山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
実売3万円台、サブモニターとしても使える10.95型Androidタブレット「Lenovo Tab M11」
2024年2月5日 06:03
レノボ・ジャパンの「Lenovo Tab M11」は、10.95型のAndroidタブレットだ。フルHDの解像度、500gを切る重量など、10型クラスのタブレットとしては及第点のスペックを備えつつ、実売価格は3万円台後半とリーズナブル。さらにスタイラスペンが標準添付されるほか、PCのサブモニターとして使える機能も標準搭載するなど、付加価値の多い製品だ。
今回は筆者が購入した実機を用いて、電子書籍ユースのほか、PCのサブモニターとしての用途も含めて、その使い勝手をチェックしていく。
実売3万円台ながら付加価値の多い製品
電子書籍ユースで本製品にもっとも似通った製品と言えば、Amazonが販売する実売3万円台の11型タブレット「Fire Max 11」だろう。ここではまずそのFire Max 11とスペックを比較する。
Lenovo Tab M11 | Fire Max 11(第13世代) | |
---|---|---|
発売日 | 2024年1月 | 2023年6月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) | 255.3×166.3×7.2mm | 259.1×163.7×7.50mm |
重量 | 465g | 490g |
OS | Android 13 | FireOS |
CPU | MediaTek Helio G88 プロセッサ 8コア 1.80GHz×6、2.00GHz×2 | 8コアプロセッサ - 2x Arm Cortex-A78 (最大2.2GHz)、 6x Arm Cortex A55 (最大2GHz) |
メモリ | 4GB | 4GB |
画面サイズ/解像度 | 10.95型/1,920×1,200ドット(207ppi) | 11型/2,000×1,200ドット(213ppi) |
通信方式 | Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac) | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
生体認証 | 顔認証 | 指紋認証 |
防水防塵 | IP52相当 | - |
バッテリー持続時間(メーカー公称値) | 10時間/7,040mAh | 14時間/7,500mAh |
コネクタ | USB Type-C | USB Type-C |
スピーカー | Dolby Atmos対応クアッドスピーカー | Dolby Atmos対応デュアルスピーカー |
イヤフォンジャック | ○ | - |
メモリカード | ○(最大1TB) | ○(最大1TB) |
主な付属品 | Lenovo Tab Pen | - |
価格(発売時) | 3万8,280円(64GB) | 3万4,980円(64GB) 3万9,980円(128GB) |
この表からも分かるように、両者のハードウェアスペックはよく似通っている。メモリは同じ4GB、ストレージの最小容量も64GBと横並び。このほか最大1TBのメモリカードに対応しているのも同様だ。画面はFire Max 11のほうが若干横幅は広いが、解像度はほぼ同等ときている。
Fire Max 11にない本製品ならではの利点としては、IP52の防水防塵性能を備えること、4,096段階の筆圧感知機能を備えたスタイラスペンを標準添付していること、Windows PCのサブモニターとして使えるアプリ「Lenovo Freestyle」を搭載していることが挙げられる。またGPS機能を備えるため、Fire Max 11では動作しないGPSを利用したゲームも動作すると考えられる。
こうした特徴を備えながら価格はFire Max 11と同じ3万円台ということで、お買い得感は非常に高いのだが、一方でコストダウンの跡は随所に見られる。たとえば無線LANがWi-Fi 5までの対応だったり、生体認証は顔認証のみで指紋認証には非対応である点などだ。またCPUパワーについてはかなりの差異があるのだが、詳しくはベンチマークの項で後述する。
Fire Max 11と酷似もレスポンスは……
さて実機を手に取った印象だが、こちらもやはりFire Max 11とそっくりだ。背面だけならば見間違えることはないのだが、電源をオフにして手に持った状態では、どちらがどちらなのか区別がつかないレベルだ。
外見上の最大の相違点はリアカメラだ。本製品に限ったことではないが、タブレットにおけるカメラの必要性は個人的にはやや疑問に思うところがあり、厚みのあるこのカメラのせいで最厚部が増すのは可搬性という意味ではマイナスだ。バッグなどの中に入れる場合は破損などに注意したい。
またスタイラスペンを標準添付しているのは本製品の強みだが、本体に収納できないのは致し方ないとしても、マグネットで本体に吸着させるギミックもないなど、このあたりは少々もったいない印象だ。
セットアップの手順は一般的なAndroidデバイスそのもの。プロセスの後半で、インストールのチェックを外せないサードパーティー製のおすすめアプリがあり、アンインストールしてもホーム画面上の「あなたのためのアプリ」フォルダにショートカットが残ってしまうが、設定画面からまるごと非表示にすることで対処できる。
実際に使った印象としては、タップしたはずが反応するまで間が空いたりと、レスポンスは決して速くない。アプリの切替などでもっさり感を感じるほか、スリープからの復帰もワンテンポ待たされる。Google Octane 2.0で調べたところ、ベンチマークスコアはFire Max 11のおよそ半分程度と、むしろFire HD 10(第13世代)に近い数値だ。
このスコアは体感的なレスポンスとも一致しており、あまり性能は高くないことになる。価格を考えると致し方ないところはあるが、せっかくの豊富な機能を活かすためにも、スペックはもう一声ほしかったというのが本音だ。
表示性能はFire Max 11と同等、見開き表示に最適
では電子書籍ユースについて見ていこう。本製品には電子書籍アプリとしてGoogle Playブックスもプリインストールされているが、ここではKindleで試用を行なっている。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。
解像度は207ppiということで、表示のクオリティは並といったところ。一般的な表示ではまったく問題はないが、雑誌などで細かい注釈を表示しようとすると、文字がつぶれて表示されることが稀にある。一言で言ってしまうと価格相応ということになる。
一方で画面サイズは10.95型と大きいため、コミックを見開きで表示したり、雑誌をなるべく原寸大で表示する用途には向く。ただし前述のように注釈など細かい表現が得意ではないこと、またアスペクト比の関係で一定の余白ができることは、知っておいたほうがいいだろう。もっともこのあたりはFire Max 11と大きく変わるものではない。
そのほかの利点としては、メモリカード対応により容量を追加できることや、「読み上げモード」を使い、画面の彩度を落として目への負担を軽減できることが挙げられる。重量については、実測470gということで、他製品と比べてそれほどアドバンテージはない。
なお前述のように、本製品はスペック自体は決して高くないが、電子書籍ユースであればそれらを感じることはほとんどない。タップによるページめくりで、稀に反応が遅れるくらいだ。まず予算ありきで、コミックの見開き表示や雑誌の単ページ表示ができるデバイスを探しているのであれば、悪い選択肢ではない。
PCのサブモニターとして利用可能なアプリを搭載
さて、本製品の目玉機能の1つに、本製品をPCのサブモニターとして利用できる「Lenovo Freestyle」がある。
一般的に、タブレットをPCのサブモニターとして利用する時には、タブレットとPCの両方にアプリをインストールする必要があるが、本製品の場合、本アプリ側にはあらかじめアプリが導入済みであるため、あとはPC側にアプリのインストールを行なうだけで、接続が可能になることが特徴だ。
利用にあたっては、これらアプリのインストールを終えたあと、タブレットとPCとで同じレノボIDでサインインしておく。あとは両者でアプリを起動すると、同一ネットワーク内にある相手の端末を認識するので、PC側で「拡張」か「複製」かを選んで起動すれば、タブレットの画面にPCの画面が表示される。
実際に試した限りでは、使い勝手は一般的なマルチディスプレイアプリと同じで、画面の複製と拡張の両方に対応するほか、画面の倍率調整や縦横の切替なども行なえる。またタッチ操作も問題なく行なえるので、Windowsのデスクトップをリモート操作するという芸当もできる。UIに多少の癖はあるが、十分に実用的だ。
またこの「Lenovo Freestyle」は、単純なサブモニターアプリとしての機能だけでなく、PCからタブレットへのファイル転送機能を備えるほか、タブレットにインストールされているアプリをリモートで起動し、その画面をPC側に表示するというユニークな機能を備えている。
特に後者の機能はユニークで、タブレット側にインストールされている電子書籍アプリをPCの画面上に表示し、読書を楽しむことができる。一般的なマルチディスプレイアプリには見られない独自の機能だ。この時、タブレット側はタッチ操作を受け付けているので、手元にあるタブレットでスワイプすることで、Windowsのディスプレイに表示されているページがめくられるというのはなかなか面白い。
ただしこれは通常の読書の速度でゆっくりページをめくった場合の話で、ペラペラと連続してめくるような動作では描画が追いつかず、画面が低解像度に切り替わったり、また見開きの1/4ページだけがめくられた状態で固まることがあった。これは純粋なスループットの問題と、タブレット側のパフォーマンスの低さ、どちらも関係していると考えられる。
というわけで実用レベルにはギリギリ届くか、届かないか微妙なところなのだが、とは言え一般的なマルチディスプレイアプリやリモート系のアプリにはない機能であり、なによりプリインストールされていて手間を掛けずに使えるのは大きい。この機能のためだけに本製品をチョイスするのはおすすめしないが、購入した人は試す価値はある。
性能よりも機能の豊富さに振った製品
以上のように、スペックはもう一声ほしいのは事実だが、実売3万円台で一通りの機能を備えつつ、防水防塵機能を搭載、スタイラスペンも標準添付され、さらにマルチディスプレイアプリという付加価値もある。ややもっさりした動きは妥協する必要があるが、全体的に見どころのある製品なのは事実だ。
このあたり、同じ3万円台という価格帯の中で、性能に振ったのがFire Max 11や前回紹介したサムソンの実売3万5,799円の11型Androidタブレット「Galaxy Tab A9+」で、一方で防水防塵への対応やスタイラスペンの標準添付といった付加機能に振ったのが本製品と解釈すれば分かりやすいだろう。
ざっと試した限り、YouTubeやNetflixなど動画配信サイトも、特に再生に支障があるわけではなく、また800万画素のリアカメラは、スマホを所有していないユーザーにとってもプラス要因となるだろう。一定の水準をクリアしつつ、なるべく安価に買えるタブレットを探しているならば、候補の1つに入れておいてよい製品という評価になるだろう。