西川和久の不定期コラム
au「MeMO Pad 8(AST21)」
~大幅にスペックアップしたASUS製8型タブレットのauスペシャル版
(2014/8/29 14:30)
au(KDDI株式会社)は8月20日、ASUS「MeMO Pad 8(ME181C)」の4G LTE対応版として「MeMO Pad 8(AST21)」を発表。22日から販売を開始した。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。なお今回SIMカードがなく、純粋にWi-Fi接続したタブレットとしての評価であることを予めご了承いただきたい。
同じMeMO Pad 8でも(ME181C)と(AST21)は別物!
いきなり余談で恐縮だが、8月20日前後は忙しく、ほとんどネットをチェックしていなかった関係で、編集部から「MeMO Pad 8」を送るという連絡を受けて初めて「MeMO Pad 8(AST21)」が発表されたことを知った。加えて「SIMカードがないのでWi-Fi接続でのタブレットとして評価して欲しい」との一筆が……。
7月にASUS「MeMO Pad 7」の記事を書いたとき、「MeMO Pad 8(ME181C)」のことにも触れており“今回扱うのは7型であるものの、8型はパネルサイズとバッテリ容量、これらに伴うサイズと重量以外は同一スペックとなる”と書いていたので、「MeMO Pad 8のレビューとして、たまたまSIM対応モデルが来るのか」程度に考えていた。
しかしパッケージから本体を取り出し電源を入れると、どうも様子が違う。明らかに解像度が高く視野角や発色も良好になっている。改めてau「MeMO Pad 8(AST21)」の仕様を調べたところ、下記表の通りとなる。
au「MeMO Pad 8(AST21)」の仕様 | |
---|---|
SoC | Atom Z3580(バースト周波数2.33GHz、4コア) |
グラフィックス | PowerVR G6430(SoC内蔵) |
メモリ | 2GB(LPDDR3-1600) |
ストレージ | 16GB(eMMC) |
OS | Android 4.4.2 |
ディスプレイ | IPS式8型液晶ディスプレイ(Gorilla Glass 3)、1,920×1,200ドット(WUXGA)、タッチ対応、HDMI出力(Slim Port経由) |
ネットワーク | 4G LTE(800MHz/2GHz)、IEEE 802.11a/b/g/n/ac無線LAN(Miracast対応)、Bluetooth 4.0、NFC |
その他インターフェイス | Micro USB、microSDカードスロット、120万画素前面カメラ、500万画素背面カメラ、マイク/ヘッドフォン・コンボジャック、ステレオスピーカー |
バッテリ容量 | 4,000mAh |
連続待受時間 | 4G LTEエリア約590時間 |
サイズ/重量 | 約123×213×7.7mm(幅×高さ×厚さ)/約301g |
SoCは、Atom Z3580。4コアでバースト周波数2.33GHz。コードネームMoorefieldと呼ばれていたものだ。ME181CのAtom Z3745よりバースト周波数が高く、またGPUもIntel HD GraphicsではなくPowerVR G6430となっている。ASUSの調べによれば、国内のAndroidタブレットとして初めての採用とのことだ。
メモリは2GB搭載。これも1GBからの倍増であり、加えてSoCがLPDDR3-1600に対応しているのでLPDDR3-1066よりアクセスも高速だ。ストレージはどちらも同じ16GB。
ディスプレイは、IPS式と明記され、8型で保護ガラスの「Gorilla Glass 3」を採用。解像度は1,920×1,200(WUXGA)。1,280×800ドット(WXGA)と比較して解像度はもちろん、パネルの質そのものが違う。また、Micro USBを利用するSlim Port経由でHDMI出力にも対応している。
参考までに、MeMO Pad 8(ME181C)仕様を簡単にまとめると、Atom Z3745(バースト周波数1.86GHz、4コア)、1GB(LPDDR3-1066)、ストレージ16GB、1,280×800ドット(WXGA)表示対応8型液晶、IEEE 802.11b/g/n無線LAN、HDMI出力なし、200万画素前面カメラ/500万画素背面カメラとなる。
もうここまで仕様が異なると同じ「MeMO Pad 8」と言っても、中身はまるで別物だ。ディスプレイのサイズ以外同じ部分がない。紛らわしいのでほかのネーミングにして欲しいほどだ。
ネットワークは、4G LTE(800MHz/2GHz)、IEEE 802.11a/b/g/n/ac無線LAN(Miracast対応)、Bluetooth 4.0、NFC。通話には非対応だが、4G LTEはプラチナバンドと呼ばれている800MHz対応している。さらにIEEE 802.11acとNFCもME181Cにはない。
そのほかのインターフェイスは、Micro USB、microSDカードスロット、120万画素前面カメラ、500万画素背面カメラ、マイク/ヘッドフォンジャック、ステレオスピーカー。なぜか前面カメラだけ200万画素から120万画素へのスペックダウンされている。
センサーに関しては記載されていないが、MeMO Pad 8(ME181C)は、GPS、電子コンパス、加速度センサー、磁気センサーを搭載しており、MeMO Pad 8(AST21)も同等と思われる。
サイズは約123×213×7.7mm(幅×高さ×厚さ)、重量約301g。4,000mAhのバッテリを内蔵し、連続待受時間は4G LTEエリアで約590時間となる。カラーバリエーションは、パウダーピンク/パールホワイト/メタリックブルーの3種類用意されている。
今回手元に届いたのは「パウダーピンク」。薄らとしたピンク色で上品な感じがする。外装もなかなか綺麗な仕上がりであり、女性が好みそうな雰囲気を醸し出している。厚みが7.7mmと言うこともありルックスもスリムだ。
前面は、上左側が照度センサー、右側が前面カメラ。3つのボタンはソフトウェア式。背面は上下のスリット部分にスピーカーが埋め込まれている。左上に背面カメラ。写真では小さくて分かりにくいが中央の薄いマークがNFCだ。
上側面にマイク/ヘッドフォン・コンボジャック。右側側面に、音量±ボタン、電源ボタン、SIMカードスロット。下側面にMicro USBポート。左側面にmicroSDカードスロットを備えている。
付属のUSB式ACアダプタは約37×37×27mm(同)。重量31gとコンパクトだ。もちろん一般的なUSBポートからも充電できる。
8型のIPS式液晶パネルは明るさ、コントラスト、発色、全て良好。視野角もかなり広く、品質のいいパネルが使われている。またWUXGAと高解像度なので文字なども滑らかだ。
背面に埋め込まれているステレオスピーカーは、最大出力も十分あり、音楽も動画も楽しめる。サウンドはレンジこそ広くないものの、バランスは良く聴きやすい。
ノイズや振動などは皆無。発熱に関してもベンチマークテストや長時間の動画再生時で少し背面の上側(縦位置時)が暖かくなる程度だった。
なお、参考までにMeMO Pad 8(AST21)で撮影したサンプル写真をを掲載したが、500万画素の背面カメラとカメラアプリに関しては、MeMO Pad 7と変わらない印象だった(ただしレンズがF2.4からF2.6になっている)。興味のある方はMeMO Pad 7の記事を参考にして欲しい。Androidタブレット内蔵のカメラとしては高品質な方だと思われる。
良好なパフォーマンスにau独自のカスタマイズ
OSの正確なバージョンは4.4.2。ただし新しいランタイム「ART」には非対応だ。MeMO Pad 7同様、Zen UIを搭載し、その上にau独自のカスタマイズが施されている。ストレージの空きは10.15GB。microSDカードスロットが64GBまで対応しているので、音楽や動画データはこちらに移動させて利用した方がいい。技適マークは筐体になく、設定/認証の中にソフトウェア的に入っている。
3枚のホーム画面の1枚目はASUSフォルダとWhat's Newのウィジェット。2枚目にはGoogleフォルダとauスマートパス、ビデオパス、ブックパスなどがPlayストアやYouTubeとともに並んでいる。3枚目はauウィジェットを始め、au系を多く配置。良くも悪くもキャリア仕様のホーム画面とアプリ構成だ。
画面のやや右上から下へスワイプすると表示されるクイック設定は、「メモリ解放」、「電卓」、「クイックメモ」、「AudioWizard」、「所有者」、「Wi-Fi」、「自動回転」、「サイレントモード」、「GPS」、「機内モード」、「モバイルデータ」、「省電力設定」、「読書モード」、「Wi-Fiホットスポット」、「Bluetooth」、「NFC」、「自動同期」、「PlayTo」、「デュアル画面」と、4G LTE関連や後述する、「読書モード」や「デュアル画面」が用意されている。画面やや左上から下へスワイプすると通知エリアが表示されるのは従来通りだ。
プリインストールソフトウェアは、「アニメパス」、「うたパス」、「カメラ」、「カレンダー」、「ギャラリー」、「クイックメモ」、「グノシー for au」、「ゲームギフト」、「スクリーンショットシェア」、「セットアップウィザード」、「ダウンロード」、「ドライブ」、「ナビウォーク」、「バーコードリーダー」、「ハングアウト」、「ビデオパス」、「ファイルマネージャー」、「ブックパス」、「ブラウザ」、「マップ」、「ミラー」、「メール」、「モバオク」、「やることリスト」、「リモートサポート」、「安心アクセス for Android」、「音楽」、「音声レコーダ」、「音声検索」、「時計」、「写真」、「取扱説明書」、「省電力設定」、「設定」、「朝日新聞」、「天気」、「電卓」、「連絡帳」、「au Cloud」、「au ID設定」、「au Market」、「au WALLET」、「au Wi-Fi接続ツール」、「auお客さまサポート」、「auかんたん設定」、「auショッピングモール」、「auスマートパス」、「auバックアップアプリ」、「au災害情報」、「AudioWizard」、「Chrome」、「Eメール」、「Facebook」、「Friends Note」、「GLOBAL PASSPORT」、「Gmail」、「Google」、「Google+」、「Google設定」、「LISMO」、「NFCタグリーダー」、「Omletチャット」、「Origami」、「Party Link」、「PC Link」、「Playゲーム」、「Playニューススタンド」、「Playストア」、「Playブック」、「Playミュージック」、「Playムービー」、「Remote Link」、「Share Link」、「SMS」、「Splendid」、「Story」、「SuperNote」、「TOLOTフォトフォトブック for au」、「WebStorage」、「What's Next」、「YouTube」。
ご覧のように、au版ということもあってか、以前ご紹介したASUS「MeMO Pad 7」よりかなり増え、1ページ分増えている。個人的には多過ぎると思うので、もう少し整理して欲しい。
ウィジェットは、「アナログ時計」、「カレンダー(1/2)」、「タスクマネージャー」、「デジタルクロック」、「バッテリー」、「ブックマーク(1/2)」、「メール(1/2)」、「やることリスト」、「音楽(1/2)」、「検索」、「時計(1/2/3/4)」、「天気」、「連絡先(1/2)」、「連絡先ウィジェット」、「PhotoFrame」、「SuperNote Memo」、「What's Next」、「おすすめのコンテンツ」、「スポット検索 - au Wi-Fi接続ツール」、「ドライブ」、「ドライブスキャン」、「ドライブのショートカット」、「ブックマーク(3/4)」、「ミュージックプレイリスト」、「近況アップデート」、「経路を検索」、「再生 - マイライブラリ」、「自動接続 - au Wi-Fi接続ツール」、「書籍」、「小シンプル - au Wi-Fi接続ツール」、「設定をショートカット」、「大シンプル - au Wi-Fi接続ツール」、「電源管理」、「au WALLET」、「au ウィジェット(1/2/3)」、「auデータ通信量」、「au通信料金(L/M/S)」、「Facebookボタン」、「Friends Note」、「Gmail」、「Gmailのラベル」、「Google Now」、「Google Playニューススタンド」、「Google Playブックス」、「Google Playミュージック」、「Google+ユーザーの場所」、「Google+投稿」、「Google検索」、「LISMO(1/2/3/4)」、「Playストア」、「WebStorage」、「YouTube」。こちらも「MeMO Pad 7」より3ページ分増えている。
独自の機能で面白いのは「デュアル画面モード」と「読書モード」。どちらも先のクイック設定からセット可能だ。
「デュアル画面モード」は、画面分割して2つのアプリを同時に使えるモードだ。横位置の場合、1,920×1,200ドットの長辺を2分割しても片面960×1,200ドット。縦はいろいろなステータス表示があるので実際は減ってしまうが(実測で1,020ドットが有効な範囲)、XGA(768×1,024ドット)並みの画素数となる。もちろん縦位置でも分割できる。
iOSにしてもAndroidにしても1つの画面に1つのアプリしか表示できない制限があったのでなかなか興味深い仕掛けだ。Webブラウザを見ながらメールを読むといったことが簡単にできる。
特にAndroidの場合、タブレットUIに対応したアプリが少なく、横表示にすると無駄に左右が間延びするため、この画面分割は有効な手段だ。液晶一体型のデスクトップタイプでも、このUIが使えるようになると便利だろう。
「読書モード」は、電子書籍など、白バックの文字を長時間見ても眼が疲れないよう、画面のブルーライトをカットするモードだ。ブルーをカットする結果、黄色っぽくなり、画面の色温度を下げた時と似たような雰囲気となる。
実機が2台無かったのでNexus 7(2013)との比較写真を掲載したので参考にして欲しいが、実際は写真よりもっと(緑がかって)黄色く見える。
ベンチマークテストは、AnTuTu 安兎兎ベンチマークとGPU BENCHMARKの結果を掲載した(カッコ内はAUS MeMO Pad 7)。
AnTuTu 安兎兎ベンチマークは、総合 33425(34302)。Multitask 5852(6613)、Dalvik 3848(3521)、CPU Int 3698(2954)、CPU Float 3578(4228)、RAM Operation 1592(2376)、RAM Speed 3033(2808)、2D 1645(1636)、3D 7632(8098)、I/O Storage 1897(1428)、I/O Database 650(640)。
GPU BENCHMARKは、SCORE 15183(6523)。Fill Testが5079、High Polygon Modelが250、Many Modelsが372、Per Vertex Lightingが2194、Per Vertex Lighting & Specularが1136、Per Pixel Lighting & Specularが2487、Per Pixel Lighting & Specular & Normal Mapが3014、YEBIS Resolution 420x234が241、YEBIS Resolution 800x450が231、YEBIS Resolution 1,280x720が179だった。
どちらも部分的に凹凸はあるが、AnTuTuに関してはMeMO Pad 8(AST21)の方がMeMO Pad 7より若干遅い結果となった。逆にGPU BENCHMARKはほぼ倍近いスコアだ。いずれにしてもこれだけの速度があれば通常用途において全くストレスなく操作できる。
バッテリ駆動時間は、省電力設定オフ、輝度50%、音量50%に設定し、ローカルのHD動画を繰り返し再生したところ、約7時間半でバッテリがなくなった。4G LTEのモデムをオンにすると、さらに短くなることが予想される。
以上のようにau「MeMO Pad 8(AST21)」は、au 4G LTEに対応した上で、SoCや液晶パネルなどを大幅にスペックアップした、オリジナルのMeMO Pad 8(ME181C)とはまるで違うAndroidタブレットだ。今回SIMカードなしで試用した関係で、4G LTEやau独自のサービスなどを試せなかったが、純粋なWi-Fiタブレットとして見ても十分魅力的に仕上がっている。
特に欠点らしい欠点もなく、デュアル画面モードとauの4G LTEに対応したことで、タブレットでどこでもインターネットをを楽しみたい人にお勧めの製品と言えよう。