大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

使用済みインクカートリッジ回収制度「里帰りプロジェクト」
~開始から1年の成果と今後の取り組みを見る



 4月8日、「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」が開始されて、ちょうど1年を経過した。里帰りプロジェクトは、セイコーエプソン、キヤノン、ブラザー、日本ヒューレット・パッカード、レックスマーク、デルのプリンタメーカー6社と、郵便事業株式会社および郵便局株式会社の日本郵政グループが連携し、郵便インフラを活用して、家庭用インクジェットプリンタの使用済みインクカートリッジの回収を共同で行なうというものである。

 全国の郵便局約24,000局のうち、3,639局に専用回収ボックスを設置。回収した後に、プリンタメーカー6社が引き取り、それぞれにリサイクルを行なう。使用済みインクカートリッジの回収率が10%以下に留まっていたことから、この回収率を引き上げるための共同施策として注目を集めた里帰りプロジェクトの1年の成果は、果たしてどうだったのか。

 里帰りプロジェクトの生い立ちを改めて振り返るとともに、長野県諏訪市のカートリッジ仕分け拠点であるエプソンミズベなどへの取材を通じて、この1年の取り組み、そして、2年目に向けた取り組みを追った。

●キヤノンの提案でスタートした異例の共同プロジェクト

 2008年4月8日にスタートした里帰りプロジェクトは、プリンタメーカー各社に共通の課題となっている使用済みインクカートリッジの回収を、共同で行なうことを目的にスタートしたものだ。

 これまでにも各社個別に、量販店店頭での回収、ベルマーク制度を利用した小中学校での回収などに取り組んできたが、全国各地にある郵便局窓口でも回収できる新たなスキームとして、この回収制度を開始した。

 通常は激しい競争を繰り広げているメーカー同士が、共同で取り組むユニークな制度だといえる。共通で使用するロゴーマーク、キャラクターも用意。各社のカタログにも、このキャラクターとともに、6社のロゴが入っている。つまり、セイコーエプソンのプリンタカタログにも、里帰りプロジェクトの紹介部分には、キヤノンやヒューレット・パッカードなどのロゴが記載されているという、まさに異例の共同プロジェクトなのである。

 里帰りプロジェクトでは、郵便局の窓口に回収ボックスを設置。これが満杯になると、郵便局はゆうパックを利用して、長野県諏訪市の郵便事業株式会社諏訪支店を経由して、同市内に本社を置くエプソンミズベに郵送。そこで開梱後、メーカー別にカートリッジが仕分けされ、数量、重量などを計測後、再度梱包されて、6社に配送される。各社は、それぞれのリサイクル拠点でカートリッジをリサイクルするという仕組みだ。

里帰りプロジェクトのロゴマーク。キャラクターの名前はないが、プロジェクト内では、通称「里帰りくん」と呼ばれている里帰りプロジェクトのスキーム

里帰りプロジェクト本部長の竹之内雅典氏(キヤノンのインクジェット事業本部インクジェット事業統括センター上席担当部長)

 もともとこの仕組みはキヤノンの提案からスタートしたものだ。2006年夏、キヤノンのインクジェット事業本部インクジェット事業統括センター上席担当部長の竹之内雅典氏は、郵便局を利用した回収制度を立案。これを、キヤノンマーケティングジャパンの村瀬治男社長(3月から同社会長)に提案した。村瀬氏は、この仕組みで成果をあげるには、業界をあげた取り組みが必要であると判断。その場で、競合メーカーであるエプソンなどに電話で連絡。提案時点から、すぐに社長が行動に移すという、すばやい取り組みからスタートした。

 秋から年末にかけては、村瀬氏が当時の日本郵政公社の生田正治総裁を訪問して直接説明したのに加え、プリンタメーカーなどに正式に主旨を説明。各社の協力賛同を得た後に、2007年1月には、第1回目のキックオフミーティングを都内で開催。2007年3月には、セイコーエプソンがある長野県広丘で、50人以上が参加して合宿を実施。ここで基本構想に関する詳細を詰めた。

 合宿では、全体会議のほかに、分科会による会議も行なわれ、設置された広報部会、商標部会、営業部会、回収部会、処理部会、基本課題検討部会において、それぞれに専門家が参加して議論を進めた。

 基本構想をもとに、2007年秋には、京橋郵便局をはじめ10局で試験運用を開始。翌年3月まで、運用実績をもとに仕組みを改善する一方、2008年1月には、各社が本格稼働に向けて正式に合意。6社が郵政グループと個別に契約を結ぶ形で体制を整えた。

 「サービスを開始するまでの期間は、6社が月平均2回ずつ集まり議論に重ねたほか、毎週のように集まった時期もあった。オープンであり、フェアであること、個別最適ではなく、全体最適であること、そして、日常の商売の話をしないことを徹底して、参加各社が共通の目標とメリットを得られるように議論を進めた」と、キヤノンのインクジェット事業本部インクジェット事業統括センター上席担当部長の竹之内雅典氏は語る。

 仕分け作業を行なう会社も参加企業からの推薦で、3つの企業が検討されたが、あらゆる面から公平な検討が行なわれた結果、セイコーエプソングループのエプソンミズベに決定した。

 なお、同プロジェクトは、「インクカートリッジ・再資源化」の意味を持つISプロジェクトと名付けられ、提案を行なったキヤノンの竹之内氏が本部長に就任。副本部長には、セイコーエプソン情報画像企画設計第一統括部IJP事業戦略推進部主管部長の小池尚志氏が就任。その後、このプロジェクト名を「里帰りプロジェクト」と命名して、これを対外的に使用。一方で、当初使われていたISプロジェクトの名称は、「インクカートリッジ・里帰り」プロジェクトの意味として捉え直し、各社間のやりとりのなかでは、現在でもISプロジェクトの呼称が残っている。

 「プロジェクト名の候補として10種類程度が提案された。なかには、リサイクルとインクを掛け合わせたリサインクプロジェクトという候補もあった。だが、メーカーに戻ってリサイクルされるという意味から、里帰りという言葉が最適であるとして、満場一致で決定した」(セイコーエプソン情報画像企画設計第一統括部IJP事業戦略推進部主管部長の小池尚志氏)という。

 こうした経緯を経て、2008年4月8日には、6社の社長が登壇する形で記者会見を開催。同日から、全国3,638局(その後1局追加し、3,639局に)の郵便局に専用の回収ボックスが設置され、具体的なプロジェクトがスタートした。

2008年4月の発表会に出席したメーカー、郵政グループの代表里帰りプロジェクト副本部長の小池尚志氏(セイコーエプソン情報画像企画設計第一統括部IJP事業戦略推進部主管部長)
セイコーエプソン情報画像事業本部機器要素開発・技術統括部IJ要素技術・製造部の宮澤恒樹課長エプソンミズベ・宇留賀弘社長(右)と同社製品部・小沼芳博部長(左)
郵便事業株式会社諏訪支店 古幡直支店長郵便局株式会社諏訪郵便局 福澤邦明局長

●プロジェクト開始1年の成果を見る

 昨年4月8日からちょうど1年。その成果はどうだろうか。里帰りプロジェクトの発表によると、2009年3月31日までの累計回収箱数は4,207箱。回収したカートリッジの数は73万2千個に及ぶという。

全国の3,639の郵便局に専用回収ボックスが設置されている回収ボックスの様子。折りたためばゆうパックで配送できるボックスとなる
各郵便局から郵便事業株式会社諏訪支店(諏訪郵便局)に集まり、それがエプソンミズベに運び込まれる各郵便局からゆうパックを使ってエプソンミズベに入庫する。伝票は専用のものを使用する

 里帰りプロジェクトの回収部会に参加しているセイコーエプソン情報画像事業本部機器要素開発・技術統括部IJ要素技術・製造部の宮澤恒樹課長は、「昨年4月8日に発表して、わずか3日後の4月11日には3箱が届いた。そのうち2つが北海道。近くに量販店などがなく、使用済みインクカートリッジの廃棄に困っていたのではないか」と話す。

 箱が一杯になった時点で配送するため、最初の1カ月で「里帰り」したのは27箱だったが、年賀状の印刷によって、インク消費量が増加する12月、1月にはそれぞれ583箱、852箱を回収。2月、3月も462箱、470箱と、400箱台を維持しているという。

 郵便局別で最も回収箱数が多かったのが神奈川県の都筑郵便局。港北ニュータウンを抱える大規模住宅エリアで、実に34箱も回収した。2位も大規模住宅である光が丘団地を抱える東京都の光が丘郵便局の20箱。続いて、神奈川県の逗子郵便局および東京都の西東京郵便局の19箱。神奈川県の横浜中央郵便局の17箱と続く。

 一方で、同プロジェクトが重視しているのが総重量の実績だ。箱数の集計では、ぎっしりと詰めて回収ボックスを郵送するのと、持ち運びが楽なように余裕をもって郵送する郵便局にわかれ、1箱あたりの回収数が異なる。そこで、回収したインクカートリッジの重量だけを集計し、それによって郵便局別の回収量をまとめている。

 これによると、2月27日時点までの集計で、一番多いのは、やはり都筑郵便局で127.7kg。続いて光が丘郵便局の120.7kg。3位は横浜中央郵便局の103.9kg、4位は西東京郵便局の102.3kgと、ここまでが100kg以上となる。

 総重量別の集計では、長野県の郵便局の躍進が目立つ。5位の上田郵便局(94.6kg)、8位の長野中央郵便局(88.8kg)、10位の諏訪郵便局(87.4kg)と、ベスト10以内に3局も入っている。セイコーエプソンのお膝元という要素もあると考えられるが、それだけとはいえないようだ。

 「例えば、ベルマークの回収でも上田市は高い回収実績がある。郵便局での回収が始まっても、ベルマークによる回収量が減ってないことからも、市全体で使用済みインクカートリッジ回収に対する意識が高いのではないだろうか」(宮澤課長)とする。また、第10位に入った諏訪郵便局の福澤邦明局長は、「諏訪市では、ゴミを10種類に分別しており、分別に対する意識が徹底している。そこにインクカートリッジは、郵便局に持ち込めばリサイクルしてくれるという認識が定着したことが影響しているのだろう」と分析する。人口数とは異なり、リサイクル意識の高い地域ほど、回収量が多いことが浮き彫りにされる。

 ちなみに、里帰りプロジェクトでは、5月12日に、回収カートリッジの総重量上位6局を表彰する予定だという。

 ところで、3月31日時点で、1箱以上を回収したの郵便局は3,639局のうち1,858局。一方で、0箱だったのが全体の49%を占める1,781局に達しているという。

 竹之内本部長は次のように分析する。「昨年11月時点では、0箱の郵便局が占めた割合は71%。月を追うごとに0箱の郵便局は着実に減少している。また、全国津津浦々に回収ボックスを設置したが、過疎地の村などにも設置しており、プリンタの利用者数そのものが少ない地域がある。0箱の郵便局があること自体は問題にしていない」。

 しかし、問題は回収率だ。昨年4月の会見では、同プロジェクトで10%の回収率を目指すとしていたが、残念ながら、その数値には到達していない。セイコーエプソンも、キヤノンも、「里帰りプロジェクトの実施によって、会社全体としては、10%の回収率を超えた」とコメントするに留まる。年間2億個のインクカートリッジが発売されるなかでは、まだまだ回収率の観点では改善の余地があるといえよう。

 「昨年12月のエコプロダクツ展に出展し、アンケートをとったところ、まだ10%しかこの制度を知らなかった。もっと認知を高める必要や、窓口を増やす必要があると感じている。だが、郵便局で回収する仕組みを作ったこと、それが徐々に浸透し、回収の成果につながっていることを考えれば、初年度は、合格点に達しているといえる」と竹之内本部長は総括する。

 竹之内本部長が合格点と語る理由の1つに、郵便局の意識が高まっていることが挙げられる。それを補足するように小池副本部長は次のように語る。「3,639局の郵便局長を対象に、里帰りプロジェクト推進の参考情報を得るためにアンケートを実施したところ、77%もの回答があった。これだけの回答率があることは、局長の意識が高いことの表れ。また、そのほとんどがこの仕組みを評価するものだった。なかには、独自にポスターやチラシを掲示したり、看板の設置、有線放送での住民への案内、渉外担当者が直接カートリッジを回収するというような工夫を行っている事例も明らかになった。また、なかにはスタンプカードを発行して、20ポイントでの粗品進呈を実施しているという取り組みもあった。今後は、こうした事例を各郵便局に紹介していくことも積極化していきたい」とする。

 諏訪郵便局では、入口横に回収ボックスを配置したのに加えて、ATMコーナーにも回収ボックスを配置することで、回収率が高まったという。「局内の入口横に設置した場合は、平日の午前9時から午後7時までしか入れることができない。自分の生活を考えると、この時間に回収ボックスに入れることはほぼ不可能。しかし、ATMコーナーであれば、午前7時45分から午後9時まで、さらに土日も利用できる。局内に設置した回収ボックスに比べて、ATMコーナーの回収ボックスではほぼ倍ぐらいの回収数がある」(郵便局株式会社諏訪郵便局・福澤邦明局長)。

 全国の郵便局で回収されたボックスは、ゆうパックによって、諏訪郵便局に併設される郵便事業株式会社諏訪支店に一度集まる。郵便事業株式会社諏訪支店・古幡直支店長は、「毎日これだけの量が全国から集まってくることに驚いている。ただ、もっと知名度を高める必要があると感じている。この1年で仕組みが完成し、実績が出ている。これから回収率を高めるためのお手伝いをしていきたい」と語る。

 全国規模での告知に加えて、日本郵政グループとの連動による、地域への告知活動の活性化にも期待したいところだ。

 里帰りプロジェクトは、実は、もう1つの成果を生んでいる。それは障がい者雇用機会の創出という成果だ。

諏訪湖畔にあるエプソンミズベ

 仕分け作業を行なっている諏訪市のエプソンミズベは、'83年に設立したセイコーエプソンの100%出資子会社であるとともに、セイコーエプソングループの障がい者雇用に関する特例子会社である。同社では、現在73人の障がい者を雇用。内訳は、知的障がい者29人、肢体障がい者25人、聴覚障がい者10人などとなっている。

 レンズ加工部品の再生、ICチップトレイの清浄のほか、セイコーエプソングループ全従業員の名刺はすべて同社が担当するなど、DTP、オフセット印刷業務も行なっている。また、防塵衣類クリーニング、ビルクリーニングなども担当し、いまや同グループにおいては、なくてはならない存在となっている。そのほか、JR茅野駅の駅ビル内にあるBELECでは、一般ユーザー向け出力サービスも行なっている。

 現在は、7拠点1工房で業務を展開。バリアフリー構造の社屋や、障害の内容によって勤務時間をあらかじめ短く設定する特別早退制度の実施など、障がい者が働きやすい環境を実現しているのが特徴だ。

 同社では、2008年4月の里帰りプロジェクトの開始にあわせて、使用済みインクカートリッジの仕分け業務を開始。当初は、4人で担当していたものを、回収量の増加に伴い、現在は8人体制に拡大している。

 「仕分けの業務と、カウントする業務とを分類して、障がい者が働きやすい環境を実現している。健常者の仕事の仕方を押しつけるということを避けるのが大切」とエプソンミズベ製品部・小沼芳博部長は語る。

 仕分け業務を障がい者の雇用機会とするアイディアは、竹之内本部長の発案によるものだ。「仕分けの委託に際して、いくつかの会社を視察したが、使い捨てカメラの回収作業で、障がい者が仕分けの仕事に強い関心をもって作業している様子を目の当たりにした。インクカートリッジの回収スキームのなかにも、ぜひ取り入れたいと考えた」とする。

 エプソンミズベの宇留賀弘社長は、「里帰りプロジェクトは、障がい者雇用機会の創出という点では、さらに大きな成果につながると考えている。数多くのカートリッジを回収することで、雇用機会がさらに増えることを期待している」とする。竹之内本部長も「現在の10倍ぐらいまで雇用を拡大できればと考えている」とする。障がい者雇用機会の創出は、里帰りプロジェクトにおける隠れた成果だといえよう。

エプソンミズベのカートリッジ仕分け工程の様子
エプソンミズベに運び込まれたインクカートリッジが入った箱箱から回収したインクカートリッジを出す
なかにはパッケージに入ったものやビニール袋に入ったものもある1箱8kg、200個が基準。パッケージや袋などから取り出し、カートリッジだけだとそれ以上の数が入るこれだけの種類のカートリッジをメーカーごとに分ける
各社ごとに分類されたカートリッジの様子
キヤノン製カートリッジについているプラスチックは別途回収なかには乾電池などを間違って入っている場合もメーカーごとに分別されたあとに、数をカウントする専用装置
落とせば右側のセンサーで関知し、数をカウントする仕組み落としたカートリッジは回収箱に入る数量はPCに自動的に入力される
隣にある秤で重量を計測し、必要事項を書き込んだシールがプリントされるプリントされたシールが貼られたもの。ここにはキヤノン向けに10.79kg、550個のカートリッジが入っているその後各社のリサイクル工場に配送される
各社のリサイクル工場への配送にも、ゆうパックが利用されるエプソンの場合、リサイクル後、グループで利用する通箱に採用する例もあるエプソンミズベではベルマークの仕組みを利用して学校から回収したカートリッジの仕分けも行なう
構内全体がバリアフリーとなっており、車椅子でも自動車に乗り降りしやすいように駐車場の横幅を広くとり、屋根を設置している
諏訪郵便局では、入口横とATMコーナーの2カ所に設置している福澤局長自ら1日1回、箱のなかを覗いて、余分な袋などを捨て、カートリッジが数多く入るようにしている

●2年目の課題は?

 では、2年目を迎えた里帰りプロジェクトは、どんな取り組みを行なうのだろうか。最大のポイントは、窓口となる郵便局の増加である。これまで回収ボックスを設置していたのは、郵政民営化前の分類でいえば、集配機能を持つ普通郵便局が対象となっていた。そのため、全国各地に回収ボックスを設置できたものの、山間部の過疎地に回収ボックスが設置される一方、都市部の郵便局の設置数が少ないという現象が起こっていた。

 例えば、和歌山県の山間部に7つの回収ボックスが配置される一方、人口が多い新宿区には3つしか配置されていないと状況も起こっていたのだ。これが、2年目に入り、回収ボックスの設置郵便局は、郵政民営化前でいう特定郵便局にも広がることになる。

 「今後は新たにボックスを設置する対象郵便局を1,000以上は増やしたい。都内でも現在100局程度に設置されているものが、300~400局程度にまで拡大することになり、回収率の向上につながるだろう」(竹之内本部長)。新たに設置する対象は、年間4万人以上が訪れる郵便局となる公算が強く、先に触れた新宿区の場合でも、現在の3局から20局近くにまで増加することになりそうだ。

 一方で、里帰りプロジェクトをより効果的に稼働させるための新たな仕掛けや、認知度向上に向けた取り組みも加速するという。「1年目は円滑に軌道に乗せることが最重要課題だった。いわばスタートの年。この成果をもとに2年目は、拡大に向けたきっかけづくりの年にしたい。3年目突入時には4%程度の回収率にまで高めたいと考えている。また、私見ではあるが、今後5年間で全国2万4千局の半分ぐらいの郵便局に回収ボックスを設置したい」と、竹之内本部長は2年目以降の取り組みに意欲を見せる。

 より身近な郵便局で使用済みインクカートリッジの回収ができるようになれば、自ずと回収率は高まるだろう。当然のことながら、それはリサイクルによる環境対策につながり、そして、障がい者雇用機会の創出にもつながることになる。

 里帰りプロジェクトが生み出すメリットは大きい。そのメリットを最大化するのは、まずは、利用者自身の意識向上と、制度の活用だといえる。

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(2009年 4月 8日)

[Reported by 大河原 克行]