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驚異の1kg切り15.6型ノートPC「LG gram 15Z960-G」

LGエレクトロニクス「LG gram 15Z960-G」実売価格132,000円

 LGエレクトロニクスは、15.6型ノートPCとして世界最軽量の980gを実現したWindows 10搭載ノートPC「LG gram(グラム) 15Z960-G」の販売を9月下旬より開始した。価格はオープンプライスで、実売価格は132,000円前後。

 LGエレクトロニクスが日本国内向けにPCを販売するのは本製品が初めてとなる。LG gramは世界各国で販売されており、国ごとにスペックやラインナップ数が異なるが、日本国内向けに販売されるのはCore i5を採用する「15Z960-G」の1モデルのみとなっている。今回はこの製品版を借用したのでレビューをお届けする。

Core i5を搭載するスタンダードモデルのみを発売

 LG gramは15.6型IPSフルHD光沢液晶ディスプレイを搭載するクラムシェル型ノートPCだ。日本国内向けには、Skylake世代(第6世代)のCore i5-6200U(2.30/2.80GHz)、8GB SDRAM、256GB SSD(SATA)、Windows 10 Home 64bitを搭載する1モデルのみが投入されている。米国や韓国ではCore i7-6500U(2.50/3.10GHz)、512GB SSDを搭載するモデルが販売されているが、日本で初めて発売するノートPCとして、より広い層をターゲットとするためスペックよりも価格を優先させたわけだ。

 本体サイズは357.6×228.4×16.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は980g。15.6型ノートPCのサイズ感と、世界最軽量980gの組み合わせは、手に持った時に中身が入っていないんじゃないかと錯覚するほどギャップを感じる。バッグに入りさえすれば、1日中持ち歩いていても、LG gramをうとましく思うことはないだろう。

 本体色はホワイト1色。表面には微細な梨地加工が施されており、手脂などはほとんど目立たない。米国向けに用意されているゴールドも魅力的なカラーラインナップだが、プライベートだけでなくビジネスでも使用するノートPCとしてはホワイトのほうが使い勝手が良いのは間違いない。

 筐体にはマグネシウム合金が採用されており、フルメタル仕様となっている。筐体表面を押すとたわみが感じられるので板厚は薄いようだが、通常利用でへこんでしまうような不安さはまったくない。ただしフットプリントは大きくても、16.8mmと非常に薄いので、満員電車などではLG gramを入れたバッグの持ち方・置き方に配慮は必要そうだ。

 インターフェイスは、USB 3.0 Type-C(最大5Gbps)、USB 3.0 Type-A×2(左側面の1基は高速充電対応)、USB 2.0、HDMI出力、microSDカードスロット、IEEE 802.11ac(2ストリーム、最大867Mbps)、Bluetooth 4.0、Ethernet(USB Type-C→RJ45変換コネクタを利用)、Webカメラ(720p)、ヘッドフォン出力などを装備している。

 インターフェイスで残念なのがmicroSDカードスロットの採用。確かにmicroSDカードを採用しているデジタルカメラが増えてきているが、まだまだ少数派だ。アダプタなどを用意すれば解決するとは言え、携帯性にこだわったLG gramだけに、フルサイズのSDカードスロットを搭載して欲しかったところだ。

 なお、本製品はキーボードが英語キーボード配列(97キー)のみとなっている。英語キーボードユーザーや両刀使いには歓迎する方が多いだろうが、かな入力派のユーザーはLG gramの購入を断念せざるをえない。

本体上面。上側が背面
本体底面。上側が背面。左右側面下部の穴はステレオスピーカー。4隅のゴム足以外に、中央上部に白いゴム足と、中央下部に白い樹脂製の足がある。樹脂製の足は極端なたわみを防止するためのもののようで、通常時は設置しない
本体前面。中央には指先を入れる隙間が設けられている
本体背面
本体左側面。左から電源端子、USB 3.0 Type-A(高速充電対応)、HDMI出力、USB 3.0 Type-C(Gen 1、最大5Gbps)、電源ランプ、アクセスランプ
本体右側面。左からmicroSDカードスロット、ヘッドフォン出力、USB 3.0 Type-A、USB 2.0、ケンジントンロック
キーボードは英語キーボード配列(97キー)。ややキーピッチが狭いがテンキーも設けられている
本体パッケージ
同梱物一覧。左上から本体、冊子(インストールガイド、保証書、アフターサービスの案内)、ACアダプタ、電源ケーブル、USB Type-C→RJ45変換コネクタ
本体の実測重量は978.5g
ACアダプタと電源ケーブルの実測合計重量は215.1g
USB Type-C→RJ45変換コネクタの実測重量は15.6g

テンキー付きのキーボードは使い勝手良好、高精度タッチパッド非対応は残念

 LG gramは英語キーボード配列(97キー)を採用していることでユーザーを選ぶ。しかし、テンキーを搭載しているのは大きなメリット。1kgを切るノートPCでテンキーを搭載しているのは非常に珍しい。オフィスアプリをよく使うユーザーは重宝することだろう。

 また、「`(グレイヴ・アクセント)」と「/(バック・スラッシュ)」以外は全て横幅が揃っているのも本製品の美点。キーストロークは浅いが、バタつくような感触はなく、しっかりと剛性感が確保されているので、打ちやすい部類に入るキーボードと言える。タイピング時の音も低く小さい音に抑えられている。

 LG gramのキーボードの目立ったマイナスポイントはバックライトを搭載していないこと。夜間飛行時の機内、就寝前のベッドの上など、バックライトを必要とするシチュエーションは多い。1kgを切るためにバックライトを省略したのかもしれないが、欲を言えば暗がりでタッチタイプできないユーザーのために削って欲しくなかった装備だ。

 トラックパッドは実測103×69mm(幅×奥行き)と広く、ダイビングボード構造としてはクリック感も悪くないが、Windows 10の「高精度タッチパッド」をサポートしていない。タスクビューを呼び出す「3本指スワイプ」などのジェスチャーを利用している方は、「マウスのプロパティ→オプション」から呼び出す「Elan Smart-Pad」で忘れずに設定しておこう。

 Webカメラはディスプレイヒンジ部中央に内蔵されている。解像度や感度はノートPC内蔵のものとしては平均的だが、ディスプレイの角度を変えるとカメラの角度も変化してしまう。ディスプレイを垂直に立てると自分がちょうどバストアップで映るが、ディスプレイを見やすいように奥に30度ぐらい傾けると顔の下側が切れてしまう。ビデオ通話する際だけディスプレイを垂直にすれば解決するが、次期モデルでは改善して欲しい仕様だ。

 なお、最近のWindows搭載ノートPCは、ディスプレイを開けるとスリープから復帰するものが多いが、LG gramは初期設定ではその機能が無効になっている。ディスプレイを開けてすぐに使い始めたいのなら、「Fn+F1」で呼び出せる「LG Control Center」で「Instant Booting」を有効にしておこう。

キーボード全体の大きさは実測316×106mm(幅×奥行き)。メインキーのキーピッチは実測19mmとフルサイズのキーボードと同等のサイズが確保されている
テンキー部の大きさは実測48×106mm(幅×奥行き)。キーピッチは実測17mmとメインキーより少し狭いが、テンキー部だけをタイピングしているなら十分高速に文字入力できる
Windows 10の高精度タッチパッドに対応していないので、OS標準のジェスチャーは利用できない
「マウスのプロパティ→オプション」から呼び出す「Elan Smart-Pad」で、Windows 10同等のジェスチャーを割り当てられる
Webカメラはディスプレイヒンジ部中央に内蔵されている。カメラ右にあるのは撮影時に点灯するLED、左にあるのはマイク
ディスプレイを垂直に立てると自分がちょうどバストアップで映る
ディスプレイを奥に30度ぐらい傾けると顔の下側が切れて映ってしまう
LG Control Center。ディスプレイを開けるとスリープから復帰するInstant Bootingのほか、システム、電源、セキュリティの設定が可能
ディスプレイを約35度まで開くとスリープから復帰する

エンターテイメント、クリエイティブ用途に対応できるディスプレイ

 LG gramは15.6型IPSフルHD液晶ディスプレイ(1,920×1,080ドット、141dpi、光沢)を搭載している。例えば5.2型のフルHDディスプレイを搭載するスマートフォンの画面解像度は423dpiとなるので、比較すると小さな文字に粗さは当然感じる。しかし、コントラスト比が高いのか視認性自体は悪くない。発色はやや鮮やかさに欠ける印象を受けたが、赤系、緑系ともにグラデーションはきめ細やかだ。赤色が不自然に強調されるような傾向も見られない。動画鑑賞などのエンターテイメント系、写真現像などのクリエイティブ系に広く活用できるディスプレイだというのが率直な感想だ。

 一方サウンド面については、最大ボリュームでもビビリ音などは発生しないが、少しボリュームが小さく感じた。目の前で聞くのなら十分な音量だが、部屋を歩き回りながらポッドキャストやインターネットラジオを聞くのには、もう少し大きな音を奏でて欲しいところだ。オーディオコンポ代わりに活用するのであれば、Bluetoothスピーカーなどと組み合わせることをオススメする。なお今回試せなかったが、LG gramにハイレゾ対応のヘッドフォンやイヤフォンを接続するとHi-Fiオーディオを楽しめるとのことだ。

15.6型と大きなディスプレイを搭載しているだけに、フルHDの解像度にやや物足りなさを感じる
赤系、緑系ともにグラデーションはきめ細やかで、発色も自然だ
上部ベゼルは9.1mm、左右ベゼルは6.7mm。ベゼル幅をスリム化することで、15.6型ディスプレイを搭載しつつ、従来の14型ディスプレイモデルと同等のサイズを実現したとのことだ
本製品はブルーライトを低減する「リーダーモード」を搭載している。左が通常モードで、右がリーダーモード。「Fn+F9」キーを押すことでいつでも切り替え可能だ
内蔵するスピーカーは、1W+1Wのステレオスピーカー。底面に開口部が設けられている

必要十分な性能、発熱は許容範囲

 最後にLG gramの性能をチェックしてみよう。今回使用したベンチマークソフトは、「PCMark 8 v2.7.613」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark v2.1.2973」、「CINEBENCH R15」、「Geekbench 3.4.1」、「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、「CrystalDiskMark 5.1.2」。合わせて実アプリケーションのパフォーマンスを計測するために「Adobe Photoshop Lightroom」、「Adobe Premiere Pro CC」、連続動作時間を計測するために「BBench」も使用している。なお比較用として、同じくSkylake世代の上位CPUであるCore i7-6500U(2.50/3.10GHz)を搭載するデルのクラムシェル型ノートPC「New XPS 15」の結果も掲載している。

LG gram 15Z960-GNew XPS 13
CPUCore i5-6200U(2.30/2.80GHz)Core i7-6500U(2.50/3.10GHz)
GPUIntel HD Graphics 520Intel HD Graphics 520
メモリDDR3L-1600 SDRAM 8GBLPDDR3-1866 SDRAM 8GB
ストレージ256GB SSD(SerialATA 3.0)256GB SSD(PCI Express)
OSWindows 10 Home 64bitWindows 10 Home 64bit
PCMark 8 v2.7.613※New XPS 13はv2.5.419で計測
Home Accelarated 3.029633072
Creative Accelarated 3.035724199
Work 2.040183946
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score47545865
3DMark v2.1.2973※New XPS 13はv1.5.915で計測
Fire Strike Ultra148
Fire Strike Extreme291
Fire Strike601939
Sky Diver29114007
Cloud Gate45866074
Ice Storm Extreme29138
Ice Storm3735457358
CINEBENCH R15
OpenGL32.66 fps37.15 fps
CPU287 cb324 cb
Geekbench 3.4.1 Intel(32-bit)※New XPS 13は3.3.2で計測
Single-Core Score26103191
Single-Core Score Integer28053122
Single-Core Score Floating Point27753089
Single-Core Score Memory18913534
Multi-Core Score56186655
Multi-Core Score Integer63457406
Multi-Core Score Floating Point67607363
Multi-Core Score Memory18823740
Geekbench 3.4.1 Intel(64-bit)※New XPS 13は3.3.2で計測
Single-Core Score27343346
Single-Core Score Integer29903354
Single-Core Score Floating Point29003222
Single-Core Score Memory18903580
Multi-Core Score58147010
Multi-Core Score Integer66647877
Multi-Core Score Floating Point69357783
Multi-Core Score Memory18733733
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット25343646
SSDをCrystalDiskMark 5.1.2で計測※New XPS 13は5.0.3で計測
Q32T1 シーケンシャルリード535.992 MB/s1556.095 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト408.687 MB/s1595.803 MB/s
4K Q32TI ランダムリード270.888 MB/s268.133 MB/s
4K Q32TI ランダムライト261.290 MB/s223.072 MB/s
シーケンシャルリード471.523 MB/s1316.394 MB/s
シーケンシャルライト392.227 MB/s1473.263 MB/s
4K ランダムリード23.189 MB/s44.930 MB/s
4K ランダムライト87.959 MB/s123.809 MB/s
SDカードをCrystalDiskMark 5.0.3で計測(SanDisk Extreme Pro 280MB/s SDHC UHS-II)
Q32T1 シーケンシャルリード23.462 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト21.809 MB/s
4K Q32TI ランダムリード3.520 MB/s
4K Q32TI ランダムライト1.508 MB/s
シーケンシャルリード26.847 MB/s
シーケンシャルライト29.571 MB/s
4K ランダムリード3.516 MB/s
4K ランダムライト1.386 MB/s
SDカードをCrystalDiskMark 5.1.2で計測(SanDisk Extreme Pro 95MB/s microSDXC UHS-I)
Q32T1 シーケンシャルリード23.933 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト26.374 MB/s
4K Q32TI ランダムリード6.362 MB/s
4K Q32TI ランダムライト0.978 MB/s
シーケンシャルリード25.375 MB/s
シーケンシャルライト29.993 MB/s
4K ランダムリード6.160 MB/s
4K ランダムライト0.977 MB/s
4094枚(10GB)の画像をファイルコピー
SSD→SSD1分0秒48
Adobe Photoshop Lightroomで50枚のRAW画像を現像
4,912☓3,264ドット、自動階調3分45秒21
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し
1,920×1,080ドット、30fps7分58秒986分43秒64
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%)
バッテリ残量5%まで6時間59分8秒7時間14分55秒
ベンチマーク開始直後、CPU温度がまだ66~68℃の段階でクロック周波数が2,692.74MHzにとどまっていた

 結果を見ると、CINEBENCH R15のCPUで約1.13倍、Geekbench(64bit)のMulti-Core Scoreで約1.21倍高いスコアをNew XPS 13が記録した。システム全体の性能差が表われるほかのベンチマークはともかく、Geekbenchで少々スコア差が開きすぎていると感じたので、「Core Temp 1.3」でベンチマーク中のCPU温度とクロック周波数を確認してみたところ、LG gramはそれほどCPU温度が高くなっていないうちから、クロック周波数が2,692.74MHzにとどまっていた。LG gramは薄型化などを実現するために、ターボブースト時にCPU本来の上限である2.80GHzに達しないような制御が施されている可能性がある。

 ストレージの読み書き速度でも大きな差がついているが、LG gramがインターフェイスにSATA 3.0を採用している以上、帯域幅のスループットが600MB/sが上限となるので当然の結果だ。次期モデルではPCI Expressを採用することを強く望みたい。

 なお、ベンチマーク実施時、サーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」で温度チェックしたところ、キーボード面は最大53℃、底面は最大49.1℃、ACアダプタは55.7℃という結果となった。キーボード面、底面ともに、排気口周辺で最大温度を記録している。室温23℃の部屋で計測したので夏場はまた結果が変わるが、少なくとも秋や春であればピンスポットで排気口付近に触れない限りは、それほど不快に感じることはない。

キーボード面はヒンジ付近で最大温度53℃を記録した
ディスプレイヒンジ部を上から覗くと、排気口が見える
底面でもキーボード面と同じくヒンジ付近で最大温度49.1℃を記録している
ACアダプタは中心部分で最大温度55.7℃を記録

毎日持ち歩きたくなる大画面ノートPC

ノートPCなんて毎日持ち歩きたくないという人も、1kgを切るLG gramであれば宗旨替えするのでは?

 市場想定価格132,000円ながら、15.6型という大画面ディスプレイと1kgを切る軽量性を両立したLG gramは、膨大な枚数のRAW画像を現像したり、長尺の動画を書き出すような作業を頻繁にしないのであれば十分な性能を備えている。連続動作時間も約7時間とモバイル用途にも不足ないレベルだ。軽量な筐体を活かし、毎日持ち歩きたくなる大画面ノートPCと言えるだろう。