Hothotレビュー
狭額縁化で小型軽量を追求した「ThinkPad X1 Carbon 2017年モデル」
2017年5月15日 06:00
レノボ・ジャパンは、ビジネス向けモバイルノート「ThinkPad X1 Carbon」の2017年モデルを2017年2月より受注を開始し、販売している。
高性能かつ堅牢性に優れ、携帯性も高いことから、ビジネスモバイルユーザーから根強い支持を集めているシリーズだが、2017年モデルでは従来モデルよりも小型軽量化が突き詰められ、さらに魅力が向上している。発売からやや時間が経過しているが、今回改めて取り上げたいと思う。直販モデルの販売価格は129,600円から。
狭額縁化により筐体を小型軽量化
ThinkPad X1 Carbon 2017年モデルは、見た目こそ従来モデルと大きく変わっていないように見えるが、実際には筐体を含めてほぼフルモデルチェンジとなっている。
まず、大きな変更点が筐体だ。X1 Carbonシリーズでは液晶ディスプレイに大型の14型パネルを採用していることもあって、従来モデルの本体サイズは333×229×14.95~16.45mm(幅×奥行き×高さ)と、13.3型液晶を搭載する一般的なモバイルノートPCよりもひとまわり大きかった。しかし2017年モデルでは、本体サイズが323.5×217.1×15.95mm(同)と、13.3型モバイルノートPCとほぼ同等のサイズに小型化されている。
この小型化の最大の要因となるのが、液晶ベゼルの狭額縁化だ。左右は約6mm、上部は約10mm(いずれも実測値)と、ベゼル幅が従来よりもかなり狭められたことによって、フットプリントの小型化を実現。実際に、13.3型液晶搭載のモバイルノートPCと比較して、ほぼ同等のサイズになっていることがわかる。
筐体素材は、製品名からもわかるように、従来同様カーボンファイバー素材。さらに、天板部分に「高精度フレーム強化3層構造」と呼ばれる新構造を採用(詳しくはレノボ、シェイプアップして15時間駆動となった「ThinkPad X1 Carbon」の記事を参照)するなど、筐体成形にもさまざまな新技術を取り込むことで、軽さと堅牢性を高いレベルで両立。実際に、液晶部や本体側をやや強い力でひねってみても、たわみは非常に少なく、堅牢性に関する不安感は皆無だ。
重量は公称で約1.13kgと、わずかではあるが従来モデルの約1.18kgからの軽量化を実現。モバイルノートPCでは、1kgを切る軽さを追求した製品が増えてきているが、14型液晶を搭載していることを考えると、この重量も十分に満足できる軽さと言える。なお、試用機の実測重量は約1,138.5gだった。
サイズはコンパクトとなったが、デザインは従来モデルを踏襲し、一目でThinkPadシリーズだとわかるものとなっている。筐体色はブラックで、なめらかな手触りのマット仕上げとなっている。また、2017年モデルではシルバーも用意されており、そちらは2017年5月中旬より販売開始予定となっている。
14型フルHDまたはWQHD液晶を搭載
ディスプレイは、従来モデル同様、14型液晶を採用している。パネルの種類はIPSで、表示解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)。タッチパネルは搭載しない。また、現時点ではまだ用意されていないが、WQHD(2,560×1,440ドット)表示対応の液晶パネルも搭載可能となっており、直販モデルではBTOで選択可能となる予定。なお、WQHD液晶が用意される時期は、現時点では未定だ。
液晶表面は非光沢処理が施されており、外光の映り込みをほとんど感じることがなく、長時間の文字入力でも疲れにくい。また、IPSパネルのため視野角も非常に広い。さらに、表示品質もかなり優れており、非常に鮮やかな発色が実現されている。特に赤系の鮮やかさは目を見張るものがある。これならデジタルカメラで撮影した写真や動画の編集作業も申し分なく行なえそうだ。
定評あるキーボードで快適な入力が可能
ThinkPadシリーズのキーボードは、従来より使い勝手の良さに定評があるが、もちろんX1 Carbon 2017年モデルにもしっかり受け継がれている。
キーボードには、6列配列のバックライト搭載フルサイズキーボードを採用。HomeやEnd、PgUp、PgDnなど、多くの製品で省かれFnキーとの併用になるようなキーもしっかり用意されている。また、ストロークは約2mmと、薄型モバイルノートPCとして破格の深さのストロークが確保されており、しっかりとしたクリック感と合わせて打鍵感は競合製品を圧倒。もちろん主要キーのキーピッチは約19mmのフルサイズ。配列も無理な部分はまったくなく、タッチタイプも軽快に行なえる。長時間のキーボード操作を伴う作業も、これなら軽快にこなせるだろう。
【お詫びと訂正】初出時に7列キーボードとしておりましたが、6列の誤りです。お詫びして訂正させていただきます。
また、ポインティングデバイスも従来同様に、スティックタイプのTrackPointとパッドタイプのクリックパッド双方を備える「ThinkPadクリックパッド」を搭載。ホームポジションから手を移動させずにカーソル操作が可能なTrackPointは、1度慣れると手放せなくなる快適さを実現してくれる。また、独立した3ボタンクリックボタンの用意も、操作性を高める大きな要因だ。
パッドタイプのクリックパッドも、非常になめらかな手触りで、こちらも軽快なカーソル操作が可能。そして、クリックパッド内蔵のクリックボタンには、静音の「Quiet Metal Dome(QMD)スイッチ」を採用しており、静かな場所でも周囲を気にせず利用可能だ。
非常に豊富な外部ポートを用意
基本スペックは、直販モデルではBTOで細かく変更可能となっている。もちろん、2017年モデルということで最新のシステムが採用されている。CPUは第7世代Core i5またはCore i7を搭載し、メインメモリは8GBまたは16GB搭載可能。内蔵ストレージは、最大1TBのSSDを搭載可能で、SATAモデルだけでなくMVNe PCIe SSDも選択可能。
無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LANとBluetooth 4.1を標準搭載。さらにオプションでLTE対応のワイヤレスWANやWiGig対応無線LANモジュールの搭載も可能となっている。ワイヤレスWANがサポートする周波数帯域は、FDD-LTEがBand 1/3/8/18/19/21/28、TD-LTEがBand 41、3G(WCDMA)がBand 1/6/8/9/19。また、WiGig対応無線LANモジュール搭載時には、オプションで用意されている「ThinkPad WiGig ドック」が利用可能となる。なお、今回の試用機では、CPUはCore i7-7600U、メインメモリ16GB、512GB MVNe PCIe SSD、WiGig対応無線LANモジュール、ワイヤレスWANが搭載されていた。
また、キーボード下部の右パームレストにはWindows Hello対応のタッチ式指紋認証センサーを標準搭載。このほか、Windows Hello対応の赤外線カメラも搭載可能とされているが、こちらは現時点ではまだBTOメニューに用意されておらず、提供時期は未定。
側面のポート類が非常に豊富な点も、X1 Carbon 2017年モデルの特徴の1つ。左側面には、Thunderbolt 3およびUSB 3.1(Gen 2)対応のUSB Type-Cポートを2ポートと、USB 3.0ポートが1ポート、HDMI出力、付属のGigabit Ethernetアダプタ接続用の専用コネクタを用意。後部側面にはワイヤレスWAN用のSIMカードスロットとmicroSDカードスロット、右側面にはUSB 3.0ポートが1ポートとオーディオジャックをそれぞれ備える。特に、Thunderbolt3/USB 3.1対応のUSB Type-Cポートが新たに用意されたことで、拡張性が大きく向上している。
ところで、従来モデルでは、角形コネクタの電源コネクタが用意されていたが、X1 Carbon 2017年モデルはUSB Type-C経由のUSB PDに対応。USB Type-Cポートに付属のUSB PD対応ACアダプタを接続することで、給電および内部バッテリの充電を行なうようになっており、専用の電源コネクタは省かれている。
実測で12時間超の長時間駆動を確認
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.7.613」、「3DMark Professional Edition v2.3.3693」、Maxonの「CINEBENCH R15」の3種類。比較用として、NECパーソナルコンピュータの「LAVIE Hybrid Zero PC-HZ750GA」の結果も加えてある。
ThinkPad X1 Carbon 2017年モデル | LAVIE Hybrid Zero PC-HZ750GA | |
---|---|---|
CPU | Core i7-7600U(2.8/3.9GHz) | Core i7-7500U(2.7/3.5GHz) |
チップセット | ― | ― |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 620 | Intel HD Graphics 620 |
メモリ | LPDDR3 SDRAM 16GB | LPDDR3 SDRAM 8GB |
ストレージ | 512GB SSD(NVMe PCIe) | 256GB SSD(SATA) |
OS | Windows 10 Pro 64bit | Windows 10 Home 64bit |
PCMark 8 v2.7.613 | ||
Home Accelarated 3.0 | 4170 | 3946 |
Creative accelarated 3.0 | 5052 | 4868 |
Work accelarated 2.0 | 5017 | 4951 |
Storage | 5059 | 4983 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL (fps) | 51.76 | 47.55 |
CPU | 334 | 343 |
CPU (Single Core) | 146 | 144 |
3DMark Professional Edition v2.3.3693 | 3DMark Professional Edition v2.2.3509 | |
Cloud Gate | 3112 | 6897 |
Graphics Score | 3024 | 8897 |
Physics Score | 3469 | 3861 |
Sky Diver | 1382 | 4178 |
Graphics Score | 1219 | 4061 |
Physics Score | 5729 | 4981 |
Combined score | 1218 | 4075 |
結果を見ると、PCMark 8については、スペック通りのスコアが得られていることがわかる。第7世代 Core i7のUプロセッサの中でも上位のモデルを搭載していることもあって、スコアが良好なのはもちろん、実際にアプリケーションを利用しても、非常にキビキビと快適に動作する。
もちろんそれには、メインメモリが16GB搭載されているという点も大いに影響しているのは間違いなく、特に画像や動画の処理というように、大容量のメモリを必要とするアプリケーション利用時には、メモリ8GB搭載モデルよりも間違いなく快適に利用できる。
また、CINEBENCHの結果も、ほぼスペック通りと言える。CPUマルチコアのスコアが比較のLAVIE Hybrid Zeroを下回っているが、これはほぼ誤差の範囲内と言えるため、大きな問題はないと考えられる。
それに対し、3DMarkの結果は、LAVIE Hybrid Zeroのスコアを大きく下回っている。ベンチマークテスト実行直後は空冷ファンがほぼフル回転になるが、その後すぐファンの回転数が落ちるとともに、CPUの動作クロックも低下する症状を確認したことから、今回試用した個体で、冷却機構に何らかの問題があり、CPUの性能をフルに引き出せていないものと考えられる。そういった意味で、今回の試用機でのベンチマークテストの結果は、全て参考値として見てもらった方がいいかもしれない。
続いてバッテリ駆動時間だ。X1 Carbon 2017年モデルの公称の駆動時間は約15時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver2.0での数字)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約12時間9分だった。バックライト輝度が50%と、比較的厳しい条件でこれだけの駆動時間が確保されているなら、通常の利用でも余裕で10時間を超える利用が可能なのはもちろん、液晶輝度を落とせばさらなる長時間駆動も可能となるはず。1日の外出だけでなく、1泊2日の出張もACアダプタ不要でこなせそうだ。
タッチ不要のモバイルノートPCを探している人にお勧め
X1 Carbon 2017年モデルは、スペック面の進化を実現しつつ、従来モデルからひとまわりコンパクトとなったことで、携帯性が向上。また、バッテリ駆動時間も大幅に伸びたことで、モバイルノートとしての魅力が大きく向上している。もちろん、従来同様のキーボードやポインティングデバイスの優れた利便性や、毎日持ち歩くとしても不安のない堅牢性も、大きな魅力となっている。
唯一懸念に感じる部分があるとすれば、タッチ操作やペン入力に対応していないという点と、フルサイズのSDカードスロットが用意されていないという点あたりだが、不要な人にとっては、まったく気にならないはず。またどうしてもタッチやペン入力が必要ということであれば、ThinkPad X1 Yogaという選択肢がある。X1 Carbonは、文字入力を中心とした作業を快適にこなせるビジネスモバイルPCとして非常に完成度が高く、ビジネスシーンで毎日持ち歩くモバイルノートPCを探しているなら、現時点で最も最初に考慮すべき製品と言える。