山田祥平のRe:config.sys

百均アクセサリはその素性を明記せよ(パート2)

 100均USB Type-Cケーブルだが、さらに入手が容易になった。ただ、今回のパッケージにも謎の文言が見つかる。しつこいようだが電源のトラブルは悲惨な事故にもつながりかねない。ここで、もう一度取り上げておくことにしたい。

ローソン100でType-Cケーブル発見

 USB Type-Cケーブルが新たに入手可能になった100均ショップは、ローソンストア100だ。ここも以前から電子小物が比較的充実しているチェーンで、スマートフォンの黎明期にはよくお世話になった。

 入手可能になったことをツイッターで書き込んだところ、かなり興味を持たれたようで、多くのリツイートをいただいた。やはり、みんな気にしているのだなと思うと同時に、Type-Cもいよいよ一般的になりつつあるのかなと感じた次第だ。

 以前は、セリアのパッケージを紹介(百均アクセサリはその素性を明記せよ)した。この製品は、片側がUSB Standard A オス、もう片側がUSB Type-C オスのプラグを持つ約50cmのもので、色は黒と白だった。

 パッケージには、USB 2.0データ転送、充電対応、USB Power Delivery(PD)非対応であることが記載されているとともに、Type-C搭載タブレットの充電には、2.1A以上の充電器を使うようにと記されていた。

 一方、今回発見したローソン100のケーブルは、形状としてはセリアのものと同じだ。ケーブルそのものはちょっと細い。USB PD非対応とも記載されている。ただ、パッケージには「3A急速充電対応」と書かれている。実は、これはあってはならないことだ。

 なぜならusb.orgでは、このケーブルのような両端のUSBタイプが異なる変換ケーブルの場合は、56kΩの抵抗を入れるようにして、接続されたデバイスはそれを検知して5V/1.5Aを超えて電力を要求しないようにと規定しているからだ。この場合、USBバッテリーチャージ1.2準拠(USB BC1.2)の充電となる。

 ローソン100のケーブルが3A急速充電に対応しているとすれば、このルールに反することになってしまう。果たしてこのケーブルはどのような素性を持つものなのだろうか。

 もし規定された抵抗が入っていなければ、最悪の場合、過電流が流れて火災等につながってしまう可能性もある。ローソンのような著名なショップチェーンがやることではない。もし何かがあれば、やっぱり100均に完全を求めてはいけないとか、安かろう悪かろうという結論になってしまう。それはぼくら消費者にとって得策ではない。

ケーブルは合格、パッケージは失格

 そこで、パッケージに記載されている発売元の株式会社アットキューに問い合わせてみた。パッケージにはサポートセンターの電話番号も記載されているので、ちゃんとした会社のようだ。

 電話をすると、すぐにつながった。事情を話して疑問点を伝えると、折り返し連絡をするという。そして、ほぼ20分後に折り返しの電話がかかってきて、技術的にも詳しい方が回答してくれた。こういう素早い対応は頼もしいし、信頼感にもつながる。

 結論として、このケーブルには56kΩの抵抗が実装されているそうだ。とすると、1.5A以上の電流は流れないはず。

 電話のサポート担当氏によれば、世の中にはいろいろなデバイスがあって、抵抗の値をチェックすることなく大電流を要求したり、供給したりするものも少なくないのだという。そのため、余裕をもって3Aの電流が流れても大丈夫な容量を持つケーブルを使っているとのことで、それがパッケージの「3.0A急速充電対応」という文言につながったようだ。つまり、このケーブルは規格にきちんと準拠しているわけだ。

考える人、つくる人、売る人。

 こうした商品は、商品を企画する人がいて、その商品を開発する人がいて、製造する人がいて、それを売るためのマーケティングをする人など、多くの人が関わっている。そのどこかで勘違いや悪意の意図が発生してしまうと、今回のような結果につながってしまうわけだ。

 じっさい、アットキューのケーブルは規格を守った正当な製品であることがわかる。正当どころか、規格を守らない悪意のデバイスについてもフォローアップしようとしている姿勢もある。まんがいち3Aの電流が流れてしまっても安全としているからだ。

 だが、パッケージの文言は失格だ。あたかも規格をかいくぐった悪意のケーブルのように読めてしまう。そこに悪意を感じるから問い合わせたが、悪意を感じない消費者もたくさんいる。

 仮に悪意を知っていて、自己責任で使って上手くすれば急速充電ができる魔法のケーブルとして重宝する輩も出てくるかもしれない。だが、自己責任とはいえ、火災などにつながれば、被害を被るのは自分だけではないのだ。

 100均の商品は、原価の高いものから安いものまで、すべてが100円で提供される。はっきり言って、100円は安く、世界中どこにいっても、こんな価格でこれだけバラエティに富んだ商品を入手できるのは、日本くらいのものじゃないかと思う。

 中国・深センあたりに行っても、100円相当の金額ではType-Cケーブルを手に入れるのはちょっと難しい感じだし、ましてや、本当に安全で素性がしっかりしているのかどうかを知るのも難しい。だから、あまりに安いケーブルは敬遠する。それが消費者の知恵というものだ。

 だが、100均の商品を供給する発売元には、真面目にきちんとした商品を提供しようとしているところもあるのだということを知っておきたい。

 もっとも、使っているうちにすぐに被覆が破れてきたり、断線してしまったりすることもあるかもしれない。耐久性という点では不安もあるだろう。そういったトラブルを回避するためにも、定期的に買い換えるくらいの自己防衛は必要かもしれない。

 でも、それをしたところで100円である。1,000円を超えるケーブルと一体何が違うのかをよく知った上で購入するのであれば、悪い話ではないと思うのだ。

 頭越しの上から目線で、どうせ100均、粗悪だらけと十把一絡げにするのではなく、ちゃんとした製品もあり、それは、メーカーの必死のコストダウンによって作られているのだということを知っておきたい。

 そして、だからこそ商品を提供する側は、特にこうした商品の場合は、準拠している規格など、その素性を正確に、そして隠すことなく明記してほしい。そのためのコストはそれほどかからないはずだ。それが信頼につながるのだと思う。

 もっとも、こんな価格でちゃんとしたものが手に入ってしまうこの国、日本の将来が、ちょっと不安にもなるのも事実ではあるのだが……