山田祥平のRe:config.sys

あらゆるアプリを同じ操作で

 パソコンの用途はそこで使うアプリに依存する。あらゆる意味でパソコンは通信機であり、アプリの再生機だ。それぞれのアプリは、それぞれの作法を要求し、ユーザーはそれにしたがうしかない。その作法の習得が使いこなしの原点となる。そのそれぞれの作法をなんとか統一できないものか。

Winodowsグローバルでショートカットキーをリマップ

 MicrosoftによるWindowsパワーユーザーのためのユーティリティ「PowerToys」がアップデートされ、その機能の1つであるKeyboard Managerが大幅に刷新された。

 7つのユーティリティの集合体として提供されているPowerToysだが、Keyboard Managerは、その1つとして、Windows上でのキーボード操作におけるキーとショートカットのリマップを担うユーティリティだ。今回のアップデートでは、ショートカットリマップができるようになり、その可用性が一気に高まった。

 ただし、キーのリマップについてはまだ不具合が残っている。需要が多いであろうCtrlとCapsLockの入れ替えもうまく機能しない。再起動なしでリマップでき、リマップの有効無効も切り替えられる統合環境は過去に見当たらない。

 当たり前の話だが、WindowsアプリはWindows OSのもとで稼働する。どのアプリを使うときにも基本的に同じキーボードを使って操作することになる。アプリごとに、なんらかの機能を実現するための操作が、著しく異なっては使うほうもたいへんだから、いわゆる機能キーについては、それを叩いたときに何が起こるかはほぼ統一されている。

 たとえば、EnterキーやBackSpaceキー、上下左右の方向キーなどは、おおむね予想どおりのことが起こる。

 だが、CtrlやAltなどの修飾キーとアルファベット、機能キーの組み合わせによるショートカットについてはほぼ野放しだ。Ctrl+C、V、Xによるコピー、貼り付け、切り取りといった超おなじみのコンビネーションはともかく、たとえば、EdgeやChromeブラウザのアドレスバーで、文字入力中にCtrlキーを押しながらアルファベットのHを叩くと、履歴のページが表示される。ところがWordやExcelでは検索と置換のためのダイアログボックスが開く。また、Photoshopなどの多機能アプリでは、そのときのシーンごとに微妙に異なる機能が実行されたりする。

 個々のアプリが定義するショートカットは数多いが、そのほとんどすべてはメニューやリボンコマンド、ツールバーボタンを使えば実現できる機能に割り当てられている。ならば、自分の手慣れたショートカットについてはアプリごとのショートカットを乗っ取って、自分が決めた機能を実行するようにしたいと思う。

 アプリにはキー割り当て機能を持つものも少なくないが、すべてのアプリが対応しているわけではない。また、個人的に愛用してきたキー割り当てのためのユーティリティも、Windowsのストアアプリの前では無力だったし、ブラウザの操作も乗っ取ることはできなかった。

 だが、PowerToysのKeyboard Managerは、おおむね、望みどおりのことができる。

本当に多い文字入力場面

 多くの作業をブラウザベースで行なうようになった結果、文字入力とその編集について、いろんなWebアプリの作法を身につけなければならなくなってしまった。

 たとえば数行の文字列を入力すれば良いとは言え、TwitterやFacebookなどのSNS、また、WebベースでGmailやOutlookなどのメールをやりとりする場合、Googleドキュメントなどで文書を作成する場合、MessengerアプリやTeams、Zoomでチャットをする場合など、キーボードを使って文字を入力する場面では、同じショートカットで同じことができるようにしておきたい。

 その結果、個々のアプリで定義済みのショートカットが機能しなくなる可能性はあるが、Keyboard Managerは、どのアプリについてリマップを適用するかを指定することができるので、どうしてもというときには必要なアプリだけを指定すればいい。本当は、除外の設定ができればいいのだが、現時点ではその機能は実装されていない。

文字入力の場面でのキーボード操作統一

 文字入力で頻繁に使う機能キーとしては次のようなものがある。Windowsアプリの場合は、そのほぼすべてで同じ結果が得られる。だからこその機能キーだ。

【表】機能キーの役割
Enter改行、決定等
BackSpaceカーソル直前の文字を削除
左右上下の方向キーカーソル移動
Home行頭へ
End行末へ
Ctrl + Home文書の先頭へ
Ctrl + End文書の末尾へ

 この10種類の機能キーを、自分なりにCtrlを修飾キーとするショートカットに割り当てた。要するに今まで秀丸エディタで使ってきたキー割り当てを倣って設定し、Windowsグローバルで使えるようにしたのだ。これで、テキストコントロールで文字を入力するときに、使い慣れた秀丸とまったく同じ使い勝手が実現した。個人的には鬼に金棒だ。

 ただ、一部、日本語入力のATOKと秀丸エディタにおいて機能がぶつかってしまった、これらのアプリは個別にキー割り当ての機能が提供されているので、別途定義を変えて対応した。

 また、MS-IMEはこの春のWindows機能更新でMay 2020 Updateに刷新された結果、キー割り当ての機能が提供されなくなってしまったため、対応は難しい。MS-IMEは、必要に応じて前のバージョンに戻せるのでそうするしかないようだ。

 ごくまれにキー入力をこぼし、Ctrlを押しているのに押していないことになる場合があるのだが、これは、CtrlとCapsLockをレジストリ書き換えで設定していることに起因しているかもしれない。Keyboard Managerのキーリマップ機能が正常に稼働するようになり、このユーティリティですべてのリマップをまかなえるようになれば改善されることを期待している。

 欲しいと思うのは、この設定情報をファイルに書き出して、ほかのパソコンに反映する機能だ。Windowsの機能として提供されているのであれば、同じMicrosoftアカウントでのログインなら個人用設定として同期してしまってもいいのだが、Microsoft製とは言え、別途提供されているユーティリティなので、それは難しいだろう。せめて、設定の書き出し/読み込み機能は用意してほしいものだ。

 キー割り当ては、あまりに独自のものに慣れきってしまうと、自分のパソコン以外を使わなければならなくなったときに途方に暮れてしまう可能性がある。文字入力の場合、異なる環境では大げさかもしれないがスピードが半分程度に落ちてしまう。だから、やりすぎはよくないということはわかっている。それでも、多少の手は入れたくなる。

 標準的な環境に慣れ親しむことは重要だし、組織全体で標準的な環境しか許可されないパソコンもある。でも、なんとかズルができるのなら、何十年も培ってきた指の動きはキープしたい。