山田祥平のRe:config.sys
究極の全部入りスマホ
2017年6月9日 06:00
Galaxy S8の販売がはじまった。スマートフォンに求めるあらゆるものを詰め込んだ。そういっても過言ではないほどの全部入り端末だ。悩みは小さいのに大きいこと、大きいのに小さいこと。それもまた、スマートフォンに求められる重要な要素だ。
MNP優遇にブルーな気分
Galaxy S8+を入手した。ターミナル駅周辺の量販店での購入だが、担当氏の話によれば、予約も好調で、昨年(2016年)のS7 edgeのときよりも、ずっと勢いがあるそうだ。
その一方で、端末価格と通信料金の分離はいっこうに進まず、さらに、あいかわらずMNPと機種変更の月々サポートの金額格差があまりにも大きいので、ずっと使ってきたMVNOの通話つき契約をMNPして入手した。
ご存じの方も多いと思うが、MNPはドコモ系MVNOからドコモ本体へも可能だ。MVNOはメールアドレスにしばられることもないのでMNPするためのハードルが低い。ただ、その資金はずっと同じキャリアに留まるユーザーが負担しているのだと思うとちょっと切ない。
通話プランからのMNPなので新しい契約も通話プランにせざるを得ない。いったんカケホーダイライトを契約し、通常のパケットプランとしてデータSパックを付加した。そして、その日のうちに、データ専用プランに契約を変更し、もう1つ契約している回線を親にした「2台目プラス」のシェアオプションを来月1日から適用するように予約した。
家族向けに設定された通常のシェアパックとシェアオプションも考えたのだが、パケット単価が違いすぎる。30GBで比較すると、家族向けの「シェアパック」は13,500円、「2台目プラス」なら8,000円だ。なので通話はあきらめてデータ専用プランとして「2台目プラス」を選択した。
SIMロックもすぐに解除した。Webで製造番号を入力して申し込むと、解除コードが発行される。端末のSIMをドコモ以外のものに入れ替えて再起動すると、解除コードの入力を求められるので、発行されたコードを入れればロック解除完了だ。今回は、auのSIMを装着してロックを解除したが、APNを設定するだけですんなりと4G接続できることが確認できた。
ただ、ドコモの端末をSIMロック解除するのはそれほど意味があるわけではない。というのも、ほかのキャリアのSIMを入れたいのは海外にいるときが多いのだが、海外での利用にさいしては、国内キャリア向けの端末は対応バンドが足りないからだ。アメリカではB4がないし、ヨーロッパではB20がない。台湾ではB8がないため、けっこう不便を感じることがあるのだ(Galaxy S8+ SC-03Jの仕様)。
このあたりのことを考えると海外利用が多いのなら、グローバルベンダーのSIMロックフリー端末のほうが使い勝手がいいのではないか。Galaxyも、おサイフケータイなどの日本向け仕様を実装したグローバル端末を出してくれればいいのにと思う。
悩みに悩んだ究極の選択
じつは、Galaxy S8にするかGalaxy S8+にするかは悩みに悩んだ。小さくても大きいS8を選ぶか、大きくても小さいS8+を選ぶかは究極の選択だ。
予約はS8+で入れておいたものの、本当に直前まで悩んだ。3月末にニューヨークの発表会で実機を手にしていたし、4月末にはソウルの本社で製品担当者との話もしてきた。また、5月末のドコモの新製品発表会のあと、両機の実機を借りることもできたので、自分のものを購入するまでに、あきるくらいにさわっている。実際、購入してもあまり新鮮さを感じないくらいだ。それでも悩みに悩んだ。
この1年間、メインの端末はGalaxy S7 edgeだったから余計に悩む。感覚としてはS8はS7 edgeより小さく、S8+はS7 edgeより大きい。画面のインチ数にまどわされてはいけない。画面の縦横比が18.5:9という特殊なものなのでS8は小さいのに大きく感じる。一方、S8+は大きいのに小さく感じる。
表示のスケーリングは同じだ。Galaxyのスケーリング、画素密度の設定は昔から絶妙だ。
S8とS8+で画面のズームと文字サイズを同じ設定にしておくと、まったく同じ量のコンテンツが表示される。S8+のほうがそのときの文字サイズ等は大きい。だから、自分の視力でちょうどいい設定はS8よりも小さい文字の設定で済む。そして文字を小さく設定することで、その分多くのコンテンツを表示することができるわけだ。
S7 edgeとS8+は手に持ったときの横幅がほぼ同じだ。縦方向は長いのだが横幅はほぼ同等だ。ただ、心配だったのはおサイフケータイとして使うときに改札口でツルンと手から滑り落ちそうなイメージがあることだ。S7 edgeの158gに対して、S8+は173gだ。その差15gが慣性を誘ってしまっているように思う。とその点、S7 edgeより横幅がないS8はグリップもよく、その心配がなさそうだ。
おサイフケータイを含む全部入り端末としてこれから日常的につきあっていくとき、でかけるときに1台だけのスマートフォンを持ち出すなら、選ぶメイン端末は小さいほうがいいのか、大きいほうがいいのか。そこを悩みに悩んで最終的に大きいほうを選んだ。そのくらい今回の端末選びは難しかったが、最終的には大きな画面とバッテリ容量のヘッドルームをとったことになる。
PCのようにスマートフォンを使える可能性
指紋認証、虹彩認証についてはなかなか慣れない。指紋センサーは背面にあり、カメラのレンズと並んでいるため、どうしても指がセンサーを探し、見失う。虹彩認証はカメラに自分の瞳をとらえてもらえる位置関係をなかなか会得できず失敗することが多い。メガネが苦手なようだという印象もある。ここは慣れるのに時間がもう少しかかりそうだ。
性能については圧倒的だ。これはもう申し分ない。1年前のS7 edgeと比べても、ちょっとさわっただけで速くなったことが体感できる。この性能を使った機能の1つとして「DeX」がある。これは、DeXステーションと呼ばれるドックにS8またはS8+を装着すると、そこに接続されたディスプレイにデスクトップを表示し、まるでPCのように使えるというものだ。
日本では今のところDeXステーションの発売は予定されていないそうで、キャリアモデルだから機能が封じられているかとも思っていたが、先日、COMPUTEXにでかけたときに、街角のショップで実機がデモされていたので、ドコモ版のS8+を装着してみたら、見事に日本語のデスクトップが表示された。それならと思って、手元にあったUSB Type-CのHDMIアダプタを装着してみても機能しなかったのは残念だ。
本社を訪問したときに聞いた説明では、この機能はAndroid 7.0 Nougatのマルチウィンドウ機能を利用して実現されているという。まるでPCのデスクトップのように、アプリをウィンドウ表示し、マウスやキーボードを使って操作することができる。
お馴染みのChromeはマルチウィンドウに非対応だが、標準ブラウザは5つのウィンドウを同時に開くことができる。ただし、ウィンドウ間のデータコピーとペーストをドラッグ&ドロップというわけにはいかない。このあたりは、まだ出ていないが、先日発表されたiOS 11が一歩リードというところだろうか。実際に操作してみてもストレスを感じない。個人的には、この性能を実現しているQualcomm Snapdragon 835の可能性を再確認した。Windows 10もこの使い方をキャッチアップしようとしている今、おもしろい時代がやってきそうだ。
充電の悩みは続く
充電端子はUSB Type-Cで、気になる充電方式はQualcommのQuick Charge 2.0に対応している。5V/9V/12Vでの充電ができるはずだが、USB Type-CとUSB Type-Aケーブルのような変換ケーブルで充電する場合は規格上5V/1.5Aを超えることはできない。となると、Power Delivery(PD)非対応であるとしても両端がUSB Type-Cのケーブルを使うなり、USB Type-Cケーブルが直づけの充電器が必要だ。この仕様を満たす充電器はあまりみかけないが、たとえば、ドコモ純正の「ACアダプタ 06」がある。
S8やS8+は充電器やケーブルが同梱されていないので、多くのユーザーは既存のMicro USBに変換アダプタをつけたり、USB Type-AとType-Cの変換ケーブルを使ったりして充電するに違いない。規格を守ったまともな製品であれば、Quick Chargeでの急速充電の恩恵は得られないだろう。
スマートフォンの充電端子がどんどんUSB Type-Cに移行していく一方、PCに装備されるUSB端子もType-C化が進んでいる。現時点ではスマートフォンはQuick Charge、PCはPDというパターンが多く、なかなか足並みは揃わない。このままではスマートフォンの急速充電機能が安全に使われないような状況になってしまいかねない。それを回避するためにも、充電器は同梱してほしかった。
COMPUTEXでの取材では、出展している周辺機器ベンダーにUSB Type-Cを複数ポートを持った充電器の可能性を尋ねてまわったのだが、今のところ需要は皆無に近いそうだ。需要さえあればいつでも用意する準備はあるということだが、既存のType-A端子が複数並んだ充電器のように、Type-C端子が複数ポートあって、それもQuick ChargeとPDの両対応といった製品が出てくることは当面なさそうだ。このあたりは、そろそろなんとかしないとまずいんじゃないだろうか。