いま、ここにあるエッジAI
3D CGのように反射まで再現できるSkylumのAI写真処理技術
2020年10月22日 11:49
米国ニューヨークに本拠地を置くSkylumは、2018年にMacphunから現社名に変更したソフトウェアベンダー。同社は2009年に設立されて以来、写真編集などのソフトを提供しており、写真編集ソフトウェアとなる「Luminar」、HDRの写真を編集する「Aurora HDR」などのmacOS版ソフトウェアで名前が知られるようになった(現在はmacOSとWindowsの両対応)。
そのSkylumの最新ソフトウェアが「Luminar AI」で、エッジAIを利用して写真をプログレードな形に仕上げるためのツールとなる。Luminar AIは10月1日に発表されたばかりの新製品で、エッジAIに特化して写真を編集するツールになっている。
Luminar 4からエッジAIを利用した編集機能を取りだしたLuminar AI
Luminarシリーズは高い写真の管理性、高度な編集機能などで人気を博しており、Adobeの写真管理ツールLightroom Classicのライバルとなるツールとしても知られている。
Luminarの最新版は「Luminar 4」で、Adobe Photoshopでも最新版において実装されたAIによる空の置き換え(AI Sky Replacement)がいち早く搭載されるなど、エッジAIの実装に関しても熱心に行なっている。Luminar 4はmacOS/Windows 10での利用が可能で、基本的なライセンスになる2台のコンピュータにインストールできるBASICライセンスは10,560円で購入できる(体験版も用意されており、一部機能を体験できる)。
そのLuminarから、AI関連のツールを取り出して独立させたのが「Luminar AI」で、数々のエッジAI関連の写真編集ができるようになっている。具体的には「Body AI」、「Iris AI」、「Face AI」、「Skin AI」、「Accent AI」、「Boket AI」、「Sky AI」、「Atmosphere AI」などの機能が搭載されており、それぞれシーンに合わせてエンジンが利用されてより高品質な写真編集が手軽に行なえる。
たとえば、Atmosphere AIではエッジAIエンジンが2Dの画像から3D方向の深度を計算して、それをもとに、より自然な霧や靄を追加したりなどが可能になっている。
Luminar AIは今年末までに販売が開始される予定で、現在は予約受付中。先行予約中の予価は10,560円で、2台のコンピュータにインストールできる永続ライセンスのかたちで販売されている。
OpenVINOによりIntel CPUに最適化することでSky AI 2.0の処理が数時間から30秒へ
Skylumによれば、このLuminar AIのエッジAIエンジンの演算は、GPUに関しても一部利用されているが、おもにCPUが利用される。このため、CPUへの最適化が重要になり、CPUを効率よく使ってエッジAIの推論を行なうためにIntelのOpenVINOツールキット(以下OpenVINO)が利用されている。
Skylumによれば「数値で示すことはできないが、OpenVINOによる最適化の効果は非常に大きい。そしてそうした性能面だけでなく、実装までにかかった時間を短縮することができたことがOpenVINO採用の効果だ」と述べており、OpenVINOを採用することで、Intel CPUへの最適化を短期間で進めることができ、かつ性能向上にもつながっていると説明している。
なお、GPUに関してはいくつかの命令をオフロードしているだけだが、近い将来にはそのGPUへのオフロードをもっと充実させたり、第10世代Coreプロセッサ(Ice Lake)および第11世代Coreプロセッサ(Tiger Lake)からサポートされたGNA(Gaussian & Neural Accelerator)に関してもサポートする計画であるという。
今後はバックグラウンドで行なっているタスクをCPUからオフロードする目的でGNAをサポートする計画があり、2021年にその詳細を明らかにする計画だ。
Luminar AIに搭載されているSky AI(空色を変更するAI)は、2021年にSky AI 2.0に進化予定。新バージョンでは、空を単純に入れ替えるだけでなく、水面に映る反射に関しても自動で追加されたりと機能強化が図られている。このSky AIもOpenVINOを利用して開発されており、従来ならCPUだけで1~2時間かかっていた作業がわずか30秒で実現可能になっているという。実装が楽しみな機能だ。
[制作協力:インテル]