバイスマネージャーを開いたところ。試用機にはSamsung製M.2 SSDとSanDisk製2.5インチSSDが搭載されていた

キーボードやタッチパッドの操作性も良好

 キーボードは、テンキー付きの全107キーで、キーピッチは約18mm、キーストロークは約1.8mmである。キー配列は標準的だが、右側の「ろ」やSHIFTキーはややキーピッチが狭くなっている。また、カーソルキー周りに空間がなく、埋没した印象を受ける。

 剛性感は十分で、キータッチも良好だ。また、キーボードにはLEDバックライトが搭載されており、暗いところでも快適にタイピングが行なえる。キーボードバックライトの明るさは5段階に変更できる。

 ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されている。タッチパッドのサイズは、108×62mmと大きめである。最近では珍しく、独立したクリックボタンが用意されているので、ドラッグ&ドロップなどの操作もしやすい。タッチパッドの左上には、指紋センサーが搭載されている。

アイソレーションタイプのテンキー付きキーボードを採用。キーピッチは約18mmで、キーストロークは約1.8mm。配列は標準的だが、カーソルキー周りがやや窮屈な印象を受ける
キーボードにはLEDバックライトが搭載されている
ポインティングデバイスとして、タッチパッドが採用されている。パッドの左上には、指紋センサーが用意されている。クリックボタンがパッドと別に用意されているので、操作性は良好だ

15.6型非光沢フルHD液晶を搭載

 液晶は15.6型で、解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)である。解像度は標準的だが、非光沢仕様で外光の映り込みが少ないため、長時間使っても目の疲れが少ない。タッチ操作には非対応だが、モバイルワークステーションの用途を考えると、とくに問題とはならないだろう。発色やコントラストについても不満はない。

 液晶上部には、200万画素Webカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。

液晶は15.6型で、解像度は1,920×1,080ドット。タッチ操作には非対応だ
液晶上部に200万画素Webカメラを搭載している

Windows Hello対応の指紋センサーでセキュリティも安心

 また、タッチパッド左上にWindows Hello対応の指紋センサーを搭載しており、Windowsのログオンなどを指1本で行なえるのも便利だ。

 ここ数年、指紋センサーは認識精度、速度ともに大きく向上しており、認識エラーなどでイライラさせられることはない。モバイルワークステーションは、業務で使われることが多く、セキュリティが重要になるが、指紋センサーを搭載したMousePro NB9なら安心して利用できる。

タッチパッド左上にタッチ式の指紋センサーを搭載しており、このように指をセンサーに載せるだけで、指紋認証が可能だ

ディスプレイ出力を3系統備えるなどインターフェイスも充実

 MousePro NB9は、インターフェイスも非常に充実している。

 HDMIポートとMini DisplayPort×2を装備し、本体液晶とあわせて4画面同時出力が可能なほか、USB 3.1 Type-C×2とUSB 3.0×3、SDカードリーダー、Gigabit Ethernet、ヘッドフォン端子、マイク端子も用意されている。USBポートは合計5ポートで、右側にも1ポート用意されているので、マウスをつなぐ場合などに便利だ。

 無線機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LAN機能とBluetooth 4.2を搭載。ACアダプタは150W仕様で、一般的なノートPCに比べると2~3倍程度の出力だが、薄型なため、それほどかさばらないことも評価できる。

 公称バッテリ駆動時間は、約6.3時間とされている。そこで、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス(IEを利用)、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、5時間58分という結果になった。モバイルワークステーションは、電源のとれない場所で使う場面は少ないので、十分であろう。

左側面には、HDMIポートとMini DisplayPort×2、USB 3.1 Type-C×2、USB 3.0×2が用意されている
左側面のポート部分のアップ
右側面には、USB 3.0ポートとSDカードスロット、Gigabit Ethernet、マイク端子、ヘッドホン端子が用意されている
右側面のポート部分
付属のACアダプタ
ACアダプタの裏側
ACアダプタの出力は150Wと大きいが、比較的薄いので携帯しやすい
ACアダプタ(ケーブル込み)の重量は実測で652gであった

ワークステーション向けベンチマークテストも高速

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー XIV 紅蓮のリベレーターベンチマーク」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。

 比較用として、製品カテゴリは違うが、ASUS「B9440UA」、Microsoft「Surface Laptop」、LG「LG Gram 15Z970-GA55J」、HP「HP Elite Slice」、Lenovo「ThinkPad X1 Carbon」の値も掲載した。

 CrystalDiskMarkに関しては、NVMe対応のCドライブと、SATA 6Gbps対応のDドライブのそれぞれについて計測を行なった。結果は下の表に示したとおりで、一般的なノートPCに比べてはるかに高い性能を持っていることがよくわかる。Cドライブは非常に高速であり、シーケンシャルリードで3,455MB/sという速度を叩きだしている。実際の使用感も非常に快適であった。

 また、ワークステーション向けベンチマークテストの「CINEBENCH R15」と「SPECviewperf 12.1」もあわせて計測したが、こちらも高スコアであった。

比較製品のCPU/GPU仕様
製品仕様MousePro NB9B9440UASurface LaptopLG Gram 15Z970-GA55JHP Elite SliceThinkPad X1 Carbon
CPUCore i7-7700HQ(2.8GHz)Core i7-7500U(2.7GHz)Core i5-7200U(2.5GHz)Core i5-7200U(2.5GHz)Core i7-6700T(2.8GHz)Core i7-6600U(2.6GHz)
GPUQuadro P3000Intel HD Graphics 620Intel HD Graphics 620Intel HD Graphics 620Intel HD Graphics 530Intel HD Graphics 520
ベンチマーク結果
製品MousePro NB9B9440UASurface LaptopLG Gram 15Z970-GA55JHP Elite SliceThinkPad X1 Carbon
PCMark 8
Home conventional3,3462,5092,5182,7143,2622,635
Home accelerated3,9653,2563,0243,3303,5803,176
Creative conventional3,3382,6842,6582,7473,3962,691
Creative accelerated4,9394,0543,8854,1034,5503,890
Work conventional3,4553,0102,7253,1253,4622,928
Work accelerated5,1444,5403,7892,5344,7304,063
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K
1280×720ドット 最高品質17,5835,5566,6225,1456,5956,796
1280×720ドット 標準品質17,8626,1397,2546,3477,1536,844
1280×720ドット 低品質18,6037,1328,3527,2038,3466,851
1920×1080ドット 最高品質16,6843,1853,9882,6093,2303,109
1920×1080ドット 標準品質16,7724,1354,9253,5344,1484,256
1920×1080ドット 低品質18,1374,4825,9764,1474,9275,835
ファイナルファンタジーIXV 紅蓮のリベレーターベンチマーク
1280×720ドット 最高品質12,7861,3321,844未計測
1280×720ドット 高品質(デスクトップPC)13,1611,4431,947未計測
1280×720ドット 高品質(ノートPC)14,0752,2242,554未計測
1280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)14,9342,8853,373未計測
1280×720ドット 標準品質(ノートPC)14,8852,8703,395未計測
CrystalDiskMark 5.1.2
シーケンシャルリードQ32T13455MB/s(Cドライブ)、555.5MB/s(Dドライブ)531.3MB/s648.0MB/s547.8MB/s550.7MB/s2592MB/s
シーケンシャルライトQ32T11622MB/s(Cドライブ)、456.4MB/s(Dドライブ)462.8MB/s241.7MB.s383.2MB/s515.1MB/s1533MB/s
4KランダムリードQ32T1530.8MB/s(Cドライブ)、147.3MB/s(Dドライブ)246.3MB/s105.0MB/s277.2MB/s316.0MB/s545.9MB/s
4KランダムライトQ32T1436.0MB/s(Cドライブ)、281.5MB/s(Dドライブ)270.1MB/s41.00MB/s264.0MB/s298.6MB/s251.7MB/s
シーケンシャルリード1648MB/s(Cドライブ)、518.1MB/s(Dドライブ)504.6MB/s401.2MB/s500.2MB/s481.1MB/s1854MB/s
シーケンシャルライト1366MB/s(Cドライブ)、423.2MB/s(Dドライブ)416.1MB/s231.8MB/s386.1MB/s454.6MB/s1528MB/s
4Kランダムリード40.73MB/s(Cドライブ)、20.21MB/s(Dドライブ)27.75MB/s6.660MB/s21.95MB/s28.29MB/s53.99MB/s
4Kランダムライト155.4MB/s(Cドライブ)、61.91MB/s(Dドライブ)103..5MB/s36.00MB/s72.80MB/s58.61MB/s164.5MB/s
CINEBENCH R15
OpenGL98.15fps未計測
CPU747cb未計測
SPECviewperf 12.1
3dsmax-0593.98未計測
catia-0491.52未計測
creo-0185.02未計測
energy-018.88未計測
maya-0464.3未計測
medical-0135.31未計測
showcase-0150.52未計測
snx-0279.49未計測
sw-03108.62未計測
CINEBENCH R15の実行結果

性能とコストパフォーマンスの高いモバイルワークステーション

 MousePro NB9は、最新の高速CPUとGPUを搭載しながら、モバイルワークステーションにありがちな無骨さのない、スマートなボディを実現している。

 今回試用した、最上位モデルの税別価格は329,800円だが、最近価格が高騰しているメモリを32GB搭載し、合計約1.5TBのSSDを搭載していることを考えると、コストパフォーマンスは悪くない。

 さらに、Windows Hello対応の指紋認証機能を搭載しており、モバイルワークステーションとしての完成度は十分だ。

 3D CADやシミュレーション、高解像度動画の編集などを頻繁に行なう、エンジニアやクリエイターにはとくにお勧めしたいマシンだ。また、そこまでの性能は不要だという人には、メモリ16GB、SATA 6Gbps対応480GB SSDを搭載して、税別249,800円の「MousePro-NB991Z-SSD」も魅力的だ。