1カ月集中講座
生まれ変わった「Office」はどう使う? 第2回
~Office 365 Soloに登録して実際に使ってみる
(2014/11/22 06:00)
新しいバンドルライセンス(PIPC版)となるOffice Premiumと、個人向けサブスクリプション版OfficeとなるOffice 365 Soloの投入によりOfficeの利用環境が大きく変わりつつある。本短期連載ではそうした変わりゆくOfficeの現状を解説し、どのように使ったらユーザーのビジネスや生活を便利にすることができるのかについて説明していく。
第1回となる前回は、Officeのライセンスモデルについて包括的に説明を行なった。現在のOfficeがどのようなライセンス形態にあり、どのライセンスを買うのがベストなのかについては前回の記事で詳しく解説しているので、興味がある読者はぜひそちらを参照して欲しい。
第2回となる今回は、新しいOffice 365 Soloを例にとって、現在のOfficeはどのようにインストールすることができるのか、従来のパッケージ版のOffice 2013とはどのように違うのかを意識しながら、具体例を挙げて説明していく。未だに過去バージョンのOffice(いわゆるOffice 2007やいわゆるOffice 2010)を利用しているユーザーにとっては、現代のOfficeではかなり大きな進化を遂げていることに驚くのではないだろうか。
クイック実行の仕組みが導入されたOffice 2013
以前からのOfficeユーザーであれば、Microsoft Officeのインストールには、光学ドライブと光学メディアが必須だと考えておられるだろう。だが、Office 2013ではもはやそれは正しくない。
Office 2013世代では、インストールはWebから行なう。これが正しい認識だ。VL(Volume License)版という例外を除き、パッケージ版であろうが、PIPC版であろうが、サブスクリプション版であろうが、ユーザーはMicrosoftアカウントを利用してログインしてoffice.microsoft.comというWebサイトからインストーラファイルをダウンロードして、インターネット経由でインストールする。
こうした仕組みになっている最大の理由は、いわゆるOffice 2010(Office 14)世代で導入されたクイック実行という仕組みが、Office 2013世代では標準の方式となっているためだ。英語ではClick-To-Run(C2R)と呼ばれるこのクイック実行は、新しいプログラムの型式で、プログラムはMicrosoftのサーバーにあるプログラムをストリーミング形式で読み込んで実行していく方式になっている。このため、サーバーから全てのプログラム全体をダウンロードしていない段階であっても、必要な部分だけをダウンロードできればそこから実行し、残りはバックグランドでダウンロードしてインストールしながらでもプログラムを走らせることができる(ただし実際には大部分はローカルにキャッシュされるので、インターネットに繋がっていない状態でも実行することはできる、念のため)。
従来の一般的なMSI(Microsoft ソフトウェア インストール )型式との違いは、大きくまとめると以下のようになる。
MSI型式 | クイック実行形式 | |
---|---|---|
ダウンロード | 最初に全体をダウンロードしておく必要がある | 最初は小さいファイルだけをダウンロード |
インストール中の起動 | 完全にインストールが終わるのを待つ必要がある | インストールの途中でも利用できる |
更新 | Microsoft Updateやパッチを適用 | オンザフライでパッチが適用される |
選択してインストール | 可能 | 不可能 |
異なるバージョンの共存 | 不可 | 可能 |
現在Microsoftはこのクイック実行だけをパッケージ版、PIPC版、サブスクリプション版のOffice 2013世代に提供しており、MSI型式のOffice 2013はVL版の企業ユーザーなどにだけ提供されている。従って、個人ユーザーがOffice 2013を利用する時にはこのクイック実行のみが利用できると考えて良い。また、Office 2013は従来のOffice 2010以前とは違って、以前のバージョンと共存できるようになっているが、その理由がこのクイック実行なのだ。クイック実行では、従来のC:\Program Files\Microsoft Officeなどにプログラムが格納されていたのと異なり、App-Vという仕組みを利用してプログラムが格納されているため、複数のバージョンの併存が可能なのだ(よってC:\Program Files\Microsoft Officeにはバイナリファイルは格納されていない)。
ただし、このクイック実行に変更されたことで、従来のMSI型式Office用に用意されていたプラグインなどが利用できない場合もある。例えば、筆者はGoogle Apps Businessのメール、連絡先、スケジュールなどをOutlookで読み込む“Google Apps Sync for Outlook”というGoogleより提供されているツールを利用しているのだが、昨年(2013年)の11月に公開されたバージョン3.5.365.980以前は、クイック実行のOutlook 2013と互換性がなく、Outlook 2013と組み合わせて利用することができなかった。このため、このツールがクイック実行に対応するまでは、Outlook 2010をインストールして利用していた。
また、クイック実行では、MSI版では可能だった、インストールするコンポーネントを選ぶことができない。例えば、Wordはいらなくて、ExcelとPowerPointさえ有ればいいというユーザーはそうした使い方をしていたと思うが、クイック実行では導入できるアプリケーションを選ぶことはできず、全てのアプリケーションが導入されることになる。この点がクイック実行の、MSI型式に対する唯一の弱点と言っていいだろう。
なお、パッケージ版のOffice 2013では、クイック実行のファイル全体を一度にダウンロードしておき、それをUSBメモリなどにコピーしてインストールすることもできるが、Office 365 Soloの場合には前出のoffice.microsoft.comからのダウンロードインストールのみとなるので、回線の速度などに余裕がある環境でインストールするのがいいだろう(パッケージ版のOffice 2013ではバイナリ全体をダウンロードできる)。
Office 365 SoloはMicrosoftアカウントへの紐付けしたあとにインストール
Office 365 Soloを利用するには、まずWeb上でプロダクトキーを登録し、自らのMicrosoftアカウントに紐付ける作業を行なう必要がある。プロダクトキーをMicrosoftアカウントに紐付けた後、前述のoffice.microsoft.comからインストールするという手順になっている。
(1)プロダクトキーを入力する
Office 365 Soloのパッケージを買ってくると、その中にはプロダクトキーと呼ばれる25文字の文字列が入っている。このプロダクトキーをhttps://office.com/setup/にアクセスし、表示されたプロダクトキーを入力するボックスに入力していく。なお、プロダクトキーは全て大文字のアルファベットと数字だが、特に大文字と小文字の区別はされていないようで、小文字で入力しても特に問題はなかった。
(2)プロダクトキーをMicrosoft IDに紐付ける
プロダクトキーが認識されると、続いてMicrosoftアカウントでログインすることが要求される。Microsoftアカウントというのは、以前はWindows Live IDと呼ばれていたMicrosoftが発行するIDで、outlook.comやlive.jpなどのドメイン名になっていることが多い。既に別のMicrosoftのサービスを利用していてブラウザでログイン済みの場合には、画面にはMicrosoftアカウントが表示され、パスワードの入力が要求されるのでパスワードを入れるだけでよい。
なお、まだMicrosoftアカウントを持っていないというユーザーであれば、Office 365 Soloを設定する前に作っておくといいだろう。Microsoftアカウントは、ここから新規に作成することができる。
(3)Officeのサイトからインストールする
登録が完了すると、office.microsoft.comにアカウントが作成される。画面の右上に表示される“Officeのインストール”ボタンを押すと、Officeアプリケーションをインストールする画面になる。画面から“インストール”という緑のボタンを押すと、インストールが開始される。
いずれにせよ、最初にやることはプロダクトキーとMicrosoftアカウントの紐付けであり、それが終わってからOfficeアプリケーションのインストールだということは忘れないようにしよう。なお、プロダクトキーとMicrosoftアカウントの紐付けは最初の1回のみで良いので、それ以降、別のPCにインストールしたい場合には、office.microsoft.comにログインしてインストールすればよい。
なお、office.microsoft.comでは、PCにインストールしたOfficeアプリケーションのアクティブ化と非アクティブ化も可能になっている。Office 365 Soloでは最大で2台までのWindows PCないしはMacにインストールできるが、3台目にインストールした時には、これまでインストールした2台から1台分のライセンスを非アクティブにする必要がある。この処理は、全てオンラインで可能になっている。
パッケージ版のOffice 2013との使い勝手の観点で最大の違いは実はここかもしれない。というのも、パッケージ版のOffice 2013の場合も、2台のPCにインストールできるというのはOffice 365 Soloと同じなのだが、ライセンスを無効にするにはプログラムをアンインストールし、かつMicrosoft側のサーバーでインストールした台数を超えたと認識した場合にはそれ以上ライセンス認証できなくなり、Microsoftのライセンス認証窓口に電話し、「前に使っていたPCのプログラムをアンインストールし、新しいPCにインストールした」ということを伝え、新しいライセンス認証のための数字列を発行してもらい、自分でそれを入力しなければならない。時間にしてしまえば5分ぐらいのことで、人によってはたいした手間ではないと思うかもしれないが、筆者のように、仕事でPCをよく入れ替えることがある人などにとっては数カ月に1度とは言え、毎度Microsoftに電話してライセンス認証をしてもらうというのは苦痛以外の何物でもない。
しかし、既に述べたように、Office 365 Solo(そして企業版のOffice 365)では、そのライセンスの非アクティブ化をWebサイトから行なうことができ、この苦痛から解放されるのだから、非常に嬉しいことだ。「非アクティブされた端末でのOfficeもインストールされたままになるけどどどうなるの?」と考える向きもあると思うが、もちろん完全にアンインストールしてしまってもいいし、非アクティブ化された端末では編集機能が無効になるため、単にビューワとして利用することができる。
つまり、「この端末はあまり使っていないから、非アクティブ化してビューワとして使おう」とか、逆に「これまではビューワとして使ってきたけど、ここのライセンスをアクティブ化して編集もしたい」という柔軟な使い方ができる。
Office 365 Soloの初期インストール状態で約1GB程度で導入可能
さて、既に述べた通り、Office 365 SoloでOffice 2013をインストールしようとすると、利用できるのはクイック実行形式になる。このため、インストール時には、office.microsoft.comにアクセスして、そこからインストールというボタンを押すと、1MB程度の小さなインストールプログラムのダウンロードが促される。それを実行すると、そのインストーラープログラムがインストールを開始する。
Office 2013のクイック実行版が、従来のOffice 2010などのMSI版と大きく異なるのは、プロダクトキーと呼ばれる25桁の数字やアルファベットからなる文字列をインストール時には入力しなくて良いことだ(既にプロダクトキーはMicrosoftアカウントと紐付けられているからだ)。このため、インストール時には、Officeのライセンスが紐付いているMicrosoftアカウントとパスワードを入力するだけでインストールできるのだ。
しかも、ユーザーがWindows 8/8.1のように、MicrosoftアカウントでログインできるOSを利用していて、Microsoftアカウントでログインするようにしていて使っている場合には、インストーラは自動でMicrosoftアカウントを認識して自動でアカウントの設定も行なってくれる。つまり、ユーザーは難しいことを考えなくても、インストーラーを実行するだけでインストールできるのだ。
なお、今回ASUSの「VivoTab 8」(ストレージ32GB)にインストールしてみたが、Office 365 Soloをインストールすると、インストール前の使用領域が11.6GB(12,525,834,240Byte)だったが、インストール後には12.6GB(13,539,545,088Byte)となっていた。もちろんこれは、初期状態であって、実際には使っていくとキャッシュファイルが増えていくので、もう少しストレージを消費する。例えば、OneNoteを使っているユーザーであれば、クラウドストレージのOneDrive上にデータを置いていても、ローカルでも使えるようキャッシュしておけば、それだけストレージを圧迫する。
また、Office 2013世代ではクラウドストレージにアプリケーションが直接アクセスし、ファイルを開き、それを保存する仕組みが用意されている(次回以降で詳しく説明する)。しかし、PCの場合は、常にネットワークに接続されている環境だけでなく、ネットワークが接続されていない環境で利用されることもある(例えば飛行機の機内など)。そうした時に、ファイルを開いた時にはネットワークに接続されていたのでファイルは開けたが、今はネットワークに繋がっていないので保存ができないと……いうのでは困ってしまう。
そこで、Office 2013(正確にはOffice 2010世代から)ではOfficeドキュメントキャッシュという仕組みが用意されている。クラウドに接続されない時でも、ドキュメントをキャッシュとしてローカルに保存しておき、次にネットワークに接続された時にアップロードするという仕組みだ。このOfficeドキュメントキャッシュは自動で生成され、ユーザーができる調整はキャッシュする日付をどれだけ長くするかだけになっている。このOfficeドキュメントキャッシュは非常に大きなファイサイズになることもあり、筆者がメインに利用しているWindows 8.1+Office 2013では1.45GBもある(ファイルの実体はC:\Users\(ユーザー名)\AppData\Local\Microsoft\Office\15.0\OfficeFileCacheにある)。インストールしただけの状態のWindowsタブレットでは1MBだったので、使い方などにも依存するのだろう。
キャッシュを削除するにはOffice 2013と一緒にインストールされるOfficeアップロードセンターツールの設定から“キャッシュファイルの削除”を選ぶと削除できる。同じ項目の“ファイルをOfficeドキュメントキャッシュに保持する日数”を減らすと若干キャッシュのファイルサイズが小さくなるので、キャッシュファイルのサイズに悩んでいる人は調整してみるといいだろう(ただしあんまり短くすると、同期する前にキャッシュが消えてしまうので注意)。
OneDriveの特典は自動付帯、Skypeの60分無料通話はWebサイトから設定する
インストールさえしてしまえば、Office 365 Soloは、パッケージ版のOffice 2013 Professionalと同じ使い方が可能だ。Office部分に関しては、かつアクティブと非アクティブがオンラインから設定できるだけのOffice 2013 Professionalと言い換えてもいいだろう。
Office 2013 Professionalにはない特典としては、Office 365サービスと呼ばれる特典がついてくることが違いとなる。Office 365サービスの特典については既に何度か触れているが、
(1)OneDriveの容量無制限利用権
(2)タブレット、スマートフォンアプリの利用権
(3)Skype月間60分無料通話権
(4)無償サポート“アンサーデスク”利用権
になる。このうち、前述のoffice.microsoft.comのWebサイトから設定できるのは、(1)と(3)の特典となる。
OneDriveの容量無制限は、ユーザーがOffice 365 SoloとMicrosoftアカウントを紐付ければ自動で付帯される(もちろん事前にそのMicrosoftアカウントでOneDriveが有効になっていれば、だ)。筆者の状況では現状では1TBになっているが、今後徐々に1TBから容量無制限へと切り替えが行なわれていく予定だ。OneDriveのストレージの状況を確認するにはOneDriveにログインして左下に表示される空き容量で確認できるほか、さらにその下にある“ディスク容量を追加する”のリンクを押すと表示される、ストレージの容量部分でOffice 365 サブスクリプションと書かれた項目が追加され、1,024GBと表示されていれば、1TBのストレージが追加されていることを示している。
もう1つのSkypeに関しては手続きが必要で、office.microsoft.comのWebサイトに表示される“Skype世界通話プランのアクティブ化”というリンクを押して、自分のSkypeアカウントにログインして有効化する。この時に、MicrosoftアカウントとSkypeアカウントの共通化を既に行なっているユーザーであれば、Microsoftアカウントを利用してログインすることができる。アクティブ化されると、前述のOfficeのWebサイトで“Skype世界通話プランはアクティブです”と表示され、月60分固定電話に無料で電話することができる。通話先は日本だけでなく、世界60カ国になっており、特に国際電話などをする場合には有効だろう。
ここからはSkypeの使い勝手になるので、Officeとは無関係だが、筆者が使って見た限りでは、国内への電話に関しては、番号通知ができないのが弱点だと感じた。既に日本では番号通知が一般的になっており、番号通知がない通話に関しては取ってもらえないことが多い(特に個人宅への電話や携帯電話の通話では)。現状Skypeでは国内の電話番号にかける時は番号通知ができないようになっており、ここが実用上問題になる可能性はある(海外では発信者番号に自分の携帯電話番号を割り当てる仕組みとなる“発信者番号通知”が導入されているのだが、日本の携帯電話番号はその対象になっていない……)。
課題はあるが、実際60分無料で電話できるというのは使い方によっては便利だろう。筆者は仕事の関係で米国の番号などにかけることがあり、話が長くなればそれが結構な額になってしまうこともある。しかし、Skypeを使えばそれが回避できるため、そうした用途には使っている。そうした使い方ができるのなら、この60分無料というのは便利だろう。それだけに発信者番号通知機能などの日本での実現をぜひとも実現して欲しいものだ。
今回は、Office 365 Soloの導入と、そしてOffice 365 Solo固有の機能について見てきた。次回は、OneDriveなどのクラウドストレージとOffice 365 Soloを組み合わせて利用するとどのような便利な使い方ができるのかを具体例と共にチェックしていきたい。