実録! 重役飯

5万円だけ握りしめ彼女と名古屋に引っ越しTSUKUMOに就職~TSUKUMO後藤賢志 取締役編

いつもご愛顧をありがとうございます。PC Watchは2016年をもって20周年を迎えました。20周年を記念し、PC・IT業界を代表する企業のトップの方にインタビューを行ないました。特別企画ということで、通常であれば企業の戦略や製品について伺うところ、今回はインタビューに対応いただく方の行きつけやお勧めの料理店にて会食を行ないながら、その方の趣味や考え方など人となりに焦点を当てた質問を行ないました。この企画を通じて、企業の経営を担う人の個性や考え方などを知っていただければ幸いです。基本的に全ての方に同じ質問をしていますので、みなさんの違いも面白いのではと思います。聞き手はPC Watch編集長の若杉です。

Meat Winery

 第14回目のインタビューのお相手は、PCショップTSUKUMOを運営する株式会社ProjectWhite取締役 営業本部長の後藤賢志氏です。会食の場として選んでいただいたのは、秋葉原の「Meat Winery」です。

--:本日はよろしくお願いいたします。まず、こちらのお店を選ばれた理由を教えてください。

後藤: こちらのお店はTSUKUMOと同じ電気街振興会の会員であり、ここのすぐ下にあるメイド喫茶の「めいどりーみん」を運営されているネオディライトインターナショナルさんが運営されているんですね。昨年(2016年)の振興会の懇親会でそちらの副社長さんと知り合う機会があり、その場で、Meat Wineryを弊社スタッフの社食のような感じで利用できるよう、ランチを割り引き提供していただくということになり、会社レベルで利用させていただいています。

5万円を握りしめ彼女と名古屋に

--: 20年前は何をしていましたか。

後藤: 入社当時はAVフロアでAV機器が担当だったんですが、入社して4~5年目にTSUKUMOがPC専門店になり、20年前はTSUKUMO名古屋1号店でノートPC専門フロアのフロア長をやっていました。当時はPCの知識はなかったので、私がフロア長をやることに不安を覚える上司もいたのですが、なんとかやっていました(笑)。

株式会社ProjectWhite取締役 営業本部長の後藤賢志氏
スペイン産ワイン「シンフォニア テンプラリーニョ」で乾杯

--: ご出身は?

後藤: 山形の鶴岡です。

--: TSUKUMOへの入社を機に名古屋に引っ越されたんですか。

後藤: その前は地元で家電量販店に勤めていました。当時は電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機などを担当していました。そんな折り、付き合っていた彼女が名古屋出身で、地元に帰ることになったんですね。その家電量販店の上司が、粗暴な人で、嫌気が差していたところだったので、そこを辞め、5日分の着替えと5万円だけを握りしめて、彼女と一緒に名古屋に移ったんです(笑)。

 4泊でホテルを取り、当時はまだインターネットも普及してないので、就職情報誌で仕事を探し、みつけたのがTSUKUMOだったんです。その頃はまだTSUKUMOは家電を取り扱っておらず、自分のそれまでの経験を活かして家電コーナーを立ち上げてやるという意気込みで入りましたが、その野望はすぐにあきらめました(笑)。

--: 昔の駆け落ち話のような転機ですね(笑)。

後藤: 当時の名古屋の幹部は2つの店舗の店長、店長代理の4人でした。2号店の店長が面接してくれたんですが、「彼女がまたどこかに行くことになったら、あなたはうちを辞めるのでは?」と聞かれ、将来のことはわからないけど、入りたい一心で「そんなことはないです!」と即答したものの、怪しまれて、残りの幹部は私の入社に否定的だったんです。

 でも、2号店店長代理の人が、「おもしろいやつだから、俺の下に入れてくれ」と言ってくれて、なんとかすべり込むことができました。その人がAV担当だったので、私もAV担当に加わった次第です。

--: その頃の趣味を教えてください。

後藤: お酒とカラオケです。あとは、シーズンになると毎週のようにスノーボードをやっていました。

--: AV系でオーディオを嗜むとかはなかったんですか。

後藤: ないですね。若い頃は車にしか興味がありませんでした。かなりお金をつぎ込んでましたね。いまでも運転は好きなので、車検のときなんかは、わざわざ片道1時間くらいかかるお店に行ったりしています。

--: どういう車に乗られてたんですか。

後藤: トヨタのチェイサーとかです。若いのに生意気にレカロシートにしたりしてました。ただ、若い頃やり過ぎたせいで、いまでは熱は下がっています。

--: 次の質問がこれまでの職歴を教えてくださいというものなので、TSUKUMO入店後のお話しを伺えますか。

後藤: 名古屋で店長になり、最終的に15年ほど名古屋にいました。そのあと大阪梅田、東京秋葉原、大阪難波などを短い期間で転々としたのですが、7年前に東京本店の店長となりました。2016年4月までその職で、2016年5月に、私を育ててくれた本部長が退任されることになり、執行役員兼営業部長も兼任していた私がその方を引き継いで取締役本部長を拝命しました。

--: 店長をしながら執行役員というのはめずらしいような気もします。

後藤: 弊社だとたぶん私だけでした。

--: では、もう店頭には立たれていないのですね。

後藤: 基本的にはそうなんですが、この間吉祥寺店の様子を見に行ったとき、スタッフが手一杯だったので、「真ん中に立っていてもらえますか?」と言われ、接客をしていました(笑)。いまでも接客は好きですね。

バーニャカウダ

--: これまでの人生で、絶体絶命だと思ったできごとはありますか。

後藤: これはまずいなと思ったできごとは2つありました。1つは、小学3年生のころに、夏休みに遊びすぎて、休みが終わる3日前まで宿題に手をつけておらず、泣きながらやったことです(笑)。とくに、絵日記が大変でしたね(笑)。

 もう1つは、大阪の店舗の様子を見に行ったとき、仕事上がりに朝まで飲んで、気づいたら梅田のトイレの個室で寝てたんですね。朝、ドアをノックされて起きて、慌てて飛び出したら、財布、携帯電話だのなんだのを入れたままのコートを置き忘れてきたんです。まだ酔っ払っていたので、トイレの場所もはっきりしないなか、大阪在住時によく使っていたトイレかもと思い、行ってみたら、掃除のおばちゃんが見つけて管理室に保管してくれていたんです。

 お金がないから移動できないし、電話もないから誰にも連絡取れないし、とても焦りました(笑)。7年くらい前のできごとです。

--: もういい大人ですよね(笑)。

後藤: ええ、すでに40を超えていました(笑)。大阪はなんていい街なんだと、改めて好きになりました(笑)。

--: 次の質問は、その失敗・危機をどうやって乗り越えましたかというものなんですが、これについてはすぐ解決できたわけですね。これまでお酒でトラブルに遭ったのはそれくらいですか?

後藤: 飲み過ぎで記憶がなくなることはありますが、無事帰宅できましたし、ケンカしたりということも一度もないですね。

必要なことより、"要る"ことをやる

--: 取締役になられて、仕事上一番変わった点はどんなところでしょう。

後藤: それまでは東京だけを見ていればよかったのですが、地方スタッフのことが気がかりでした。というのも、札幌、名古屋、福岡を統括していた前任の上司は、非常に慕われていたので、私にバトンタッチしたことで不安を募らせるのではと思いました。そういうこともあり、当初半年は地方店舗には毎週のように足を伸ばすようにしました。

 ただ、地方に力を入れすぎたことで東京の売り上げが落ちてしまったので、いまは週末は秋葉原を見るようにしています。そのように、全国を統括するようになったのが大きな違いです。

 また、それまでは執行役員だったので、取締役会で決まったことを執行するのが仕事だったのが、いまは現場と経営をつなげる橋渡しの立場になりました。ですので、現場のことを自分なりに咀嚼しつつもなるべく正確に社長に伝える。あるいは、社長とは週に3日くらいランチに行くのですが、そのときに聞いた社長のいまの考えを、お店を回ったさいにアルバイトを含めた店頭スタッフに伝えるようにしています。

 というのも、店長たちは週次の会議で経営戦略などを伝えられているというのもありますし、やはり現場でお客様と一番近いところにいるのは店頭のスタッフですから。スタッフの意見を吸い上げ、経営層に伝え、売り場に反映することで、よりお客様に貢献できると思います。

 ただ、そうしはじめたのは最近で、それまでは巡店のさい、店長と話し、店長からスタッフの話を聞くという形をとっていました。私自身、店長をやっていたので、その立場の大変さは知っていますから、彼らを尊重しようと思ったからです。

 ところが、数カ月前、4~5人のスタッフから相談を持ちかけられたんです。そして、お店の実情や困ったことなどを訴えかけてきたんです。それを聞いて、自分のやり方は間違っていたなと気づきました。そうやって、スタッフから上がってきた話を僕が店長に伝えます。

真鯛のカルパッチョ

--: 仕事上のモットーや座右の銘を教えてください。

後藤: 「要ることをやる」です。「必要」なことは誰かが必ず気がつきますし、必ずやると思うんですよ。困ってはいないけど、これをやったらもっと良くなるっていうことっていろいろあるけど、意外とそのまま見過ごされているんですよね。そういったことの調整をして、ルールに落とし込むということをやっています。そして軌道に乗って、ほかにできるスタッフができたらバトンタッチします。

 具体的には、「ゲーム部」というのがあります。各店舗のゲーミングデバイス担当者を集めて、毎週ミーティングをやり、持ち回りでブログを書いています。これを立ち上げたのは私で、当時はゲーム関連への取り組みが弱かったので強化するさいに、堅苦しくはしたくないので「部活」ということにしたんです。いまはもうスタッフに任せています。

--: 最初はご自身が動かれて、形になったら下に任せるということですね。次の質問です。尊敬する人物を教えてください。

後藤: じつは尊敬するという形で誰かを見たことがなかったので、この企画のお話しをいただいたさい、「尊敬」という言葉の意味を辞書で調べたんです。で、感謝をしているという意味であれば、先ほども話に出しました前任の佐原さんです。

 佐原さんにはすごく怒られました(笑)。あるときには机を叩きながら怒られましたが、あとから聞いたら「机を叩きながら怒ったのはお前だけだ」と言われました(笑)。

 私は店長時代ほとんど本を読んでいなかったのですが、それを知って、月2冊本を読んで感想文を提出するように言われたんですね。感想文なんか書くもんかと思ったんですが、本は読むことにしました。

 最初は本に書かれていることを全部実践しようとしたけど、それって大変じゃないですか? そのことを佐原さんに言ったら、「本に書いていることは1つ2つ実践できればいいんだよ」と言われ、肩の荷が下りました。以降は、書いていることの1つ2つを実践できたら、残りはあとに読むことにして、ほかの本を読みはじめるようにしたんです。いまも数冊掛け持ちで読んでいます。最近は電子書籍なので、持ち運びも苦にならないですし。

 佐原さんがいなかったら、いまの私はいないですね。ご本人もそう伝えています。

熟成肉の3種盛り合わせ。20日間 熟成ソブロース、15日間 熟成ロース、24日間熟成 豚レボーン

--: 育ての親という感じですね。

後藤: ええ、昔はやんちゃでしたから。私が役員になったことを親に伝えたときも、「お前を役員にして、そこの会社大丈夫か?」と言われたくらいです(笑)。ちなみに、入社時に「あんなやつとるな」と言った1人が佐原さんです(笑)。

--: ご自身のセールスポイントを教えてください。

後藤: 1週間くらい考えてみたけど、うまく言葉にできなかったんですね。で、これは第三者に聞いたほうがいいだろうと思い、妻に聞いたら、クヨクヨしないことじゃないの? と言われました。たしかにそうだと思います。

 いつも失敗ばかりしていますが、それで怒られすぎた結果、どうせ過去には戻れないし、あとは出たとこ勝負でなんとかなるだろうと思うしかないなと考えるようになりました。難題が降ってきても、いつか解決できるだろうと思うし、どう自分が解決するかにワクワクするんですよね。

--: 若い頃からそういう考えだったんでしょうか?

後藤: いえ、子供の頃は恥ずかしがり屋で、人前でこんなはっきり意見を言うのは無理でした。ただ、父の稼業を継ぎたいという意志があり、それについては父が他界して叶わなかったんですが、大人になったら社長になりたいと漠然と思うようになったんですね。それで、学級委員会なんかに率先して入るようにしました。

--: いまの楽天的な考えは、過去の失敗を乗り越えてきた経験に基づくものということでしょうか。

後藤: そうですね。

--: 出社から退社まで1日の大体の仕事内容を教えてください。

後藤: 売上などの数字については、スマートフォンで確認できるので、通勤途中に済ませてしまいます。そして出社したらまずスタッフからのメールをチェックします。それで困っていることを把握し、改善提案を投げかけたりします。次に、店長や責任者のメールをチェックし、最後に社長のメールをチェックします(笑)。と言うのも、社長からの指示については、緊急のものは電話で来ますので。

 そのあとは、社長とランチを取りつつ、報告を行なったり、質問したりします。

 午後は日によってまちまちで、報告書を書いてから、秋葉原のお店を見たり、報告書を書かない日は、池袋、新橋、吉祥寺のお店を見に行きます。以前は3店舗を1日で回っていましたが、それでは店長以外のスタッフやアルバイトと話す時間を持てないので、いまは1日1店舗にしています。

--: どのようにスケジュール管理をしていますか。

後藤: 紙の手帳です。

--: スマホとかデジタルでは管理されないんでしょうか。

後藤: スマホにはカレンダーアプリを入れていますが、どうも慣れないんですよ。結局、入力するのが億劫で使わなくなってしまいます。手書きのほうが速いし、余白に書いたりできる自由さがいいんですよね。スマホより紙のほうが記載ミスすることが減りました。それから、紙の手帳を使いはじめると、埋めていくのが楽しくなるんですよね(笑)。

--: 経営層の方って、自分の予定を部下や周囲と共有しておく必要もあるじゃないですか。そこはどうしているんでしょうか。

後藤: そこもアナログでして、会社には卓上カレンダーとホワイトボードがあって、共有する必要のあるものは自分でそちらにも手書きでリンクさせています(笑)。マスターが自分の手帳で、共有すべき直近の予定はホワイトボードに書いています。卓上カレンダーも使っているのは、電話で空きスケジュールを聞かれたときに即答できるようにするためです。

 とはいえ、社内会議などの予定は社内のシステムで共有されていて、私もそれを参照しています。

--: 携帯電話は何を使っていますか。

後藤: iPhone 7 Plusとフィーチャーフォンの2台持ちです。

--: 通話用とそれ以外用ですか?

後藤: そのとおりです。社内メールにはiPhoneからリモートアクセスできるんですが、通話用の電話があると、それを見ながら電話できるんですよね。それから、昔はiPodを持っていたんですが、いまはiPhoneに統合しました。

--: iPhone 7 Plusは最新ですが、頻繁に機種変更なさるんですか。

後藤: 2~3年おきです。この前はiPhone 5cでした。その前は、初めてIGZOを採用したAQUOS Phoneでした。

--: AndroidからiPhoneに変更された理由は。

後藤: 一番の理由はiPodです。iPodを使っていたけど、スマホにまとめたいなと思い、ならiPhoneだと。

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これまでの自作機はAMD CPU

--: プライベートではどのようにPCを使っていますか。

後藤: じつはプライベートでは使っていません……(笑)。

--: 以前から自作したりとか、プライベートでは使われていないんでしょうか。

後藤: PCは持ってます。仕事でも持ち歩くノートが1台と、自作のデスクトップがありますが、これはPhenomマシンです(笑)。

--: それはまたずいぶん年季が入ってますね(笑)。

後藤: じつは自作機はAMD CPUでしか組んだことがないんですよ。と言ってもIntelが嫌いなわけじゃないです(笑)。昔からみんなと違うほうに行きたがるんですよね。

 この自作機は一人暮らしのときに27型のディスプレイにつなげて、TV代わりに使っていました。結婚して以降はほとんど使わなくなってしまいました。いまとなってはノートのほうが性能もいいですし(笑)。

--: AMDはつい先日Ryzenを投入しましたが、それで新規に組んでみたりはしないんですか。

後藤: じつはRyzen+Vegaの構成を狙っています。TVも観られるAll-In-Wonderに感動して、それ以降ATIのファンなので。

--: いまの趣味は何ですか。

後藤: いまもお酒とカラオケ、ドライブですね。昔はスナック通いも趣味みたいなものでしたが、いまは妻を連れ出して飲みに行って、駅前のカラオケで歌って帰る感じです。妻と飲んでいると楽しすぎてつい飲み過ぎて、大体次の日は二日酔いですね(笑)。

--: 理想的な夫婦関係ですね。

後藤: 僕がかみさんのことを大好きなんですよね。

--: 趣味も合う感じですか。

後藤: 妻もカラオケは好きだけど、お酒はあまり飲めないんですよ。でも付き合ってくれるので、なおさらうれしいんですよね。

--: 何か特技はお持ちですか。

後藤: 人に自慢できるような特技はないですね。若い頃はいつでも感情移入できて泣けると答えていました(笑)。あ、でも映画なんかを観るといまも泣くことがありますね。この前、アナと雪の女王を観て泣きましたし、この前もなぜか仮面ライダーを観て泣いてしまって、妻に呆れられました(笑)。

--: それはかなり涙もろいほうだと思うんですけど(笑)。

後藤: いまのアニメやゲームなんかも、僕らが子供の頃よりストーリーがしっかりしてると思うんですよね。

--: 次の質問は、休日はどのように過ごしていますか、なんですが、お休みは週末なんでしょうか。

後藤: 日曜日を休日にしています。で、休みの日は妻が行きたいというところに行きます。最近だと、桜を見に行ったり、ペット博に行ったりしました。

 ただ、こうやって週末に出かけるときも、お客様の視点になれるようにということを念頭に置いて行動しています。小売りをやっている自分が、100%すべてのお客様の視点には立てないけど、ブランド名にもあるように、99%くらいまでそのお客様の需要に見合うものを提供できればと思っています。

 そのためにも、週末に自分も行列に並んで買いものをしてみて、自分たちのお店を買いものをしやすい環境にすることにつながればと思っています。

--: 個人的なもので、いままでで一番高い買い物は何ですか。

後藤: 通算で言うと車のパーツです。たぶん500万円くらいつぎ込んでます。車は普通のビスタなんですが、鉄仮面の中古のキットを買ってきて加工代に50万円かけ、車も2カ月預けて、私の車専用にサイズを合わせてつけてもらったりしました。あとは、レカロシート、ホイール、マフラー、ハンドル、ペダルなども一緒に付け替えました。

 20代の頃で、5年ローンでやってもらいました。その頃の給料の手取りが15~16万円なのに、ローンが毎月10万円以上です(笑)。下手すると、ガソリン代すらなくなるときもありました(笑)。そういうときは、ナンパをして、「こんな車この辺にはないから、乗ったら自慢できるよ! だからガソリン代だけ払って!」って言って、カンパしてもらってました(笑)。

 まぁ、実家暮らしだったのでできたことです(笑)。もう少し給料をもらえるようになってからは、実家に仕送りをして恩を返しました。

--: いまでは車いじりはしてないのですか。

後藤: もういまはしていません。

--: いま一番ほしいものは何ですか。

後藤: 妻との時間です。この年になってお恥ずかしいことですが、ホント大好きなんですよね(笑)。本人にも直接言ってます。妻も言ってくれるので、たぶん両想いだと思います(笑)。

--: 時間があったら、奥さんとは何をしたいですか。

後藤: 一緒にいるだけで楽しいです。たとえば朝食は私が作っていて、夕食は妻が作ってくれます。そういうささいなことでも、一緒に時を刻んでいるのを実感できるだけで十分です。どこかに連れて行ってあげたいなとも思うんですが、犬を4頭飼ってるので、なかなか遠出はできないんですよね。犬を連れて行こうにも、車酔いする犬もいるので。

--: 好きなブランドを教えてください。

後藤: トニックウォーターはカナディアンドライ、炭酸水はウィルキンソン、バーボンならアーリータイムズが好きといった好みはありますが、これでなければならないというブランドはとくにないです。

熟成フレンチトースト

--: 個人的にこのヒト・モノには絶対勝てない……というのはありますか。

後藤: 先ほどもお話しした佐原さんです。すべてにおいてまではいかないかもしれませんが、多くの点で勝てないなと思います。とくに人を惹きつけるカリスマ性や、度量の大きさ、知識、頭の回転の速さなんかがすごい方です。

 優劣にはいろんな視点がありますから、あらゆる人にいろんな点で負けているとも思います。でも、逆に言うとどんな人にでも1つくらいは自分が勝てるところもあるかなとも思っています(笑)。それは耳の大きさとか傷の多さとかかもしれませんが(笑)。

もの・サービスを使う側から提供する側になる新社会人を歓迎

--: 20年後どのようなことをしていたいですか。

後藤: そのときも働いていたいです。葛飾北斎が亡くなったとき90歳くらいだったと思うんですが、亡くなる間際に「あと5年あったら本当の絵が描けたのに」と言ったそうです。その言葉が心にずっと残っていて、自分もそうありたいなと思っていて、体が動く間は働いて、人の役に立ちたいです。たとえば、軽ワゴンでも改装して、移動販売のおにぎりやなんかを妻と2人でやれたらと思います。

 最近知ったのですが、ある企業がコールセンター事業をやっていて、新聞販売店と協業して、全国の老人の困りごとに応対しているんだそうです。たとえば、家の電球が切れたという電話があると、最寄りの新聞販売店のスタッフが赴き、電球を交換するというサービスです。月額も1回のサービス料も数百円だそうです。その説明を聞いたとき、こういう人の役に立ち方があるんだなと感動しました。

 ただ、同じ福祉なら、老人より子供の役に立ちたいかなと思います。たとえば養護施設で暮らしている子供たち。もともと頭もいいのに、十分な教育の機会を得られず、才能を発揮できないこともあると思います。そういった子供たちに、ビジネスのやり方など、何か教えられたらいいなと思います。

--: PCは20年後どうなっていると思いますか。

後藤: ビジネスの場では、いまの形のPCが使いやすいので、多少形は変われど残っていると思います。

 一方、パーソナルを考えると、VR、有機EL、IoTみたいなものがさらに進化し、加えて、STEM教育で育った子供が、いまの日本に足りないコンテンツを作りはじめることが組み合わさるとさまざまな発展が期待できますよね。

 たとえば壁も天井も床もフィルムディスプレイの機能を持つと、VRでHMDがいらなくなるんですよね。声で「森」というと、室内が森の映像になる。そしてIoTでエアコンも連動して、そよ風を送り、スピーカーは小鳥のさえずりを再生する。ホログラム技術まで加われば、もうどこでもドアの世界ですよね。そういったがらりと変わった世界に期待を抱きますね。

--: これから社会人になる20歳の人に、どのように人生を歩むべきかメッセージをお願いします。

後藤: まず社会人になってくれることを歓迎したいです。これまでは大人が作ったものやサービスを使う側だったのが、今後は、自分たちが作る・提供するものを使ってくれる人が出てきます。自分たちの仕事が、誰かのためにやっていることなんだと意識すると、より良い製品やサービスにつながります。常にそういったことを心の隅に留めておいていただければ幸いです。

読者プレゼント

この企画では、登場いただく方に記念品を読者プレゼントとしてご提供いただいています。後藤さんには愛用のBirdie製ペーパーナイフを2本ご提供いただきました。ふるってご応募ください。

応募方法

応募方法:下記リンクの応募フォームに必要事項を入力して送信してください

応募締切:2017年6月22日(木) 0:00まで

応募フォーム

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Birdie製ペーパーナイフ