AMDの新アーキテクチャGPU「Radeon HD 7970」をベンチマーク


 AMDは12月23日、新たなアーキテクチャを採用したハイエンドGPU「Radeon HD 7970」を発表した。Radeon HD 7000シリーズのハイエンドモデルであるRadeon HD 7970は、昨年(2010年)12月に登場したRadeon HD 6970の後継製品となる。今回はAMDより借用したRadeon HD 7970搭載のビデオカードを使い、そのグラフィックス性能をベンチマークで探ってみた。

●新アーキテクチャ「Graphics Core Next」を採用

 Radeon HD 7970(以下、HD 7970)は、「Radeon HD 7000シリーズ(開発コードネーム:Southern Islands)」初の製品として投入されたGPUで、Southern Islandsシリーズのハイエンド向けの「Tahiti」コアを採用する。

 「Tahiti」コアは、GPUとして初めて28nmプロセスで製造されたGPUコアで、アーキテクチャにはグラフィックス性能とコンピューティング性能の両方を強化した、新設計の「Graphics Core Next」を採用する。また、世界初のDirectX 11.1対応GPUであり、インターフェイスにPCI Express Gen 3.0を採用した初のGPUでもある。

【表1】Radeon HD 7970の主な仕様

Radeon HD 7970Radeon HD 6970
アーキテクチャGraphics Core NextVLIW4
プロセスルール28nm40nm
コアクロック925MHz880MHz
SP2,048基1,536基
テクスチャユニット128基96基
メモリ容量3GB GDDR52GB GDDR5
メモリクロック(データレート)5.5GHz5.5GHz
メモリインターフェイス384bit256bit
ROPユニット32基
最大消費電力250W250W

 GPUコアは、925MHzで動作し、2,048基のStream Processorと32基のROPユニット、128基のテクスチャユニットを備える。メモリバス幅は従来の「Radeon HD 6900シリーズ」の256bitから384bitに拡張され、5.5GHz動作のGDDR5メモリと接続される。メモリ容量は3GB。

 新アーキテクチャ「Graphics Core Next」の詳細については、関連記事を参照して欲しい。

Radeon HD 7970の概要

 最大消費電力はRadeon HD 6970(以下、HD 6970)と同じ250Wで、Radeon HD 6000シリーズで採用された電力管理技術の「AMD PowerTune Technology」に加え、アイドル時の消費電力を大幅にカットする省電力技術「AMD ZeroCore Power Technology」をサポートした。

 HD 7970では、「AMD ZeroCore Power Technology」の採用により、GPUがアイドル状態に入った際の消費電力を3W以下に抑えるとしている。また、複数のHD 7970によるCrossFire時には、アイドル動作中にプライマリGPU以外の消費電力をカットしファンの回転も停止することで、消費電力とファンノイズをカットする。

「AMD ZeroCore Power Technology」の採用によりアイドル時の消費電力を大幅にカットした

●第6世代ベイパーチャンバー採用ヒートシンクを搭載

 今回のテストでは、AMDから借用したリファレンスデザインを採用のHD 7970を使用する。

Radeon HD 7970のリファレンスカードRadeon HD 7970リファレンスカードの特徴

 リファレンスデザイン準拠のHD 7970は、ヒートシンクには第6世代のベイパーチャンバーを採用した外排気方式のクーラーを搭載する。ボードサイズはブラケット部からクーラーの端までで約277mmで、電源端子は8ピンと6ピンをそれぞれ1つ備える。

 ブラケット部のディスプレイ出力には、DVI×1、HDMI×1、mini DisplayPort×2を備える。CrossFireX端子の脇には、HD 6970で採用されたBIOS切り替えスイッチを備える。

ブラケット部にはDVIとHDMIを各1系統と、2系統のmini DisplayPortを備える電源端子は8ピン+6ピン構成となっているCrossFireXコネクタ付近にはHD 6970でも採用されていたBIOS切り替えスイッチを備える

●HD 6970、GTX 580との性能比較

 それではベンチマークテストの結果紹介に移りたい。今回はHD 7970の比較対処として、HD 6970搭載ビデオカード「GIGABYTE GV-R697OC2-2GD」と、GeForce GTX 580(GTX 580)搭載ビデオカード「ZOTAC ZT-50101-10P」を用意した。

HD 6970搭載ビデオカード、GIGABYTE「GV-R697OC2-2GD」GTX 580搭載ビデオカード、ZOTAC「ZT-50101-10P」

 なお、HD 6970を搭載する「GIGABYTE GV-R697OC2-2GD」については、GPUクロックを880MHzから920MHzにオーバークロックしたGIGABYTEオリジナル仕様となっている。リファレンスデザインのHD 6970とは性能と消費電力が異なる点に注意していただきたい。

【表2】テスト環境
GPURadeon HD 7970RadeonHD 6970 OCGeForceGTX 580
CPUIntel Core i7-2600K
マザーボードASUS P8P67 Rev3.0 (BIOS:2001)
メモリDDR3-1333 4GB×2 
(9-9-9-24、1.5V)
ストレージWestern Digital WD5000AAKX
電源Silver Stone SST-ST75F-P
グラフィックスドライバ8.921.2-111219a-130573E-ATIGeForce 290.53 Driver BETA
OSWindows 7 Ultimate 64bit SP1

●DirectX 11対応ベンチマークテスト

 まずはDirectX 11対応ベンチマークテストの結果から紹介する。実施したテストは「3DMark 11」(グラフ1、2、3)、「Unigine Heaven Benchmark 2.5」(グラフ4)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ5、6)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ7)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ8、9)、「Tom Clancy's H.A.W.X 2 Benchmark」(グラフ10)だ。

【グラフ1】3DMark 11 Build 1.0.3
【グラフ2】3DMark 11 Build 1.0.3(Graphics Score)
【グラフ3】3DMark 11 Build 1.0.3(Combined Score)
【グラフ4】Unigine Heaven Benchmark 2.5
【グラフ5】Stone Giant DX11 Benchmark(1,280×720ドット)
【グラフ6】Stone Giant DX11 Benchmark(1,920×1,080ドット)
【グラフ7】Lost Planet 2 Benchmark(DX11・テストタイプB)
【グラフ8】Alien vs. Predator DX11 Benchmark(1,280×720ドット)
【グラフ9】Alien vs. Predator DX11 Benchmark(1,920×1,080ドット)
【グラフ10】Tom Clancy's H.A.W.X 2 Benchmark

 ベンチマークの結果を見ると、概ねHD 7970が優勢な結果となった。その中で、HD 6970のスコアに注目して比較すると、「Stone Giant」や「Unigine Heaven」など、テッセレーションを使用するテストでパフォーマンスが向上していることが確認できる。「Stone Giant」ではテッセレーションの使用レベルをExtremeに設定した際、GTX 580に逆転されているが、スコアの低下率はHD 6970より抑えられている。

 GeForceへの最適化が進んでいる「Tom Clancy's H.A.W.X 2 Benchmark」では、GTX 580の後塵を拝する結果となったが、同様に最適化されている「Lost Planet 2」ではGTX 580を上回る。新アーキテクチャ採用の新製品ということで、ドライバが未成熟であることを察すれば、この結果は上々と言えるだろう。

●DirectX 9/10対応ベンチマークテスト

 続いて、DirectX 9世代とDirectX 10世代のベンチマークテストの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ11、12)、「BIOHAZARD 5 Benchmark DX10」(グラフ13)、「3DMark06 Build 1.2.0」(グラフ14、15)、「ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク」(グラフ16)、「MHFベンチマーク 【大討伐】」(グラフ17)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ18)だ。

 テスト結果では、HD 7970が、HD 6970やGTX 580より概ね優勢な結果となっているが、DirectX 11の結果に比べると、HD 6970やGTX 580に対する優位性がやや薄い印象を受ける。

 DirectX 9やDirectX 10世代のベンチマークテストには、DirectX 11世代のベンチマークテストに比べ、比較的描画負荷が軽いテストが多い。標準設定の「3DMark06」や「ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク」など、CPU性能がボトルネックとなり、スコア差が小さくなったと見られるテスト結果も見受けられる。DirectX 11世代のベンチマークテストに比べてスコア差が控えめなのは、単にHD 7970がDirectX 9/10を苦手としているからというわけではないだろう。

【グラフ11】3DMark Vantage Build 1.1.0
【グラフ12】3DMark Vantage Build 1.1.0(Graphics Score)
【グラフ13】BIOHAZARD 5 Benchmark(DX10・パフォーマンステストB)
【グラフ14】3DMark06 Build 1.2.0
【グラフ15】3DMark06 Build 1.2.0 高負荷設定(1,920×1,080ドット、4x AA、16x AF)
【グラフ16】ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク
【グラフ17】MHFベンチマーク 【大討伐】
【グラフ18】Lost Planet 2 Benchmark(DX9・テストタイプB)

●消費電力の比較

 最後に消費電力の測定結果を紹介する。比較結果を参照する前に、HD 6970については、オーバークロック仕様のオリジナルモデルであり、リファレンス版とは仕様が異なる点を改めてご注意いただきたい。

【グラフ19】システム全体の消費電力

 アイドル時の消費電力は「AMD ZeroCore Power Technology」の効果もあってか、比較製品中最も低い76Wを記録した。これは、HD 6970より25W、GTX 580より20Wも低い数値で、ハイエンドGPUのアイドル時消費電力としては極めて優秀な数値と言える。

 また、各負荷時の消費電力についても比較製品中最も低い数値を記録した。この結果から、28nmプロセスの採用したHD 7970が、従来のハイエンドGPUと同等以下の消費電力に抑えながら性能向上を果たしていることがわかる。

●グラフィックス性能とワットパフォーマンスがともに向上した新世代GPU

 以上のテスト結果が示すHD 7970のパフォーマンスは、HD 6970からの進化を確実に感じることができるものだ。新アーキテクチャの「Graphics Core Next」と28nmプロセスの採用が、グラフィックス性能の向上と消費電力の低減の両立を可能としており、今回のテスト結果はまさに新世代のGPUに相応しい結果と言えるだろう。

 既存のハイエンドGPUであるHD 6970とGTX 580を上回る性能を持つHD7970は、シングルGPU製品として現行最速のGPUとなる。現時点で価格が明かされていない点も気がかりではあるが、パフォーマンスを求めるユーザーにとって魅力的な製品なだけに、1月9日の発売日には予定通り製品が安定供給されることを期待したい。

(2011年 12月 27日)

[Reported by 三門 修太]