山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

楽天Kobo初のカラーE Inkを搭載した7型端末「Kobo Libra Colour」を試す

Kobo Libra Colour」。ホワイトのほかにブラックもラインナップする。実売価格は3万4,800円

 「Kobo Libra Colour」は、楽天Kobo初となるカラーE Ink端末だ。従来の「Kobo Libra 2」の後継にあたる本製品は、電子書籍をカラーで表示できるほか、これまで上位モデルにのみ搭載されていたスタイラスによる手書き入力にも対応するのが特徴だ。

 カラーE Inkを採用した端末としては、本連載でも何度か紹介しているAndroidタブレット「BOOX」シリーズがあるが、本製品は特定の電子書籍ストアに紐付く専用端末であることが大きく異なる。E Ink端末の市場を作ってきたAmazonの「Kindle」よりも早く、楽天KoboがカラーE Ink端末を投入してきた事実は非常に興味深い。

 今回は、7型と6型の2モデルが発売されたこのカラーE Ink端末のうち、画面サイズが大きい7型モデル「Kobo Libra Colour」を購入したので、モノクロE Inkを採用した従来モデル「Kobo Libra 2」と比較しつつレビューする。

最新のカラーE Ink「Kaleido 3」を搭載

 まずはスペックについて、モノクロの従来モデル「Kobo Libra 2」と比較してみよう。

Kobo Libra Colourのスペック比較
Kobo Libra ColourKobo Libra 2
発売月2024年4月2021年10月
サイズ(幅×奥行き×高さ)161.0×144.6×8.3 mm161.6×144.6×9.0 mm
重量199.5 g215 g
画面サイズ/解像度7型/1,680×1,264ドット(カラー150ppi / 白黒300ppi)7型/1,680×1,264ドット (300ppi)
ディスプレイE Ink Kaleido 3E Ink Carta 1200
内蔵ストレージ約32GB約32GB
フロントライト内蔵(自動調整)内蔵(自動調整)
ページめくりタップ、スワイプ、ボタンタップ、スワイプ、ボタン
端子USB Type-CUSB Type-C
防水・防塵機能あり(IPX8規格準拠)あり(IPX8規格準拠)
バッテリ持続時間の目安数週間数週間
スタイラス対応(オプション)対応(オプション)
価格(税込、発売当時)3万4,800円2万3,980円
備考Koboデスクトップアプリに非対応

 外観については、見た目は従来モデルとそっくりなのだが、ボディの幅や厚み、さらにはベゼルまわりのカーブ具合が違っていたりと、設計はまったく別物。単に従来モデルの画面をカラーに差し替えただけというわけではないようだ。200gを超えていた重量も、若干軽くなっている。

 そのカラーE Inkは、BOOXの最新カラー端末にも採用されている「Kaleido 3」を搭載する。要するに、今入手可能なもっとも新しいカラーE Inkパネルを採用した製品ということになる。モノクロは300ppiなのに対してカラーは150ppiと、色別に解像度が異なるの同様だ。これらが表示に与える影響は後ほどチェックする。

 充電用ポートがUSB Type-Cだったり、メモリカードは非対応といった点は従来のモノクロモデルと同様。ストレージも同じ32GBだ。カラーE Inkの採用や、スタイラスを使った手書き入力に対応したという大きな違いはあるものの、フォームファクタ自体はそう大きく変わっていない。

カラーE Inkを搭載。ボディデザインは従来モデルと似ているが設計自体は別物
背面。右上に電源ボタンを備える。凹凸のパターンは滑り止めの役割を果たす
下から見上げるとボディがゆるやかに傾斜しているのが分かる
側面。USB Type-Cポートを備える
従来モデルと同じくページめくりボタンを搭載する
重量は公称199.5gだが実測では201gと、大台を割っていない

 なお同時発売の6型カラーモデル「Kobo Clara Colour」との最大の相違点は、ページめくりボタンの有無だ。

 本製品はタップやスワイプ以外にボタンによってページがめくれることから、手袋を外せないような環境や、画面に水滴などが付着していてタッチが反応しづらい場合でも、問題なくページめくりが行なえる。また防水防塵対応なので、水がかかりやすい場所での利用にも対応する。

左が本製品、右が従来モデルの「Kobo Libra 2」。カラー化された画面が目立つが細部のサイズも微妙に異なる
背面。モデルごとに微妙に異なる凹凸のパターンは、今回もアレンジが加えられている
ボタンがある側を背中合わせに並べたところ。カーブの具合や厚みなどが微妙に異なる
反対側を並べたところ。従来モデル(右)のほうがやや厚みがある

カラー化されているがUIは従来とほぼ同じ

 では実際に使ってみよう。セットアップのプロセスは、カラーE Inkになったからと言って、特に何かが異なるわけではない。手動でのログインだけでなく、スマホでQRコードを読み取ってのログインにも対応している。

 注意点として、セットアップのほか同期やソフトウェアアップデートは、従来のデスクトップアプリに非対応で、Wi-Fi経由でしか行なえないことが挙げられる。USBでPCと直結して利用するデスクトップアプリは、端末に通信機能がなかった当時の名残で、機能がなくなることに異存はないのだが、ずっとデスクトップアプリを使ってきたユーザーは気を付けたほうがよいだろう。

セットアップ開始。まずは言語を選択
ここからセットアップ開始
まずはWi-Fiまわりの設定を行なう
このあとアップデートが行なわれる
ログインはスマホを用いる方法と手動の2通りがある。今回は後者を選択
楽天IDとパスワードを入力してログインする
セットアップ完了。コンテンツが自動ダウンロードされる。初期状態ではフロントライトの暖色がきつい
フロントライトの暖色をオフにした状態。従来のような青白さがなく見やすい

 さて端末を起動し、画面を従来モデルと見比べても、カラー化されていることを除けば、UIは従来と大きくは変わらない。画面下段のメニューに新たに「ノート」という項目が追加されているが、これはスタイラスによる手書き入力に対応した上位モデルと共通だ。後述するノートの書き出し先として、Googleドライブが追加されているのが目立つくらいだ。

 設定項目についても、ほぼモノクロモデルと同一だが、唯一「読書設定」の中に、「虹色ノイズ」という新しい項目が追加されている。名前からしてカラーE Inkのリフレッシュ時に出現するカラフルなノイズに関係しているように見えるが、試した限りではオンとオフでの差は分からなかった。

「ホーム」。カラー化された以外に、最下段メニュー中央に「ノート」が追加されているのが従来モデルとの大きな違いだ
「ライブラリ」。カラーになったことを除けば従来と特に違いはない
「ノート」。この画面自体は既存の「Kobo Sage」など手書き対応モデルと共通
「ストア」。コンテンツを直接購入できる。ストアのシズル感のなさは相変わらずだ
「その他」。設定画面などへのアクセスが行なえる。一部のアイコンがカラー化されている
体験版アプリとしてはブラウザ、大文字モード、単語帳が用意される。かつてあった数独などのゲームコンテンツはない
本製品(左)はメニュー選択時の強調表現としてカラーが用いられるようになった
設定画面。この一覧における項目は従来とまったく同じだ
アカウント。Dropboxに加えて新たにGoogleドライブと連携可能になっている
節電/プライバシー。従来はグレーアウトしていた「情報パネル」が操作できるようになっている
読書設定の1ページめ。進行状況の選択肢も含めて従来モデルとの違いはない
読書設定の2ページめ。新たに「虹色ノイズ」なる項目が追加されているが、試した限りでは差は分からなかった

 動作速度はどうだろうか。もともとKobo端末はAmazonの「Kindle」と比べ、パフォーマンスはそれほど高くないのだが、今回のカラーE Inkモデルと従来のモノクロモデルを比較する限り、そう差があるようには見えない。少なくともカラー化の影響でもっさりして使い勝手が悪くなったということはない。この点は安心してよさそうだ。後ほど動画でも紹介する。

 なお本製品のフロントライトは、従来のモノクロモデルと同様、暖色と寒色の両方に対応するが、暖色は色の再現性が極端に落ちるため、実用性は低い。その一方で寒色は、E Ink端末のフロントライトによくある青白さがなく、かなり自然な色合いを再現できている。フロントライトを使う場合は暖色を無効化し、寒色だけを有効にしてやるとよいだろう。

フロントライトは暖色と寒色に両対応だが、カラーの恩恵がなくなるので暖色はオフにしたほうが無難だ

カラー表示は残像も目立たず高評価。最適化の手間も不要

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最終号を使用している。

カラーE Inkということで雑誌の図版などの表示に適する。モノクロは300ppiあるので縮小しても文字は十分に読める

 今回の端末に使われているカラーE Inkは「Kaleido 3」という、BOOXでも採用されている最新のパネルだが、本製品は楽天Koboに特化したチューニングが行なわれているため、BOOXのように、電子書籍アプリごとに解像度やリフレッシュの頻度などさまざまなパラメータを最適化する必要がない。

モノクロの従来モデル(右)との比較。コントラストが低いため離れて見るとあまりカラーらしさはない。あくまでもE Inkに色が付いているという程度

 もちろんE Inkであるが故に、ページ切り替わり時の画面反転は見られるが、残像はあまり目立たず、モノクロのE Inkに慣れている人であれば、ほぼ気を取られることなく読書に集中できるはずだ。見やすいよう最適化を行なっても、それが正解かどうかという保証がないため、使っていてどこか気持ち悪さが残る──というBOOXのような問題もない。

上が本製品、下がモノクロモデル。こうした図版ではカラーの表現力が生きてくる

 ちなみに実際の仕組みとしては、挙動を見る限り、ごくシンプルに、1ページめくるたびに画面全体をリフレッシュするという力技のようだが、それだけに効果は絶大だ。CPUパワーは余裕があるようで、操作していてももっさり感はない。

スワイプでページめくりを行なっている様子。ページ切り替わり時のリフレッシュはかなり派手だが、そのぶん残像は目立たない。また画面に触れてからの反応速度も速く、もっさり感はない

 その一方で、カラーはもともと彩度が低いことに加えて、解像度はモノクロの300ppiに比べてカラーは150ppiと低いため、カラーだけで表現された文字は解像度不足を感じる場合がなくはない。表示内容によっては、まるごとモノクロでしか表示できない従来モデルのほうが読みやすく感じられる場合も稀にある。

 ではもともと色が付いていない、モノクロのコミックやテキストコンテンツはどうだろうか。電子書籍は表紙や口絵がカラーでも、そのほかのページはほとんどがモノクロだ。もしモノクロ表示のクオリティが大幅に劣るとなれば、いくらカラー表示に対応していても、購入をためらう人も多いはずだ。

 結論から言ってしまうと、多少の差はあるが、許容できる範囲だ。本製品のモノクロ表示は画面全体にざらつきがあり、従来のモノクロ端末のようななめらかさはないが、その一方でフロントライトが純粋に白に近く、従来のように青みがかっていないほか、黒く塗りつぶされていたコミックの余白が白になり見やすくなるなどの変化もあり、トータルではプラスのほうが上回る印象だ。

もともとモノクロのコミックも300ppiということで表現力は高い
モノクロの従来モデル(右)と比べると画面の色が自然で、かつ両側の黒帯がなくなり見やすくなっていることが分かる
左が本製品、右がモノクロモデル。解像度は同じ300ppiのはずだが本製品は全体にざらつきが見られる
7型ということで、コミックは見開きでもなんとか見られるサイズ

手書き機能もカラー化。Googleドライブへの書き出しも可能に

 最後に、新しく搭載された手書き機能についてもチェックしておこう。手書き機能は、大画面モデルの「Kobo Elipsa 2E」や8型の「Kobo Sage」に搭載されているのと同様で、別売のスタイラスを使って電子書籍にマーカーを引いたり、作成した手書きノートを必要に応じて外部にエクスポートできる機能だ。

 対応するスタイラス(Kobo スタイラス2)は別売(9,180円)となっている。標準添付でないのは残念だが、本製品を使うユーザーすべてがこの機能を必要とするわけではないので、コストをむやみに上げないための選択としては正解だろう。ちなみに初代の「Kobo Elipsa」に添付されていたスタイラスは方式が異なるため利用できない点には注意したい。

Kobo スタイラス2」。実売価格は9,180円。前方にマーカーボタン、後部に消しゴムを搭載する。今回は「Kobo Elipsa 2E」に添付されていた品を用いている

 ノート機能は、標準的な手書き機能を備えた「無地ノート」か、手書き文字のテキスト化や図や数式の作成に対応した「多機能ノート」のどちらかを選択して起動する。まったく特性が異なるノートアプリ2つを束ねて1つの機能として提供していると考えれば分かりやすい。

 従来モデルとの違いとして、ペンの色を10色から選べるようになったことが挙げられる。従来は濃淡が異なる白黒5種類だったので、カラー化の恩恵ということになる。このほか多機能ノートでは非対応だったマーカーが新たに使えるようになるなどの進化も見られる。

 またテンプレート(背景)は30数種類へと大幅に増加している。かつてはわずか4種類だったことを考えると隔世の感がある。なおこれは本製品だけの進化ではなく、大画面モデル「Kobo Elipsa 2E」も同じ仕様へとアップデートされている。

新規作成。「無地ノート」か「多機能ノート」のいずれかを選んで起動する。必ず名前を付けてからでないと起動できない欠点はそのままだ
テンプレートはかつての4種類から30数種類へと大幅に増えている
ノートアプリとしての機能は従来とほぼ変わらないがペンの色が10種類から選択できるようになった

 このほかエクスポート先は従来のDropboxに加え、Googleドライブも対応可能になっている。書き出し機能を使わなくとも自前のクラウドを経由してスマホと共有できる「Kindle Scribe」のノート機能と異なり、こちらは手動でエクスポートしなくてはいけないが、任意の外部サービスを選べる利点がある。このあたりはユーザーの使い方によって評価は変わってきそうだ。

作成したノートは外部へのエクスポートが可能。PCへの転送のほかDropbox、Googleドライブへの書き出しにも対応する
出力フォーマットは、無地ノートではPDF/PNG/JPG、多機能ノートではWord、テキスト、HTMLも選択できる
これはPNGでDropboxに書き出したところ。カラーもきちんと再現されている
スタイラスは本体にマグネットで吸着できる。ただしこのように斜め向きになる

実用性は十分で価格も許容範囲。雑誌も読める7型がおすすめ

 以上ざっと見てきたが、カラーE Ink端末としての完成度はかなり高い。同じカラーE Inkを採用したBOOXは、「色分けされた図版も見分けやすい」というプラスはあるものの、「発色自体はいまいち」また「アプリごとに最適化設定が必要」というマイナスがあり、両者を天秤にかけてどちらに針が振れるかは、使う人次第と言っていい部分があった。

 その点本製品は、最適化設定が不要、残像も最小限に止められていることから、プラスとマイナスとを比較した時、針がプラスに倒れる要因が大きくなったように感じる。発色についてはやはり「E Inkならでは」の域を出ず、液晶と比較できるレベルではまったくないが、それでもモノクロと比べると違いは明らかだ。

カラー化されたとは言え、iPad mini(右)のような液晶と比べると発色の差は明らか

 価格については従来のモノクロモデルの2万5,800円に対して、本製品が3万4,800円ということで、スタイラスは別売とは言え、許容できる範囲と言える。少なくとも、カラーE Inkは時期尚早という評価を封じるだけの完成度に達しており、またモノクロの表示性能も十分だ。これまでKobo端末を使ってきたユーザーにとっては、買い替えるだけの価値はあるだろう。

 なお個人的に驚いたのは、今回サンプルで使った「DOS/V POWER REPORT」のように大判の雑誌を縮小表示した場合も、十分に実用に耐え得ることだ。解像度が300ppiあるので当然と言えばそうなのだが、7型ならではの芸当と言っていいだろう。雑誌を読みたい人は、同時発売の6型よりも、この7型をチョイスしたほうがよいだろう。