山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

IGZO OLED採用、6.1型ながら158gの軽量スマホ「シャープAQUOS sense7」

「AQUOS sense7」。今回購入したのはSIMフリー限定カラーのフォレストグリーン。実売価格は5万円前後

 シャープの「AQUOS sense7」は、ミドルクラスのAndroid 12搭載スマートフォンだ。

 6.1型という、現行のスマホとしては標準サイズといえる本製品だが、公称158gと軽量なことから、片手で長時間保持し続けなければならない電子書籍ユースには極めて適している。

 この画面サイズや重量は従来モデルの「AQUOS sense6」とほぼ同じで、劇的に軽くなったというわけではないのだが、本製品はドコモ、auをはじめ多くのキャリアが取り扱っていることに加え、SIMフリーモデルも用意されるなど、入手性も高い。実売は5万円前後だが、各社のキャンペーンではそれより安価なプライスがついていることが多いのも見逃せない。

 今回は筆者が購入したSIMフリーモデル「SH-M24」を用い、電子書籍ユースを中心とした使い勝手をチェックする。

iPhone 14と同じ6.1型ながら158gの軽量筐体

 6.1型のスマホとして現行モデルで今もっとも販売台数が多いのは、Appleの「iPhone 14」だろう。ここではまずiPhone 14と主要なスペックを比較する。

AQUOS sense7iPhone 14
発売年月2022年11月2022年9月
サイズ(幅×奥行き×高さ)約70×152×8.0mm約71.5×146.7×7.8mm
重量約158g約172g
CPUSnapdragon 695 5G Mobile Platform
2.2GHz+1.8GHz オクタコア
A15 Bionicチップ
2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した6コアCPU
5コアGPU
16コアNeural Engine
RAM6GB6GB
ストレージ128GB128/256/512GB
画面サイズ/解像度6.1型/1,080×2,432ドット(411ppi)6.1型/2,532×1,170ドット(460ppi)
Wi-Fi802.11ac802.11ax
コネクタUSB Type-CLightning
メモリカード対応(最大1TB)-
イヤホンジャックあり-
防水防塵IPX5・IPX8/IP6XIP68
生体認証指紋認証、顔認証顔認証
駆動時間/バッテリ容量4,570mAh最大20時間(ビデオ再生)

 冒頭でも述べたように、本製品の大きな強みとなるのは軽さだ。同じ6.1型という画面サイズで比較すると、iPhone 14が172g、iPhone 14 Proが206gあるのに対して、本製品は公称158g。画面サイズの割に極めて軽量なモデルということになる。

 現在販売されているスマホの中で本製品より軽い製品となるとiPhone SE(144g)があるが、こちらは4.7型。Androidでコンパクトさを重視した「Zenfone 9」は5.9型で169gと、逆に本製品よりも重い。本製品と似た立ち位置の「Xperia10 IV」が161gと近いのが目立つくらいで、6.1型で約158gという本製品の軽さには、かなりの優位性があることが分かる。

 画面の解像度は1,080×2,432ドットとフルHD超え、メモリは6GB、ストレージは128GBと、現行のスマホとしては十分。顔認証と指紋認証の両方に対応し、かつ顔認証はマスク対応。NFCも利用できる。このほか最大1TBのメモリカードに対応することや、イヤフォンジャック搭載をメリットと感じる人も多いはずだ。

 一方で、全部入りのハイエンドスマホというわけではないので、ワイヤレス充電に非対応だったり、従来モデルにあった望遠カメラが省かれていたりと、決して全部入りというわけではない。CPUもミドルクラス、さらにスピーカーもモノラルだ。電子書籍ユースには大きく関係してこないが、メインのスマホとして活用するのならば、何が省かれているのかはチェックしておくべきだろう。

 実売価格は多くの販路で5万円を切っており、さらにMVNO事業者においては、条件付きで大幅な値引きが行なわれていることもしばしば。総じてコスパの高い製品であることは間違いない。

筐体はアルミニウム。画面サイズは6.1型
背面。中央に配置されたカメラはかなりのインパクトだ
本体右側面には音量調整ボタン、電源ボタン、さらに指紋認証センサーが集中している
一方の左側面には何もない
底面。USB Type-Cポートの隣にはイヤホンジャックを搭載している
上面にはカードスロットを搭載。最大1TBのメモリカードに対応している
インカメラはベゼルとつながった形状
カメラはやや突起がある。従来モデルからは大きく変更された部分だ

実測156gと軽量、画面サイズの割にコンパクトに感じる

 今回筆者が購入したのはOCNモバイル向けのSIMフリーモデルで、goo関連のアプリもしくはショートカットが多数インストールされているが、アプリの構成はそれら+Google製アプリ、シャープ製アプリがほぼすべてで、全体的にはスッキリしている。電子書籍関連のアプリはプリインストールされておらず、自前で用意する必要がある。

今回筆者が購入したのはOCNモバイル向けのSIMフリーモデル。ホーム画面は2画面でGoogle関連アプリはフォルダにまとめられている
アプリ一覧。ホーム画面に並ぶアプリと顔ぶれはほぼ同じ。電子書籍関連のアプリはプリインストールされていない

 そんな本製品を使ってみての第一印象は、とにかく軽いということだ。6.1型という画面サイズこそ、iPhone 14など中型サイズの製品と等しいが、体感的にはiPhone 13 miniなどコンパクトモデルに近い印象を受ける。このように思わせている大きな理由は、やはり158g(実測では156g)という筐体の軽さだろう。

 一方で、6.1型という画面サイズから想像されるほど、画面の横幅が広くないことには注意したい。本製品の解像度は1,080×2,432ドットで、アスペクト比は「20:9」よりもわずかに長い「20.3:9」。iPhone 14は1,170×2,532ドットということで「20:9」よりも短い「19.5:9」だ。つまり同じ6.1型でも画面はiPhone 14より縦に長く、そのぶん横幅が狭いことになる。

 これはスリムで握りやすいメリットがある一方、電子書籍でコミックなど固定アウトのページを表示する場合には、圧迫されてページ全体が小さく表示されるデメリットもある。一長一短あることだけは認識しておいたほうがよいだろう。詳しくは後述する。

6.1型としては横幅はスリム。iPhoneでいうと標準モデルよりもむしろminiモデルに近い印象だ
カードスロット。最大1TBまでのmicroSDも利用できる
重量は実測156g。SIMカードあり/メモリカードなしの状態での数値だが、公称値(158g)よりわずかに軽い

 ベンチマークアプリ「Wild Life」のスコアは、昨年(2022年)レビューしたモトローラ「moto g31」が「716」のところ、本製品は「1208」と、さすがに格が違う。ただし昨年秋発売のGoogleの「Pixel 7 Pro」は「6390」と異次元なので、ハイエンドモデルと競えるレベルにはない。

ベンチマークアプリ「Wild Life」のスコアは「1208」。昨年レビューしたモトローラ「moto g31」が「716」なのと比べると高い
「Google Octane 2.0」でのスコアは「21843」と、こちらはmoto g31(右)の「11741」を圧倒している。ただしこちらもPixel 7 Pro(43806)とは大きな開きがある

6.1型としては小ぶり。ボタン配置は癖あり

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。

 解像度は436ppiということで、表示性能は十分。ディスプレイはIGZO OLEDを採用しており、発色もよい。色合いも4つの画質モードから選択できる。表示のクオリティに関しては、何の問題もないといっていいだろう。

 ただし前述のように画面の横幅は62mmと、iPhone 14の64mmと比べると明らかにスリムで、コミックなど固定レイアウトのページはやや窮屈だ。たった2mm違いと思うかもしれないが、これによってページ全体が縮小されてしまうので、相当な差が出る。数字のマジックといったところだ。

 もちろんiPhone SEやiPhone 13 miniのような小型端末に比べるとはるかに快適だが、6.1型としては横幅がないため、事前に実機を見ていないと「あれっ、思ったよりも小さい」と戸惑うことになる。もともと6型後半の大型スマホを探していて、最終的に軽さを優先して本製品を選んだような場合、かなりのギャップを感じる可能性があるので要注意だ。

コミックを表示したところ。右のiPhone 13 miniよりは大きいが、6.1型という画面サイズから想像するほど大きくはない
画面の横幅は62mm。同じ6.1型でも、iPhone 14は64mmあるので、ページ全体のサイズに与える影響は大きい。ちなみにiPhone 13 miniは57mm
テキストを表示したところ。かなり縦長になるがバランスは悪くない

 また好みが分かれそうなのがボタンの配置だ。本製品のボタンは右側面の上から順に、音量調整ボタンと電源ボタン、さらに指紋認証センサーが並んでいる。従来モデル「AQUOS sense6」の画面内指紋センサーが廃止され、指紋センサー(物理)が側面に搭載されたことで、かなり混み合っている印象だ。

 これに大きく影響を受けるのがページめくりの操作性だ。Androidの電子書籍アプリの多くは音量ボタンを使ってページめくりが行なえるが、本製品の音量調整ボタンは右側面のもっとも上という、かなり極端な位置に配置されているため、極端に上を持たなくてはいけない。

 結果として、読書時とそれ以外とで、違った持ち方をする必要がある。またひとつの電子書籍アプリを使っていても、読書中と、本をライブラリから選ぶ時とで、適した持ち方が異なる。

 もちろん画面をタップしての操作ならば何の問題もないが、片手持ち(特に左手)で、音量調整ボタンを使ったページめくりを多用する人は、やや使いづらいボタン配置と言えるだろう。ただしボタン自体は硬すぎることもなく、繰り返し押しやすいことは補足しておく。

音量調整ボタンは、本体右側面のいちばん上(この写真では親指で押さえている部分)にある。かなり極端なレイアウトだ
左手で持って音量調整ボタンによるページめくりを行う場合、このように上寄りを持ち、人差し指で押すことになる
同じ電子書籍でもストアやライブラリの操作では、もう少し下を持つことになる
右手で持つ場合は、音量調整ボタンを親指で押すことになる。左手ほどではないが持つ位置はやはり上寄りだ
右手の場合、ストアやライブラリの操作でもそれほど極端に持ち方を変えずに済む

 もう1つ使っていて気になるのは、スクロール時にやや引っかかりがあることだ。ページ単位でめくる動作などはまったく問題ないが、電子書籍ストアで画面を上下スクロールしながら本を探したり、ライブラリから目的の本を探すような場合は、アプリによってはかなりカクつく。試した限りではKindleにこの傾向が顕著だ。

 また本製品はリフレッシュレートも60Hzと、現行のスマートフォンとしては至って普通なので、スクロールの最中に画面を目で追うことが多い縦スクロール型のコミックは、知らず知らずのうちに目の疲れにつながる可能性はある。こうした部分は、ハイエンド機に多い90Hzや120Hzの製品と比べると、差はある印象だ。

 一方で軽量、かつスリムなことから、寝転がって仰向けでかざした状態で操作しやすいことは見逃せない。スマホリングやベルトを付けなくともこうした持ち方が可能な本製品は、寝転がって読む機会が多いユーザーにとって、一定のメリットはあるだろう。

 電子書籍を便利に使える小技としては、指紋センサーの長押しでアプリを起動できる「Payトリガー」に電子書籍アプリを割り当て、即起動できるようにするワザがある。名前からも分かるように本来は電子マネーアプリをすばやく起動するための機能だが、電子書籍アプリなども割り当てられる。電子マネーアプリを使わないようならば、こうした用途に使ってみるのはありだろう。

仰向けになって片手で持ちながらページをめくるのもそう難しくはない。これは左手で持った場合のスタイル
こちらは右手で持った場合のスタイル。ボタンを使ってのページめくりがスムーズに行なえる
「Payトリガー」に割り当てたアプリは指紋センサーの長押しで即起動できる。複数を登録しておきそのフォルダを開くことも可能

気になる点はあるがポテンシャルは高い

 シャープの軽量スマホと言えば、6.2型にして146gという「AQUOS zero」シリーズが思い出せるが、軽過ぎて扱いに気を使わなくてはいけなかったのに対して、6.1型/158gの本製品は、同製品プラス12gというわずかな違いでありながら、いい意味での存在感があり、扱いやすい印象だ。

 前述のように6.1型のわりにページサイズがそれほど大きくないものの、同じ6.1型モデルでは本製品よりさらに縦長のモデルもあり、一概に不利とはいえない。またスクロールのカクつきも、試した限りではKindle(とTwitter)でやや顕著だが、あらゆるアプリで起こるわけではない。このあたりを踏まえて、総合的にどう判断するかだろう。

SIMフリー限定カラーのフォレストグリーンの背面。アルミ製ということもあり質感は高い

 実売価格は5万円前後、一部のMVNO事業者ではスポット的に実売3万円前後まで価格が下がることもあるので、これまで予算3万円台程度で候補を探していたユーザーのターゲットにも入ってくる。バリバリのハイエンドではないものの、メインスマホとして使えるだけのポテンシャルがあることが絶対条件で、なおかつコスパ重視のユーザーには、うってつけの製品といえるだろう。

 なお本製品には「AQUOS sense7 plus」という大画面モデルがあり、こちらは6.4型で172gと軽量、さらにリフレッシュレートも高い。SIMフリーモデルはラインナップされておらず取り扱いはソフトバンクだけだが、仕様を見る限りでは電子書籍ユースに向いたスペックなので、条件が合うようならばこちらも併せて検討することをおすすめする。