Hothotレビュー
Quadro P3000搭載の15.6型モバイルワークステーション「MousePro NB9」
~4コアCore i7とWindows Hello対応指紋センサーを搭載
2018年1月9日 12:00
株式会社マウスコンピューターから登場した「MousePro NB9」は、15.6型液晶搭載のモバイルワークステーションである。
モバイルワークステーションは、3D CADやCAEなど、CPUやGPUに負荷がかかるアプリケーションに最適な製品であり、HD動画の編集などを行なうクリエイターにも向いている。
MousePro NB9は、搭載メモリやストレージなどの違いによって、4モデルが用意されているが、ここでは最上位の「MousePro-NB991Z-M2-1710」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
モバイルワークステーションとしてはスリムで軽いボディを実現
まずは、MousePro NB9の外観から見ていこう。筐体は、直線を基調としたシンプルでオーソドックスなデザインである。天板やキーボード面には金属素材が採用されており、質感も高い。
本体サイズは、380×255×24.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約2.2kgであり、モバイルワークステーションとしては、かなり薄くて軽い部類だ。もちろん、つねに携帯するためのマシンではないが、持ち運んでクライアントの前でプレゼンをしたり、打ち合わせをするにも向いている。
32GBメモリやQuadro P3000搭載など、モバイルワークステーションならではの高性能
モバイルワークステーションは、その用途上、一般のノートPCよりも高いスペックが求められる。MousePro NB9は、全モデルがCPUとしてCore i7-7700HQ(2.8GHz)を搭載する。
Core i7-7700HQは、4コアの第7世代Coreプロセッサであり、Hyper-Threadingテクノロジにより、最大8スレッドの同時実行が可能である。また、動作クロックも定格は2.8GHzだが、TurboBoostテクノロジーにより最大3.8GHzで上昇する。
一般的なノートPCに搭載されているCore i7は、ほとんどが2コアであり、シミュレーションなどのCPU負荷の高い作業では性能不足を感じることもあるが、4コアCPU搭載のMousePro NB9なら余裕がある。
モバイルワークステーションと通常のノートPCの最大の違いは、搭載GPUにある。通常のノートPCでは、CPU内蔵GPUを利用するか、外付けGPUを使う場合も、NVIDIAならGeForceシリーズを搭載しているが、モバイルワークステーションでは、ワークステーション用GPUを搭載するのが一般的だ。
NVIDIA製品の場合、Quadroシリーズがワークステーション用GPUとなる。QuadroシリーズとGeForceシリーズは、どちらも基本アーキテクチャは同じだが、ドライバの最適化対象が異なり、Quadro用ドライバはOpenGLベースの3D CADソフトや動画編集ソフトなどに最適化されているのに対し、GeForce用ドライバはDirectXベースのゲームソフトに最適化されている。そのため、OpenGLベースのソフトでは大きな性能差が出ることがある。
また、Quadroでは「NVIDIA Mosaic」と呼ばれるマルチディスプレイ技術が搭載されており、最大8画面まで(製品によって異なる)のマルチディスプレイ出力が可能だが、GeForceでは最大4画面までとなる。MousePro NB9では、GPUとしてQuadro P3000が搭載されている。
Quadro P3000は、Pascal世代のモバイルワークステーション向けGPUであり、1,280個のCUDAプロセッシングコアを内蔵、ビデオメモリは6GBである。NVIDIAのモバイルワークステーション向けGPUとしてはミドルハイに位置する製品であり、負荷の高い作業も快適に行なえる。また、MousePro NB9では、Mini DisplayPort×2とHDMI×1を備えており、本体の液晶とあわせて、4画面出力に対応することも魅力だ。
メモリはモデルにより容量が異なり、今回試用した最上位モデルでは、32GBの大容量メモリが搭載されている(下位モデルでは16GBまたは8GB)。
薄型ノートPCでは、最大メモリが8GBでそれ以上増設できない製品も多いが、大規模なデータを扱うシミュレーションや高解像度動画の編集などは、メモリを多く消費するため、8GBでは足りないことが多い。32GBあれば、そうしたアプリケーションでも十分であろう。
またストレージとしては、M.2の512GB SSDと、2.5インチの960GB SSDを搭載する、贅沢な仕様となっている。
M.2 SSDは、NVMe対応(PCI Express x4接続)であり、非常に高速な転送を実現している。2.5インチSSDは、SATA 6Gbps接続であるが、データやアプリケーションの保存には十分な速度であろう(NVMe対応SSDがCドライブ、SATA 6Gbps接続SSDがDドライブとなっている)。
そのほかのモデルでは、M.2 256GB SSD+1TB HDDや、480GB SSDのみ、500GB HDDのみという構成になっている。
キーボードやタッチパッドの操作性も良好
キーボードは、テンキー付きの全107キーで、キーピッチは約18mm、キーストロークは約1.8mmである。キー配列は標準的だが、右側の「ろ」やSHIFTキーはややキーピッチが狭くなっている。また、カーソルキー周りに空間がなく、埋没した印象を受ける。
剛性感は十分で、キータッチも良好だ。また、キーボードにはLEDバックライトが搭載されており、暗いところでも快適にタイピングが行なえる。キーボードバックライトの明るさは5段階に変更できる。
ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されている。タッチパッドのサイズは、108×62mmと大きめである。最近では珍しく、独立したクリックボタンが用意されているので、ドラッグ&ドロップなどの操作もしやすい。タッチパッドの左上には、指紋センサーが搭載されている。
15.6型非光沢フルHD液晶を搭載
液晶は15.6型で、解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)である。解像度は標準的だが、非光沢仕様で外光の映り込みが少ないため、長時間使っても目の疲れが少ない。タッチ操作には非対応だが、モバイルワークステーションの用途を考えると、とくに問題とはならないだろう。発色やコントラストについても不満はない。
液晶上部には、200万画素Webカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
Windows Hello対応の指紋センサーでセキュリティも安心
また、タッチパッド左上にWindows Hello対応の指紋センサーを搭載しており、Windowsのログオンなどを指1本で行なえるのも便利だ。
ここ数年、指紋センサーは認識精度、速度ともに大きく向上しており、認識エラーなどでイライラさせられることはない。モバイルワークステーションは、業務で使われることが多く、セキュリティが重要になるが、指紋センサーを搭載したMousePro NB9なら安心して利用できる。
ディスプレイ出力を3系統備えるなどインターフェイスも充実
MousePro NB9は、インターフェイスも非常に充実している。
HDMIポートとMini DisplayPort×2を装備し、本体液晶とあわせて4画面同時出力が可能なほか、USB 3.1 Type-C×2とUSB 3.0×3、SDカードリーダー、Gigabit Ethernet、ヘッドフォン端子、マイク端子も用意されている。USBポートは合計5ポートで、右側にも1ポート用意されているので、マウスをつなぐ場合などに便利だ。
無線機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LAN機能とBluetooth 4.2を搭載。ACアダプタは150W仕様で、一般的なノートPCに比べると2~3倍程度の出力だが、薄型なため、それほどかさばらないことも評価できる。
公称バッテリ駆動時間は、約6.3時間とされている。そこで、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス(IEを利用)、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、5時間58分という結果になった。モバイルワークステーションは、電源のとれない場所で使う場面は少ないので、十分であろう。
ワークステーション向けベンチマークテストも高速
参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー XIV 紅蓮のリベレーターベンチマーク」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。
比較用として、製品カテゴリは違うが、ASUS「B9440UA」、Microsoft「Surface Laptop」、LG「LG Gram 15Z970-GA55J」、HP「HP Elite Slice」、Lenovo「ThinkPad X1 Carbon」の値も掲載した。
CrystalDiskMarkに関しては、NVMe対応のCドライブと、SATA 6Gbps対応のDドライブのそれぞれについて計測を行なった。結果は下の表に示したとおりで、一般的なノートPCに比べてはるかに高い性能を持っていることがよくわかる。Cドライブは非常に高速であり、シーケンシャルリードで3,455MB/sという速度を叩きだしている。実際の使用感も非常に快適であった。
また、ワークステーション向けベンチマークテストの「CINEBENCH R15」と「SPECviewperf 12.1」もあわせて計測したが、こちらも高スコアであった。
製品仕様 | MousePro NB9 | B9440UA | Surface Laptop | LG Gram 15Z970-GA55J | HP Elite Slice | ThinkPad X1 Carbon |
---|---|---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-7700HQ(2.8GHz) | Core i7-7500U(2.7GHz) | Core i5-7200U(2.5GHz) | Core i5-7200U(2.5GHz) | Core i7-6700T(2.8GHz) | Core i7-6600U(2.6GHz) |
GPU | Quadro P3000 | Intel HD Graphics 620 | Intel HD Graphics 620 | Intel HD Graphics 620 | Intel HD Graphics 530 | Intel HD Graphics 520 |
製品 | MousePro NB9 | B9440UA | Surface Laptop | LG Gram 15Z970-GA55J | HP Elite Slice | ThinkPad X1 Carbon |
---|---|---|---|---|---|---|
PCMark 8 | ||||||
Home conventional | 3,346 | 2,509 | 2,518 | 2,714 | 3,262 | 2,635 |
Home accelerated | 3,965 | 3,256 | 3,024 | 3,330 | 3,580 | 3,176 |
Creative conventional | 3,338 | 2,684 | 2,658 | 2,747 | 3,396 | 2,691 |
Creative accelerated | 4,939 | 4,054 | 3,885 | 4,103 | 4,550 | 3,890 |
Work conventional | 3,455 | 3,010 | 2,725 | 3,125 | 3,462 | 2,928 |
Work accelerated | 5,144 | 4,540 | 3,789 | 2,534 | 4,730 | 4,063 |
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K | ||||||
1280×720ドット 最高品質 | 17,583 | 5,556 | 6,622 | 5,145 | 6,595 | 6,796 |
1280×720ドット 標準品質 | 17,862 | 6,139 | 7,254 | 6,347 | 7,153 | 6,844 |
1280×720ドット 低品質 | 18,603 | 7,132 | 8,352 | 7,203 | 8,346 | 6,851 |
1920×1080ドット 最高品質 | 16,684 | 3,185 | 3,988 | 2,609 | 3,230 | 3,109 |
1920×1080ドット 標準品質 | 16,772 | 4,135 | 4,925 | 3,534 | 4,148 | 4,256 |
1920×1080ドット 低品質 | 18,137 | 4,482 | 5,976 | 4,147 | 4,927 | 5,835 |
ファイナルファンタジーIXV 紅蓮のリベレーターベンチマーク | ||||||
1280×720ドット 最高品質 | 12,786 | 1,332 | 1,844 | 未計測 | ||
1280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 13,161 | 1,443 | 1,947 | 未計測 | ||
1280×720ドット 高品質(ノートPC) | 14,075 | 2,224 | 2,554 | 未計測 | ||
1280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 14,934 | 2,885 | 3,373 | 未計測 | ||
1280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 14,885 | 2,870 | 3,395 | 未計測 | ||
CrystalDiskMark 5.1.2 | ||||||
シーケンシャルリードQ32T1 | 3455MB/s(Cドライブ)、555.5MB/s(Dドライブ) | 531.3MB/s | 648.0MB/s | 547.8MB/s | 550.7MB/s | 2592MB/s |
シーケンシャルライトQ32T1 | 1622MB/s(Cドライブ)、456.4MB/s(Dドライブ) | 462.8MB/s | 241.7MB.s | 383.2MB/s | 515.1MB/s | 1533MB/s |
4KランダムリードQ32T1 | 530.8MB/s(Cドライブ)、147.3MB/s(Dドライブ) | 246.3MB/s | 105.0MB/s | 277.2MB/s | 316.0MB/s | 545.9MB/s |
4KランダムライトQ32T1 | 436.0MB/s(Cドライブ)、281.5MB/s(Dドライブ) | 270.1MB/s | 41.00MB/s | 264.0MB/s | 298.6MB/s | 251.7MB/s |
シーケンシャルリード | 1648MB/s(Cドライブ)、518.1MB/s(Dドライブ) | 504.6MB/s | 401.2MB/s | 500.2MB/s | 481.1MB/s | 1854MB/s |
シーケンシャルライト | 1366MB/s(Cドライブ)、423.2MB/s(Dドライブ) | 416.1MB/s | 231.8MB/s | 386.1MB/s | 454.6MB/s | 1528MB/s |
4Kランダムリード | 40.73MB/s(Cドライブ)、20.21MB/s(Dドライブ) | 27.75MB/s | 6.660MB/s | 21.95MB/s | 28.29MB/s | 53.99MB/s |
4Kランダムライト | 155.4MB/s(Cドライブ)、61.91MB/s(Dドライブ) | 103..5MB/s | 36.00MB/s | 72.80MB/s | 58.61MB/s | 164.5MB/s |
CINEBENCH R15 | ||||||
OpenGL | 98.15fps | 未計測 | ||||
CPU | 747cb | 未計測 | ||||
SPECviewperf 12.1 | ||||||
3dsmax-05 | 93.98 | 未計測 | ||||
catia-04 | 91.52 | 未計測 | ||||
creo-01 | 85.02 | 未計測 | ||||
energy-01 | 8.88 | 未計測 | ||||
maya-04 | 64.3 | 未計測 | ||||
medical-01 | 35.31 | 未計測 | ||||
showcase-01 | 50.52 | 未計測 | ||||
snx-02 | 79.49 | 未計測 | ||||
sw-03 | 108.62 | 未計測 |
性能とコストパフォーマンスの高いモバイルワークステーション
MousePro NB9は、最新の高速CPUとGPUを搭載しながら、モバイルワークステーションにありがちな無骨さのない、スマートなボディを実現している。
今回試用した、最上位モデルの税別価格は329,800円だが、最近価格が高騰しているメモリを32GB搭載し、合計約1.5TBのSSDを搭載していることを考えると、コストパフォーマンスは悪くない。
さらに、Windows Hello対応の指紋認証機能を搭載しており、モバイルワークステーションとしての完成度は十分だ。
3D CADやシミュレーション、高解像度動画の編集などを頻繁に行なう、エンジニアやクリエイターにはとくにお勧めしたいマシンだ。また、そこまでの性能は不要だという人には、メモリ16GB、SATA 6Gbps対応480GB SSDを搭載して、税別249,800円の「MousePro-NB991Z-SSD」も魅力的だ。