Hothotレビュー
同時待受対応のデュアルSIMや高性能カメラなど多彩な機能の「ZenFone 3」
~ハイレゾ対応や指紋認証、高いカスタマイズ性などパフォーマンスの高い1台
2016年9月28日 15:20
ZenFone 3(ZE520KL)は、ASUS JAPANが発売するSIMロックフリーのAndroidスマートフォン。既に海外では同モデルが発売済みだが、日本国内での発売が9月28日に発表された。発売日は10月7日で、税別価格は39,800円。
ZenFone 3の特徴の1つは、2回線の同時待受が可能な「DSDS(Dual SIM - Dual Standby)」の対応。本体に2枚のSIMを装着でき、どちらのSIMでも同時に音声通話やSMSを待ち受けできる。
スペックは充実しており、カメラは1,600万画素のソニー製CMOSセンサーに加えて、レーザーフォーカスとPDAF(像面位相差オートフォーカス)を搭載、最速0.03秒のフォーカスを公称する。背面には指紋認証センサーを搭載し、ミュージック機能も海外メーカーながらハイレゾに対応している。
2.5Dガラスの高級感あふれる筐体。microSDカードと2枚目のSIMは排他仕様
搭載するディスプレイはフルHD(1,920×1,080ドット)解像度の5.2型で、SoCはオクタコア、2GHz駆動のSnapdragon 625、GPUはAdreno 506を搭載。内蔵ストレージは32GB、メモリは3GBで、外部ストレージとしてmicroSDにも対応。通信機能はIEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LAN、Bluetooth 4.2、GPS、電子コンパスを搭載する。
本体は前面背面ともに「2.5D」と呼ばれる、若干の丸みを帯びたCorningのGorillaガラスを採用。側面のフレームはつや消しのアルミニウム合金が施されている。今回レビューで使用したのはブラックモデルは、最近のスマートフォンで流行の光沢あるブラックを採用。若干青みがかかったブラックと側面のメタリック部分が相まって高級感のある仕上がりになっている。
本体サイズは73.98×146.87×7.69mm(幅×奥行き×高さ)、重量は144g。角が丸みを帯びているので持ちやすい一方、親指を使わず残りの指で持った時にはややバランスに不安定さを感じる。本体幅は片手で持つと画面の反対側までギリギリ指が届くくらいのサイズだが、画面を片側に寄せることができる「片手モード」が用意されているので、片手でも使いやすい。片手モードは画面上部のステータスバーから切り替えられるほか、設定から「クイック起動」をオンにすることで、ホームボタンをダブルタップしてオン/オフを切り替えることもできる。
本体右側面には音量ボタンと電源ボタン、左側面にはピン取り出し型のSIMスロットとmicroSDカードスロットを搭載。SIMカードはMicro SIMとNano SIMの2つが装着できるようになっているが、Nano SIM側はmicroSDカードと排他になっており、外部ストレージとしてmicroSDカードを使いたい場合はデュアルSIMの機能を利用できない。
本体下部は充電およびデータ通信用のUSB Type-Cポートとスピーカー、本体上部はヘッドフォンジャックを搭載。背面には指紋認証センサーと1,600万画素のカメラ、前面には800万画素のカメラを搭載する。
音声、SMSの同時待受が可能。キャリアはNTTドコモのほかau VoLTEもサポート
ZenFone 3の特徴でもあるDSDSは、設定の「デュアルSIMカード設定」および「モバイルネットワーク」から設定が可能。「デュアルSIMカード設定」では、音声通話、SMS、データ通信やBluetooth通話それぞれどちらのSIMを優先させるかを設定可能。「モバイルネットワーク」では、2枚のSIMそれぞれのアクセスポイントを設定できる。
SIMを2枚装着している場合、SMSと音声通話はそれぞれの番号で受けることが可能。また、電話アプリは画面下部にどちらのSIMで発信するかを選択できるボタンが用意されており、SMSも右下のアイコンをタッチすることで番号を切り替えられる。
一方、データ通信についてはSIM1とSIM2のどちらで通信するかをあらかじめ選択する必要がある。設定メニューには「優先」とあるものの、設定したSIMの通信をオフにしてももう片方のSIMで通信することはできなかった。とは言え、データ通信で利用するSIMは本体の電源をオフにすることなく数十秒程度で切り替えられるため、用途に応じて切り替えるのにもさほど手間はかからない。なお、前述の通り、SIM2はmicroSDと排他仕様になっているため、外部ストレージを利用したい場合は必然的にSIMが1枚しか使えないことになる。
対応バンドは4G LTEがバンド1/2/3/5/7/8/18/19/26/28、TD-LTEがバンド38/39/40/41、3G(W-CDMA)がバンド1/2/5/6/8/19。MVNO向けに回線を提供しているNTTドコモとauの対応バンドで見ると、NTTドコモは東名阪以外の都市圏向けであるバンド21以外のバンドをサポート。auについてもプラチナバンドであるバンド18と準メインバンドであるバンド1をサポートするほか、au VoLTEにも対応。NTTドコモ、auどちらでも安心して利用できる。
プリセットされているAPN情報も豊富で、OCNやIIJmio、楽天モバイル、BIG LOBE、nifty、U-mobile、UQ mobile、mineoなど20近いAPN設定が用意されており、MVNOのSIMを手軽に設定できる。
高性能かつ多機能なカメラ。ローライトモードなど暗所での撮影も得意
高性能なカメラもZenFone 3の特徴。背面は1,600万画素、前面は800万画素のイメージセンサーを搭載し、どちらもF値は2.0。レーザーAFと像面位相差AF、コンティニュアスAFという3つのオートフォーカスや、光学式と電子式による手ぶれ補正など、ハイエンドクラスのスマートフォンに勝るとも劣らないカメラ性能を搭載している。
カメラの機能も充実しており、オート撮影、マニュアル撮影のほかに「美人エフェクト」、「超解像度」、「ローライト」、「夜景」、「単焦点」、「エフェクト撮影」、「GIFアニメーション」、「パノラマ」など多彩な撮影モードを搭載。動画も4K動画に加えてスローモーションや低速度撮影、GIFアニメーションなどさまざまな動画を撮影可能だ。
カメラの起動やオートフォーカスなど全ての動作がキビキビと早く非常に使いやすいことに加え、オート設定でも十分にいい写真が撮れる。背面の指紋センサーをダブルタップしてすぐにカメラアプリを起動できる機能も備えており、端末がスリープ状態でも撮りたい時にさっとカメラを立ち上げることが可能だ。
特筆すべきは暗い場所での撮影。夜間などあまり明かりのない場所でも非常に明るい写真が撮影できる。さらに暗所向けの撮影機能としてローライトモードも搭載。周囲の暗さを自動的に判断してローライトモードへの切り替えをガイドするなど、暗い場所での撮影にこだわった仕様になっている。
ベンチマーク結果は良好。ハイレゾや指紋認証にも対応
オーディオ面ではハイレゾをサポート。同梱のイヤフォンを用いてハイレゾと非ハイレゾのサンプル音源を聞き比べてみたが、ハイレゾ音源は明らかに臨場感ある音が楽しめた。ただし、イヤフォンの性能が高いのか、通常の圧縮音源も十分にいい音で楽しめる。スマートフォンに音質を求めるユーザーには嬉しいポイントだろう。
一方、本体スピーカーは本体下部のみに搭載。音質もイヤフォンに比べるとハイレゾ音源を聞いてもシャリシャリとした音が目立ち、少しくもった音で再生され、イヤフォンほどの体験は得られない。ハイレゾを含め音楽を楽しむ場合はイヤフォン経由の方が良さそうだ。
背面の指紋認証センサーは最大5つまで指紋を登録可能。解除時はセンサーをなぞるのではなく指をセンサーに重ねて待つ方式だ。公称0.2秒という認識速度は、実際に体験しても認識は非常に速く精度も高い。ただし、指紋を認識してスリープを解除する際にバイブレーションなどのフィードバックがないため、突然画面がオンになる感覚に若干の違和感を受けたが、慣れればさほど違和感は感じないかもしれない。
指紋認証センサーはロック解除だけでなく、着信を受ける、カメラを起動するといったショートカットにも利用可能。設定の「指紋」から着信応答、カメラ起動、写真撮影をオンにできる。カメラ起動はオンにしておくとスリープ状態からでも直接カメラアプリを起動できるので非常に便利だ。
ベンチマーク測定には「AnTuTu Benchmark 6.2.1」、「Quadrant Professional 2.1.1」、「MOBILE GPUMARK」を使用し、NTTドコモの「arrows NX F-02H」と比較。いずれのベンチマークアプリでも高いスコアとなった。スコア通り実際の操作も非常にキビキビと動作し、もたつきをほとんど感じない。ゲームアプリを数時間駆動していても熱さをほとんど感じることはなく動作し続けていた。
Zenfone 3 | arrows NX F-02H | |
---|---|---|
Quadrant Professional 2.1.1 | ||
総合 | 30532 | 27237 |
AnTuTu Benchmark 6.2.1 | ||
総合 | 62600 | 未計測 |
3D | 12762 | 未計測 |
UX | 23885 | 未計測 |
CPU | 20410 | 未計測 |
RAM | 5543 | 未計測 |
MOBILE GPUMARK Version 4 | ||
総合 | 197655 | 143365 |
本体バッテリの容量は3,000mAhで、駆動時間は公表されていない。Wi-Fiをオンにし、輝度を最低にした状態でフルHDの動画を連続再生したところ、9時間程度でバッテリが空になった。
ホーム画面や設定のカスタマイズも充実。独自アプリも多彩
ASUSオリジナルのカスタマイズもZenfoneシリーズの特徴だ。ZenFone 3のAndroidバージョンは6.0.1だが、独自のシステムUIとして「ZenUI 3.0」を搭載。基本的な使い勝手はAndroidと変わらないが、細かなところでカスタマイズが施されている。
ZenUI 3.0の中でも大きな要素がゲーム連携機能の「Game Genie」。ZenFone 3でゲームをプレイする際に、ゲーム以外のアプリで使用するメモリを開放してゲームの動作を高速化させるモードや、ゲーム画面をYouTube LiveやTwitchで配信できるライブ配信機能を搭載。ゲームアプリを起動すると画面にGame Genieのアイコンが表示され、ここからメモリ開放やライブ配信に加え、ゲームに関する情報や動画をチェックすることも可能だ。
ホーム画面のカスタマイズもZenUIの特徴で、アイコンのサイズや配置位置、未読件数の表示などをカスタマイズ可能。さらに壁紙やアイコン、ィジェットを自由にカスタマイズした「テーマ」を作成したり、既に用意されたテーマをダウンロードして適用することもできる。このほか、ロックスクリーン画面に現在の天気をアニメーションで表示する機能もZenUI 3.0で搭載されている。
テーマ機能とは別の標準機能として、アイコンを大きく表示して使いやすさを高める簡単モードや、子供向けのキッズモードも搭載。キッズモードは子供が利用できるアプリや利用時間を制限することもでき、子供用に購入するのはもちろん、自分が別の端末に機種変更した後に子供へ譲る、などという時にも安心して子供に渡すことができる。
設定周りでも使いやすさを考慮した機能を多数搭載。画面のダブルタップで画面のオン/オフを切り替えたり、特定のアルファベットをスリープ画面にタッチ操作で描くことでアプリを呼び出せるタッチジェスチャー機能、画面をひっくり返して音楽を一時停止、着信の際に本体を持ち上げるだけで応答するといったモーションジェスチャー機能に加え、マルチタスクボタンの長押しでスクリーンショットを保存するといった機能も搭載。スクリーンショット撮影時に通知を残さないようにする機能など、レビューなどでスクリーンショットを連続撮影するユーザーには細やかながら嬉しい機能もサポートされている。
プリインストールアプリも充実。懐中電灯や電卓、FMラジオ、音声レコーダ、ファイルマネージャー、歩数計といったユーティリティ系アプリに加え、背面のレーザーフォーカスを利用して距離を測定する「Laser Ruler」、動画編集アプリ「MiniMovie」、写真編集アプリ「PhotoCollage」、画面のカラーモードを調節できる「Splendid」など、多数のアプリが用意されているのもZenFoneシリーズならではの特徴だ。
多機能かつ高いパフォーマンスが魅力
手頃な価格帯かつ高性能、というのがZenFoneシリーズの特徴だが、ZenFone 3はキビキビと動く性能や高いカメラ性能、ハイレゾ対応による高音質、カスタマイズ性の高い設定周りなど、非常に充実したスペックとなっており、ZenFoneシリーズの最新モデルとして非常に期待の持てる端末に仕上がっている。
DSDSについては、国内では先に発売されたMoto G4 Plusと比較すると、microSDカードと2枚目のSIMが排他になってしまうのが課題ではあるものの、auのプラチナバンドであるバンド18やau VoLTEも搭載している点が魅力。また、スペックが非常に近い両機ではあるが、細かい点ながら電子コンパスに対応している点もZenFone 3が優れている。
国産のSIMロックフリースマートフォンと比べると防水やおサイフケータイに対応していないという課題はあるが、カメラを始めとしたスペックの高さはそれを補って余りあると感じた。価格だけでなくスペックも求めるユーザーにとって、非常に魅力的な選択肢の1つだろう。