Hothotレビュー
手のひらに載る超小型ゲーミングPC「G-Tune NEXTGEAR-C」
~GeForce GTX 1060搭載で究極の可搬性に挑戦
2017年10月2日 12:11
マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」に、新たなラインとして「NEXTGEAR-C」が投入された。
最大の特徴は、「G-Tuneデスクトップシリーズ最小」をうたっているとおり、コンパクトなサイズにまとめられたゲーミングPCであること。これまで「G-Tune」ブランドのデスクトップPCで最小だった「LITTLEGEAR」よりも大幅にコンパクトになり、重量比では4分の1未満。PC的に表現すると、ATX電源を少し厚くした程度のサイズだ。
同社はPCゲームなどのさまざまなイベントで機材協力をしているが、その中で「自分のキーボードやマウスを使いたい」、「持ち運びができるものが欲しい」といった声を受けて開発したという。昨今はLANパーティーやVR目的の利用などで、高性能かつ可搬性に優れたPCが求められる機会も多いようだ。もちろん個人用途においても、「なるべく小さなゲーミングPCが欲しい、ただしノートはお断り」という人は大いに注目すべき製品だ。
ノート用コンポーネントながらスペックに妥協なし
「G-Tune NEXTGEAR-C」はスペックの違いで4モデルが用意されている。今回お借りしたのは、最上位モデルの「NEXTGEAR-C ic100GA1」で、スペックは下記のとおり。さらにBTOでストレージの変更も可能だ。
NEXTGEAR-C ic100GA1のおもな仕様 | |
---|---|
CPU | Core i7-7700HQ |
チップセット | Intel HM175 |
GPU | GeForce GTX 1060(3GB) |
メモリ | 32GB DDR4-2400 |
SSD | 512GB Intel 600p(NVMe/M.2/PCI Express×4) |
HDD | 1TB |
光学ドライブ | なし |
電源 | 180W(ACアダプタ) |
OS | Windows 10 Home 64bit |
税別価格 | 199,800円 |
スペックを見ればわかるとおり、ノートPC向けのコンポーネントを使用している。ディスプレイは別売りで、ノートPCの本体部分だけで小さく組み上げたPCといった風情だ(形は異なるし、バッテリも搭載していないが)。小型のPCはほかにも多数存在するが、単体GPUを搭載したゲーミングPCとなると相当に限られてくる。
CPUは4コア8スレッドの2.8GHz、Turbo Boost時で最大3.8GHzのCore i7-7700HQ。GPUはGeForce GTX 1060を搭載しており、ミドルクラスのデスクトップゲーミングPC程度の性能があることは予想できる。メインメモリは2スロットで増設不可だが、最初から最大量の32GBを搭載しており、不足することはまずないだろう。
スペース的に光学ドライブは非搭載(購入時に外付けの光学ドライブを追加可能)。サイズ的に拡張性の低さはやむなしと思うところだが、端子は充実している。前面にUSB 3.0×2(電源オフ時も給電可能)とSDカードリーダ、背面にUSB 3.0×3(うち1つはType-C)、USB 2.0×4、HDMI×2、DisplayPort×1、Gigabit Ethernet、ヘッドフォン出力・マイク入力コンボ端子。ヘッドフォン・マイク端子は前面に欲しかったが、本体サイズや端子の充実度を考えれば仕方ないとも思える。
本体サイズは、158×143×87mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.6kg。片手で掴み上げられるサイズではあるが、持ち手部分はなく、それなりの厚みもあるので、片手で取り扱うときは落とさないよう注意は必要だ。
4K対応も可能な高性能。ストレージも充実
続いて各種ベンチマークソフトのスコアを見ていきたい。利用したのは、「3DMark v2.3.3732」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」、「バイオハザード6 ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R15」、「CrystalDiskMark 5.2.2」。
ベンチマークスコアの結果を見ると、フルHDクラスのゲームであれば十分すぎる余裕がある。同じGeForce GTX 1060を搭載したノートPC「Razer Blade」(薄型軽量ゲーミングノート「Razer Blade」がモデルチェンジ参照)と比較すると、CPUが新型になった分などでわずかに良好なスコアだが、ほぼ同程度のスコアと言っていい。
4Kゲームについては、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の結果は「やや快適」となっている。最高品質でのベンチマークなので、画質を落とせばそれなりには動かせる程度だ。本体のサイズから考えれば、これだけの性能が発揮できれば上等だろうと思う。
ベンチマーク結果 | |
---|---|
「3DMark v2.3.3732 - Time Spy」 | |
Score | 3,479 |
Graphics score | 3,367 |
CPU test | 4,292 |
「3DMark v2.3.3732 - Fire Strike」 | |
Score | 9,052 |
Graphics score | 10,518 |
Physics score | 10,620 |
Combined score | 3,995 |
「3DMark v2.3.3732 - Sky Diver」 | |
Score | 24,101 |
Graphics score | 34,036 |
Physics score | 10,108 |
Combined score | 21,661 |
「3DMark v2.3.3732 - Cloud Gate」 | |
Score | 25,100 |
Graphics score | 68,442 |
Physics score | 7,804 |
「3DMark v2.3.3732 - Ice Storm Extreme」 | |
Score | 115,085 |
Graphics score | 189,722 |
Physics score | 48,418 |
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(DirectX 11/最高品質) | |
3,840×2,160ドット | 3,126 |
1,920×1,080ドット | 10,178 |
「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」(最高品質) | |
1,920×1,080ドット | 10,281 |
「バイオハザード6 ベンチマーク」 | |
1,920×1,080ドット | 13,565 |
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6) | |
1,920×1,080ドット | 29,999 |
「CINEBENCH R15」 | |
OpenGL | 97.30fps |
CPU | 748cb |
CPU(Single Core) | 158cb |
SSDはIntel製「SSDPEKKW512G7」。M.2/PCIe接続の高速ストレージだけあって、シーケンシャルリードでは1.8GB/sを超えている。ライトは500MB/s程度だが、ゲームの利用であれば圧倒的にリードが多く、十分な性能と言える。
HDDはWestern Digital製「WD10JPVX-22JC3T0」。2.5インチとはいえ、SSDとHDDの両方を搭載できるのはありがたい。BTOで2TBタイプに変更も可能なので、ストレージの面は安心できる。
ゲーミングPCの小型化の限界に挑戦した1台
続いて実際に使ってみた感触をお伝えする。外見はほぼ全体がブラックで統一されているが、本体前面にある電源ボタンだけが赤色になっている。天板は僅かに凹凸のある未来的なデザイン。左右はメッシュ風で、一部は排熱用の穴が開いている。
遠目に見ると落ち着いているが、よく見ると各所に主張がある。小型でも安っぽく見えない質感を出そうとしている。ただ、個人的には10万円を軽く超える製品だという高級感は感じにくい。筆者の好みも混じるが、ゲーミングPCにありがちな未来的デザインで格好良さを目指すより、PlayStation 4やXbox Oneのようなゲーム機に見られる、より大人向けのシンプル&モノトーンのデザインの方が似合うのかなと思う。
電源を入れると、電源ボタンのすぐ横にある細長いランプが白く点灯する。ほかに光る部分はなく、光り方も広くぼんやりした感じで、デザイン的に面白い。やはりゲーミングPCとしてはおとなしい印象で、置き場を選ばないのはメリットだ。
電源を投入してからの起動は、PCIeのSSDを使用しているだけあってとても早い。全体的にキビキビした動きで、十分なマシンパワーがあることは感じられる。ベンチマークテストのスコアと実際の使用感の両面で、デスクトップタイプのゲーミングPCとして十分な性能を発揮しているのがわかる。
性能面での不満はないのだが、気になるのは排熱処理。アイドル時にもファンの音が少々聞こえる。小型のファンから発せられる甲高い音質なので、静かな環境だと常に聞こえる。また一般的なソフトの起動などのちょっとしたCPU負荷でも、すぐにファンが高回転し始めて、ファンノイズが強くなる。甲高いファンノイズが一定しないのは使用中に気になりやすい。
さらにベンチマークテストでGPUにも負荷をかけると、今度は少し低めのファンノイズが出始める。おそらくGPU用のファンが回り始めていると思われ、本体右側からかなりの風量で熱風が出る。CPUファンも回るので、2つのファンから騒音が出る。
音量自体はさほど大きくはなく、同クラスのゲーミングノートPCと大差はない印象だ。ただ本機は製品の性質上、机の上などユーザーに近い位置に置かれることになる上、ディスプレイなどで音が遮断されることもないので、どうしても騒音が聞こえやすい。ヘッドフォンをしてユーザー側が騒音を遮断してしまうのが手っ取り早いのだが、その端子が本体後方にあるのもまた惜しい。
ノートPCではない、小型のゲーミングPCというポジションを考えれば、このサイズと性能は唯一無二と言っても差し支えない価値があるのは間違いない。特に前面に2つのUSB端子があるので、各種ゲーミングデバイスを使ったゲームプレイや、VRヘッドセットなどと合わせて使うには融通が利く。製品コンセプトに魅力を感じた人は、ぜひ実店舗で実物を見て確かめて欲しい。
純粋にゲーミングPCとしての完成度を考えるなら、一回り大きくなってもいいので、排熱処理に余裕を持たせてノイズ対策を考えてもよかったと思う。とはいえ、コンパクト化を究極まで求めた結果としてできた製品だと思うし、こんなマニアックな製品を世に出してくれたこと自体を大いに評価しなければならない。また使用中にPCの動作が不安定になることは一切なかったことも付け加えておきたい。
最後に、本機を分解する許可をいただけたので、可能な限り内部を開いて写真をお見せしておこう。分解前から想像できたことだが、本機はコンパクト化を最優先していることから、内部にアクセスしてパーツを入れ替えるなどは基本的に考慮されていない。分解はかなり難しく、本体を傷つけたり、最悪の場合、破損して動作しなくなる可能性もある。実際の製品では分解しないことをお勧めしておく。