Hothotレビュー
驚異の1kg切り15.6型ノートPC「LG gram 15Z960-G」
2016年10月5日 06:00
LGエレクトロニクスは、15.6型ノートPCとして世界最軽量の980gを実現したWindows 10搭載ノートPC「LG gram(グラム) 15Z960-G」の販売を9月下旬より開始した。価格はオープンプライスで、実売価格は132,000円前後。
LGエレクトロニクスが日本国内向けにPCを販売するのは本製品が初めてとなる。LG gramは世界各国で販売されており、国ごとにスペックやラインナップ数が異なるが、日本国内向けに販売されるのはCore i5を採用する「15Z960-G」の1モデルのみとなっている。今回はこの製品版を借用したのでレビューをお届けする。
Core i5を搭載するスタンダードモデルのみを発売
LG gramは15.6型IPSフルHD光沢液晶ディスプレイを搭載するクラムシェル型ノートPCだ。日本国内向けには、Skylake世代(第6世代)のCore i5-6200U(2.30/2.80GHz)、8GB SDRAM、256GB SSD(SATA)、Windows 10 Home 64bitを搭載する1モデルのみが投入されている。米国や韓国ではCore i7-6500U(2.50/3.10GHz)、512GB SSDを搭載するモデルが販売されているが、日本で初めて発売するノートPCとして、より広い層をターゲットとするためスペックよりも価格を優先させたわけだ。
本体サイズは357.6×228.4×16.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は980g。15.6型ノートPCのサイズ感と、世界最軽量980gの組み合わせは、手に持った時に中身が入っていないんじゃないかと錯覚するほどギャップを感じる。バッグに入りさえすれば、1日中持ち歩いていても、LG gramをうとましく思うことはないだろう。
本体色はホワイト1色。表面には微細な梨地加工が施されており、手脂などはほとんど目立たない。米国向けに用意されているゴールドも魅力的なカラーラインナップだが、プライベートだけでなくビジネスでも使用するノートPCとしてはホワイトのほうが使い勝手が良いのは間違いない。
筐体にはマグネシウム合金が採用されており、フルメタル仕様となっている。筐体表面を押すとたわみが感じられるので板厚は薄いようだが、通常利用でへこんでしまうような不安さはまったくない。ただしフットプリントは大きくても、16.8mmと非常に薄いので、満員電車などではLG gramを入れたバッグの持ち方・置き方に配慮は必要そうだ。
インターフェイスは、USB 3.0 Type-C(最大5Gbps)、USB 3.0 Type-A×2(左側面の1基は高速充電対応)、USB 2.0、HDMI出力、microSDカードスロット、IEEE 802.11ac(2ストリーム、最大867Mbps)、Bluetooth 4.0、Ethernet(USB Type-C→RJ45変換コネクタを利用)、Webカメラ(720p)、ヘッドフォン出力などを装備している。
インターフェイスで残念なのがmicroSDカードスロットの採用。確かにmicroSDカードを採用しているデジタルカメラが増えてきているが、まだまだ少数派だ。アダプタなどを用意すれば解決するとは言え、携帯性にこだわったLG gramだけに、フルサイズのSDカードスロットを搭載して欲しかったところだ。
なお、本製品はキーボードが英語キーボード配列(97キー)のみとなっている。英語キーボードユーザーや両刀使いには歓迎する方が多いだろうが、かな入力派のユーザーはLG gramの購入を断念せざるをえない。
テンキー付きのキーボードは使い勝手良好、高精度タッチパッド非対応は残念
LG gramは英語キーボード配列(97キー)を採用していることでユーザーを選ぶ。しかし、テンキーを搭載しているのは大きなメリット。1kgを切るノートPCでテンキーを搭載しているのは非常に珍しい。オフィスアプリをよく使うユーザーは重宝することだろう。
また、「`(グレイヴ・アクセント)」と「/(バック・スラッシュ)」以外は全て横幅が揃っているのも本製品の美点。キーストロークは浅いが、バタつくような感触はなく、しっかりと剛性感が確保されているので、打ちやすい部類に入るキーボードと言える。タイピング時の音も低く小さい音に抑えられている。
LG gramのキーボードの目立ったマイナスポイントはバックライトを搭載していないこと。夜間飛行時の機内、就寝前のベッドの上など、バックライトを必要とするシチュエーションは多い。1kgを切るためにバックライトを省略したのかもしれないが、欲を言えば暗がりでタッチタイプできないユーザーのために削って欲しくなかった装備だ。
トラックパッドは実測103×69mm(幅×奥行き)と広く、ダイビングボード構造としてはクリック感も悪くないが、Windows 10の「高精度タッチパッド」をサポートしていない。タスクビューを呼び出す「3本指スワイプ」などのジェスチャーを利用している方は、「マウスのプロパティ→オプション」から呼び出す「Elan Smart-Pad」で忘れずに設定しておこう。
Webカメラはディスプレイヒンジ部中央に内蔵されている。解像度や感度はノートPC内蔵のものとしては平均的だが、ディスプレイの角度を変えるとカメラの角度も変化してしまう。ディスプレイを垂直に立てると自分がちょうどバストアップで映るが、ディスプレイを見やすいように奥に30度ぐらい傾けると顔の下側が切れてしまう。ビデオ通話する際だけディスプレイを垂直にすれば解決するが、次期モデルでは改善して欲しい仕様だ。
なお、最近のWindows搭載ノートPCは、ディスプレイを開けるとスリープから復帰するものが多いが、LG gramは初期設定ではその機能が無効になっている。ディスプレイを開けてすぐに使い始めたいのなら、「Fn+F1」で呼び出せる「LG Control Center」で「Instant Booting」を有効にしておこう。
エンターテイメント、クリエイティブ用途に対応できるディスプレイ
LG gramは15.6型IPSフルHD液晶ディスプレイ(1,920×1,080ドット、141dpi、光沢)を搭載している。例えば5.2型のフルHDディスプレイを搭載するスマートフォンの画面解像度は423dpiとなるので、比較すると小さな文字に粗さは当然感じる。しかし、コントラスト比が高いのか視認性自体は悪くない。発色はやや鮮やかさに欠ける印象を受けたが、赤系、緑系ともにグラデーションはきめ細やかだ。赤色が不自然に強調されるような傾向も見られない。動画鑑賞などのエンターテイメント系、写真現像などのクリエイティブ系に広く活用できるディスプレイだというのが率直な感想だ。
一方サウンド面については、最大ボリュームでもビビリ音などは発生しないが、少しボリュームが小さく感じた。目の前で聞くのなら十分な音量だが、部屋を歩き回りながらポッドキャストやインターネットラジオを聞くのには、もう少し大きな音を奏でて欲しいところだ。オーディオコンポ代わりに活用するのであれば、Bluetoothスピーカーなどと組み合わせることをオススメする。なお今回試せなかったが、LG gramにハイレゾ対応のヘッドフォンやイヤフォンを接続するとHi-Fiオーディオを楽しめるとのことだ。
必要十分な性能、発熱は許容範囲
最後にLG gramの性能をチェックしてみよう。今回使用したベンチマークソフトは、「PCMark 8 v2.7.613」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark v2.1.2973」、「CINEBENCH R15」、「Geekbench 3.4.1」、「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、「CrystalDiskMark 5.1.2」。合わせて実アプリケーションのパフォーマンスを計測するために「Adobe Photoshop Lightroom」、「Adobe Premiere Pro CC」、連続動作時間を計測するために「BBench」も使用している。なお比較用として、同じくSkylake世代の上位CPUであるCore i7-6500U(2.50/3.10GHz)を搭載するデルのクラムシェル型ノートPC「New XPS 15」の結果も掲載している。
LG gram 15Z960-G | New XPS 13 | |
---|---|---|
CPU | Core i5-6200U(2.30/2.80GHz) | Core i7-6500U(2.50/3.10GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 520 | Intel HD Graphics 520 |
メモリ | DDR3L-1600 SDRAM 8GB | LPDDR3-1866 SDRAM 8GB |
ストレージ | 256GB SSD(SerialATA 3.0) | 256GB SSD(PCI Express) |
OS | Windows 10 Home 64bit | Windows 10 Home 64bit |
PCMark 8 v2.7.613※New XPS 13はv2.5.419で計測 | ||
Home Accelarated 3.0 | 2963 | 3072 |
Creative Accelarated 3.0 | 3572 | 4199 |
Work 2.0 | 4018 | 3946 |
PCMark 7 v1.4.0 | ||
PCMark score | 4754 | 5865 |
3DMark v2.1.2973※New XPS 13はv1.5.915で計測 | ||
Fire Strike Ultra | 148 | − |
Fire Strike Extreme | 291 | − |
Fire Strike | 601 | 939 |
Sky Diver | 2911 | 4007 |
Cloud Gate | 4586 | 6074 |
Ice Storm Extreme | 29138 | − |
Ice Storm | 37354 | 57358 |
CINEBENCH R15 | ||
OpenGL | 32.66 fps | 37.15 fps |
CPU | 287 cb | 324 cb |
Geekbench 3.4.1 Intel(32-bit)※New XPS 13は3.3.2で計測 | ||
Single-Core Score | 2610 | 3191 |
Single-Core Score Integer | 2805 | 3122 |
Single-Core Score Floating Point | 2775 | 3089 |
Single-Core Score Memory | 1891 | 3534 |
Multi-Core Score | 5618 | 6655 |
Multi-Core Score Integer | 6345 | 7406 |
Multi-Core Score Floating Point | 6760 | 7363 |
Multi-Core Score Memory | 1882 | 3740 |
Geekbench 3.4.1 Intel(64-bit)※New XPS 13は3.3.2で計測 | ||
Single-Core Score | 2734 | 3346 |
Single-Core Score Integer | 2990 | 3354 |
Single-Core Score Floating Point | 2900 | 3222 |
Single-Core Score Memory | 1890 | 3580 |
Multi-Core Score | 5814 | 7010 |
Multi-Core Score Integer | 6664 | 7877 |
Multi-Core Score Floating Point | 6935 | 7783 |
Multi-Core Score Memory | 1873 | 3733 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】 | ||
1,280×720ドット | 2534 | 3646 |
SSDをCrystalDiskMark 5.1.2で計測※New XPS 13は5.0.3で計測 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 535.992 MB/s | 1556.095 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 408.687 MB/s | 1595.803 MB/s |
4K Q32TI ランダムリード | 270.888 MB/s | 268.133 MB/s |
4K Q32TI ランダムライト | 261.290 MB/s | 223.072 MB/s |
シーケンシャルリード | 471.523 MB/s | 1316.394 MB/s |
シーケンシャルライト | 392.227 MB/s | 1473.263 MB/s |
4K ランダムリード | 23.189 MB/s | 44.930 MB/s |
4K ランダムライト | 87.959 MB/s | 123.809 MB/s |
SDカードをCrystalDiskMark 5.0.3で計測(SanDisk Extreme Pro 280MB/s SDHC UHS-II) | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | − | 23.462 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | − | 21.809 MB/s |
4K Q32TI ランダムリード | − | 3.520 MB/s |
4K Q32TI ランダムライト | − | 1.508 MB/s |
シーケンシャルリード | − | 26.847 MB/s |
シーケンシャルライト | − | 29.571 MB/s |
4K ランダムリード | − | 3.516 MB/s |
4K ランダムライト | − | 1.386 MB/s |
SDカードをCrystalDiskMark 5.1.2で計測(SanDisk Extreme Pro 95MB/s microSDXC UHS-I) | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 23.933 MB/s | − |
Q32T1 シーケンシャルライト | 26.374 MB/s | − |
4K Q32TI ランダムリード | 6.362 MB/s | − |
4K Q32TI ランダムライト | 0.978 MB/s | − |
シーケンシャルリード | 25.375 MB/s | − |
シーケンシャルライト | 29.993 MB/s | − |
4K ランダムリード | 6.160 MB/s | − |
4K ランダムライト | 0.977 MB/s | − |
4094枚(10GB)の画像をファイルコピー | ||
SSD→SSD | 1分0秒48 | − |
Adobe Photoshop Lightroomで50枚のRAW画像を現像 | ||
4,912☓3,264ドット、自動階調 | 3分45秒21 | − |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し | ||
1,920×1,080ドット、30fps | 7分58秒98 | 6分43秒64 |
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%) | ||
バッテリ残量5%まで | 6時間59分8秒 | 7時間14分55秒 |
結果を見ると、CINEBENCH R15のCPUで約1.13倍、Geekbench(64bit)のMulti-Core Scoreで約1.21倍高いスコアをNew XPS 13が記録した。システム全体の性能差が表われるほかのベンチマークはともかく、Geekbenchで少々スコア差が開きすぎていると感じたので、「Core Temp 1.3」でベンチマーク中のCPU温度とクロック周波数を確認してみたところ、LG gramはそれほどCPU温度が高くなっていないうちから、クロック周波数が2,692.74MHzにとどまっていた。LG gramは薄型化などを実現するために、ターボブースト時にCPU本来の上限である2.80GHzに達しないような制御が施されている可能性がある。
ストレージの読み書き速度でも大きな差がついているが、LG gramがインターフェイスにSATA 3.0を採用している以上、帯域幅のスループットが600MB/sが上限となるので当然の結果だ。次期モデルではPCI Expressを採用することを強く望みたい。
なお、ベンチマーク実施時、サーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」で温度チェックしたところ、キーボード面は最大53℃、底面は最大49.1℃、ACアダプタは55.7℃という結果となった。キーボード面、底面ともに、排気口周辺で最大温度を記録している。室温23℃の部屋で計測したので夏場はまた結果が変わるが、少なくとも秋や春であればピンスポットで排気口付近に触れない限りは、それほど不快に感じることはない。