西川和久の不定期コラム
ASUS「MeMO Pad 7」
~Bay Trail-Tを搭載し、小型軽量化した7型Androidタブレット
(2014/7/22 06:00)
ASUSは6月11日、MeMO Padシリーズの新モデルととして、7型と8型の「MeMO Pad 7」と「MeMO Pad 8」を発表、6月13日から順次出荷を開始した。今回は、前者の7型が編集部から送られてきたので試用レポートをお届けしよう。
MeMO Padとしては初のBay Trail-T搭載機
去年(2013年)、前モデルに相当するMeMO Pad 8をご紹介したのが12月。ちょうど半年でモデルチェンジしたことになる。当時のSoCはMediaTek製クアッドコアであったが、今回同じ4コアでも、Bay Trail-TのAtom Z3745を採用しているのが大きな違いだ。
Bay Trail-TはBay Trail-Mとともに、SDP(シナリオ・デザイン・パワー)が数Wと、Intelのプロセッサとしては桁違いに省電力。既にWindows搭載機も含め、数多くの2-in-1やタブレットが出荷されているので、省電力によるバッテリ駆動時間は折り紙付きだ。
今回扱うのは7型であるものの、8型はパネルサイズとバッテリ容量、これらに伴うサイズと重量以外は同一スペックとなる。主な仕様は以下の通り。
【表】ASUS「MeMO Pad 7」の仕様 | |
---|---|
SoC | Atom Z3745(1.33GHz/1.86GHz、4コア、 Intel HD Graphics、SDP 2W) |
メモリ | 1GB(LPDDR3-1066) |
ストレージ | 16GB |
OS | Android 4.4.2 |
ディスプレイ | 7型液晶ディスプレイ、1,280×800ドット、タッチ対応 |
グラフィックス | Intel HD Graphics |
ネットワーク | IEEE 802.11b/g/n(Miracast対応)、Bluetooth 4.0 |
その他 | Micro USB、microSDカードスロット、 200万画素前面カメラ/500万画素背面カメラ、 ヘッドフォン/マイクコンボミニジャック、 ステレオスピーカー |
センサー | GPS、電子コンパス、加速度センサー、磁気センサー |
バッテリ駆動時間 | 最大約9時間 |
サイズ/重量 | 約189.3×113.7×9.6mm(幅×奥行き×高さ)/約295g |
店頭予想価格 | 18,500円(税別)前後 |
SoCは冒頭に書いたようにBay Trail-TのAtom Z3745。4コア4スレッドでクロックは1.33GHz。バースト時には1.86GHzに上昇する。キャッシュは2MBでSDPはたった2Wだ。メモリはLPDDR3-1066の1GB。ストレージは16GB搭載している。OSはAndroidで最新の4.4系(4.4.2)だった。
ディスプレイは、タッチ対応の7型液晶パネルで解像度は1,280×800ドット。グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics。ただし、外部出力用のHMLやHDMI端子は装備していない。
インターフェイスは、IEEE 802.11b/g/n(Miracast対応)、Bluetooth 4.0、Micro USB、microSDカードスロット、200万画素前面カメラ/500万画素背面カメラ、ヘッドフォン/マイクコンボミニジャック、ステレオスピーカー。センサーは、GPS、電子コンパス、加速度センサー、磁気センサーを搭載している。
サイズは約189.3×113.7×9.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約295g。従来の7型(MeMO Pad HD 7/196.8×120.6×10.8mm/約302g)と比較して、全体的に少し小さくなり、また軽くなっている。バッテリ駆動時間は最大約9時間。
ホワイト、イエロー、レッド、ブルー、ブラックと、5種類のカラーバリエーションが用意され、店頭予想価格は18,500円(税別)前後と2万円を切っているのが魅力的だ。
筐体は仕上げもカラーリングも綺麗でチープな感じは皆無。Nexus 7(2013)と比較すると少し厚めで、長辺が約1cmほど短い。重量約295gなので、片手で楽々持つことができる。
前面右上に前面カメラ、下中央に同社のロゴ。各ボタンはソフトウェア式になっている。背面は上側にカメラと、下側にステレオスピーカーが埋め込まれているスリットがある。左側面にはmicroSDカードスロット、右側面には音量±ボタンと電源ボタン。上にはMicro USBとヘッドフォン/マイクコンボミニジャック。底面には何も無い。付属のUSB式ACアダプタは非常にコンパクトだが、PCなど一般的なUSBポートからも充電可能だ。
7型の液晶パネルは、旧タイプのMeMO Pad 7は、IPSで10点タッチとスペックに明記されていたものの、今回は何も書かれておらず詳細は不明だが、明るさ/コントラスト、発色共に良好で視野角も広くタッチもスムーズ。個体差かもしれないが、筆者が試した範囲だと色温度が若干低く(黄色い)、付属のSplendidユーティリティで左側に1つずらすとでちょうどいい感じだった。
サウンドは、最大にすると若干歪っぽいもののこのクラスとしてはパワーも十分。また筐体のサイズを考えると低域から高域までわりと鳴っている方だろう。縦位置で使う限りステレオ感もそれなりにある。ただ動画再生時などに横位置にすると、スピーカーが左(もしくは右)に寄ってしまうのが残念なところ。
カメラに関しては、試したところ、以前ご紹介した「Fonepad 7」や旧「MeMO Pad 8」より随分良くなったので作例を1点掲載する。AFも速く、写りもご覧の様に、細かい部分までしっかり描写している。動画はフルHD/HD/VGAの解像度に対応だ。
カメラの設定は、ホワイトバランス(AUTO/曇り/晴れ/蛍光灯/白熱灯)、ISO(AUTO/50/100/200/400/800)、露出値(-2~+2)、最適化(オート/オン/オフ)、カメラ解像度(5M/4M/3M/2M)、防振の強化(オン/オフ)、タッチシャッター(オン/オフ)、セルフタイマー(2/5/10秒/オフ)、連続撮影(高速/低速/オフ)、フォーカスモード(スマート・オートフォーカス/CAF/無限遠)、タッチ自動露出(オン/オフ)、顔認識(オン/オフ)が選択でき、機能は豊富だ。
またエフェクトもグレイスケール、ネガ、セピア、エッジ、色合い、LOMO、ピクセル化、鉛筆、漫画と、9パターン用意されている。
いずれにしてもそれなりに写る(これまで試用した他機種も含め、iPad以外のタブレットでカメラがしっかりしているのはほとんど無かった)ので、このMeMO Pad 7単体でも結構楽しめるだろう。
パフォーマンス、バッテリ駆動時間も十分だがARTには非対応
UIはAndroid 4.4そのものではなく、独自の「Zen UI」を搭載。全体的に少しシンプルになった印象を受ける。この関係でホーム画面も3面で、加えて1~3画面へスワイプすると1画面へ戻るループになっている。いずれにしてもAndroid標準と大幅に違うわけではないので、戸惑うことは無いだろう。
ホーム画面1画面目には何もなく、2画面目に2つのウィジェットと、2つのフォルダを配置。ASUSアプリとGoogleアプリがそれぞれ収められている。3画面目はウィジェットが1つ。あっさりした画面構成で、初心者から玄人まで受けは良さそうだ。
ストレージは初期状態で11.13GBが割り当てられ、空きは11.03GB。動画や音楽まで全てここに入れるのは難しいが、microSDカードへデータは逃がせばいいだろう。Androidのバージョンは4.4.2。4.4系の最新版は4.4.4だが、ほぼ最新版と言える。
また同社固有の機能として、省電力設定が挙げられる。超消費電力モード(スリープ時ネットワーク切断)/最適モード(スリープ時ネットワークは維持)/カスタマイズモードと3種類(排他)あり、状況や用途に応じてオン/オフすることが可能だ。これに関しては以前から同社のAndroid機には搭載されているのでご存じの方も多いと思う。
余談になるが、今回Android 4.4と言うこともあり、新しいランタイムのARTも試そうと、切り替えたところ再起動しなくなった。メーカーに確認したところ「ARTには非対応」なので注意して欲しい。経験的にARTの方がスムーズに動くことが多く残念だ。もし再起動しなくなった場合のファクトリーリセットは、
1.電源オフ(長押しでオフ)
2.音量+ボタンと電源ボタンを同時押しで起動
3.起動しても音量+ボタンはメニューが表示されるまで手を離さない
4.Recoveryを選択/再起動する
5.コマンドが選択されていませんと表示されるので、電源+-ボタンを同時押し
6.Wipe data/factory resetを選択
7.Yesのある項目を選択
これで再起動すれば、初期設定の状態(データは消える)となる。
今回5つのカラーバリエーション全てが揃ったので、前半の写真だけではなく、テーマもご覧頂きたい。それぞれの色に合わせてデフォルトのテーマも個別に設定されているのがお分かり頂けるだろう。
プリインストール済のソフトウェアは、「カメラ」、「カレンダー」、「ギャラリー」、「コミック・本」、「セットアップウィザード」、「ダウンロード」、「ドライブ」、「ハングアウト」、「ファイルマネージャー」、「マップ」、「ミラー」、「メール」、「やることリスト」、「音楽」、「音声レコーダ」、「音声検索」、「時計」、「写真」、「省電力設定」、「設定」、「天気」、「電卓」、「連絡帳」、「Amazon Kindle」、「AudioWizard」、「BookkLive!Reader」、「Chrome」、「Facebook」、「Filpboard」、「FSKAREN」、「Google」、「Google+」、「Google設定」、「i-フィルター」、「LLHDAndroid」、「Movie Studio」、「Omlet」、「Party Link」、「Playゲーム」、「Playニュース」、「Playストア」、「Playブック」、「Playミュージック」、「Playムービー」、「Quick memo」、「Splendid」、「Story」、「SuperNote」、「WebStorage」、「What's Next」、「YouTube」、「Zinio」。
同社固有のアプリとしては、「やることリスト」、「省電力設定」、「ファイルマネージャー」、「SuperNote」、「WebStorage」、「AudioWizard」、「Splendid」(画面の色などの設定)などがある。What's Nextは、スケジュールややることリスト(ToDo)などと連動するリマインダーだ。
ウィジェットは、「アナログ時計」、「アラーム」、「カレンダー1/2」、「タイムローラー」、「デジタルクロック」、「ブックマーク1/2」、「メール1/2」、「やることリスト」、「音楽1/2」、「検索」、「世界時計」、「天候」、「日月」、「連絡先1/2」、「連絡先ウィジェット」、「Battery」、「PhotoFrame」、「SuperNote Memo」、「Task Manager」、「What's Next」、「おすすめのコンテンツ」、「ドライブ」、「ドライブスキャン」、「ドライブのショートカット」、「ブックマーク1/2」、「ミュージックプレイリスト」、「近況アップデート」、「経路を検索」、「再生マイライブラリ」、「書籍」、「設定をショートカット」、「電源管理」、「Facebookボタン」、「Flipboard 1/2」、「Gmail」、「Gmailのラベル」、「Google Now」、「Google Playニュース」、「Google Playブックス」、「Google Playミュージック」、「Google+ユーザーの場所」、「Google+投稿」、「Google検索」、「Playストア」、「WebStorage」、「YouTube」。
参考までに「AnTuTu 安兎兎ベンチマーク」と「GPU BENCHMARK」の結果を掲載した(カッコ内はNexus 7(2013)/4.4.4/ART)。
AnTuTuは総合 34302(19978)。Multitask 6613(3324)、Dalvik 3521(1179)、CPU Int 2954(2265)、CPU Float 4228(2034)、RAM Operation 2376(1106)、RAM Speed 2808(1749)、2D 1636(1636)、3D 8098(4966)、I/O Storage 1428(1084)、I/O Database 640(635)。GPU BENCHMARKは、上から順に704/314/530/1155/886/840だった。
解像度の違いがあるので2D/3Dは直接比較できないものの、ご覧のようにNexus 7(2013)に大差をつけたと言っても過言ではないだろう。グラフは上から4番目。圏外になっているので見えないが、Nexus 7(2013)はHTC Oneの2つ下だ。MeMO Pad 7の性能がかなり良いことが分かる。
実際使用してもサクサク動きストレスを全く感じない。Webのレンダリングも高速。さすがにWindowsを動かせるSoCを使うと、Androidは軽いと言うことなのだろう。
バッテリ駆動時間は、省電力設定/オフ、輝度50%音量50%に設定し、ローカルのHD動画を繰り返し再生したところ、残20%で9時間を越えた。省電力設定をオフにしている状態であり、超消費電力モードや最適モードに切替えると、更に長持ちする可能性がある。
以上のようにASUS「MeMO Pad 7」は、7型WXGA解像度の液晶パネルと、Bay Trail-Tを搭載したAndroidタブレットだ。性能やバッテリ駆動時間も十分。テーマまで雰囲気を合わせている5種類のカラーバリエーションや2万円を切る価格もポイントが高い。
ARTに非対応なのは残念だが、それ以外特に気になる部分も無く、ライトでお洒落に扱えるタブレットを探しているユーザーにお勧めしたい逸品だ。