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アサシンクリードIIIとFar Cry 3を快適にプレイできるGPUを選ぶ

 2012年の年末に、Ubisoftから「アサシンクリードIII」と「Far Cry 3」という2大ビッグタイトルがリリースされた。比較的長い冬休みの時間を利用してプレイするユーザーも多いだろう。いずれも最新のグラフィックス技術が利用されているため、GPU負荷が高いタイトルとしても知られている。今回はハイミドル以上のGPU 4モデルを用いて、快適に動く環境を考えてみたい。

今回チョイスした4モデルを紹介

 ハイエンドクラスは、GeForce GTX 680を搭載したASUSの「GTX680-DC2O-2GD5」と、Radeon HD 7970を搭載した同じくASUSの「HD7970-DC2T-3GD5」を選択した。前者の実売は安いところで実売4万円前後から、一方後者は実売33,000円前後から売られている。

 GTX680-DC2O-2GD5は、コアクロックを定格の1,006MHzから1,019MHzに、GPU Boost時のクロックを定格の1,058MHzから1,084MHzにわずかにオーバークロックしたモデルとなる。独自の8+2フェーズの「DIGI+ VRM」や、オーバークロック耐性を高める高品質部品「Super Alloy Power」電源回路、3スロット占有の大型ファン「DirectCU II」などを特徴としている。

GTX680-DC2O-2GD5
基板裏にバックプレート装備

 一方HD7970-DC2T-3GD5はコアクロックを定格の925MHzから1,000MHzにオーバークロックした、Radeon HD 7970搭載モデルとしては上位に位置づけられる製品。今こそRadeon HD 7970 GHz Editionを搭載したフラグシップの「MATRIX」シリーズが発売されたため、本製品は1ランク下という位置づけになってしまったが、3万円台という価格で大きなアドバンテージを持っている。DIGI+ VRMやSuper Alloy Power、DirectCU IIなどの装備は、GTX680-DC2O-2GD5と共通だ。

HD7970-DC2T-3GD5
こちらもバックプレートを装備する

 GTX680-DC2O-2GD5とHD7970-DC2T-3GD5だけが独自に備えている機能としては「VGA Hotwire」が挙げられる。これはハンダ付けが必要になるものの、ASUS製のゲーミング向けブランド「R.O.G.」の一部マザーボードシリーズとワイヤーで接続することで、コア/メモリ/PLL電圧をUEFI BIOS上などから読み取り、調節する機能だ。

パッと見ただけでは見分けがつかないGTX680-DC2O-2GD5とHD7970-DC2T-3GD5
GTX680-DC2O-2GD5のVGA Hotwire
HD7970-DC2T-3GD5のVGA Hotwire

 ハイミドルクラスからは、GeForce GTX 660を搭載したZOTACの「ZT-60901-10M」と、Radeon HD 7870 GHz Editionを搭載した玄人志向の「RH7870-E2GHD/DP」を選出した。前者は実売25,000円前後、後者実売24,000円前後と大差はない。

 ZT-60901-10Mは、コアクロックを定格の980MHzから993MHzに、GPU Boostクロックを定格の1,033MHzから1,059MHzにわずかにオーバークロックしたモデルである。特徴はデュアルファンで騒音を抑えたという「Dual Silencer」ファンと、全長191.3mmの短いカードサイズ、そして今回テストした中で唯一PCI Express用6ピン電源1個だけで動作する点などである。

ZT-60901-10M
基板が短く、取り回しやすい

 一方のRH7870-E2GHD/DPはコア/メモリクロックともにリファレンス仕様に素直に準じたモデルとなる。しかし基板は約250mmあるリファレンスから短くなっており、213mmとされている。しかしながらPCI Express用6ピン電源を2本消費する上、スロットに対し水平に出すタイプである。それでもリファレンスよりは短く済むと思うが、Mini-ITXなどスペースの限られたフォームファクタでは注意が必要だ。

RH7870-E2GHD/DP
リファレンスより短い基板を採用

 性能面でチョイスするとこのようなラインナップとなったが、他画面出力という観点からするとEyefinity技術を持っているRadeon系が有利で、7970は6画面、7870でも5画面の同時出力が可能だ(このうちDVI 1ポートはSingle Linkのみ対応となる)。このほかの特徴を下表にまとめたので参照されたい。

【表1】製品特徴
カードGTX680-DC2O-2GD5HD7970-DC2T-3GD5ZT-60901-10MRH7870-E2GHD/DP
GPUGeForce GTX 680Radeon HD 7970GeForce GTX 660Radeon HD 7870
コアクロック1,019MHz1,000MHz993MHz1,000MHz
Boostクロック1,084MHz-1,059MHz-
メモリクロック6,008MHz5,600MHz6,008MHz4,800MHz
バス幅256bit384bit192bit256bit
バンド幅153.8GB/sec215GB/sec115.5GB/sec122.9GB/sec
シェーダ数1,5362,0489601,280
DVI2222
HDMI1-11
DisplayPort14-1
Mini DisplayPort--2-
PCI Express用電源6ピン×1+8ピン×18ピン×26ピン×16ピン×2

3DMark 11で基礎体力調べ

 それではまず3DMark 11で基礎3D性能を見ていく。テスト環境は下表の通りで、GeForce系はGeForce Release 310.70 beta、RadeonはCatalyst 12.11 beta11で揃えてある。比較用に1世代前のGeForce GTX 580(Galaxy GeForce GTX 580 MDT:コア840MHzオーバークロック)の結果を加えてある。

【表2】テスト環境
GeForceRadeon
CPUCore i7-3770K
メモリDDR3-2133 8GB×2
マザーボードASRock Z77 OC Formula
ストレージPlextor M5P 512GB
OSWindows 7 Ultimate(64bit)
ドライバ310.70 beta12.11 beta11

 まずはハイエンドから見ていく。約15%の3D性能向上が謳われているCatalyst 12.11 betaであるが、HD7970-DC2T-3GD5は確かにスコアを3,000台の大台に載せ、GTX680-DC2O-2GD5といい勝負ができるまでにスコアを伸ばしている(以前のExtreme Scoreは2,700~2,800前後だった)。しかしGTX680-DC2O-2GD5が「チョイオーバークロックモデル」であるのに対し、HD7970-DC2T-3GD5は一応最上位モデルである。これがRadeon HD 7970 GHz EditionのMATRIXで、さらにオーバークロックすれば追いつく可能性も無きにしろあらずだが、追い越すにはかなりのクロックが必要な雰囲気である。

 一方ハイミドルのZT-60901-10MとRH7870-E2GHD/DPはほぼ誤差程度のスコア差となった。RH7870-E2GHD/DPもCatalyst 12.11 betaの性能向上の恩恵が見えるわけだが、価格面でもいい勝負をしているので、3DMark 11の結果だけではどっちを選ぶか迷ってしまうところだ。ZT-60901-10MはPCI Express補助電源が1本だけで済むメリットが、RH7870-E2GHD/DPは5画面出力できるメリットがあるので、ここも用途にあわせてチョイスすることになるだろう。

 またZT-60901-10MにしろRH7870-E2GHD/DPにしろ、旧世代のGeForce GTX 580相当の性能があるということもトピックの1つである。GeForce GTX 580を現在使っていて、その性能に不満がないのであれば、わざわざZT-60901-10MやRH7870-E2GHD/DPに買い換えるほどのメリットが見いだせないとも言えるが、既報の通り、新世代GPUは消費電力や取り回しやすさなどの面でかなりの差があるので、ここを気にしている人はこのクラスに買い換えてもいいということになる。

3DMark 11の結果

アサシンクリードIII

 さていよいよゲームでの実戦である。今回フレームレート計測ソフト「Fraps」を用いて、VSync(垂直同期)をOFFの状態で計測し、ゲーム中のフィールド「ニューヨーク」を走り回ったり戦闘したりし、目視できたフレームレートを掲載する。計測は2,560×1,600ドットのAAなしとAAあり(GeForce 600系はTXAA、それ以外は最高)、1,920×1,080ドットのAAなしとAAありの4パターンで行なった。グラフィックス設定はすべて最高である。

 結果はおおよそ予測通りだが、アサシンクリードIIIにおいてドライバの最適化が一歩進んでいるGeForce系がRadeon系を上回った。というよりAAなしの結果を見ると、HD7970-DC2T-3GD5とRH7870-E2GHD/DPはほぼ同じであることに気づく。Radeon系はドライバでVSyncをOFFにしてもタイトル画面で60fpsしか出ておらず(GeForce系は200~300fpsを超える)、VSync周りのバグと見ることもできるが、スペック上GeForce系と比較しても遜色ない1,920×1,080ドットAAありの結果を見ると、60fpsを超えるのはVSyncの問題だけではないことが伺える。

 参考掲載のGeForce GTX 580も意外と健闘し、2,560×1,600ドットのAAありではZT-60901-10Mに対しての足回りの強さを見せつけた。いずれにしても、アサシンクリードIIIを快適にプレイしたいのなら、今のところGeForce勢が優勢である。

【表3】アサシンクリードIIIの結果
GTX680-DC2O-2GD5HD7970-DC2T-3GD5ZT-60901-10RH7870-E2GHD/DPGeForce GTX 580 MDT
2,560×1,60062~7442~6042~5442~6047~54
2,560×1,600 AA42~4538~4129~3542~5534~42
1,920×1,08074~12142~5361~7242~5561~74
1,920×1,080 AA60~7444~5442~5228~3251~57

Far Cry 3

 同じくUbisoftの「Far Cry 3」だが、描画エンジンが異なるためテストの傾向も異なり、Sapphireがゲームダウンロードクーポンをビデオカードに添付するなど、マーケティング的にはどちらかと言えばRadeon向けに最適化されている印象だ。テストは2,560×1,600ドットと1,920×1,080ドットの2パターンのみ行ない、同じくFrapsでフレームレートを目測で監視した。

 本タイトルは非常に負荷が高いグラフィックスということもあり、FPSゲームで一般的に必要とされる60fpsをクリアできるのは、GTX680-DC2O-2GD5の1,920×1,080ドットでもギリギリという線である。Radeon系は相変わらずVSyncが切れていないようだが、切れてもHD7970-DC2T-3GD5でも1,920×1,080ドットが精々である。

 一方ハイミドルでは、RH7870-E2GHD/DPがZT-60901-10Mを押さえた感じになっている。いずれにしても、どの解像度でも60fpsの基準を超えられないため、主流のディスプレイのネイティブ解像度で遊びたければ、グラフィックス設定を1段下げるか、マルチGPU環境を構築する必要がある。Far Cry 3においては(やはりマーケティングもある程度関係しているのか)Radeon勢が優勢な印象だ。

Far Cry 3
GTX680-DC2O-2GD5HD7970-DC2T-3GD5ZT-60901-10RH7870-E2GHD/DPGeForce GTX 580 MDT
2,560×1,60032~4535~4222~2526~3228~32
1,920×1,08055~7454~5933~4243~5338~43

 なお、今回時間が限られていたため、これらのビデオカードとゲームで試せなかったが、NVIDIAは「GeForce Experience」と呼ばれる、ユーザーの環境に応じてゲームのグラフィックス設定を最適化するソフトウェアを用意するようだ。

 12月初旬にベータテストが一時公開されたが、すぐ定員に達してしまい、現在は次期の公開まで待つ必要がある。クラウドを利用したデータベースで、ユーザーの環境を分析し、最適なグラフィックス設定を自動的に適用できるユニークなツールだけに、そのデータベースやバックボーンの構築も大変なようだ。今後公開されたら、ぜひ活用していただきたい。

GeForceか、Radeonか。比較してもやっぱり悩ましい選択

 わずか2タイトルでの検証となったが、(今のところ)アサシンクリードIIIをプレイするならGeForce、(今のところ)Far Cry 3をプレイするならRadeonという、なんともマーケティングに踊らされたような雰囲気の結果となってしまったが、ゲームタイトルごとのドライバ最適化は今後も進むと予想され、それを見越すと「どちらでも良い」ことになる。

 これまでの傾向を総合的に見ても、最新ゲームに強く消費電力が低いGeForceと、DirectX 9以前のタイトルも速く消費電力がわずかに高いRadeonといった印象。また、3D立体視で楽しむなら3D VisionがあるGeForce、多画面出力を行なうならEyefinityがあるRadeonと、機能面でもそれぞれの個性があって、さらに悩ましい。

 もっとも筆者のように「眠れないぐらいどちらかで悩んでしまう」熱心ゲーマーは、「GeForceとRadeonで2台のPCを組んで、各々に最適化されたゲームをインストールしてプレイする」というスタイルも、選択肢の1つとして提示しておきたい。

(劉 尭)