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4万円前半で買える使い勝手良好なデル製2in1「New Inspiron 11 3000」

New Inspiron 11 3000シリーズ 2-in-1

 最近は、4~5万円で購入できる低価格なノートPCもめずらしくなくなった。ただしそうしたノートPCの大半は、以前大流行した“ミニノートPC”のスペックアップ版に留まっており、タッチ機能やタブレットとしても活用できる2in1として利用できないことが多い。

 今回取り上げるデルの「New Inspiron 11 3000シリーズ 2-in-1」(以降Inspiron 11 3000)では、最小構成の税別直販価格で39,980円(税込43,178円)という価格ながらも、液晶ディスプレイにタッチ操作機能を搭載する。それだけでなく、液晶部分を360度回転させ、タブレットのようなスタイルに変形できる機能もサポートした。今回はこの低価格な2in1 PCの使い勝手を検証していこう。

液晶をクルッと回転させればタブレットスタイルに

 Inspiron 11 3000は、11.6型の液晶ディスプレイを搭載するノートPCだ。CPUやメインメモリ、ストレージの容量や種類、Microsoftの「Office Personal Premium」の有無などで5モデルを用意する。

 今回試用したのはローエンドモデルの「New Inspiron 11 3000シリーズ 2-in-1 エントリー・タッチパネル」で、CPUはCeleron N3060(1.6GHz、ビデオ機能内蔵)、メインメモリは2GB、ストレージは32GBのeMMCとなる。液晶ディスプレイは11.6型で、解像度は1,366×768ドットだ。おおむね最近の低価格ノートPCに近いスペックと考えて良い。

 カラーはホワイトとレッドの2色から選択できる。試用したのはホワイトモデルだ。天板はツルッとした光沢感のある仕上げ、キーボード面はサラッとしたマットな仕上げ、底面はざら付いた仕上げと、場所によって質感が違うのはおもしろい。またこうした仕上げの違いもあり、安っぽさを感じることはなかった。

天板は光沢感のあるツルッとした仕上げを採用
キーボード面はサラッとした仕上げなので手の平にべたつきを感じにくい

 Inspiron 11 3000では、液晶ディスプレイを組み込んだ天板部分をクルッと回転させて、タブレットのようなスタイルに変形できる。天板が底面にくっ付いた状態に変形すると、キーボードやタッチパッドは無効になる。

 片手で抱えて持つ場合、必然的にキーボードやタッチパッドに触れてしまうことになるので、これは当然の仕組みと言える。液晶ディスプレイはタッチ操作に対応しているので、この状態でも問題なく利用できる。

 キーボード部分を360度回転させてタブレット状態にすると、スタートメニューやアプリの表示が変化する「タブレットモード」への移行を促すメッセージが表示される。タブレットモードで使うのも良いが、パネルサイズが11.6型ワイドとそれなりに大きいため、通常モードでも各種操作に支障を感じることはなかった。

天板をクルッと回転させた状態だと、キーボードやタッチパッドは無効になる
タブレットモードになると、メッセージが表示される

 液晶ディスプレイの回転は無段階なので、360度回転させた状態だけでなく、270度くらい回転させて三角形に似たスタイルで使うことも可能だ。この状態でもキーボードやタッチパッドは無効になる。

 画面表示を自動で回転する機能もあるので、動画を再生したり、写真をスライドショーで表示したりして楽しむ時に使うと便利だろう。またヒンジの保持力は強く、中途半端に開いた状態で置いても、液晶部分が徐々に開いて変形してしまうこともなかった。

キーボード部分をスタンドのようにして利用することも可能だ

安くても十分な操作性と性能

 低価格なノートPCだと、「安かろう、悪かろう」で基本的な使い勝手が悪いのではないかと気になるユーザーは多いかもしれない。しかしInspiron 11 3000は、こうした部分にも妥協はない。

 キートップは打ち間違いが少ないという浮き石タイプだ。タッチは軟らかめでトントンと軽快に叩くだけで入力できる。方向キーや一番上のファンクションキーはやや小さめだが、よく使うメインキーのキーピッチは実測値で19mmであり、不満を感じることはない。

 タッチパッドの感知エリアは横10cm、縦5.5cmで、左右クリックボタンは独立していないタイプだ。ボタン用のエリアも操作に利用できる。このサイズのノートPCが搭載するものとしては平均的なサイズで、マルチタッチやジェスチャー機能にも対応する。

キーボードは浮き石タイプで、タッチパッドはボタンが分離していないタイプ
キーピッチは実測値で約19mm

 面積はそれほど広くないため、タッチパッドのみで自由自在に操作するというのはちょっと厳しい。大雑把な操作は液晶画面へのタッチ、細かい操作はタッチパッドと振り分けると便利だろう。

 左側面にはHDMI映像出力端子とUSB 3.0ポート、microSDカードスロットを装備する。右側面には2基のUSB 2.0ポートとヘッドフォン端子、電源ボタンや音量調節のシーソーボタンという構成だ。

左側面にはHDMIとUSB 3.0ポート、microSDメモリーカードスロットを装備
右側面には2基のUSB 2.0ポートや電源ボタン、音量ボタン、ヘッドフォン端子を装備

 スペック欄に明記はされていないが、このローエンドモデルの液晶パネルはTNパネルのようだ。上下の視野角が狭く、色みの変化も大きい。さすがにIPSパネルを搭載するには、コスト面で問題が大きかったのかもしれない。

 CPUはBraswell世代のCeleron N3060だ。低価格ノートPCに搭載されることが多い「Celeron N3050」と比べると、定格動作クロックは1.6GHzで同じ、バーストクロックが0.32GHz高い。

 とは言え、画面の切り換えやウィンドウの移動、応答速度などに違いは感じられない。Windows 10を利用するには必要十分の性能を確保しており、快適に利用できた。

PCMark 8のScoreは1,497で、Celeron N3050を搭載する低価格ノートPCとほぼ同じ

 ストレージはeMMCなので、SSDを搭載するノートPCと比較すると読み書きの速度は遅い。とは言え、シーケンシャルリードは144MB/sを超え、ランダムアクセス速度はおおむねHDDを凌駕しており、Windows 10やアプリの起動は高速に行なえる。

 またSSDと同じく、eMMCは利用時に動作する部品がないため、振動や移動に非常に強い。持ち換えたり、変形したりといった機会の多い2in1に向いたストレージだ。

シーケンシャルリードの速度は144.5MB/sと、一般的な2.5インチHDDよりは早いが2.5型SSDよりは遅い。アプリの起動や使い勝手はSSDに近い

性能や使い勝手は十分、32GBストレージはやはり少ない

 本機のストレージ容量は32GBでやはり少ない。MicrosoftのOfficeや、ちょっと容量が大きめなアプリをインストールすると、すぐに容量が足りなくなってしまう。必要に応じて、64GBクラスのmicroSDメモリーカードを追加し、容量を補いたい。

 ミドルレンジやハイエンドモデルは500GBのHDDモデルなので、容量的には不安がない。ただしHDDはeMMCやSSDに比べると読み書き速度に劣り、タブレットに変形したり、移動したりした時の振動も不安だ。Inspiron 11 3000のコンセプトを考えると、64GBや128GBのeMMCの方がマッチしているようにも思う。

 現実に近い状況でバッテリ駆動時間をおおまかに計測できるPCMark 8の「Home accelerated(Battery Life)」を、残り容量100%、輝度が40%の状態で実行してみると、6時間52分だった。カタログ上のスペックは最大9時間47分であり、バッテリが20%残っていることを考えると、おおむねスペックに近い数値と言って良さそうだ。

PCMark 8の「Home accelerated(Battery Life)」では6時間52分という成績だった

 総じて不満の少ない、優れた低価格PCだ。仕上げの異なる外装を採用することで、プラスチックでも安っぽさを感じさせない作りは好印象である。CPUやメモリも、Windows 10を使うには十分なレベルにある。Webブラウジングや書類作成など日常的な作業でで活躍できそうだ。