Hothotレビュー
パソコン工房、Ryzen 7ベースで机におけるコンパクトなゲーミングPC
~LEVEL∞「LEVEL-C0B3-R7-RNR」
2017年10月25日 12:25
株式会社ユニットコムのゲーミングPCブランド「LEVEL∞」から、Ryzen 7を搭載したコンパクトゲーミングPCが登場した。
2017年を代表するCPUと言えるAMD Ryzenを、コンパクトな筐体に収め、ビデオカードを搭載することでゲーミングスペックに仕上げたのが本製品だ。ビデオカードも、エントリーグレードではなくアッパーミドルグレードなので、本格的にPCゲームを楽しみたい方に向いている。
Ryzen 7を搭載した卓上Mini-ITXマシン
「LEVEL-C0B3-R7-RNR」は、LEVEL∞のコンパクトゲーミングPC「C-Class」のRyzen 7搭載モデルだ。
C-ClassのRyzen 7搭載PCは3モデルあるが、本製品はミドルグレード。標準搭載CPUはRyzen 7 1700で3モデル横並びだが、標準搭載ビデオカードが異なる。
本製品が搭載するのはGeForce GTX 1060のビデオメモリ6GBモデルだ。おもなスペックは以下のとおりだが、BTOオプションによってカスタマイズも可能なので、あくまで標準構成ということになる。
LEVEL-C0B3-R7-RNRのおもな仕様 | |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 7 1700(3GHz) |
GPU | NVIDIA GeForce GTX 1060(6GB) |
メモリ | 4GB×2 DDR4-2400 |
SSD | 240GB 2.5インチSerial ATA |
HDD | 1TB 3.5インチSerial ATA |
光学ドライブ | なし |
電源 | 500W ATX(80PLUS Silver) |
OS | Windows 10 Home 64bit |
税別価格 | 131,980円 |
CPUは8コア16スレッドのRyzen 7 1700で、Ryzen 7のなかではもっとも低クロックだが、同時にTDP 65Wと発熱も抑えられている。なお、BTOオプションでもCPUは変更できないので、コンパクトな筐体とのトレードオフと言えるだろう。ただし、中段のベンチマークのとおり、性能は十分過ぎるほど高い。
GeForce GTX 1060は、おもにフルHDでのプレイを想定したアッパーミドル級GPU。C-ClassのRyzen 7搭載下位モデルも同じGeForce GTX 1060を採用しているが、ビデオメモリ搭載量が異なる。本製品は6GB、下位モデルは3GBだ。
同じGeForce GTX 1060なので、軽量なゲームでは同性能となることがあるものの、テクスチャ量の増える高画質設定では、ビデオメモリの多い本製品のほうが、フレームレートの低下を抑えられるといったメリットがある。
デュアルドライブ構成のストレージは、ゲーミングPCで性能を求めつつコストを抑えるための定番テクニックだ。高速だが単価が高いSSDはシステムドライブ用に最低限の容量で、膨大なゲームデータをストックするのに、容量単価の安いHDDを組み合わせている。どちらもSATA接続で、容量は240GB SSD+1TB HDDと十分だ。
筐体はMini-ITXマザーボードベースの設計で、サイズ(幅×奥行き×高さ)は177×388×296mm。フルHDゲーミング用のデスクトップGPUを搭載するPCとしては最小クラスに挙げられるだろう。
高さよりも奥行きが長い分、多少フットプリントがあるものの、十分に卓上に置けるサイズと言える。標準構成では光学ドライブが非搭載だが、オプションで天板部前面寄りに搭載可能だ。光学ドライブを内蔵したいという方は、ここに注目してほしい。
フルHDなら最高画質を狙える3D性能
それでは各種ベンチマークソフトのスコアを見ていこう。
今回テストしたのは、「PCMark 10 v1.0.1275」、「3DMark v2.4.3819」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」、「バイオハザード6 ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands」、「VRMark v1.1.1272」、「SteamVR Performance Test」、「CINEBENCH R15」、「CrystalDiskMark 5.2.2」。
PCMark 10のスコアを見ると、どれも平均的なデスクトップPCよりも高いスコアであり、8コア16スレッドのRyzen 7を搭載していることのメリットが現われている。また、ビデオカードを搭載しているため、Digital Content Creationの各スコアも高い。
3DMarkについても、1,920×1,080ドットまでの解像度であれば十分なスコアと言える。DirectX 12の高解像度であるTime Spy Extremeや、DirectX 11の高解像度であるFire Strike Extreme/Ultraあたりは、快適ラインからやや外れるスコアだ。
このようなスコアの傾向から、普段使いなら超がつくほど快適で、フルHDゲーミングも十分な性能と言える。
とくにCPU側は余力があり、たとえばゲームの実況配信などで有効だろう。GPUに搭載されたハードウェアエンコードで配信する分には十分だが、対応していない配信サイトでは、ソフトウェアエンコードが必要となることがある。そうしたとき、8コア16スレッドのCPU性能が有効活用できるだろう。
もちろんゲーム以外でも、CINEBENCH R15のスコアが示すように3DCGや映像のレンダリングなどにも効果的だ。
ベンチマーク結果1 | |
---|---|
PCMark 10 v1.0.1275 - Score | 5,942 |
PCMark 10 v1.0.1275 - Essentials | 7,948 |
App Start-up Score | 9,465 |
Video Conferencing Score | 7,530 |
Web Browsing Score | 7,045 |
PCMark 10 v1.0.1275 - Productivity | 7,293 |
Spreadsheets Score | 9,071 |
Writing Score | 5,865 |
PCMark 10 v1.0.1275 - Digital Content Creation | 6,230 |
Photo Editing Score | 6,573 |
Rendering and Visualization Score | 8,058 |
Video Editing Score | 4,567 |
3DMark v2.4.3819 - Time Spy Extreme | 1,941 |
Graphics score | 1,832 |
CPU score | 2,935 |
3DMark v2.4.3819 - Time Spy | 4,298 |
Graphics score | 4,011 |
CPU score | 7,238 |
3DMark v2.4.3819 - Fire Strike Ultra | 2,973 |
Graphics score | 2,863 |
Physics score | 16,728 |
Combined score | 1,529 |
3DMark v2.4.3819 - Fire Strike Extreme | 5,825 |
Graphics score | 6,029 |
Physics score | 16,798 |
Combined score | 2,608 |
3DMark v2.4.3819 - Fire Strike | 11,154 |
Graphics score | 12,674 |
Physics score | 16,763 |
Combined score | 4,645 |
3DMark v2.4.3819 - Sky Diver | 30,789 |
Graphics score | 40,157 |
Physics score | 15,075 |
Combined score | 25,960 |
3DMark v2.4.3819 - Cloud Gate | 35,160 |
Graphics score | 77,749 |
Physics score | 12,053 |
3DMark v2.4.3819 - Ice Storm Extreme | 136,000 |
Graphics score | 230,676 |
Physics score | 55,818 |
4Kゲーミングについては、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークの最高品質におけるスコアが3,586で「快適」という評価で、中量級タイトルまでなら大丈夫。ただし、平均フレームレートで見ると23.673と30fpsを割り込んでいたので、画質設定を若干引き下げたほうが映像はなめらかになるだろう。
重量級タイトルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsの1,920×1,080ドット時で50fps台後半を記録しており、フルHDなら積極的に高画質が狙っていける。ただし、それよりも上の解像度で60fps前後を狙うと中~低画質あたりだ。
このあたりがGeForce GTX 1060の限界で、高解像度と高画質に妥協したくない方は、BTOオプションからGPUの強化を図りたい。
VR性能は、SteamVR Performance Testの評価で「Ready」。だが、Qualityを見るとグラフは上下がままあり、ほぼ一直線を描く上位GPUと比べると余裕が少ない。
ベンチマーク結果2 | |
---|---|
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(DirectX 11/最高品質) | |
3,840×2,160ドット | 3,586 |
1,920×1,080ドット | 10,868 |
「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」(最高品質) | |
1,920×1,080ドット | 7,689 |
「バイオハザード6 ベンチマーク」(高) | |
1,920×1,080ドット | 16,455 |
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6) | |
1,920×1,080ドット | 35,843 |
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands | |
3,840×2,160ドット低画質 | 42.65fps |
2,560×1,440ドット中画質 | 54.36fps |
1,920×1,080ドット非常に高い | 57.44fps |
VRMark v1.1.1272 | |
Orange Room | 6,824 |
Blue Room | 1,234 |
CINEBENCH R15 | |
OpenGL | 103.83fps |
CPU | 1405cb |
CPU(Single Core) | 146cb |
ストレージは、評価機の場合でSSDがCrucialの「MX300」275GBモデル(275GBモデルであるため、標準構成の240GB SSDとは異なる可能性もある)を、HDDがSeagateの「Barracuda」1TBモデルを搭載していた。
どちらもSATA 6Gbps接続であり、SSD側でもシーケンシャルリードで600MB/sを超えることはなく、533MB/sだが、OSの起動速度や操作時のレスポンスは十分に速い。一方のHDD側は、デスクトップグレードなのでシーケンシャルリードで202MB/sとなる。
SSD側の速度でさらに上を狙いたい方は、BTOオプションからM.2 NVMe SSDを選ぶのがよいだろう。
ちなみに、HDD側のBTOオプションは、容量の選択肢のほか、2.5インチSSDに変更してフルSSD化することも可能だ。
ATXモデルと同程度の価格に抑えたコンパクトゲーミングPC
ケースカラーは、シルバー&ブラックの落ち着きのあるツートン。デザイン面では有機的なデザインの前面吸気口部分が印象的だ。
この吸気口部分は、3Dデータが公開されていて、自分でデザイン・出力すれば、ガラッと印象を変えることもできる。もちろん本製品なら、こうした3Dデザインなどを行なうにも十分な性能を持っている。
吸気口の開口部は直径55mmほど。小径だが内側に8cm角ファンを搭載することもでき、BTOオプションではここにLEDファンを搭載することもできる。
光りモノの好みは人それぞれだが、前面の吸気口の小窓から光る程度なので、ハデというほどではなく、何より980円でカスタムできる。また、本製品では電源LEDが側面にあり見づらいので、その代わりとしてならアリだと思う。
側板は左右ともメッシュ構造だ。
内部はかなりパーツの密度が高いが、興味深いのがATX電源を採用しているところだろう。
一般的に小型のPCではATXよりも小さなSFX電源を用いることが多い。本製品の場合、奥行きが短いタイプであるがATXでコストを抑え、効率面でも80PLUS Silver認証のまずまず高効率な500W電源を採用している。もちろん効率が高いほどムダな発熱も抑えられる。
マザーボードについては、製品ロットによって変更される可能性もあるが、評価機ではAMD B350チップセットを搭載するBIOSTAR「B350GTN」を採用していた。メモリスロットは2基でDDR4-2400 4GBモジュールが2枚装着済み。SATA 6Gbpsポートは4基で、2基が使用済みだ。
そのほかにはM.2スロットが1基あるが、マザーボードの裏面にあるため、増設時にはバラしが必要となるのであまり現実的ではない。唯一の拡張スロットであるPCI Express 3.0 x16スロットは、GeForce GTX 1060カードが搭載済みだ。
ビデオカードもロットしだいで変更される可能性があるが、MSI製の「GeForce GTX 1060 6GB OC」が搭載されていた。製品名のとおり、若干のOC仕様で、GPUクロックは定格の1,506MHzに対して1,544MHz、ブーストクロックも定格の1,708MHzに対して1,759MHzとなっている。
ちなみに、ケースの設計自体はより長いビデオカードにも対応している。BTOカスタムメニューからGeForce GTX 1080 Tiカードに変更できるため、フルハイトの長さ266.7mmまでのカードまで搭載できるようだ。ほかGeForce GTX 1070や1080の選択肢も用意されている。
標準構成の2基のストレージは、マザーボードと並列に置かれたサブフレーム上に搭載されている。サブフレーム自体はネジ3つを外せばスライド式に着脱可能。このサブフレーム上には、CPUクーラーの直上部分に12cm角ファン×1基が装着されており、外気をスムーズにCPUクーラーへと導いている。
CPUクーラーはAMD純正の「Wraith Spire」。C-Classの製品自体には簡易水冷モデルもあるが、本製品は空冷だ。そしてCPUクーラーの後ろに9cm角の排気用ケースファンが搭載されている。
構造を見ていくと、Mini-ITXなりに拡張性はかぎられるが、基本的に標準規格のパーツを用いており、ここが豊富なBTOオプションを実現できている理由と言える。しかもMini-ITXマザーボードはもちろん、ATX電源やデスクトップ向けビデオカードを採用しているため、小さくても特殊な規格のものと比べてコストが抑えられる。
購入後にあとからパーツを追加・交換していくことも可能だが、内部の密度を考えると、やや高めの自作スキルが求められる。とくにメンテナンスのさいには、各ステップで写真を残しておくのがよいだろう。
先にも述べたが、実際に電源を投入して気になったのは動作音だ。左右側板がメッシュ構造であることに加え、前面の吸気口からも音が漏れるようである。シングルファンのビデオカード、リテールのCPUクーラーも、動作音としてはやや大きめだ。
ゲーミングPCであれば仕方のない程度であるが、静音性を重視するのであれば各自でカスタムするか、あるいはATXモデルを選ぶのがよいだろう。
本製品は、コンパクトとゲーミング性能の両立を狙った製品である。BTOオプションからより上位のGPUを選べるものの、CPUについては上限が決まっている。
あくまでも最上位を狙うものではないが、普段のPC作業とフルHDゲーミングについては十分に強力な性能である。131,980円という価格も、ATXベースの似たような構成の製品と比べて大きく差があるわけではなく、数千円の価格差でPCの設置に要するスペースを節約できる。
ここまで挙げた性能、サイズ、価格という3点で見ると、コンパクトゲーミングPCのなかでも、かなりバランスのよい、よくできた製品と言えるだろう。