山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
300ppi、防水機能が追加された6型のエントリーモデル「楽天 Kobo Clara 2E」
2022年10月11日 06:22
「Kobo Clara 2E」は、楽天Koboが販売するE Ink電子ペーパー採用の電子書籍端末だ。6型という標準的な画面サイズながら、300ppiという、比較的高い解像度を備える製品だ。
最近のE Ink電子ペーパー端末は、画面の大型化が1つのトレンドとなっており、これまで一般的だった6型は、エントリー向けという位置づけになりつつある。楽天Koboも、またAmazonも、6型のモデルチェンジもあまり活発ではないのが現状だ。
そんな楽天Koboは、6型ではこれまで212ppiのローエンドモデル「Kobo Nia」と、300ppiの上位モデル「Kobo Clara HD」の2つのモデルをラインナップしていた。今回新たに登場した「Kobo Clara 2E」は、後者の後継にあたり、実に4年ぶりのモデルチェンジとなる。
今回は筆者が購入した実機をもとに、従来モデルに当たる「Kobo Clara HD」と使い勝手を比較する。
USB Type-C対応などの近代化改修を実施。ストレージも増量
まずは従来モデルにあたる「Kobo Clara HD」との比較から。
Kobo Clara 2E | Kobo Clara HD | |
---|---|---|
発売月 | 2022年9月 | 2018年6月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 159.0×112.0×8.5mm | 157.0×111.0×8.3mm |
重量 | 170g | 166g |
画面サイズ/解像度 | 6型/1,072×1,448ドット(300ppi) | 6型/1,072×1,448ドット(300ppi) |
ディスプレイ | Carta E Ink HD 1200 | Carta E Ink HD |
通信方式 | IEEE 802.11 ac/b/g/n | IEEE 802.11b/g/n |
内蔵ストレージ | 16GB | 約8GB |
ポート | USB Type-C | microB |
フロントライト | ComfortLight PRO (フロントライト内蔵、ナチュラルライト機能) | ComfortLight PRO(フロントライト内蔵、ナチュラルライト機能) |
防水・防塵機能 | IPX8 | - |
バッテリ持続時間の目安 | 数週間 | 数週間 |
発売時価格(税込) | 1万9,900円 | 1万4,904円 |
従来モデルにあたる「Kobo Clara HD」と比較すると、本体サイズはわずかに大きくなり、重量も若干増えてはいるが、全体的なシルエットは従来モデルを踏襲しており、見た限りでは違いをほとんど感じない。
その一方で、E Inkは最新のCarta E Ink HD 1200を採用するほか、ポートはこれまでのmicroBからUSB Type-Cに変更。Wi-Fiについても、これまで2.4GHz帯のみの対応だったのが、11acに新たに対応するなど、さながら近代化改修とでも言うべき改良が施されている。
さらにストレージは8GBから16GBへと倍増したほか、従来モデルにはなかった、IPX8の防水機能も新たに対応している。目につくところはすべて手を入れてきた格好だ。
実売価格は1万9,900円ということで、従来モデルからは5千円アップとなる。全体的なスペックの向上からして値上げ幅は妥当に感じるのだが、ベースが決して安くないことから、6型のE Ink読書端末としては割高感はある。
例えば、この10月に新モデルが登場した6型「Kindle」は、同じ16GBで広告ありモデルが10,980円、広告なしモデルが12,980円。本製品と違って防水機能はないが、それでも相当な価格差だ。端末が安いからといってストアごと乗り替えるユーザーはいないだろうが、少々開きがありすぎる気はなくはない。この件はあらためて後述する。
外観およびメニューはほぼ変化なし。Bluetoothは国内では利用不可
では開封してみよう。本製品はエントリークラスの製品ということもあって、手の脂が目立ちやすいほか、摩擦などで跡が残りやすいなど、見た目の高級感はない。ただしこれは従来モデルも同様であり、また下位のKobo Niaはよりプラスチック感が強いため、質感はあくまで価格相応といったところだ。
外観を従来モデルと比較すると、正面からは違いがほとんどわからないが、大きく異なるのは背面だ。これまで底面にあった電源ボタンが背面上部へと移動しており、それに伴って背面全体のデザインが大きく変化している。個人的には好きなデザインなのだが、読書中に誤ってボタンに触れてしまう確率は、従来より上がっている。
本製品は新たに防水機能を搭載しているが、画面とベゼルの間に段差があるので、画面についた水滴を拭った時、段差の溝にたまりやすいのはややマイナスだ。その一方で、Koboシリーズの特徴である、ベゼルに沿って指を上下させることでフロントライトの明るさを調整する機能は、段差があったほうが操作しやすいので、一長一短だ。
セットアップの手順は従来通りで、ホーム画面のデザインについても従来と変わっていない。楽天Koboの端末は、新モデルが出るタイミングでデザインががらりと変わることがこれまでもあったが、今回はエントリークラスの製品ということもあってか、そうした大きな変化はない。ただし、ソフトウェアアップデート後にパスワードの再入力が必要になる不具合もそのままだ。
ホーム画面以下の構成やデザイン、レイアウトもざっと見た限り違いはないが、設定画面を見ると、これまで上位モデルにのみ存在した機能がいくつか追加されていることに気づく。1つは後述するダークモードで、もう1つはヘッドフォンなどとペアリングを可能にするBluetooth接続機能だ。
もっともこのBluetooth接続機能は、公式サイトのFAQを見ると「日本の楽天Koboで作成されたKoboアカウントの場合、電子書籍リーダーのBluetooth機能はご利用いただけません」とある。海外のKoboはオーディオブックがあり、それと組み合わせて使う機能なのだろう。日本版のページにBluetoothにまつわる記述が一切ないのは、そうした理由のようだ。
パフォーマンスは従来モデルと同等。新たにダークモードを搭載
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。
解像度は300ppiということで、表示性能は十分。ローエンドのKobo Nia(212ppi)で読書をしていると、コミックのディティールがつぶれて見えづらく感じることも稀にあるが、本製品はそれよりはワンランク上の表示性能で、ストレスが溜まりにくい。もちろんテキストについても、まったく読書に支障はない。
パフォーマンスについては、従来のKobo Clara HDと同等。両者を並べて使い比べてみたが、タップして本が開くまでの速度、ページめくりのレスポンス、いずれも違いは感じない。唯一、Wi-Fiが新たに11acに対応していることから、コンテンツを新規にダウンロードする速度だけは速くなっている。筆者の利用環境では、2~3割程度高速化している。
従来モデルになかった機能として、新たにダークモードが搭載されている。スマホでもおなじみの、白黒を反転させて目を疲れにくくする機能だ。上位モデルの「Kobo Libra 2」などにはすでに搭載済みで、今回のモデルチェンジにあたって新たに追加されたことになる。
ただKoboのダークモードは、対象範囲はテキストコンテンツだけ。同じくダークモードを搭載するKindleが、コンテンツ以外にホーム画面や設定画面もサポートするのとは対照的で、やっつけ感は否めない。ダークモードへの切り替えがメニューバーからでなく、設定を開いて階層を辿らなくてはいけないのも面倒で、使っていてストレスが溜まる。
以上のように、ちょくちょく気になるところはありながらも、従来の正当進化形で、大きな欠点もない本製品だが、最大のネックは価格だ。本製品は6型、ストレージ16GBで1万9,900円なのだが、同じ楽天Koboでは、7型でストレージ32GBの上位モデル「Kobo Libra 2」が、本稿執筆時点では2万3,980円と、本製品と4千円しか変わらない価格で販売されている。
仮に本製品に32GBモデルがあった場合、ほぼ同じ価格になるはずで、この価格設定はやや疑問だ。しかもKobo Libra 2は2021年発売と比較的新しいモデルであるため、本製品と同じCarta E Ink HD 1200を採用している上、ページめくりボタンを搭載するなどの付加価値もある。本製品はどう考えても分が悪い。
もし近い将来「Kobo Libra 2」が終息するか、値上げされることがあれば話は変わってくるのだが、現時点では「ポケットに入るコンパクトなボディ」や「200gを切る軽さ」といった、Kobo Libra 2にはないピンポイントの特徴にこだわるのでなければ、積極的に本製品を選ぶ必要を感じないというのが、率直な印象だ。
アンバランスな価格がネック?
現在、楽天KoboのライバルであるAmazonのKindleシリーズは、すでに全モデルが300ppiへと切り替わっており、楽天Koboも、本製品の下位に当たる212ppiのKobo Niaについては、価格戦略的な意味合いを除けば、積極的に継続する意味が失われつつある。
もし今後Kobo Niaが終息し、本製品がラインナップの中でもっとも下位のモデルになれば、1万9,900円という価格はさらにネックになるだろう。楽天KoboはKindleのような大幅割引が行なわれる機会がほぼないので、なおさらだ。
楽天Koboの製品ラインナップ全体を眺めると、価格と機能が少々アンバランスな印象があるが、本製品の登場でそれがますます顕著になった印象だ。本製品の購入を検討するにあたっては、将来的に本製品以外のモデルが値上げする可能性も考慮しつつ、チョイスすることをおすすめする。