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世界最軽量13.3型の座を譲らなかった「LIFEBOOK UH75/B1」、777gから761gに

~富士通、未来のコンピューティングを創出するプロジェクトを公開

創立1周年を記念した「FCCLの匠 体験会」。約50人の記者を対象に開催した

 富士通および富士通クライアントコンピューティングは、2017年2月22日、島根県出雲市の島根富士通において、報道関係者を対象にした事業説明会「FCCLの匠 体験会」を開催し、2016年から開始している新規事業創出プロジェクト「Computing for Tomorrow」の成果の1つである「Smart Room Solution」を初公開。さらに、富士通デザインによる近未来PCのデザインコンセプト「Advanced Design」などが公開された。

 また、777gと公表していた「LIFEBOOK UH75/B1」の重量が、761gであると発表。NECパーソナルコンピュータの「LaVie Hybrid ZERO」の769gよりも軽いことを示した。

 Computing for Tomorrowは、若手技術者などが自由な発想をもとに、PCやタブレットなどの既存製品の枠にとらわれない製品やサービスの開発を目的にスタートしたもので、複数のプロジェクトを同時並行的に進め、毎月、役員にプロジェクトの進捗を報告。半年ごとに同社・齋藤邦彰社長が出席する会議で、成果を評価しながら、開発を継続したり、中止したりを決定する。最低半年間となる同プロジェクトに参加する社員は、現業を離れて、プロジェクトに専任で取り組むことになるという力の入ったものだ。

 富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長は、「PCやタブレットだけのビジネスでは成長に限界がある。経営トップとして、若い人たちに挑戦の場を設けることと同時に、取り組むのであれば、片手間でなく、真っ正面から取り組んで欲しいと考えた。将来に向けての投資である」と、Computing for Tomorrowへの取り組みを開始した背景を語る。

教育向けのエッジコンピュータ

 Computing for Tomorrowのいくつかのプロジェクトの中でも製品化に最も近い位置にあるのが、教育向けエッジコンピュータである。これに、既に発売している教育向けタブレットを組み合わせて、「Smart Room Solution」として提供することになる。

Computing for Tomorrowの考え方
Computing for Tomorrowのプロジェクト

 学校においては、学校サーバーと各教室で使用するPCやタブレットなどのデバイスを、直接、ネットワークで接続するが、教育向けエッジコンピュータは、学校サーバーとデバイスの間に、中間サーバーとして配置。これにより、教育分野における「ネットワーク」、「セキュリティ」、「メンテナンス」という観点でメリットを生むことができるという。

 ネットワークでは、通信環境をモニタリングし、発言をする児童や生徒のデバイスに、優先的にネットワーク帯域を動的に割り当てて、安定したネットワーク環境でスムーズな授業をサポートするといった細かい制御を実現。さらに、セキュリティでは、外部からの不正アクセスをデバイスの手前で遮断するなど、エッジコンピュータならではの特徴を活かした対策が可能になる。

 また、メンテナンスにおいても、デバイスの不具合の状況などを確認すると、遠隔地からログを確認し、サポートを行なうといったことが可能になる。外部のサポート拠点からデバイスの状況確認し、対策に関する指示を出すこともできるという。

初公開した教育向けエッジコンピュータ
富士通クライアントコンピューティングの教育向けタブレット
遠隔地から教室で使用しているタブレットの不具合などが確認できる

 これは、富士通が独自に開発したマイコン「EastChip」を、教育向けエッジコンピュータに搭載していることによって実現するものだ。

 EastChipは、24時間365日の情報を収集し、稼働状況を把握。故障やトラブル発生時のダウンタイムを無くすために、故障やトラブルの事前検出や予防保守を実現できるというものだ。

 具体的には、OS起動前エラー監視、累計稼働時間、バックライト点灯時間、パネル開閉回数、クレードル着脱の監視、バッテリ温度などのデータ収集を行なう。チップに制御ロジックを内蔵することで、省電力と高性能を両立しているという。

 「バッテリの消耗が事前に分かるため、授業中にトラブルが発生する前に、バッテリの点検や交換が可能になる。また、OS起動前の故障予兆も見逃さず、事前に通知することができる。データを活用して、メンテナンスのスマート化を実現する」という。

 教育向けエッジコンピュータの開発コードネームは、「MIB(Men in Box)」で、「箱の中に人がいるように動作し、支援し、使い勝手を高めることができる」という意味を込めたという。

 一方、教育向けタブレットは、実際の現場の声を反映して製品化したもので、滑りにくいSchool Grip、落下時などに衝撃を吸収するSchool Faceなどを採用。重心を本体手前側に置くことで、日本の学校で使用されている学習机に教科書やノートとともに、机からはみだしたようにタブレットを置いても、落ちにくい設計にしているという。これらのコンセプトは、開発者が教育分野を視察して、盛り込んだものだという。

 さらに、タブレットの充電が可能なキャビネットを開発。富士通ならではの電源制御技術を活用することで、充電時間の効率化や電力ピークの抑制が可能になる。ここでも、EastChipの特徴を活かしてバッテリの状況を確認した形で充電制御や管理を行なうという。

 今後、教育向けエッジコンピュータの製品化に向けて準備を進めており、タブレットとの組み合わせによって、Smart Room Solutionの提案を行なっていくことになるほか、教育分野以外への応用も検討していくことになるという。「エッジコンピュータで、より便利で、豊かな未来を創造する」とした。

メールを通じて教員に対策の指示を送ることもできる
タブレットを充電するキャビネット。残量が少ないタブレットから先に充電するなどの制御を行なう

ホームコンピューティング

 一方、富士通クライアントコンピューティングが取り組むホームコンピューティングについても説明した。

 「家の中の“ Intelligent Gateway”として、PCの新たな使い方や価値を提案。生活を、より楽しく、便利に、創造的にするホームコンピューティングを目指す」とする。

 同社では、人に合わせて機器が動き快適、省電力を実現する「Home Control(快適)」、家の中の見守りを行なう「Home Security(安心)」、WOW体験の共有を行なう「Home Entertainment」、2020年のIT教育に向けて進化を進める「Education」で構成。今回、公開したのは、声で家電を操作したり、外出先からスマートフォンを使ってPCとチャットしながら家電を操作したりするサービスのほか、動体検知技術の活用により、不審者などを通知する見守りサービス、AIを活用したタイムリーな情報提供などだ。

 「PCをホームコンピューティングのハブにすると、PCが持つCPUパワーを活用することで、即時応答性に優れること、画像や個人情報をPC内で処理することで、PCで処理済みのデータのみを送信でき、プライバシーに配慮できるといったメリットがある。また、使い慣れたPCを活用することで、ホームコンピューティングの便利な世界を手軽に実現できる」とした。

 PCに付属しているカメラとマイクを利用。音声入力で照明やエアコンを操作したり、チャットのやり取りを通じて、家電の電源を入れたり、切ったりできる。慌てて家を出てきてしまいエアコンを消し忘れたかどうか分からない時に、外出先からチャットを通じてエアコンのスイッチを切るといったことが可能だ。

 さらに、PCを留守番モードに設定すると、家の中で人が移動した場合などには動体検知によりそれを確認。チャットを利用してプッシュ通知が行なわれるという。また、Webの情報や個人のスケジュール情報をもとに、AIを活用して、ユーザーのちょうどいいタイミングに最適な情報を提供できるという。例えば、電車の遅れが発生していた場合には、外出時間を早くするようにPCが提案する。

ホームコンピューティングでは、チャットで家電製品を制御するデモストレーション
電車の中からスマートフォンで家電に話しかけながら操作ができる
留守番モードでは、異常な人物を検知してチャットで知らせる

モバイル/セキュリティ分野

 モバイルおよびセキュリティ分野においては、軽量薄型モバイルノートの「LIFEBOOK U937/P」などのデバイスのほか、「なりすまし防止」、「のぞき見防止」、「安全なデータの持ち出し」、「盗難・紛失対策」などのセキュリティ製品を紹介した。

 「手のひら静脈認証により、手をかざすだけでログインでき、なりすましを防止することもできる。また、離席時には自動的に画面をオフにすることができるほか、秘密分散方式ソフトにより、PCとスマートフォンにデータを分散し、これを組み合わせないとファイルが閲覧できないため、スマートフォンを持って離席すれば、他人がファイルを見れないといったことも可能になる。これらの組み合わせによって、のぞき見防止や不正利用防止ができる。さらに、リモートデータ消去ソリューションにより、紛失時や盗難時にPCをロックしたり、データ消去ができるため、リスクを軽減することができる。全ての働く人に、1つ上の利便性と安全性を提供できる」とした。

 画像認識ソリューションとしては、スマートフォンのカメラやアプリを利用した使い方提案を行なった。医療現場において、病室で薬を投与する場合には、看護師がカートと病室を何度も往復して作業を行なっていたが、その場で看護師、患者、薬剤のバーコードをそれぞれ読み取って、間違いがないかを確認できるという。酒類酒卸では追加注文したい酒やビールの瓶や缶を撮影し、それを物体識別技術により、発注する製品を検索。注文数を入力すれば発注作業が完了するというソリューションを展示してみせた。

 このほか、島根富士通での画像認識ソリューションの活用事例として、CTスキャンを活用して、部品下のはんだが確実に接合されているかを検出する技術を紹介したほか、島根富士通と富士通九州ネットワークテクノロジーズの協業によって、生産ラインにおける情報収集に、監視カメラを利用。これまでは1日48,000回のバーコードの読み取りを行なっていたが、これがゼロになった成果を紹介した。

気兼ねなく持ち運べるモバイルソリューションを実現。富士通社内の声を反映して製品化したという
ワークスタイルイノベーションとしてモバイル環境でのセキュリティソリューションなどを紹介
LIFEBOOK U937/Pは13.3型液晶を搭載し、約799gの軽量化と、15.5mmの薄型化を実現
LIFEBOOK P727は360度画面が回転する12.5型液晶搭載のフォルダーコンバーチブルと呼ぶ製品
撮影した画像をもとに発注作業が行なえる。ちなみにこの10型タブレットは生保向けに今年後半に製品化の予定だという
島根富士通ではCTスキャンを活用したはんだ接合部の確認を行なっている
ハンズフリー型LEDライト。耳にかけて手元を照らすことができる。島根大学との共同開発で、医療分野での利用を想定している

近未来PCのデザインコンセプトなど

 一方、富士通デザインによる近未来PCのデザインコンセプト「Advanced Design」では、いくつかのデザインモックアップを展示した。

 ライトユーザー向けとするデザインでは、ノートPCで、キーボードを大きくシンプルにするとともに、手前側にUSBポートやSDカードスロットなどを配置。高齢者や初心者が横から差し込みにくいという課題を解決することを狙ったという。デスクトップPCでは、狭額縁のパネルを使用。浮遊感を持ったデザインを実現したという。リビングに配置しても、PCというイメージを感じさせないものにしている。

 クリエイター向けとする「スタートアップクリエイター」は、実際にクリエイターの作業現場を訪れて、最適なPCの姿を追求したものだ。2画面型のPCで、やや角度をつけた形で設置でき、折りたたんで持ち運ぶことができる。また、ショートカットキーを多用するデザイナーの使い方を想定し、キーボード部をディスプレイ上部に配置して、手前のスペースを空けるといった提案を行なうデザインも公開した。

富士通デザインによる近未来PCのデザインコンセプト「Advanced Design」
ライトユーザー向けデザインのノートPC
手前側にUSBポートやSDスロットなどを配置した
デスクトップPCでは、狭額縁のパネルを使用し浮遊感を持ったデザインを実現
キーボード部をディスプレイ上部に配置したPC
クリエイター向けの2画面型PC
【動画】2画面型PCは、折りたたんで持ち運ぶことができる

 また、ユーザーインターフェイスなどのデザインについても公表した。

 ボックス型デバイスは、そこから画面を投影したり、キーボードを映し出して、そこから入力ができるという提案を行なうもの。学生とのコラボレーションによって開発したものだ。また、木や皮といった素材をパームレストや背面に採用したデザインや、鏡をディスプレイとした使い方、プロジェクタで壁に映像を映し出しながら、直感的な操作でコミュニケーションが取れるといった提案も行なった。

ボックス型デバイスは、画面を投影したり、キーボードを映し出して入力ができる
木や皮といった素材をパームレストや背面に採用したデザイン
鏡をディスプレイとした使い方の提案
プロジェクタで壁に映像を映し出しながら、直感的な操作でコミュニケーションが取れるユーザーインターフフェイスの提案も行なった

 なお、今回の「FCCLの匠 体験会」において、富士通クライアントコンピューティングは、発表時に、777gと公表していたLIFEBOOK UH75/B1の重量が、761gであると発表した。

 富士通クライアントコンピューティングが同製品を2017年1月16日に発表したあと、2月7日に、NECパーソナルコンピュータでは、LaVie Hybrid ZEROの新製品が769gであると発表。13.3型のノートPCでは世界最軽量の座を譲らない姿勢をみせていたが、今回の発表で改めて、富士通クライアントコンピューティングが世界最軽量の座を奪還した格好だ。

 同社では、「個体差があるものの、777gは確実に達成できる数字として公表していた。島根富士通で、量産を開始してから、約300台の平均値をとっても、761gは確実に達成できると考えて、今回、新たな数字を公表した」と述べている。

LIFEBOOK UH75/B1の重量が、761gであると発表
人が乗っても壊れない堅牢ふりをアピール
新たな素材を使うことで、さらなる軽量化が可能になるという。左が新素材、右がアルミ。風船で持ち上がる
島根富士通ではさまざまな国向けのキーボードを作ることが可能だ
フランス語向けのキーボード
アラビア語向けのキーボード
防水対策も富士通ならではの強みの1つ
島根富士通では天板への刻印や印刷など、さまざまなカスタマイズにも対応することができる
歴代のPCを特別展示。富士通研究所のロボット「ロボピン」が、富士通のエポックメイキングなPCを紹介した
1981年に発売したFM-8。64bit RAMを搭載した世界初のPC
1985年に発売したポータブルPC「FM16π」
富士通初のIBM/PC AT互換PC「FMV」
一世を風靡としたFM TOWNS。島根富士通で生産されていた
FM-CARD。1991年に発売した軽量ノートPC
FMV DESKPOWER。DOS/V PCとして人気を博した
2010年に発売したBIBLO LOOX U/G90。タッチ搭載で495gを実現
BIBLO LOOX U。2007年に発売。3G/UMTS内蔵モデル
当時最薄の12型ノートブックのLIFEBOOK Q
1997年に発売したINTERTop
1991年に発売したOASYS POCKET
1990年に発売した重さ1ポンドのポータブルPC。世界初の製品
2008年に発売した「らくらくパソコン」
富士通のPCのキャラクターであったタッチおじさんのグッズも展示
富士通クライアントコンピューティングの現行PCラインアップ