山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
3万円台でマンガアプリが快適に使えるスマホ、OPPO「Reno A」
2020年1月9日 11:00
OPPOは、「Reno A」は、Android 9ベースの「Color OS」を搭載した6.4型スマートフォンだ。大画面にして高解像度、またNFCや防水対応などひととおりの機能を備えつつ、実売価格が3万円台(Amazonでは5日現在37,425円)というリーズナブルさが特徴だ。
最近は各出版社を中心にさまざまなマンガアプリがリリースされ、スマートフォンでコミックを楽しむスタイルが定着しつつある。もっとも、5型クラスのスマートフォンではさすがに読みにくく、6型以上の大画面スマートフォンが理想となる。iPhoneで言うと、iPhone 11/11 ProよりもiPhone 11 Pro Maxが望ましいサイズと言える。
今回紹介する「Reno A」は、iPhone 11 Pro Maxとほぼ同じ6.4型という画面サイズを備え、かつ400ppiを超える高解像度でありながら、前出のように価格はiPhone 11 Pro Maxの約3分の1という高いコストパフォーマンスが特徴だ。
電子書籍ユースを主目的に、メインで5型クラスの端末を使っているユーザーがサブ機として導入するのに適している。
今回は、筆者が購入した私物について、iPhone 11 Pro Maxと比較しつつ、6週間ほど使った感想をお届けする。すでに西川氏によるレビューも掲載されているので、本稿では扱わないカメラ回りの性能などは、そちらを参照されたい。
性能的には「Pixel 3a XL」と同等
まずはiPhone 11 Pro Maxとの比較から。写真はないが、前回紹介したPixel 4 XLも併せてスペックを掲載する。
モデル | Reno A | Pixel 4 XL | iPhone 11 Pro Max |
---|---|---|---|
発売元 | OPPO | Apple | |
OS(発売時) | ColorOS 6(Android 9ベース) | Android 10 | iOS 13 |
発売年月 | 2019年10月 | 2019年10月 | 2019年9月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 75.4×158.4×7.8mm | 75.1×160.4×8.2 mm | 77.8x158.0x8.1mm |
重量 | 約169.5g | 193g | 226g |
SoC | Qualcomm Snapdragon 710 2.2GHz | Qualcomm Snapdragon 855(2.84+1.78GHz、64 ビット8コア) | A13 Bionicチップ+第3世代Neural Engine |
RAM | 6GB | 6GB | 4GB |
ストレージ | 64GB | 64/128GB | 64/256/512GB |
画面サイズ | 6.4型 | 6.3型 | 6.5型 |
解像度 | 2,340×1,080ドット(403ppi) | 3,040×1,440ドット(537ppi) | 2,688×1,242ドット(458ppi) |
Wi-Fi | 11ac | 11ac | 11ax(Wi‑Fi6) |
コネクタ | USB Type-C | USB Type-C | Lightning |
防水防塵 | IP67 | IP68 | IP68 |
駆動時間/バッテリー容量 | 3,600 mAh | 3,700mAh | ビデオ再生: 最大20時間/ビデオ再生(ストリーミング): 最大12時間/オーディオ再生: 最大80時間 |
この表からもわかるように、筐体サイズはiPhone 11 Pro MaxおよびPixel 4 XLとほぼ同等。なかでも注目すべきなのは、iPhone 11 Pro Maxと比べて50g以上も軽いことだ。
もともとiPhone 11 Pro Maxはこのクラスの製品の中ではかなり重量級とはいえ、Pixel 4 XLと比べても本製品のほうが約23g軽い。片手で持っての長時間の読書には最適だ。
SoCについては、Snapdragon 855を搭載したPixel 4 XLに対し、本製品はSnapdragon710とワンランク下になる。後述するが、ベンチマークのスコアだけをみると、「Pixel 3 XL」とその廉価版「Pixel 3a XL」の関係に非常によく似た印象だ。
ディスプレイは有機EL、解像度も400ppiを超えており、またメモリは6GBを搭載するなど十分。容量は64GBモデルに加え、楽天モバイル版のみ128GBモデルも用意されており、容量重視ならそちらを選ぶ手もある。
メモリカードスロットで容量の拡張ができるのは、iPhone 11 Pro MaxやPixel 4 XLにない利点だ。IP68よりわずかに落ちるが、IP67対応の防水機能も備える。
本製品の大きなメリットとして、顔認証、指紋認証の両方に対応していることが挙げられる。冬場に風邪対策のマスクや、あるいは防寒用の手袋をした状態で電子書籍をスムーズに読むには適している。冬場に強みを発揮しうる製品と言えるかもしれない。
表にはない相違点としては、USB PDによる急速充電に対応しないこと、また無接点充電にも対応しないことが挙げられる。このように細かい箇所ではハイエンドモデルとの違いがあるが、その結果として価格が両製品の3分の1ないしは半分とくれば、納得せざるを得ない。
Sling Shot Extremeによるベンチマークの結果は1,845と、Pixel 4 XLの5,741に比べると決して高くなく、以前レビューしたPixel 3 XLの廉価モデル「Pixel 3a XL」のスコア(1,629)に近い。もっともPixel 3a XLの本稿執筆時点での売価は6万円半ばなので、やはり本製品のコスパの高さは傑出している印象だ。
高級感のある外観。使い勝手は通常のAndroidと変わらず
では外見と使い勝手を見ていこう。外見についてはチープなところはまったくなく、むしろ背面の塗装などは高級感があり、10万円クラスの端末と見比べても遜色はない。
画面については上部のノッチが極小で、目立たないのもメリットだ。iPhone 11 Pro Maxの場合、ノッチがかなり広い幅を取っているため、バッテリ残量がパーセンテージ表示できないという問題があるが、本製品はそのようなこともない。
ただし、ノッチ左右のアイコン類はサイズが極端に小さく視認性は低い。たとえばWi-Fiのピクトの隣には通信速度がリアルタイム表示されるが、小さすぎて読み取りが困難だ。バッテリ残量のパーセント表示も同様で、80%台と思って目を凝らして見ると30%だったりする。もう少し高さを使っても構わないので、大きく表示できてほしい。
ちなみに本製品は保護フィルムがあらかじめ貼り付けられているほか、保護ケースも同梱されている。これらを別途購入するとそれだけで2千円程度はかかる上、決してメジャーな製品ではないため対応製品を探すのも一苦労だ。あらかじめ用意されているのはありがたい。
OSは、Android 9をベースとした同社のオリジナルOS「Color OS」を採用する。オリジナルといっても操作性は素のAndroidとさほど変わらず、もちろんGoogle Playも利用できる。またアプリもホーム画面にすべて表示する方式と、ドロワーに収める方式を選択できるなど、カスタマイズ性にも富んでいる。
多少難があるのは、設定画面に見慣れない項目がかなりあることだ。たとえば、ロック画面に雑誌ライクな情報を表示する「ロック解除マガジン」や、車に乗った時にBluetoothの接続を容易にする「スマートドライビング」などがそれだ。メーカー独自の機能がOSに入り込んでいる格好で、違和感は少なからずある。
また、いわゆるブルーライトカット機能は「夜間シールド」、個人情報を漏洩するための機能が「スマート保護」、特定の電話やメッセージをブロックする機能が「アンチハラスメント」といった具合に、機能は一般的でも呼び名が独特なことが多く、多少の慣れが必要になる。日々の使い勝手に影響があるとすればむしろこちらだろう。
表示性能は良好。縦長画面でマンガアプリの利用にも最適
さて、電子書籍まわりの使い勝手に見ていこう。コミックのサンプルにはうめ著「大東京トイボックス 1巻」を、テキストコンテンツのサンプルには太宰治著「グッド・バイ」を用いている。ストアはKindleストアを利用している。
冒頭で述べたように、解像度はiPhone 11 Pro Maxと同じく400ppiオーバー、画面サイズも同等ということで、実際の見え方はほぼ同じ。クオリティ面ではまったく問題はない。挙動自体も高速で、もっさりしていて困るようなこともない。
細かく見比べていくと、読書中にオプションを表示した時にノッチまわりが塗りつぶされるか否かといった違いはあるが、これはiOSとの違いによるもので、読書時の使い勝手に何らかの影響を与えるものではない。電子書籍端末としてみた場合、使い勝手は極めて良好といえる。
ところで本製品に限ったことではないが、昨今のスマートフォンは画面のアスペクト比が紙の本に比べて縦長ゆえ、コミックを表示すると上下に余白ができてしまう。
これは最近増えつつあるマンガアプリでコミックを表示した場合も同様だが、その反面、マンガアプリのホーム画面は縦スクロールを想定した設計されており、画面が縦長であるほど使いやすいことがほとんどだ。
以下は代表的なコミックアプリである、集英社の「少年ジャンプ+」、講談社の「マガポケ」それぞれのホーム画面だが(左が本製品、右がPixel 3)、いずれも画面が縦に長ければ長いほど一画面に多くの項目を表示でき、お目当ての作品を探しやすい仕組みになっている。最近のコミックアプリはこのレイアウトがほぼ主流だ。
それゆえ、解像度1,920×1,080など、アスペクト比が「16:9」の従来サイズのスマートフォンから、本製品やiPhone 11 Pro Maxのようなアスペクト比がより縦長、かつ大画面のスマートフォンに乗り替えれば、これらコミックアプリをより快適に使えるようになる。
ヘッダ部分の扱いで多少の誤差は出るが、本製品とiPhone 11 Pro Maxはいずれもアスペクト比は「19.5:9」と縦長で、それだけマンガアプリとの親和性は非常に高い。
ちなみに本製品は、Androidデバイスとしては珍しく、音量調整ボタンが右側面ではなく左側面に配置されている。Android向けの電子書籍アプリの多くは、音量ボタンによるページめくりに対応しているが、それゆえ本製品は本体左側のボタンで操作することになる。
位置もかなり上寄りで、とくに右手で握って人差し指で押す時は、いったん持ち替える必要が出てくるかもしれない。
抜群のコスパ、電子書籍ユースにとどまらない実力派
本稿執筆時点で約6週間ほど本製品を使用しているが、電子書籍ユースはもちろん、動画の再生でも十分な性能があり、これが3万円台で買えてしまうとのはいい意味で異常だ。
事前情報なしで本製品を渡されて実売価格を当てろと言われれば、6~7万円くらいと筆者は予想するだろう。それくらい感覚を狂わせる製品だ。
近いサイズで同価格帯の製品としては、以前紹介した「ZenFone Max Pro(M2)」があるが、こちらは防水なしでNFCも非搭載、さらに5GHz帯非対応、コネクタはMicro USBと、フォームファクタの古さは否めなかった。購入時点であからさまに古い仕様が含まれているのは、さすがに抵抗がある人もいるだろう。
その点、本製品はせいぜいUSB PD非対応くらいで、露骨なコストダウンの跡は見られず、防水やおサイフケータイも対応するなど実用性は高い。また電子書籍ユースだけであればそれほどメリットはないが、この価格で有機ELを採用しているのも、動画鑑賞の機会が多い人にとっては魅力的だろう。
筆者は目的特化のサブスマートフォンとして購入したが、実際に使ってみた限りでは、SIMフリーでなんでもこなせるスマートフォンとして十分すぎるほど通用する。
2年くらいはメインを張り続けられる大画面スマートフォンが欲しい、ただし5万を超えるのは予算的にちょっと……という、欲張りな人にぴったりの1台と言えそうだ。