山田祥平のRe:config.sys
わかっちゃいるけど重くなる
2017年12月29日 06:00
いつでもどこでも望みのデジタル環境を得られるようにするのがモバイルだ。最低限の装備から過剰装備までのなかで、その損益分岐点を模索する。万が一に備えることは、そのまま重量増につながっていく。でも、それをなかなかやめられないのもモバイルだ。
モバイルアイテムの棚卸し
年の暮れを機会に日常的に持ち運んでいる装備をちょっと見直してみることにした。まずは、持ち出す可能性のあるアイテムの重量をチェックしてみた。単位はgだ。
日頃の装備 | ||
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スマートフォン | ||
Galaxy S8+ | 185 | |
iPhone X | 194 | |
合計 | 379 | |
PC | ||
レッツノートRZ5 | 768 | |
レッツノートXZ6 | 1,112 | |
Surface Laptop | 1,230 | |
LAVIE Hybrid ZERO | 832 | |
XPS13 | 1,240 | |
LIFEBOOK UH/B1 | 769 | |
雑貨 | ||
折りたたみ傘 | 92 | |
名刺入れ | 91 | |
マウス | 80 | |
モバイルバッテリとケーブルセット | 105 | |
合計 | 368 | |
カバン(よく使うもの数種類) | ||
薄手のショルダーバッグ | 294 | |
手提げカバン | 210 | |
厚手のショルダーバッグ | 473 | |
バックパック(重いほう) | 1,600 | |
バックパック(軽いほう) | 500 | |
カメラ関係(ケースと予備バッテリは必須、レンズは取材内容に応じて変わる) | ||
予備バッテリとケース | 140 | |
APS一眼レフD5600本体 | 506 | |
レンズ24-120 | 662 | 1,308(カメラ本体との合計) |
レンズ18-55 | 250 | 896(カメラ本体との合計) |
レンズ28-300 | 890 | 1,536(カメラ本体との合計) |
レンズ18-200 | 654 | 1,300(カメラ本体との合計) |
基本的にもっとも軽いカバン(210g)に名刺(81g)とノートPC(768g)が入っていて、スマートフォン(185g)が1台あればそれでとりあえず仕事はできる。それだけを入れたミニマム状態では1,254gだった。まずはここをスタート地点にする。
次に、持っていたほうがよさそうなものをここに加える。折りたたみ傘(92g)、モバイルバッテリとケーブル類セット(105g)といったところか。すると総重量は1,451gになった。
さらに、必ず使うわけではないが持っていたいものを加える。2台目のスマートフォン(194g)と、マウス(80g)くらいだろうか。ここまでで1,725gとなった。日常的にはこれでOKだ。PCを多少重いものに持ち替えると2kgを超えてしまうが、まあ許せる範囲だろう。
ただ、これだけですまない日もある。取材内容に応じてカメラを携行する日は、ここに896~1,536gが追加される。つまり、最悪の場合は3kgを超えてしまう。ちょっと広めの会場での会見や、イベントの基調講演などではスマートフォンのカメラですませるというわけにもいかず、どうしても一眼レフカメラがほしくなるからだ。
逆に、マウスがなければないでなんとかなるだろうし、スマートフォンを外出先で充電することは10日に1度くらいのものなので、それらを省略することもできる。そもそもスマートフォン2台が無駄などなどというつっこみもありそうだ。でも、万が一を考えてしまうのが人情というものであり、モバイラーの性でもある。
じつはカバンがもっとも重い
カバンそのものは携行するアイテムのなかでもかなりの割合を占める。個人的には記者会見等で配布されるA4書類が入った角2封筒が折れ曲がらずに入ることを条件にしているが、上記の計量結果を見ても重さにはけっこうなバラツキがある。
カバンは手提げ、ショルダー、バックパックに分類できる。撮影を伴う取材では、両手があくリュックが便利だし、負担も両肩均等となって多少はラクに感じる。ところがリュックそのものの重量がバカにならない。手元のもっとも軽そうなバックパックを計量したら500g以上あったし、自立するしっかりしたバックパックは1,600gを超えていた。もっと軽いバックパックもあるだろうが、なかに入れる機材の保護を考えるとあまりに華奢なものは使えない。
ショルダーバッグも同様で、肩ストラップの重量が加算されると同時に、たすき掛けにしたときに片側の肩ばかりに負担がかかるのが気になる。かといって、手提げは必ず片手がふさがる点で不便だったりもする。
理想的には、カバンの中味が全部、上着のポケットに収納できればいいのにと思うこともある。さすがにカメラとPCは無理があるが、そのほかのものはなんとかなりそうだ。とくに、冬は分厚い上着を着ることが多いが、屋内に入れば脱いでしまうのだから、カバンの分だけ荷物のトータル重量が軽くなるというものだ。妄想にすぎないがそういう考え方もあるんじゃないか。
通勤カバンは重くないか
10年ほど前に、この連載で書いた高校生のカバンの重量についてのコラムがある。じつ15kgものカバンを抱えて通学する実態に疑問を投げかけた高校放送コンテストのドキュメンタリー部門優勝作品「なまら重くね!?」(北海道小樽潮陵高等学校)を見てのものだ。
当時、15kgのカバンを抱えて通学していた高校生たちは、数年先に30歳を迎えようとしている。きっと就職し懸命に働いているのだろう。はたして、毎日何kgのカバンを抱えて通勤しているのだろうか。
いつでもどこでも仕事ができることは大事だ。モバイルはそのための方便でもある。人間が人間として心身ともに豊かであり続けるためにも、これまでの働き方に対する意識を変える必要がある。それが働き方改革だとされている。
その働き方改革が叫ばれるなかで、誤解を怖れずに言わせてもらうなら、諸悪の根源は2in1PCではないかと思う。すべてを否定するつもりではないが、2in1 PCは、いってみれば水陸両用自動車のような存在で、いつでもどこでもどんな使い方でもできるようにするために、いろいろなところが犠牲になっている。
そして、そのために重量増にもつながっている。デバイスは適材適所で使えばいい。本当は1台にすべてを委ねる必要なんてないのだ。オフィスはオフィス、外回りには外回りで、もっとも適したデバイスを使い分けるべきではないか。なのに、オフィスの広いスペースなのに、モバイルノートPCを使わせられているケースをよく見かける。
10年前に比べれば、管理のしやすさも、複数デバイスの使い分けも、クラウドのおかげでずっと容易になっているし、1台あたりのコストも劇的に安くなっている。ところが、現場によってはデスクトップPCが2in1 PCに置き換わり、作業環境がむしろ劣化しているようなケースもある。それで本当に働き方など改革できるのかという疑問もわいてくる。
あれから10年を経た高校生たちは、今の働き方のなかで、毎日の通勤に持ち運ぶ荷物にどのような印象を持っているのか。彼らが作った「なまら重くね!? 通勤編」を見てみたいものだ。
今年も1年間ありがとうございました。2018年も引き続きご愛読いただけますようよろしくお願いいたします。