山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
専用GPUを搭載、Google Playストアも使える13.3型E Ink端末「BOOX Tab X」
2023年2月8日 06:34
「BOOX Tab X」は、13.3型の大型E Ink電子ペーパーを搭載したAndroidタブレットだ。Google Playストアにも対応しており、電子書籍に限らず、好みのAndroidアプリを自由にインストールして利用できるほか、BSR(BOOX Super Refresh)なる独自技術により、高速な描画を実現しているのが大きな特徴だ。
BOOXは主に画面サイズごとに独自のペットネームが設けられているが、前回紹介したハイエンドモデル「BOOX Tab Ultra」以降、これまでのペットネームとは外れた新機軸のモデルがリリースされている。今回紹介する「BOOX Tab X」は、従来の13.3型モデル「BOOX Max Lumi2」の後継に相当し、スペックが大幅に強化されている。
今回は、国内代理店であるSKTから借用した製品をもとに、電子書籍ユースを中心とした使い勝手を、前回紹介した10.3型の「BOOX Tab Ultra」や、画面サイズが近い12.9型iPad Proと比較しつつチェックする。
従来の13.3型モデルをベースに独自GPUを追加し高速化を実現
まずは前回紹介した10.3型の「BOOX Tab Ultra」、および従来モデルに当たる13.3型の「BOOX Max Lumi2」との比較から。
BOOX Tab X | BOOX Max Lumi2 | BOOX Tab Ultra | |
---|---|---|---|
発売月 | 2023年1月 | 2021年11月 | 2022年11月 |
サイズ | 310×228×7.9mm | 310×228×7.9mm | 225×184.5×6.7mm |
重量 | 560g | 570g | 480g |
画面サイズ/解像度 | 2,200×1,650 Carta 1250(207dpi) | 2,200×1,650 Carta 1250(207dpi) | 1,872×1,404ドット(227dpi) |
ディスプレイ | 13.3型Mobius Einkスクリーン | 13.3型Mobius Einkスクリーン | 10.3型 フラットHD Carta |
通信方式 | Wi-Fi (802.11b/g/n/ac) | Wi-Fi (802.11b/g/n/ac) | IEEE 802.11b/g/n/ac |
CPU | Snapdragon 662(8コア) | Snapdragon 662(8コア) | 8コア |
メモリ容量 | 6GB LPDDR4X | 6GB LPDDR4X | 4GB |
ストレージ | 128GB UFS2.1 | 128GB UFS2.1 | 128GB |
MicroSDカードスロット | - | - | あり |
フロントライト | あり(暖色/寒色) | あり(暖色/寒色) | あり(暖色/寒色) |
指紋認証 | - | あり | あり |
端子 | USB Type-C | USB Type-C | USB Type-C |
バッテリ容量 | 6300mAh | 4300mAh | 6300mAh |
発売時価格(税込) | 129,800円 | 109,800円 | 99,800円 |
備考 | ワコムスタイラスペン(BOOX Pen2 Pro)が付属 | ワコムスタイラスペン(BOOX Pen Plus)が付属 | ワコムスタイラスペン(BOOX Pen2 Pro)が付属 |
本製品はその型番からして、前回紹介した10.3型モデル「BOOX Tab Ultra」の大画面版のように見えるが、筐体が金属ではなく樹脂製だったり、縦向きでの利用を想定した筐体デザインだったりと、むしろ従来までの13.3型モデル「BOOX Max Lumi2」寄りの仕様が多く見られる。画面サイズ、解像度、CPUやメモリなども、BOOX Max Lumi2と同等だ。
その一方で、BOOX Tab Ultraにも搭載されている、GPUを中心とした独自技術BSR(BOOX Super Refresh)の恩恵か、BOOX Max Lumi2と比べてレスポンスは劇的に向上している。考え方としては、BOOX Max Lumi2をベースに、BOOX Tab Ultraにも搭載されているBSRを追加したモデルという解釈が正しい。詳しいベンチマークは後述する。
そのほかの違いとしては、BOOX Tab Ultraにあった書類スキャン用カメラやメモリカードスロット、外部キーボード接続用のポゴピンは、本製品には非搭載。重力センサーによる自動回転機能が追加された一方、BOOX Max Lumi2に搭載されていたホームボタンは指紋認証機能ごとなくなり、画面のロックはパスコードのみと、従来モデルから省かれている部分も見られる。
注目すべきなのはバッテリで、BOOX Max Lumi2の4,300mAhから、6,300mAhへと大幅増量されている。これでいて重量が増えることなく、逆に10g減っているのは、従来モデルを所有していたユーザーからすると魅力的だろう。
13.3型としては軽量。ホーム画面は新デザインを採用
セットアップのプロセスはBOOXシリーズに共通する、まず電源周りなどの基本設定を済ませてホーム画面が表示させたのち、あらためてネットワークの設定を行なう流れだ。確認した限りでは、前回の「BOOX Tab Ultra」とは共通のようで、GSF IDを取得しなくともすぐにGoogle Playストアにログインできるのも同様だ。
そんな本製品を手に持ってまず感じるのが軽さだ。13.3型という大画面でありながら、筐体は樹脂製ということもあり、重量は560gに抑えられている。サイズは12.9型iPad Pro並で、重量は11型iPad Proとほぼ同じと言えば、理解してもらいやすいだろう。前回紹介したBOOX Tab Ultraがサイズの割にずっしりくる重さ(480g)だったのと比べると、本製品はその軽さが際立つ。
また外観面の特徴として、縦向きに保持した時に下のベゼルに厚みがあるという、明らかに縦向きを想定したデザインでありながら、「BOOX」のロゴが直立しているせいか、横向きに保持した時も違和感がないのが面白い。そうした意図があってのデザインであれば、狙いはピタリとはまっていることになる。
動作は高速で、前回のBOOX Tab Ultraに勝るとも劣らないレスポンスだ。BOOX Tab Ultraと同じく専用GPUを搭載しているのが大きな要因だろう。ベンチマークではE Inkであるためか一般的なAndroidタブレットに比べてスコアは低くなりがちだが、それでも項目別ではAmazonの「Fire HD 10 Plus」を上回るケースもある。10.3型の「BOOX Tab Ultra」と比べて約1~2割低いのは、画面が大きいぶんパワーを消費しているのだろう。
ホーム画面以下の構成については、前回紹介した「BOOX Tab Ultra」と同じで、上段にウィジェットが、中段にインストール済みのアプリが並ぶデザインを採用している。かつてのホーム画面では画面左列に並んでいた「ストレージ」、「ノート」、「ライブラリ」はホーム画面下部のアイコンへと姿を変えている。直感的に使えるという意味では、今回のデザインのほうが明らかに上だ。
E Ink関連の設定は、画面下部に表示されるE Inkセンターから行なう。中でも画面切り替え時の挙動を選択できるリフレッシュモードは、特に優先順位の高い項目だ。またアプリ単位の最適化機能の中にもE Inkの挙動にまつわる項目があるが、まずはE Inkセンターでできるリフレッシュモードの設定を試し、最適化はその次という順序になるだろう。
見開きコミックは原寸以上のサイズ。新聞ビューアとしても快適
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。アプリはKindleを用いている。
本製品はA4がほぼ原寸大で表示できるサイズゆえ、その迫力はかなりのもの。コミックや単行本の見開き表示は、紙版を上回るサイズとあって、なるべく大きなサイズで読みたいユーザーはもちろん、老眼気味のユーザーにも最適だ。
E Ink Carta 1250を採用するとあってコントラストも高く、クオリティは十分。解像度は207ppiと低く見えるが、実際には2,200×1,650ドットと、同等サイズの12.9型iPad Pro(2,732×2,048ドット)よりわずかに低い程度でしかない。ページめくりの速度も、わざわざ「高速」モードに切り替えなくとも、画質優先の「HD」で十分なパフォーマンスだ。
電子書籍を読むにあたっては、デバイスの存在をどれだけ意識せずに済むかは1つのポイントだが、本製品はパフォーマンスの高さゆえそうした心配が少なく、極めて電子書籍を読むのに向いた製品といえる。こうした点については、筐体がややずっしりした10.3型の「BOOX Tab Ultra」よりもむしろ上かもしれない。
一方で表示はモノクロゆえ、雑誌の表示にはあまり向かないのだが、そんな本製品の強みを活かせるのは新聞だ。13.3型という本製品の画面サイズであれば、新聞の紙面を縦2×横2で、原寸大で分割表示できる。E Inkならではのざらざらした質感は新聞紙のそれに近く、相性も良好。またモノクロであることのハンデもない。
試しに「日本経済新聞 紙面ビューアー」をインストールしサンプル紙面を表示させてみたが、ドラッグしての上下左右の移動も含めてスムーズに行なえた。端まで到達するとズームが解除されるというアプリ側の使いづらさはあるものの、13.3型のE Ink端末である本製品との相性のよさは文句なしだ。著作権の関係でサンプル画面は掲載していないが、本製品を購入した場合はぜひ試してみてほしい。
もう1つ、画面の分割表示についてチェックしておこう。本製品は従来モデルの「BOOX Max Lumi2」と同様、画面を水平または垂直に分割し、別々のアプリを表示できる機能を備える。使い方は、対象のアプリを開いた状態でコントロールセンターを開いて「分割画面」を選択するだけ。13.3型という画面サイズを持つ本製品ならではの使い方だ。
ただしこの分割表示に対応するかどうかはアプリに依存する。電子書籍アプリでも、例えばKindleは対応する一方で、DMMブックスは対応しないといった具合に差がある。このあたりはiPadの画面分割機能「Split View」にも通ずるものがあり、サードパーティ製アプリのどれもが使えるわけではないので要注意だ。
使っていてストレスがたまらない製品。価格も妥当か
以上ざっと見てきたが、完成度は高く、またパフォーマンスも高いとあって、使っていてストレスがたまらない製品だ。もちろんE Inkであるが故の使い方の向き不向きはあるが、特定の用途で使おうとした時にパフォーマンス不足が原因で断念することは考えにくく、そうした意味で安心して使える一品だ。
実売価格は12万円台と、従来モデル(の発売当時)から見ると約2万円プラスだが、BSRの搭載でパフォーマンスが大幅に向上していること、バッテリが強化されていることに加えて、当時より円安であるという事情を考慮すると、むしろよくこの値上げ幅にとどめているものだと感じる。
12.9型iPad Proや14.6型のGalaxy Tab S8 Ultraなどにも言えるが、このクラスの大画面タブレットはいまや実売が十数万円後半というのが一般的になりつつあり、本製品はむしろリーズナブルな印象だ。しかも本製品の場合スタイラスペンが標準で付属しているので、そのぶんお得感は高い。
前回のBOOX Tab Ultraでも述べたが、これだけスペックが高ければ、いかに短いスパンで新モデルが登場するBOOXシリーズの中にあっても、本製品を超えるモデルがすぐに登場する可能性は低いと考えられる。そうした意味で「買い時」なのは間違いない。唯一悩みどころがあるとすれば、10.3型のBOOX Tab Ultraと本製品のどちらを選ぶかで、その点だけはユーザーを悩ませる一品と言えそうだ。