.biz
パナソニック、世界初のPro WiDi対応プロジェクター
~インテルとの協業で新たなビジネスモバイル市場に挑む
(2015/4/3 06:00)
パナソニックは、世界で初めて、Intelの「Pro WiDi」に対応したポータブル液晶プロジェクター「PT-VW350シリーズ」を、2015年5月から発売すると発表した。Pro WiDiに対応したPCなどのデバイスから、文書や静止画、動画、Webサイトのコンテンツなどをワイヤレスで転送。スクリーンに投写できる。
パナソニックAVCネットワーク社常務ビジネスモバイル事業担当ITプロダクツ事業部・原田秀昭事業部長は、「ポータブル液晶プロジェクターに、Pro WiDiを搭載したことで、ビジネスモバイルの新たなフェーズを作りたいと考えている」と語る。
パナソニックは、「Let'snote」を始めとするPC事業において、インテルと協業。技術開発でも強いパートナーシップを結んでいる。「パナソニックは、インテルのA Better Way to Workに賛同し、PCだけでなく、さまざまなビジネスユース機器で、自由で、効率的な働き方を実現する手伝いをしていきたいと考える。今回の取り組みは、PCとは異なる新たなビジネスモバイルへの挑戦になる」とする。
一方で、パナソニックは、これまでにもビジネス向けプロジェクターにおいて、いち早くワイヤレス対応を図ってきた経緯がある。2001年には、世界初のワイヤレス内蔵プロジェクターを発売し、無線LANを使って、PCとプロジェクターを接続。独自アプリケーションである「Panasonic APPLICATION」を活用して、WindowsやiOS、Androidを搭載したデバイスと接続し、プロジェクターを通じて投写するといったソリューションを提案してきた。
2013年には世界初となるMiracast対応プロジェクターを発売。今回のPro WiDiも、他社に先駆けてパナソニックが対応したことになる。
「新たなワイヤレス環境にいち早く対応していくのは、パナソニックのポータブルプロジェクターの基本的姿勢と言えるもの。これまでの独自アプリケーションでは対応していなかった動画の投写も可能になり、より実用途に適した使い方ができるようになる。企業に向けた新たなワイヤレス利用提案ができる」(パナソニックAVCネットワークス社ビジュアルシステム事業部マーケティンググループプロダクトマネジメントチーム・藤川絵利子主事)とする。
同社では、Pro WiDi対応とともに、独自アプリケーションへの対応も継続。「Pro WiDiでは対応していないiOS搭載デバイスからの利用、あるいは、最大16分割したマルチ表示など、Panasonic APPLICATIONならではの特徴を活かした提案も継続的に行なっていく」(パナソニック AVCネットワークス社ビジュアルシステム事業部要素設計グループソフト設計チーム・橋本達也氏)。Panasonic APPLICATIONでは、1台のPCから複数のプロジェクターへの一斉ワイヤレス送信といった使い方も可能だという。
会議管理モードでさまざまな会議に対応
今回、発売するのは、XGA解像度で、輝度4,500lmの「PT-VX425NJ」と、WXGA解像度で、輝度4,000lmの「PT-VW355NJ」の2モデル。型番の最後に「J」が付くものが日本向け製品であり、基本性能は同じだが、各国ごとに製品を用意。グローバルに展開することになる。日本での販売価格は、25万円を切る設定としており、基本的には単体でのビジネスではなくシステム商談として展開することになる。
「インテルのPro WiDiは、ビジネス用途のために作られた技術であり、ワイヤレス環境でも安定した接続性と、手元のPC画面を安全に共有できる機能を搭載している。会議管理モードにより、さまざまな会議に最適化した使い方も可能になる」(パナソニック・藤川主事)とする。
Pro WiDiで提供される会議管理モードでは、1人のみが発表をする際には、プロジェクターに接続するデバイスは1台に限定。接続割り込みも防止する。発表者が自由に交代しながら会議を行なう場合には、最大10台までのデバイスを接続して、会議に参加する全ての人が、自らの意思でプロジェクターに自分の資料を表示できる。これはグループディスカッションなどには最適な使い方だ。
会議の主催者や進行役が、発表者を管理する機能も搭載。最大10台までのデバイスを接続し、管理された下でコンテンツが投写されることになる。研修会や授業などに適した利用方法だと言う。
「モバイル液晶プロジェクターは、主に小規模の会議などで利用されるケースが多い製品。小規模の会議こそ、発表者が変わることが多く、モバイル液晶プロジェクターと、Pro WiDiの機能の組み合わせは最適だと言える。次々と発表者が変わる場合にも、席を変わったり、ケーブルを差し替えたりといった手間がなくなるメリットもある」(藤川主事)。
プライバシー保護にも配慮しており、PCなどのデバイスを新たにプロジェクターに接続する際には、PINコードを利用。接続するプロジェクターを指定し、隣接する会議室に誤って接続がされないようにするといった配慮も行なわれている。
ハードウェア面では、プロジェクター本体内部の温度設計を最適化したことにより、明るさと静音性を両立。輝度4,000lmとしては、クラス最小となる幅352mm、高さ98mm、奥行279mm、クラス最軽量となる約3.4kgのコンパクトサイズを実現。さらに、新設計のアイリスにより、12,000:1という高コントラストを実現したのも大きな特徴だ。
「アイリスを構成する『羽』と呼ぶ部分の形状を変え、暗い映像の場合には光量をより少なくするなど、光量の効率的な使用により、クリアで鮮明な映像投写を実現した」(パナソニック AVCネットワークス社ビジュアルシステム事業部PJ商品技術グループPJ第一商品設計チームの堤康一主幹技師)と言う。
ランプ交換サイクルは通常使用で5,000時間、エコモード時は7,000時間の寿命を持ち、フィルター交換サイクルは7,000時間と、ビジネスユースにも耐える性能を実現。メンテナンスコストの削減が可能。「ランプの電力使用を柔軟に変更する独自技術によって、エコモードの寿命を伸ばすことができた」(堤主幹技師)と言う。
さらに、「7,000時間というのは、1日8時間使用しても、約4年間、ランプとフィルターの交換が不要になる寿命。一般的に、企業における液晶プロジェクターのリプレース期間は4~5年であり、メンテナンスフリーで次の製品に買い換えられる」(藤川主事)とする。
そのほか、前面に配置された小型カメラを利用することで、投写する環境を判断。カメラを活用したフォーカスアシストや、壁の色に合わせた色補正、斜めから投写した際の台形補正などを自動的に行なうイージーセッティング機能を搭載しているほか、1.6倍ズームレンズによる幅広い投写距離への対応、周囲の明るさに合わせて映像を最適化するデイライトビューベーシック機能も搭載し、設置性を高めている。
上位モデルやフラットパネルもPro WiDi対応へ
同社では、ポータブル液晶プロジェクターとして、4,800~5,500lmまでの高輝度を実現している上位モデルがあるが、今後、これら製品のモデルチェンジに合わせて、Pro WiDi機能を搭載する方向で検討を進めているほか、液晶ディスプレイによるフラットパネル製品へのPro WiDi搭載も検討していくことになるという。
「液晶プロジェクターに搭載した技術と同じものを、フラットパネルにも搭載していくのがパナソニックの業務用映像機器の基本姿勢になる」(藤川主事)としており、今後、製品化に向けた動きが開始されることになりそうだ。
さらに、液晶プロジェクターへの内蔵だけでなく、アクセスポイントとなるPro WiDiアダプタの製品化に向けても、市場の反応を見て、製品化を検討していくとしている。