山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
7型ながら2万円台半ばの電子ペーパー端末、楽天「Kobo Libra H2O」
~防水対応でページめくりボタンも搭載
2019年9月25日 11:00
楽天Koboの「Kobo Libra H2O」は、E Ink電子ペーパーを採用した電子書籍端末だ。ページめくりボタンの搭載、IPX8準拠の防水対応など、最上位モデル「Kobo Forma」の特徴を継承しつつ、画面サイズを8型から7型へと小型化した製品だ。
楽天Koboはかねてより大画面のE Ink端末に注力しており、中でも2018年発売の「Kobo Forma」は、専用端末としては最大クラスとなる8型のE Inkパネルを採用し、コミックの見開き表示でも実用レベルで使えるサイズが特徴だった。
今回の「Kobo Libra H2O」は、その「Kobo Forma」のデザインほぼそのままに、画面サイズを7型に改めた製品だ。ページめくりボタンを装備した7型E Ink端末としてはAmazonの「Kindle Oasis」があり、直接的なライバルと言える。
今回は、9月18日に発売された本製品について、8型のKobo Forma、およびKindle Oasis(第10世代、以下同じ)と比較しつつ、その使い勝手を検証する。
小型化&容量減で2万円台半ばの価格を実現
まずは他製品との比較から。
製品 | Kobo Libra H2O | Kobo Forma | Kindle Oasis(第10世代) |
---|---|---|---|
発売月 | 2019年9月 | 2018年10月 | 2019年7月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 159.0×144.0×5.0~7.8 mm | 177.7×160.0×4.2~8.5mm | 159×141×3.4~8.3 mm |
重量 | 192g | 197g | 約188g |
画面サイズ/解像度 | 7型/1,680×1,264ドット(300ppi) | 8型/1,440×1,920ドット(300ppi) | 7型/1,264×1,680ドット(300ppi) |
ディスプレイ | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta) | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta) | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta) |
通信方式 | IEEE 802.11b/g/n | IEEE 802.11b/g/n | IEEE 802.11b/g/n |
内蔵ストレージ | 約8GB | 約32GB | 約8GB(ユーザー使用可能領域:約6GB)/約32GB(ユーザー使用可能領域:約27GB) |
フロントライト | 内蔵(自動調整) | 内蔵(自動調整) | 内蔵(自動調整) |
ページめくり | タップ、スワイプ、ボタン | タップ、スワイプ、ボタン | タップ、スワイプ、ボタン |
見開き表示 | ○ | ○ | ○ |
防水・防塵機能 | あり(IPX8規格準拠) | あり(IPX8規格準拠) | あり(IPX8規格準拠) |
バッテリ持続時間の目安 | 数週間 | 数週間 | 最大6週間/明るさ設定13、ワイヤレス接続オフで1日30分使用した場合 |
発売時価格(税込) | 24,624円 | 34,344円 | 29,980円(8GB、広告つき)/31,980円(8GB、広告なし)/32,980円(32GB、広告つき)/34,980円(32GB、広告なし) |
既存モデルの「Kobo Forma」は、ページめくりボタンを搭載し、左右どちらの手でも使えるという特徴を備えていた。これはKindle Oasisとほぼ同じ特徴だが、画面サイズはKindle Oasisの7型に対して8型ということで、かなりのサイズ差があった。
今回の「Kobo Libra H2O」は、その画面サイズが7型へと改められたことで、正面からKindle Oasisとぶつかる製品となる。価格についても、同容量のKindle Oasisより5千円ほど安価、従来のKobo Formaと比べると約1万円安く、価格競争力は十分だ。ただしストレージ容量は32GBから8GBへと削減されるなど、価格を合わせるためのコストダウンのあとは少なからず見られる。後述するが、過去のモデルで32GBの容量をフル活用していた人や、メモリカードを多用していた人は、買い替えにあたっては要注意だ。
一方、それ以外のスペックについては、目立った変更点はない。解像度は同じ300ppi、連続数週間とされるバッテリ持続時間や、IPX8準拠の防水対応なども同一だ。重量差もわずか5gということで、ほとんど体感できないレベルだ。
以上のように、仕様を比較する限りでは、画面サイズを7型に縮小し、容量を32GBから8GBへと減らすことで、約1万円安いプライスを実現した普及型モデル、という解釈でよさそうだ。
読書中の設定画面がマイナーチェンジ
では実際に開封してみよう。パッケージの内容はKobo Formaと変わらず、セットアップの流れも従来と変わらない。
ホーム画面は従来のレイアウトと同じだが、読書画面を見ていくと、若干のマイナーチェンジが見られる。たとえば読書中に表示する画面上下のツールバーは、おもなツールが上部にまとめられ、わかりやすくなった。
操作性も改善されている。たとえば、これまで読書中にホーム画面に戻るためには、画面左上の3本線のアイコンをタップし、そこでホームを選ぶという2段構えの操作が必要だったが、本製品では1タップでホーム画面に戻れるようになった。
操作としては1ステップ減っただけだが、実際に使ってみると今回のほうがはるかに使いやすく、ストレスも少ない。海外ではすでに従来モデルにも適用できる新ソフトウェアが提供されつつあるようなので、従来モデルのユーザーも恩恵を受けることができそうだ。
もう1つ、コンテンツの表示中に画面最下段に進捗が表示されるようになり、本のどの位置にいるのかつねに把握できるようになったのも便利だ。Koboはこれまで「本のどの位置にいるか」ではなく「章のどの位置にいるか」に重きを置いていたが、今回の仕様変更ではるかにわかりやすくなった印象だ。ちなみに設定でオフにすることもできる。
ハードウェア面についても触れておこう。従来のKobo Formaとの違いとして、電源ボタンが、従来の側面から、本体の裏側へと移動していることが挙げられる。
この電源ボタンはグリップから離れた位置にあるため、最初はやや違和感があるが、実際に使ってみると、これはグリップを握った時に、誤って電源をオン/オフしないための配置であることに気づかされる。誤操作を防ぐための仕組みとして優秀だ。
また、従来のモデルは、縦長ボタンの位置によって押した時の感触が異なっており、押し込まないとページがきちんとめくられない場合もあったが、本製品はボタンが短くなったほか、どの部分を押しても同じ感触・同じ反応が得られるようになった。ハードウェアとしては2世代目となったことで、非常にこなれた印象だ。
ページめくりボタンによる操作性は良好。見開き表示にも対応
続いて、ページめくりボタンを中心とした使い勝手を見ていこう。
本製品は、画面横のグリップ上に、ページめくりボタンが上下に並んでいる。この仕様はKobo FormaはもちろんKindle Oasisとも同様だ。デフォルトでは下のボタンに「進む」、上のボタンに「戻る」が割り当てられており、設定で入れ替えることもできる。
画面回転の挙動も従来と同じで、本体を135度まで回転させると画面の上下が入れ替わるので、左手と右手どちらでも持つことができる。言うまでもないがページめくりボタンの割当も、回転に連動して上下が入れ替わる。
上記は設定が「自動回転」になっている場合の挙動だが、これを「横画面」に切り替えると、180度単位ではなく90度単位で回転させ、見開き表示にすることも可能だ。ちなみに90度単位でページ回転させるメニューも用意されているが、この場合は見開き表示にはならない。
見開き表示の実用性はのちほど述べるとして、秀逸なのは、本体を横向きにした時に、ページめくりボタンの配置と本(右綴じ)の進行方向がきちんと合致することだ。具体的には、左側のボタンを押すとページがめくられ、右側を押すとページが戻る。
同じくページめくりボタンを備えるKindle Oasisは、左側のボタンを押すと「戻る」、右側を押すと「進む」という、本の進行方向とは逆の配置になっているため、非常に使いづらい。
これはページめくりボタンの割当が、KoboとKindleで逆になっているのが原因で、設定で入れ替えれば同様の操作が可能になるのだが、そうなると単ページ表示でも上下の割当が入れ替わってしまう。かといって見開きにするたびに設定を変更するのも面倒だ。
これは右綴じ本の話で、つまり進行方向が逆向きになる左綴じの本ではKindleのほうが使いやすいということになるのだが、コミックや縦書きのテキスト本など、右綴じのコンテンツが多くを占める日本で使う場合、本製品の初期設定のほうが使いやすいと言える。
ちなみにページめくりの速度については、Kobo Formaと同様、お世辞にも高速とは言えない。通常にページをめくるぶんに支障はないのだが、連続してめくろうとすると、パフォーマンスに余裕がないことを実感する。Kindle Oasisと比較するとその差は明白だ。実際の挙動は以下の動画を見てほしい。
画質は十分。見開き表示でも一定のクオリティ
続いて解像度について見ていこう。本製品の解像度は300ppiということで、電子書籍のコンテンツを表示するには十分な解像度だ。以下に比較画像を掲載するが、縦向きでの表示については、とくに検証の必要もないレベルだ。
では見開き表示ではどうだろうか。7型画面に2つのページが並ぶ状態になるため、サイズは決して大きいとは言えないが、それでもコマのサイズ自体はiPhone XS Maxなどの大画面スマホより一回り大きいため、サイズ的にはそこそこ読めてしまう。
実際にディテールを見ても、たしかに単ページ表示に比べると細い線などの描写は苦手だが、同じ画面サイズのKindle Oasisに比べて若干シャープネスがかかっているためか、思いのほか健闘している印象だ。
そのためコミックでも、緻密な描写が売りの作品や、細かい手書き文字が多い作品を除けば、十分に実用的とみてよいだろう。また文字サイズを調整できるテキストコンテンツなどであれば、こうした問題もなく、快適な読書が楽しめるはずだ。
強いて挙げれば、画面を横向きに持つことに馴染めるかどうかのほうが、ポイントかもしれない。
完成度は高くリーズナブル。ネックがあるとすれば容量か
以上のように本製品は、完成度も高く、またコストパフォーマンスにも優れた製品だ。現行機種で最上位モデルのKobo Formaは、8型という画面サイズは魅力ながら、かなり高価だったので、価格帯が引き下げられた本製品は、そうした意味でもよい選択肢になるはずだ。
またかつての6.8型モデル「Kobo Aura H2O Edition 2」が重過ぎると感じた人、また「Kobo Clara HD」を含む過去の6型モデルでは画面サイズが足りないと感じていた人にとっての、買い替えの候補としても有力だろう。ボタンの押し心地など、Kobo Formaと比較してもブラッシュアップされているのもよい。
唯一気をつけたいのは、現時点で8GBモデルしかラインナップされていないことだ。かつてのKoboはメモリカードが使えることが大きな特徴で、その後の防水対応モデルで内蔵ストレージを増やすのと引き換えにメモリカードスロットを廃止した経緯があるが、本製品でその利点は失われてしまった。
そのため、過去のモデルでコミックなどを大量にダウンロードして持ち運んでいる人にとっては、容量がネックになる可能性はある。ハードとしてはよくできた製品だが、買い替えを考えているユーザーは、この点だけは注意したほうがよさそうだ。