1カ月集中講座
世界一やさしいiOS版GarageBand講座【第3回】
(2015/7/16 06:00)
10. セクションD: ストリングスをさらに盛り上げる/ドラムの編集
テクニック: Smart StringsのAutoplay演奏、Drumsのリージョン編集
難易度: 低
セクションDは、曲中もっとも盛り上がる場面だ。さっそくセクションDを追加しよう。画面上部のルーラーの右端にある「+」をタップしてソングセクションダイアログを開いて、セクションCを選択し、「複製」をタップする。セクションDはこれまでのセクションの2倍の長さである16小節にしたい。セクションDの右側にある「i」をタップして、「マニュアル」の小節数を16に設定したら、「戻る」をタップし、ソングセクションダイアログを閉じる。
ストリングスのAutoplayパターンを、さらにドラマチックなものに変えてみよう。まずは既に録音されているリージョンを削除する。ストリングスのリージョンを2回タップして、「削除」を選択しよう。
次にInstrumentアイコンをタップしてSmart Strings画面に移る。画面上部の楽器を全てオンにして、Autoplayを4に変更する。Pop音色のAutoplay4は、勇ましく迫力のあるストリングスフレーズだ。セクションDは16小節あるが、全て録音しなくても、トラック表示の編集で繰り返しフレーズを延長できる。ここでは4小節だけ録音してみよう。画面上部の「巻き戻し」、「録音」をタップし、1小節ごとにDm、B♭、F、Amと1本指でタップし、5小節目の1拍目で「停止」をタップして録音を止める。
トラック表示に移動して、今録音したストリングスのリージョンをタップして選択する。くり返したいのは初めの4小節なのだが、もしリージョンが5小節目(ルーラーの小節番号では29小節目)以降に突入している場合は、リージョンの右端をドラッグして4小節の長さ、すなわち28小節目の終わりまでの長さに調節する。
もう一度ストリングスのリージョンをタップして、「ループ」を選択する。ループは、選択したリージョンを、現在表示されているセクションの最後までくり返す機能だ。リージョンの右端に「↻」が表示されていることを確認しよう。
続いてドラムトラックを編集する。ドラムのフレーズは基本的に変更しないが、セクションCの最後に入れたフィルインを除きたい。すなわち、はじめの4小節をループすればよい。ドラムのリージョンをタップして選択すると、リージョンの右端に“丸い矢印”が表示されている。これはもともと8小節のセクションCを複製して16小節のセクションDを作成した際、自動的にセクションCのリージョンがループ化されて16小節に延長されたためだ。リージョン右端のループの矢印を左にドラッグして短縮してみよう。
すると、8小節より短くならないことに気付くだろう。このリージョンを4小節まで短縮するには、まずはループを解除する必要がある。リージョンをタップして「トリム」を選択すると、リージョン右端のループの矢印が「III」に変わり、ループが解除されたことを確認する。続いてリージョン右端を左側にドラッグし、4小節分の長さまで短縮する。これでリージョンをタップして「ループ」を選択すると、フィルインのないフレーズがセクションDの最後まで繰り返されるようになる。
11. エレキギターソロで魅せる
テクニック: Scale機能を利用したSmart GuitarのNotes演奏
難易度: 高
さて、セクションDの見せ場となるのがエレキギターのソロだ。ギターを弾いた経験のない人にとっては、かなりレベルの高い作業になるが、Smart Guitarのスケール機能を使うことによって、比較的簡単に「それらしく」演奏することができるのがGarageBandの良いところだ。まずはエレキギタートラックを追加しよう。トラック表示画面左下の「+」をタップして、Smart Guitarを選択する。
Smart Guitar画面左上のギターの絵が表示された「Acoustic」をタップして、「Hard Rock」を選択する。Hard Rockは歪みの効いたエレキギターサウンドだ。
Hard Rockと表示されたエレキギターの絵の右側には、2つのエフェクターがあり、エレキギターの音色に味付けすることができる。左側のVintage Driveは歪みをさらに増幅させて、ギターの音をより太くする。右側のRobo Flangerは、元の音にわずかに遅延させた音を重ねることによって、独特のうねりを加える。ここでは左側のVintage Driveをタップして有効化させる(エフェクターのLEDが点灯する)。画面下部の弦をタップしてみると、かなりエッジの効いた存在感のあるエレキギターの音色になっていることが分かるだろう。
このトラックでは、コードではなく自由にメロディを奏でたいので、右上にあるスイッチをタップして「NOTES」を選択する。画面下部のコードストリップが、ギターのネックに変わる。この状態で弦をタップすると、実際のギターと同じポジションで単音や和音を演奏できる。
ここではギターネックの右上にある「Scale」(スケール)をタップして、「マイナーペンタトニック」を選択する。スケールは「音階」とも呼ばれ、続けて弾くと響きがいい音程の集まりを意味する。Scale機能を使えば、その曲で鳴らしたい音程のみが表示されるので、音を外すということが起こりにくくなるわけだ。ここではマイナーペンタトニックスケールを選択したが、ほかにもさまざまなスケールがあるので、曲を再生しながら適当に弦をタップして曲の響きに合うものを選べばよい。
スケールを選択すると、6本の弦の下に長方形のブロックが表示され、各ブロックがそれぞれスケールを構成する音程に対応している。明るい色で表示されているブロックはルート音で、この曲はDマイナーコードなので、D(レ)になる。Dマイナーペンタトニックスケールは、D(レ)、F(ファ)、G(ソ)、A(ラ)で構成されており、ロック風の響きがするスケールだ。下の画像は、この曲のギターソロで弾くブロックの音名を示している。
弦を押したまま上または下にドラッグすると、最大で1音分なめらかに音を高くすることができる。これは「ベンド」または「チョーキング」と呼ばれ、いかにもエレキギターらしい表現を再現することができる。また細かいベンドをくり返すことによって、ビブラートの効果を出すこともできる。なお、ここでは細かいフレーズもあり、よりリアルなギターソロを再現するため、クオンタイズは使用しない。したがって録音の際にはリズムに気をつけながら演奏する必要がある。
録音ボタンをタップし、以下の動画のようにギターソロを録音する。楽譜が読める人は、下記の譜面を参考にしてほしい。上向きの矢印は1音分(最大限)のベンド、下向きの矢印はベンドした音を元に戻すことをを示している。
なお、ここで弾いているフレーズは一例だが、スケール機能のおかげで適当に弾いても、割とそれなりのギターソロが演奏できるので、自分のオリジナルのギターソロを作ってみるのも楽しい。また、マイナーペンタトニック以外のスケールを使ったり、Scale機能を使わずに演奏してみてもいい。曲を再生しながら色々試してみて、気に入ったフレーズが見つかったら録音するという方法も、音楽制作の楽しさの1つだ。
12. セクションE・F: エンディングで曲を締めくくる
テクニック: Smart PianoのAutoplay演奏、Scale機能を利用したSmart StringsのNotes演奏、Drumsの演奏、バイオリンのリージョン編集
難易度: 中
最後にエンディングを作る。エンディングは8小節のセクションEと、2小節のセクションFからなる。まずはセクションEを追加しよう。画面で右上の「+」をタップしてソングセクションダイアログを開く。セクションEは、セクションDまでに盛り上がった曲を、落ち着いた雰囲気に戻したいので、セクションBを選択して「複製」をタップしたら、ソングセクションダイアログを閉じる。これでセクションBをそのままコピーしたセクションEが追加される。
エンディングはイントロよりもさらに落ち着かせたい。そこでまずはピアノ・アコースティックギター・ドラムトラックに録音されているリージョンを削除する。トラック表示画面で、各リージョンを2回タップして現れるメニューから「削除」を選択する。
次にエンディングのピアノを録音する。左側のピアノのアイコンをタップして、ピアノトラックを選択し、画面上部のInstrumentアイコンをタップしてSmart Keyboard画面に入る。ここではAutoplayの4を選択する。エンディングでは控えめなピアノを重ねたいので、低音部のみ録音する。低音部はコードストリップの下部のセグメントだ。録音ボタンをタップして、1小節ごとにDm、B♭、F、Amの下部セグメントをタップし、それを2回繰り返す。
ピアノが録音できたら、次はドラムを録音する。エンディングのドラムはリズムを刻むのではなく、効果音程度に控えたい。トラック表示画面に戻り、左側のドラムのアイコンをタップしてドラムトラックを選択したら、InstrumentアイコンをタップしてDrums画面に入る。セクションDの盛り上がりは、実際にはセクションEの1音目で終わるので、ここには派手なクラッシュシンバル(左上のシンバル)を入れる。そしてセクションEの5小節目(上部ルーラーに表示される小節番号で45)の1拍目にライド(右上のシンバル)を鳴らす。
さらにエンディングのバイオリンのメロディを追加してみよう。トラック表示画面に戻り、左下の「+」をタップしてSmart Stringsを追加する。音色はデフォルトのCinematic。コード演奏やAutoplayによらないメロディを奏でるので、右上のNotesをタップし、中央上部の楽器をスワイプしてViolinを選択する。中央右側のScaleをタップして、「マイナー」を選択する。
楽曲のキーがDマイナーなので、バイオリンネックの明るく表示されたブロックはD(レ)である。マイナースケールは、D(レ)、E(ミ)、F(ファ)、G(ソ)、A(ラ)、B♭(シ♭)、C(ド)から構成される、暗い響きのスケールだ。下の画像は、バイオリンソロで弾くブロックの音名を示している。
右上のフェーダーアイコンをタップしてクオンタイズを選択し、「1/4 - 音符」に設定する。録音ボタンをタップして、以下の動画のように録音する。楽譜が読める人は下記の譜面を参考にしてほしい。
最後の2小節は、だんだん音が小さくなるようにしたい。譜面上では「>」で表され、「デクレシェンド」と呼ばれる。これはセクションCのドラムのフィルインの時と同様、リージョン編集のベロシティ機能で調整できる。トラック表示アイコンをタップし、いま録音したバイオリンのリージョンを2回タップ、「編集」を選択してリージョン編集に入る。47小節目(最後から2小節目)の1音目の音をタップして、「Velocity」を選択する。表示されたフェーダーを60%くらいに合わせる。
なお、ベロシティ調整フェーダーを閉じずに次の音をタップすると、そのままVelocity調整を行なうことができる。ここでも60%くらいに合わせる。残りの2音もそれぞれ40、20%くらいに合わせたら、右上の「完了」をタップしてリージョン編集を終了する。
最後に、セクションFを追加する。画面右上の「+」をタップして、「追加」を選択する。「追加」は何も録音されていないセクションが新たに加わる。セクションFの右側にある「i」をタップして、「マニュアル」の小節数を2に設定したら、「戻る」をタップする。セクションFは最後の1音のみのセクションだが、最後に余韻を残すために、1小節ではなく2小節に設定した。セクションFで最後の1音を鳴らすのは、ストリングス、ベースそしてバイオリンである。
まずはバイオリンから録音しよう。Instrumentアイコンをタップして、Smart Strings画面に移る。上記のスケール画像の左下にあるD(レ)の音を、ピッチカートで演奏する。ピッチカートを鳴らすには、バイオリンネックの左端にある黄色いアーティキュレーションボタンを押しながら弦をタップする。録音ボタンを押して、セクションFの1拍目に合わせてDの音を一回タップし、停止ボタンを押す。
続いてセクションFのストリングスを録音しよう。画面上部のトラック表示アイコンをタップし、左側一番上のストリングストラックを選択したら、画面上部Instrumentアイコンをタップして、Smart Strings画面に入る。セクションFはできるだけ落ち着かせたいので、中央上部で、「Cellos」を残してほかの全ての楽器を無効にする。AutoplayをOffにして、録音ボタンを押し、1拍目に合わせてDmの最下部セグメントをタップ(ピッチカート)し、停止ボタンを押す。
セクションFの最後の1音は、あっけなく終わりたい。ベロシティ調整で、ストリングスの音を弱くしよう。トラック表示に戻り、今録音したストリングスのリージョンを2回タップして、「編集」を選択する。録音された音をタップし、「Velocity」を選択したら、フェーダーを30%くらいに調整する。右上の「完了」をタップしてリージョン編集画面を閉じる。
最後にベースを録音する。トラック表示画面の左側、上から2番目のベーストラックを選択したら、画面上部のInstrumentアイコンをタップして、Smart Strings画面に入る。演奏するのは、スタッカートのD(レ)。下から2番目の弦の左から2個目のポジションマークの位置を、ネック左端のアーティキュレーションボタンを押しながらタップする。録音ボタンを押して、1拍目に合わせて弦をタップし、停止ボタンを押す。
以上で全てのトラックの録音は完成だ。右上の「+」をタップしてソングセクションダイアログを開き、「全てのセクション」を選択し、楽曲全体を表示する。画面上部中央右のメトロノームのアイコンをタップして、メトロノームを無効にしたら、楽曲全体を通して聴いてみよう。
またこの段階で、気に入らないところがあったら録音しなおしたり、リージョン編集で調整してみよう。1曲を通して録音し終わった時は、なんとも感慨深いものがあるものだ。納得がいくまでやり直してみるのもよいだろう。
次回はいよいよ最終回。各トラックの音量や左右の振り分けを調整して楽曲全体のバランスを整えるミキシング作業、さらに完成作品を書き出すところまで紹介する。