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重量748gで4コアCPU搭載のモバイルノート、富士通「LIFEBOOK UH75/B3」レビュー
2017年11月15日 11:00
富士通は、超軽量モバイルノートPC「LIFEBOOK UH」シリーズの2017年冬モデルを、11月16日より販売開始する。ボディやバッテリの軽量化を突き詰めることで、最軽量モデルの重量は748gと、従来モデルよりもさらなる軽量化を実現。また、第8世代Coreプロセッサを採用することで、性能強化も実現されている。
今回は、その最軽量モデルとなる「LIFEBOOK UH75/B3」を取り上げ、ハード面を中心に紹介する。なお、今回の試用機は、発売前の試作機をベースとしたものだったため、仕様や性能面で製品版とは異なる可能性がある点はご了承願いたい。
重量は748gと、13.3型液晶搭載ノートPC世界最軽量記録を更新
「LIFEBOOK UH75/B3」(以下、UH75/B3)の最大の特徴となるのが、なんと言ってもその軽さだ。従来モデルの「LIFEBOOK UH75/B1」では、当初公称の重量を777gとしていたが、その後に競合からより軽量な製品が登場すると、実測の重量は761gであると発表するなど、とにかく軽さへのこだわりが強いという印象が残っている。その後継モデルとなるUH75/B3では、さらなる軽さの追求を行なった結果、748gと従来モデルと比べて29g(実測値との比較では13g)の軽量化が実現されている。
筐体デザインは従来から変わっておらず、サイズも309×212.5×15.5mm(幅×奥行き×高さ)とまったく同じだ。しかし、筐体内部で強度に影響を及ぼさない範囲での肉抜き加工を行なったり、同じく強度を保ちながら内蔵バッテリの樹脂フレーム設計を見なおすことなどによって軽量化を実現している。
なお、試用機の実測の重量は746gと、公称よりも2g軽かった。製品には各種シールなどが貼られるため、これよりもやや重くなると考えられるが、それでも公称の748gを超えることはなさそうだ。
なお、重量が748gとなるのは、UH75/B3のピクトブラックモデルのみとなる。UH75/B3には、天板に鮮やかなレッドの塗装を施したサテンレッドモデルも用意されるが、そちらは塗装による重量増によって751gとなる。
ところで、さらなる軽量化を実現したことで気になるのが堅牢性だろう。ただ、UH75/B3では、天板素材として採用しているマグネシウムリチウム合金について、素材組成を変更することによって、従来よりも約25%の強度向上を実現しているという。それにより、さらなる軽量化を実現しつつ、約200kgbの天板全面加圧試験や、約76cmの高さからの落下試験をはじめ、天面1点加圧35kg試験、自転車での振動を想定した連続振動テスト、長時間のキーの打鍵試験や液晶の開閉試験などの各種堅牢性試験を全てクリアしているとのことだ。
実際に、液晶部のみをひねってみると、ややたわむような印象で不安になる部分もあるが、キーボード側はそういた不安はなく、十分な剛性があると感じる。また、液晶を閉じた状態では、かなり強い力でひねってもビクともせず、かなり安心感がある。これなら、液晶を閉じて鞄などに入れて持ち歩く場合には、満員電車で押されたとしても不安はないと言えそうだ。
従来同様フルHD表示対応の13.3型液晶を採用
液晶ディスプレイは、従来モデル同様に、1,920×1,080ドット表示に対応する13.3型パネルを採用している。パネルの種類や発色性能などは非公開となっているが、高輝度、高色純度、広視野角といったことが謳われている。表示品質に関しては、広色域表示に対応する液晶に比べると、鮮やかさに劣る印象もあるが、競合製品と比べても遜色のないもので、大きな不満はない。パネルの表面は非光沢処理が施されており、外光の映り込みはほとんど気にならないため、文字入力中心の作業でも快適だ。
ただし、タッチパネルの搭載は従来モデル同様見送られている。クラムシェルノートPCではタッチパネルは不要という声も少なくないが、ノートPCを利用したプレゼン時など、タッチ操作が便利な場面も多い。また、インセル型タッチパネル対応液晶なら重量的にも大きな不利にならないため、将来はぜひともタッチ対応を検討してもらいたい。
入力のしやすさを高めたキーボードを採用
UH75/B3ではキーボードも進化を遂げている。まず見た目の変化としては、キートップ表記がかなりすっきりとした印象を受ける。これは、キー表記が全て白単色になったことが大きく影響していると言える。
また、キーストロークが従来の1.2mmから1.5mmへと深くなっている。そして、キー入力時の入力を検知する位置が、従来よりも手間になるという新技術も採用されている。これによって、キーを深く押し込む手前でキー入力が検知され、より軽快な入力が可能になったという。
実際に従来モデルとキー入力の違いを試してみたが、個人的にはストロークの違いは十分にわかったが、入力検知の違いについてはほとんどわからなかった。ただ、ストロークの深さが違っているにも関わらず、ほぼ同等の感覚でキー入力が可能だったという意味では、入力位置の検知が早くなったことが影響しているのだろう。なお、キータッチはこのクラスではほぼ標準的な硬さで、クリック感もしっかりと感じられる。
このあたりのキー入力の感覚は個人差が大きいと思うので、実際に家電量販店などの展示機を実際に触って確認してみてもらいたい。
これ以外のキーボードの仕様は、従来モデルからほぼ変更はない。主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチを確保。キー配列も従来同様に不自然な部分はない。キーボードバックライトを搭載しない点も従来同様だ。
ところで、実際にキーボードを操作して感じたのが、打鍵音の静かさだ。特にアルファベットキーの打鍵音はかなり静かで、打鍵音のうるさいキーボードが嫌いな筆者はかなり好印象だった。ただ、EnterキーやShiftキーなどサイズの大きなキーでは、軽いカチャカチャという音が気になる。
ポインティングデバイスは、ジェスチャー操作対応のタッチバッドを採用。従来同様独立したクリックボタンを採用しており、確実なクリック操作が行えるのは嬉しい部分だ。クリックボタンの操作も十分に軽快で、不満なく操作可能だった。
このほか、右パームレストにはWindows Hello対応の指紋認証センサーも引き続き搭載。ログオン時の利便性とセキュリティ性を同時に高められるという意味で、ありがたい機能だ。
豊富な外部ポート類も従来同様
従来モデルでは、豊富な外部ポートが用意されている点も大きな特徴だったが、もちろんUH75/B3にもしっかり受け継がれている。
まず、左側面には電源コネクタ、HDMI出力、USB 3.0対応USB Type-C、USB 3.0、オーディオジャックを用意。また、右側面にはSDカードスロット、USB 3.0、Gigabit Ethernetの各ポートが用意されている。Gigabit Ethernetは薄型の引き出し式となっているてんも従来同様だ。そして、各ポートは全て標準サイズとなっているので、周辺機器利用時に別途アダプタを利用する必要がない点も、優れた利便性を実現する大きな要因となっている。
では、UH75/B3の基本スペックを確認しておこう。搭載CPUは、第8世代CoreプロセッサとなるCore i5-8250Uを採用している。第8世代Coreプロセッサとなったことで、CPUコアが4コアとなり、Hyper-Threadingもサポートするため、最大8スレッドの並列処理に対応。これにより、従来モデルのCore i5-7200Uに比べて大幅にCPU処理能力が高まっている。このあたりは、後ほどベンチマークテストで検証する。
メインメモリはDDR4-2400を標準で4GB搭載と、メモリの種類は変更となっているが、容量は従来から変わっていない。Windows 10を快適に利用するには、できれば8GBのメモリは欲しいところで、従来同様4GBしか搭載されないのはかなり残念だ。内蔵ストレージは、SATA仕様の128GB SSDを搭載。OSはWindows 10 Home(64bit)となる。無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LANとBluetooth 4.1を標準搭載。無線LANはMU-MIMOもサポートしている。
なお、従来の市販モデルでは搭載CPUはCore i5-7200Uのみだったが、新モデルでは上位となるUH90/B3ではCore i7-8250Uを搭載し、メインメモリは標準8GB、内蔵ストレージは256GB SSD(SATA)へと強化される。加えて、下位となるUH55/B3も用意され、そちらではCPUはCore i3-7130Uとなり、メインメモリは標準4GB、内蔵ストレージは128GB SSD(SATA)となる。
付属ACアダプタも、従来モデルと同じものが同梱となる。十分にコンパクトで、本体との同時携帯も苦にならないだろう。重量は、付属電源ケーブル込みで実測200.4gだった。
従来モデルと比べて大幅な性能向上を確認
では、ベンチマークテストの結果を見ていくことにしよう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 v1.0.1275」、「PCMark 8 v2.7.613」、「3DMark Professional Edition v2.4.3819」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。比較用として、従来モデルとなるLIFEBOOK UH75/B1の結果も掲載する。
LIFEBOOK UH75/B3 | LIFEBOOK UH75/B1 | |
---|---|---|
CPU | Core i5-8250U(1.60/3.40GHz) | Core i5-7200U(2.50/3.10GHz) |
チップセット | ― | ― |
ビデオチップ | Intel UHD Graphics 620 | Intel HD Graphics 620 |
メモリ | DDR4-2400 SDRAM 4GB | DDR4-2133 SDRAM 4GB |
ストレージ | 128GB SSD(SATA) | 128GB SSD(SATA) |
OS | Windows 10 Home 64bit | Windows 10 Home 64bit |
PCMark 10 v1.0.1275 | ||
PCMark 10 Score | 3240 | 2998 |
Essentials | 6814 | 6459 |
App Start-up Score | 8541 | 8504 |
Video Conferencing Score | 5977 | 5688 |
Web Browsing Score | 6198 | 5571 |
Productivity | 5769 | 5426 |
Spreadsheets Score | 7073 | 6333 |
Writing Score | 4706 | 4649 |
Digital Content Creation | 2591 | 2087 |
Photo Editing Score | 3137 | 2429 |
Rendering and Visualization Score | 1782 | 1342 |
Video Editting Score | 3112 | 2792 |
PCMark 8 v2.7.613 | ||
Home Accelarated 3.0 | 3456 | 3079 |
Creative accelarated 3.0 | 4444 | 3856 |
Work accelarated 2.0 | 4574 | 4442 |
Storage | 4866 | 4963 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL (fps) | 39.12 | 34.3 |
CPU | 534 | 322 |
CPU (Single Core) | 144 | 119 |
3DMark Professional Edition v2.4.3819 | ||
Cloud Gate | 6971 | 5025 |
Graphics Score | 7455 | 5705 |
Physics Score | 5683 | 3546 |
Sky Diver | 動作せず | 3212 |
Graphics Score | 動作せず | 3146 |
Physics Score | 動作せず | 4038 |
Combined score | 動作せず | 2801 |
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク | ||
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 2358 | 1993 |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) | 1324 | 1076 |
結果を見ると、ほぼ全ての項目で従来モデルを上回るスコアが得られた。これは、やはり4コアで最大8スレッド処理に対応するCore i5-8250Uの採用が大きく影響していると言える。
ベンチマークテストだけでなく、実際の作業でもはっきりと違いがわかる。今回は、筆者が普段画像の変換などに利用している「ACDSee Pro7」をUH75/B3およびUH75/B1にインストールし、23枚のデジカメ写真を横800ドットに一括置換する作業を行ってみたところ、従来モデルのUH75/B1では約10.7秒(3回計測の平均)かかったのに対し、UH75/B3では約8.2秒(同)と、2.5秒も速く終了した。
ちなみに、筆者が普段利用しているCore i7-7500U搭載ノートPCで同じ作業を行った場合でも約10.2秒(同)だった。このことからも、第8世代Coreプロセッサの実力はかなりのものと言える。
ただ、UH75/B3は搭載メモリが4GBのみで、シングルチャネル動作となっているため、CPUの処理能力を最大限引き出せていない。もし、搭載メモリが標準8GBで、デュアルチャネル動作対応なら、さらに性能が高まるはずで、そういった意味でもメモリ搭載量は標準8GBを実現してほしい。
また、ベンチマークテスト時に気になったのが、空冷ファンの動作音だ。高負荷時には空冷ファンが勢いよく回転し、風切り音に加えて、キーンという高音の動作音が耳に届く。この動作音は非常に耳障りという印象で、かなりうるさいと感じる。この点は改善をお願いしたいところだ。
続いて、バッテリ駆動時間だ。UH75/B3の公称のバッテリ駆動時間は約8.3時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver2.0での数字)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約5時間29分だった。UH75/B3は、軽さを優先するために容量25Whの比較的容量の少ないバッテリを搭載していることもあり、どうしても駆動時間が短くなってしまう。ただ、従来モデルのUH75/B1でも同じテストを行なったところ、約5時間22分と、ほとんど同じだった。
絶対的な駆動時間は、さすがに十分満足できるレベルとは言えず、高負荷が続くとさらに駆動時間は短くなると思われる。CPUが強化されても従来同用の駆動時間を確保しているのは嬉しいが、軽さ優先で駆動時間が犠牲になっている点は妥協しなければならないだろう。
モバイルノートでも軽さと性能を追求したい人にお勧め
UH75/B3は、従来モデルとくらべてさらなる軽さを実現するだけでなく、第8世代Coreプロセッサの採用によって性能も大きく向上。見た目は従来と変わっていないため、どちらかというとマイナーバージョンアップにとどまっているようにも見えるが、性能はもちろんキーボードの仕様変更など、見えないところも改善されており、実際に使ってみると、かなりの進化を実感できる。
ただ、やはりメインメモリが標準で4GBとなっている点は非常に残念だ。しかもメインメモリはシングルチャネル動作となっているため、第8世代Coreプロセッサの性能を引き出せていない。この点が気になるなら、メモリ容量が8GBとなる上位モデルのUH90/B3を選択するか、直販サイト「富士通WEB MART」のカスタムメイドモデルでメモリ容量を増量するのをお勧めする。
また、軽さ追求のため、バッテリ駆動時間が短いという点も、頭に入れておく必要があるだろう。使い方によって必要となるバッテリ駆動時間は変わるため、実働5時間台でも問題ないという場合もあると思うが、電源を確保できない状況で長時間利用する必要があるという人は要注意と言える。ただし、重量増にはなるが、BTOでバッテリ容量を2倍できる。
それでも、この圧倒的な軽さと優れた性能は、大きな魅力となるだろう。毎日持ち歩くモバイルノートに、軽さだけでなく性能も追求したいというなら、現時点で最良の選択肢と言っていいだろう。