Hothotレビュー
どこにでも携帯できる8型お絵描きタブレット。ドスパラ「raytrektab DG-D08IWP」
2017年5月1日 06:00
ドスパラは、4,096段階の筆圧感知機能を備えたデジタイザスタイラスを同梱した8型Windowsタブレット「raytrektab DG-D08IWP」を3月14日に発表、4月27日に販売を開始した。
本製品にはセルシスの定番ペイントツール「CLIP STUDIO PAINT DEBUT」のシリアルコードがバンドルされており、いつでも気軽にお絵描きを楽しめるタブレット端末として開発された。今回はその製品版を借用できたので、気になるお絵描きツールとしての使い勝手も中心にレビューしていこう。
購入してすぐお絵描きを始められる8型タブレット
raytrektabは、OSにWindows 10 Home 64bit、CPUにAtom x5-Z8350(1.44~1.92GHz)、メモリにDDR3L-RS 1600 4GB、ストレージに64GB eMMC、ディスプレイに8型(1,280×800ドット、マルチタッチ対応)を搭載した1モデルのみが用意される。
【表1】raytrektab DG-D08IWPの主要スペック | |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64bit |
CPU | Atom x5-Z8350(1.44~1.92GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 400(200~500MHz) |
メモリ | DDR3L-RS 1600 4GB |
ストレージ | 64GB eMMC |
ディスプレイ | 8型(1,280×800ドット、マルチタッチ対応) |
通信 | IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | Micro HDMI端子、Micro USB端子(給電兼用)、microSDカードスロット、200万画素前面カメラ、200万画素背面カメラ、ヘッドフォンジャック |
バッテリ駆動時間 | 約4時間 |
本体サイズ | 214×128×10.1mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 400g |
本体色 | ブラック |
Microsoft Office | なし |
ペン | 同梱(4,096段階の筆圧感知機能付き) |
直販価格 | 49,800円 |
※価格は4月27日調べ |
本体サイズは214×128×10.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量は400g。カラーはブラックのみ。ディスプレイのベゼルは実測で天地が約20mm、左右が約10mmとなっており、最近の狭額縁ディスプレイを搭載したAndroidタブレットなどと比べると、ディスプレイサイズのわりには筐体サイズが明らかに大きく感じる。ただし、お絵描きタブレットとしてはある程度ベゼル幅が広い方が握りやすいという利点もある。
ディスプレイは光沢タイプで、その上に同じくグレアタイプのディスプレイ保護フィルムが貼られている。非光沢タイプの保護フィルムを好む人も多いので、できれば別売のアクセサリとして用意してほしい。
背面パネルには縦方向にヘアライン加工が施されており、その上には製品名、シリアルナンバー、端子・ボタンの機能を示すアイコンなどが印字されている。また製造番号はシールで貼られている。ヘアライン加工が細かすぎるためか手脂などは少々目立つが、全体的には高級感のあるデザインに仕上がっている。
細部も見ていこう。本体前面には200万画素前面カメラ、電源ランプ、Windowsホームボタン、本体上面にはヘッドフォン端子、Micro USB端子、Micro HDMI端子、スピーカー、本体右側面には電源ボタン、ボリュームボタン、microSDカードスロット、本体背面には200万画素背面カメラが備えられている。
本体以外に同梱されるのは、Micro HDMI-HDMI変換ケーブル、小冊子(クイックガイド、はじめにお読みください、「CLIP STUDIO PAINT DEBUT」のシリアルコード、サポート用QRコード)、ACアダプタ、Micro USB-USB変換ケーブル、替え芯2本、芯抜き、筆圧感知機能付きペン。付属のACアダプタは入力100-240V、出力5V/2A、容量10Wで、スマートフォン用として広く販売されているUSB充電器を利用できる。
素早いペンさばきに追従する高速レスポンス、書き味は3種類から選べる
「本物の紙に描いているようななめらかな描き心地」を売りにしている本製品は、デジタイザスタイラスに「Wacom feel IT technologies」が採用されている。このデジタイザスタイラスは4,096段階の筆圧感知機能を備えており、電池が不要なこと、そしてそのぶん実測約6.2gと非常に軽いというのが特徴だ。
本製品はそれほど高性能なプロセッサを搭載していないことから、実際に書いてみるまではレスポンスに不安を感じていた。しかし、まったくの杞憂だった。画数の多い文字を素早く書いても、一筆書きで素早く連続して曲線を描いても、多少描線が遅れることはあっても、筆記に支障が出るほどレスポンスが遅れることはなかったし、曲線が直線になってしまうような誤描画も発生しなかった。ペン先の追従性に不満を感じることはない。
書き味については人によって好みが分かれるだろうが、滑らかな書き心地の「標準芯」、マーカーのような書き心地の「フェルト芯」、粘り気のある書き心地の「エラストマー芯」の3種類が選べるので、自分に合った芯が見つかるはずだ。個人的には2Bぐらいの柔らかな鉛筆や、1.6mmぐらいの極太ボールペンのような書き心地の「エラストマー芯」が気に入った。ただし、芯が柔らかいぶん摩耗も激しいはずなので、替え芯も早く単体で購入できるようにしてほしい。
試用時に違和感があったのが消しゴムボタン。「消しゴム」というイメージとは大きく違っており、かなり硬質な感触なのだ。機能的にはまったく問題はないのだが、「本物の消しゴムをかけているような粘りのある消し心地」も多少は意識してほしかったところだ。
お描きタブレットとして最後に触れておきたいのがディスプレイサイズ。筆者は普段12.9インチの「iPad Pro」を使っているせいもあって、本製品の8型ディスプレイは当初かなり狭く感じた。しかし、2~3日試用している間にすっかり慣れてしまった。筆者の場合は文字を書く場合も、イラストを描く場合も、それほど長くペン先を走らせることはない。全体をチェックしたいときに狭く感じることはあっても、書くこと自体にはなんら支障はないというのが筆者の率直な感想だ。
とは言えこれはあくまでも描くことについては素人の筆者の考え。アマチュア、プロを問わず本気でイラストを描きたいと思っている方は、下記のタッチアンドトライイベントでぜひ実際に試してほしい。
raytrektabのタッチアンドトライイベント情報 | |
---|---|
4月6日(木)~ | ドスパラ秋葉原本店展示コーナー |
4月30日(日) | COMIC1☆11(東京ビッグサイト、東4・5・6ホール 企業11) |
5月3日(水)/4日(木) | SUPER COMIC CITY 26(東京ビッグサイト東1~8ホール/西3・4ホール) |
5月6日(土) | COMITIA120(東京ビッグサイト) |
ディスプレイ画質、サウンド品質は割り切りが必要
本製品のディスプレイ解像度は1,280×800ドット(189dpi)。輝度や色域については公表されていない。今回、raytrektabの画質をチェックするため、手持ちの「Surface Pro 4」と並べて同じ画像を表示させてみた。価格差を考えれば当然だが、比べてみるとraytrektabは輝度が暗く、色域も狭く感じる。カラーイラストの発色にこだわるのであれば、最終工程で色調整されたディスプレイで色味をチェックした方がいい。
サウンド機能についてはモノラススピーカーが採用されていることからも分かるとおり、あくまでも基本装備としての位置付けだ。最大ボリュームにしても迫力を感じることはないし、音自体もかなりこもっている。もし本製品でミュージックビデオや音楽を本気で鑑賞したいのなら、外付けスピーカーやヘッドフォンが必須だ。
カメラ機能も率直に言ってオマケレベルだ。撮影した写真はイラストのデッサンには利用できるだろうが、背景素材に使うには解像度が1,280×720ドットと低すぎる。もしイラストの背景素材が必要なら、スマートフォンで撮影して、それをクラウドサービスなどを経由してraytrektabに転送したほうがいい。
CPU性能が直結するベンチマークは苦戦
最後にベンチマークを見てみよう。今回は比較対象機種として、同じくCheery Trail世代の「Atom x7-Z8700(1.60~2.40GHz)」を搭載したマイクロソフトの2in1 PC「Surface 3」のベンチマークスコアを流用している。
使用したベンチマークプログラムは下記のとおり。
・総合ベンチマーク「PCMark 8 v2.7.613」
・総合ベンチマーク「PCMark 7 v1.4.0」
・3Dベンチマーク「3DMark v2.3.3693」
・CPU、OpenCLのベンチマーク「Geekbench 4.1.0」
・CPUのベンチマーク「Geekbench 3.4.1」
・CPU、OpenGLのベンチマーク「CINEBENCH R15」
・ゲーミングPCベンチマーク「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」
・ゲーミングPCベンチマーク「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」
・ゲーミングPCベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」
・ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 5.2.1」
・「Adobe Photoshop Lightroom CC」RAW画像の現像時間を計測
・「Adobe Premiere Pro CC」フルHD動画の書き出し時間を計測
・「BBench」連続動作時間を計測
なお、Surface 3は一部バージョンの古いベンチマークソフトを利用している。今回の比較はあくまでも参考に留めてほしい。
下記が検証機の仕様とベンチマークの結果だ。
【表2】検証機の仕様 | ||
---|---|---|
raytrektab DG-D08IWP | Surface 3 | |
CPU | Atom x5-Z8350(1.44~1.92GHz) | Atom x7-Z8700(1.6~2.4GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 400(200~500MHz) | Intel HD Graphics(200~600MHz) |
メモリ | DDR3L-RS 1600 SDRAM 4GB | LPDDR3-1600 SDRAM 4GB |
ストレージ | 64GB eMMC | 128GB eMMC |
ディスプレイ | 8型(1,280×800ドット) | 10.8型(1,920×1,280ドット) |
OS | Windows 10 Home 64bit | Windows 8.1 Update 64bit |
【表3】ベンチマーク結果 | ||
PCMark 8 v2.7.613 | ||
Home Accelarated 3.0 | 1227 | 1685 |
Creative Accelarated 3.0 | 1531 | 1913 |
Work 2.0 | 計測不可 | 1269 |
PCMark 7 v1.4.0 | ||
PCMark score | 2384 | 2848 |
3DMark v2.3.3693 | ||
Time Spy | 実行不可 | - |
Fire Strike Ultra | 0(互換性なし) | - |
Fire Strike Extreme | 89(互換性なし) | - |
Fire Strike | 195 | 288 |
Sky Diver | 840 | 1198 |
Cloud Gate | 1600 | 2459 |
Ice Storm Extreme | 11649 | - |
Ice Storm | 17486 | 25107 |
CINEBENCH R15 | ||
OpenGL | 9.16 fps | 15.07 fps |
CPU | 94 cb | 142 cb |
Geekbench 4.1.0 | ||
32-bit Single-Core Score | 913 | - |
32-bit Multi-Core Score | 2442 | - |
64-bit Single-Core Score | 960 | - |
64-bit Multi-Core Score | 2532 | - |
OpenCL | 5411 | - |
CUDA | - | - |
Geekbench 3.4.1 Intel(32-bit) | ||
Single-Core Score | 796 | 936 |
Single-Core Score Integer | 912 | - |
Single-Core Score Floating Point | 649 | - |
Single-Core Score Memory | 859 | - |
Multi-Core Score | 2314 | 3202 |
Multi-Core Score Integer | 3035 | - |
Multi-Core Score Floating Point | 2188 | - |
Multi-Core Score Memory | 1126 | - |
Geekbench 3.4.1 Intel(64-bit) | ||
Single-Core Score | 839 | 1027 |
Single-Core Score Integer | 982 | - |
Single-Core Score Floating Point | 687 | - |
Single-Core Score Memory | 861 | - |
Multi-Core Score | 2430 | 3471 |
Multi-Core Score Integer | 3224 | - |
Multi-Core Score Floating Point | 2306 | - |
Multi-Core Score Memory | 1094 | - |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】 | ||
1,280×720ドット | 1037 | 1753 |
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト | ||
1,280×720ドット | 1241 | - |
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク | ||
1,280×720ドット | 804 | - |
SSDをCrystalDiskMark 5.2.1で計測 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 143.769 MB/s | 140.946 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 79.613 MB/s | 47.003 MB/s |
4K Q32TI ランダムリード | 30.218 MB/s | 35.379 MB/s |
4K Q32TI ランダムライト | 33.633 MB/s | 15.204 MB/s |
シーケンシャルリード | 122.054 MB/s | 114.709 MB/s |
シーケンシャルライト | 53.903 MB/s | 43.411 MB/s |
4K ランダムリード | 16.500 MB/s | 16.035 MB/s |
4K ランダムライト | 22.230 MB/s | 10.025 MB/s |
Adobe Photoshop Lightroom CCで50枚のRAW画像を現像 | ||
4,912☓3,264ドット、自動階調 | 7分50秒29 | 6分52秒20 |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し | ||
1,920×1,080ドット、30fps | 21分37秒17 | 18分12秒36 |
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%) | ||
バッテリー残量5%まで | 4時間56分45秒 | 7時間54分 |
両機種はどちらもCherry Trail世代のプロセッサを搭載しているが、Surface 3のほうが上位CPUを搭載しており、主にベース動作周波数、バースト周波数、最大メモリ帯域幅、GPUの実行ユニット数の点で優れている。
【表4】両プロセッサの主な違い | ||
---|---|---|
CPU | Atom x5-Z8350 | Atom x7-Z8700 |
ベース動作周波数 | 1.44GHz | 1.60GHz |
バースト周波数 | 1.92GHz | 2.40GHz |
最大メモリ帯域幅 | 12.8 GB/s | 25.6 GB/s |
GPUのバースト周波数 | 500MHz | 600MHz |
GPUの実行ユニット数 | 12 | 16 |
これらが複合的に絡み合い、ベンチマーク上はSurface 3がモンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】で約1.69倍ものスコアを記録している。ただ、PCMark 8や、Lightroom、Premiere Proなどの実アプリケーション上ではベンチマークほどの差は開いていない。raytrektabでは写真現像や動画書き出しなどはすっぱり諦めたほうがいいが、軽めのドキュメントであればオフィスアプリで作成、編集できるだろう。
さて、高負荷時の発熱をサーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」で見てみよう。今回は室温22.2℃の部屋で「CINEBENCH R15」の「CPU」を連続で5回実行してみたが、前面のの最大温度は41.9℃、背面の最大温度は40.3℃だった。直接ボディを握るタブレット端末だけに、比較的発熱が低く抑えられているのは評価すべきポイントだ。
どこででも創作活動が可能な8型タブレット!
raytrektabは決して高い性能を備えたタブレット端末ではない。また、ディスプレイサイズが8型と小さいので、イラストを描くというクリエイティブワークを完成までやり遂げる端末でもないと筆者は考える。コンパクトなボディを活かして常に携帯し、なにかイメージが降ってきたときに、使い勝手のいいワコム製デジタイザスタイラスでどこででも形に残す……という用途に使う端末だろう。
とは言っても、メモリ4GB、ストレージ64GBと搭載している本製品は、利用するアプリケーションを絞り、データをmicroSDカードに保存すれば、モバイルPCとして常用できる。低めの処理性能、低解像度なカメラなど弱点はいくつかあるものの、それを理解して入手するのであれば、クリエイティブワークにとどまらず広く活躍してくれるタブレット端末だ。