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Ryzen & Radeon搭載でAMD仕様なレノボ製ゲーミングPC「Legion Y720 Tower」

Lenovo ideacentre Legion Y720 Tower(AMDプロセッサー搭載)

 レノボのゲーミングPCは2013年より展開されているが、ブランドとして「Legion」を立ち上げてからちょうど1年が経過した。

 最新モデル「ideacentre Legion Y720 Tower(AMDプロセッサー搭載)」は、ちょうどLegionを発表したのと同じころにAMDからリリースされた「Ryzen」を搭載するモデルである。同時に、ビデオカードはRadeon RX 570を組み合わせており、AMD CPU&GPUで統一したモデルでもある。

 今回検証するのはideacentre Legion Y720 Tower(AMDプロセッサー搭載)の3モデルのなかで最上位モデルとなる「90H9000FJM」、Ryzen 7 1800X搭載モデルだ。

ゲーミングPCにしては落ち着いたデザイン!?

 本製品はミドルタワー型筐体を採用しており、ゲーミングPCとしては標準的なサイズになる。ゲーミングPCだけに独特の造形でインパクトを強めているが、他社のゲーミングPCほどハデではなく、若干落ち着きも感じられる。

 前面パネルはカーボン調で、そこに赤く「Y」字とラインを設け、電源投入時にはここが発光する。ここはゲーミングPCらしいところだが、発光するのはこの部分くらいで、側面板は自作PCで主流のクリアパネルではない。「あまりハデすぎるゲーミングPCはちょっと……」という方にちょうどよいだろう。

 アクセントとなる赤色だが、AMDのコーポレートカラーとはさほど関連があるわけではないようだ。Legionのラインナップを見ると、赤い差し色のモデルでも、Intel製CPUを搭載するものもあれば、NVIDIA製GPUを搭載するものもある。ただ、AMD製CPU&GPUを搭載する本モデルにマッチした色であることは確かだ。

 ケースの前方左右、底面前方、天板部左右には通気口が設けられており、一般的なPC同様に天板や背面にも通気口がある。全体的な通気はよさそうだ。天板部中央にも「Y」ロゴがあるが、こちらは発光しない。天板部前面右寄りに電源ボタン、その手前に前面インターフェイスがある。前面インターフェイスは45度くらいの角度がついているので、本体を机の下に置くとちょうどいい。

カーボン風の前面パネルに赤い挿し色が映える
背面は一般的なATXミドルタワーケースと同様のレイアウト。電源は底面寄りに配置している
右側面は一枚板で通気口なし。右上にLenovoロゴがある
左側面もほぼ同じだが、シャドウベイ付近に通気口を設けている
天板部にも赤い「Y」ロゴ
天板部前面寄りに前面インターフェイスと電源ボタンを搭載する。インターフェイスは左から順に、カードリーダ、USB 3.0×2、USB 2.0×2、オーディオ入出力

内部の作りはワークステーションにも通じる

 さて、内部を見ていきたいが、まず本製品の見どころはケースの構造にあるかもしれない。ケース左側面を開く手順は、まず背面上部右寄りのスライド式ロックで解除、次にケース天板の後端にあるカーボン調部分を押すことで側面板上部がポップアップし、最後に側面板を上方向に引き抜くといったもので、ここまで工具は必要としない。

 内部はそこまで広いわけではないが、主要な部分は裏面配線されており、まずまず整っている。ケース構造に注目すると、まず拡張カードのブラケット部や、右下の3.5インチシャドウベイ、上部前方寄りの5インチベイなどがツールレス構造をとっている。

 また、とくにユニークなのが上下シャドウベイの間の空間に、ビデオカードを固定するパーツが装着されている点だろう。ビデオカード後部をプレートによって延長し、そこを固定するものだ。ワークステーションも手がけるレノボならではといったところだろう。

背面上部にスライド式ロックがある
ロックを解除し、その上のカーボン調の天板部分を押すと側面板が開く
内部のレイアウトは、自作PC向けケースのトレンドからするとやや古めだろうか
各所にツールレス構造を取り入れている
ビデオカードを後部から固定するガイド
ビデオカードとネジによりしっかり固定されている

 マザーボードはATXではなくmicroATXフォームファクタ。マザーボードの設計自体もミニマムで、メモリスロットは2本、拡張スロットも本来2番目のx16スロットがあったろう部分のパターンが残されている。コストを徹底的に削っていることが伺える。こうした点から、拡張カードはあと1本、最下段のPCI Express x1スロットに搭載できるのみと、ATXケースから期待されるほど拡張できない。

 CPUは前述のとおりRyzen 7 1800Xを採用している。CPUクーラーはリテール相当のサイズのトップフロー型で、ヒートパイプを組み合わせた構造だ。レバーで固定する方法もリテールクーラーと同じ。ただしカバーが付いていないので、まったく同じものかどうかは判別つかない。

 ビデオカードはRadeon RX 570を採用している。ビデオメモリはGDDR5の4GB。動作クロックはリファレンスどおり。おもに720pでの高画質ゲーミング、あるいは1080pの中~高画質ゲーミングをターゲットにしたGPUで、負荷の軽いものならVRも楽しめる。リファレンスクーラーモデルだが、RX 570クラスであるためそこまでうるさくはない。CPUクーラーやケースファン等と合わせても、ケースを閉じた状態なら高負荷でも40dB以内で動作していた。

リファレンス仕様に準じたRadeon RX 570カードを搭載している

 ほか、メモリはDDR4 SDRAMで8GB×2本、ストレージは256GBのSSDと2TBのHDDを組み合わせている。このあたりもゲーミングPCのトレンドを盛り込んだ内容だ。SSDはNVMe対応のM.2を採用しており、ビデオカードの下に装着されている。

CPUクーラーはほぼリテールクーラーと同じ
ビデオカードもRadeon RX 570のリファレンスデザインモデル。その下にM.2 SSDが装着されている
電源は80PLUS Bronze認証の450Wモデル。メーカー製PCで採用例の多いAcBel製

軽いタイトルなら1080p・最高画質。重いタイトルは中~高画質か720pに落として楽しめる

 それでは肝心の性能を見ていこう。

 比較対象として、およそ1つ下のグレードとなる約10万円クラスPCを想定し、Ryzen 5 1600X+GeForce GTX 1050 Tiという構成の自作PCを用意した。

【表1】検証機の仕様
Lenovo ideacentre Legion Y720 Tower(AMDプロセッサー搭載)Ryzen 5 1600X+GeForce GTX 1050 Ti自作機
CPURyzen 7 1800XRyzen 5 1600X
GPURadeon RX 570GeForce GTX 1050 Ti
メモリPC4-19200 DDR4 SDRAM 16GBPC4-17000 DDR4 SDRAM 16GB
SSD256GB SSD(M.2 NVMe)480GB SSD(SATA 6Gbps)
HDD2TB HDD(SATA 6Gbps)
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
電源450W 80PLUS Bronze550W 80PLUS Platinum
OSWindows 10 Home 64bit
価格197,640円(※eクーポン適用時146,254円)10万円前後
【表2】ベンチマーク結果
Lenovo ideacentre Legion Y720 Tower(AMDプロセッサー搭載)Ryzen 5 1600X+GeForce GTX 1050 Ti自作機
PCMark 10 v1.0.1403
Extended Score6,1264,951
Essentials9,1138,026
App Start-up Score11,7308,759
Video Conferencing Score8,8007,733
Web Browsing Score7,3347,633
Productivity7,2936,898
Spreadsheets Score9,3557,975
Writing Score5,6865,967
Digital Content Creation6,5475,190
Photo Editing Score10,0445,069
Rendering and Visualization Score8,6656,121
Video Editing Score3,2254,508
Gaming8,7495,654
Fire Strike Graphics Score11,9987,470
Fire Strike Physics Score18,66916,321
Fire Strike Combined Score4,0372,640
3DMark v2.4.3819 - Time Spy
Score3,9882,471
Graphics score3,6642,245
CPU score8,0105,756
3DMark - Fire Strike
Score10,3736,712
Graphics score11,6207,376
Physics score18,79216,745
Combined score4,1882,608
3DMark - Sky Diver
Score29,58020,755
Graphics score35,59722,833
Physics score16,50013,552
Combined score27,42623,451
3DMark - Cloud Gate
Score36,74126,115
Graphics score66,32944,919
Physics score14,34510,594
3DMark - Ice Storm Extreme
Score163,196115,229
Graphics score271,841146,361
Physics score68,03266,055
CINEBENCH R15
CPU1,6061,223
CPU(Single Core)161161

 PCMark 10のスコアを見るかぎり、メインストリームの少し上の性能が示されている。ただし、CPU性能が高いとはいえ、現在のアプリケーションではそこまでマルチスレッドへの対応化が進んでいないこともあり、飛び抜けて高いスコアというわけではない。それでも細かく見ていけば、たとえばDigital Content Creationのようにマルチスレッドが活きるテストではスコアも伸びている(GPUも用いるテストなので、単純にCPU性能だけの差ではない)。

 3DMarkによる3D性能も、およそメインストリーム級といったところだ。Time Spyのスコアを見るかぎり、DirectX 12タイトルは荷が重い。DirectX 11/10/9のFPSタイトルを1,920×1,080ドット以下で楽しむあたりがちょうどいいと言えるだろう。

 比較対象のGeForce GTX 1050 Tiに対しては、1つグレードが上ということもありより高いスコアだ。そちらは1,280×720ドットベースをターゲットに、FPSというよりはMOBAを楽しむためのGPUなので、FPSを楽しむなら本製品のほうが上だ。

 CINEBENCH R15のスコアでは、6コア12スレッドのRyzen 5 1600Xの1223cbに対して、8コア16スレッドのRyzen 7 1800Xは1,606cbを記録した。Ryzen 7 1800Xのマルチスレッドをもっとも活用できるアプリケーションが3Dレンダリングの世界だろう。

【表3】ゲームタイトルのベンチマーク結果
Lenovo ideacentre Legion Y720 Tower(AMDプロセッサー搭載)Ryzen 5 1600X+GeForce GTX 1050 Ti自作機
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(DirectX 11/最高品質)9,5527,707
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6)18,31122,756
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands - ウルトラ29.6623.89
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands - 非常に高い50.6338.41
Assassin's Creed Origins -Ultra High5,4694,405
Assassin's Creed Origins -Very High5,9604,782

 ゲーミング性能を見ると、まずファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークについては、1,920×1,080ドット・最高品質時で9,552ポイント、65fpsであり、「非常に快適」という判定だった。比較対象でも判定自体は「非常に快適」だったが、そちらは7,707ポイント、52fpsだ。

 ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4の1,920×1,080ドット・簡易設定6も、これは比較対象よりも低いスコアとなったが、フレームレートは100fpsを超えており、十分に快適だ。

 とくに重いゲームタイトルであるTom Clancy's Ghost Recon Wildlandsの1,920×1,080ドット時については、ウルトラ画質の場合、データがRadeon RX 570のビデオメモリをオーバーしてしまうため、一段低い29.66fpsだった。とくに最低fpsは14.81fpsなのでかなりスムーズさに欠ける。

 ただし、1つ下の画質設定である「非常に高い」を選べば50.63fps、最低40.84fpsまで向上するため、これならプレイ可能だ。一方、比較対象では23.89fps、38.41fpsと、少し画質を抑えた程度ではプレイに十分なフレームレートが得られず、根本的には1,280×720ドットまで落とす必要がある。ここが10万円前後のゲーミングPCと、10万円台半ばのゲーミングPCとの差と言える。

 Assassin's Creed Originsについては、1,920×1,080ドット・最高画質(Ultra High)でも、ビデオメモリからあふれることはないようで、極端に落ち込むことはない。45fps、Stable判定だ。やや30fpsを割り込むシーンを気にするならば、1つ落としたVery High設定で49fpsまで向上する。60fps以上を狙う場合は、1,280×720ドット解像度まで落としたほうがよいだろう。

【表4】VRMarkのベンチマーク結果
Lenovo ideacentre Legion Y720 Tower(AMDプロセッサー搭載)Ryzen 5 1600X+GeForce GTX 1050 Ti自作機
VRMark v1.1.1272
Orange Room6,0733,841
Cyan Room4,0432,145
Blue Room937683

 VRについては、あまり過度な期待は禁物だが、たとえばVRMarkのOrange Roomのように軽負荷のものならターゲットフレームレートである109fpsを上回ることができた。Cyan Roomもターゲットの88.9fpsに対して88.15fpsと、少し足りていないがいいところにつけている。

 Steam VR Performance Testでは、「レディ」評価と「可能」評価の境目あたりだ。90fps以下のフレームは検出されなかったが、フレームレート自体は乱高下が見られ、平均忠実度は6という判定だった。

Steam VR Performance Test

 ストレージは、Cドライブがシーケンシャルリード3.451GB/s、同ライト1.205GB/sとギガ超えを見せ、4KQ1T1でもリード42.83MB/s、ライト122.2MB/sと速い。DドライブはHDDなりの結果だが、シーケンシャルではリード/ライトともに200MB/sを超えている。

CrystalDiskMark 6.0.0 x64(Cドライブ)
CrystalDiskMark 6.0.0 x64(Dドライブ)

とくにケースの構造については自作PC以上の品質

 ここまでLenovo ideacentre Legion Y720 Tower(AMDプロセッサー搭載)をチェックしてきたが、存在感は出しつつもハデすぎないデザインと、ワークステーションのノウハウが活かされた内部構造やツールレス機構が印象に残った。本体の作りは、自作PCの1つ上を行くと言ってよい。

 ゲーミングPC選びでは、ゲーム性能と予算が製品選択のなかで重要なポイントとなるだろう。まず性能はメインストリームクラスだ。軽量タイトルをフルHDで、重めのタイトルも画質や解像度を少し引き下げればおおむね問題ない。

 コストパフォーマンスについては、直販のみのためクーポンの発行も頻繁にあり判断が難しい。定価で見れば20万円近いため、ショップブランドのゲーミングPCや自作ゲーミングPCと比べるとやや割高だろうか。一方、執筆時点でのeクーポンによる割引では15万円弱であり、これなら同等か、メモリが標準で8GB×2枚だったり、Radeon RX 570が現在やや希少で割高となっていたりする点を考慮すればお値段以上と言えそうだ。

 本製品はケバケバしいゲーミングPCはほしくないが、ある程度知識が必要な自作PCに手を出すのはためらわれる、といったユーザーにうってつけの製品と言えるだろう。