iPhone 4予約“競争”曲のその先に



 今週発表された東芝「dynabook」と「Libretto」シリーズは、どのモデルも個人的にはとても注目している。このところの東芝はすっかりおとなしくなっていたイメージだったが、25周年に集中して力を入れたモデルを投入というのは、いかにも東芝らしい。

 「dynabook RX3」は「SS RX1」、「RX2」の系譜にある設計だが、液晶パネルの高解像度化というトレンドに合わせてサイズをアップさせ、サイズアップに伴って生まれた冷却面の余裕を使い、低コストで高性能なプロセッサを使えるようにした製品。

 基本コンセプトはRX2の延長だが、最薄・最軽量を目指していないためか、“SS”の名前は使われていない。ライバルに「VAIO Z」や「ThinkPad X201s」を挙げる人も多いが、どちらかと言えば、Let'snote Sシリーズ/Nシリーズの方が(プロセッサの価格と性能のバランスに合わせてシステム全体のディメンジョンを見直したという意味で)近い。

 librettoに関しては、東芝が独自に開発するソフトウェア次第。使い込まなければわからない要素も多いので、製品の細かな部分にはここでは言及しないことにしたい。機会があれば青梅の開発拠点に取材に行きたいと思う。

dynabook RX3 libretto W100 dynabook AZ

 実のところ、個人的には「dynabook AZ」の仕上がりに強い興味を惹かれていたのだが、こちらはまだ開発途上で、評価できる段階にはないようだ。こちらも成熟度が上がってきた頃を見計らって取材したい。

 近年はインターネット上のサービスにアプリケーションを依存する傾向が強くなってきたため、使い方次第ではプラットフォームを簡単に行き来できるようになってきた。私の場合はMacとWindowsの環境を頻繁に行き来しながら仕事をしているが、WebサービスとWebサービスに連動するソフトウェアを組み合わせることで、なんら支障なくスムーズに作業を進められるようになっている。

 おそらく、それがAndroidベースの携帯端末でも同じだ。iPadやそれに続くと見られているAndroid搭載のタブレット型コンピュータがあれば、今の時代にはモバイル用の小型・軽量PCはいらないという人もいるだろう。

 とはいえ、出先でも長文を書いたり資料作成をしなければならない筆者のような職業の人、あるいは快適なキーボードがなければコンピュータを使う気になれないような人は、キーボードがほしい。ということでdynabook AZへの期待は大きい(できれば将来はWiMAX内蔵も期待したい)のだが、果たしてどこまで使えるものになっているのか見守っていきたい。

●iPhone 4を巡る混乱の後に起こること
iPhone 4

 「iPhone 4」を巡っては予約が殺到。予約受付を中断せざるを得ない状況になってきているが、これは日本だけでなく米国でも同様のようだ。中国の工場では従来比2倍以上の生産ラインで日夜量産が続けられていると聞いていたが、とてもそれぐらいでは足りそうにない。

 筆者の予約も、白モデルを待とうか? と迷っているうちに出遅れ気味だったせいか、オンライン予約の初回出荷分からはこぼれ落ちたらしい。2回目の入荷でも手に入るかどうか怪しいかもしれない。いつかは手に入るのだから、気長に待つほかないだろう。

 iPhone 4の大ヒットや、その機能や端末としての評価は今更書くべきことではないと思うが、予想を超えての大ヒットによってスマートフォン全体の市場が大幅に活性化されることは間違いないだろう。

 従来からスマートフォンに力を入れてきたソフトバンク・モバイルはもちろん、NTTドコモがスマートフォンのラインナップを拡充。秋にはSamsungの「Galaxy S」の日本版投入、iモードメールや決済サービスが利用可能なspモードの開始などのニュースは記憶に新しい。KDDIもモバイル・フェリカなどを含む日本の携帯電話にある機能を取り込んだAndroidベースのスマートフォンを開発しているところというから、iPhoneにこだわらなければ選択肢は大きく広がっていく。

 日本市場ではソフトバンクの低価格戦略もあって、スマートフォン市場全体に対するiPhoneの比率がとても高い(いろいろな調査の数字があるようだが、昨年はどの調査でも50%前後)が、今後はAndroidベースの端末比率もかなり上がっていくだろう。といってもiPhoneの力が弱まるというのではなく、市場全体が爆発的に広がっていくという方が見方としては正しいと思う。

 iPhoneの日本での功績は、とにもかくにも日本の携帯電話会社が展開するクローズドなネットワークサービスのインフラに依存しなくとも、十分な機能を持つ端末ができることをユーザーに知らしめたことだ。iPhone 4がさらにヒットし、誰もが使っている“普遍的にそのあたりにある”端末になれば、スマートフォン全体を見る消費者の目は変わるはずだ。

 ここまでは誰もが予想した展開だろうが、iPhone 4の予約状況を聞く限り、多くの人はスマートフォンの世の中の浸透速度を見誤っているのかもしれない。このままで行けばスマートフォン市場はすさまじい速度で活性化され、3Gネットワークへの負荷を増やしていくだろう。

 帯域のや収容数に余裕のあるNTTドコモは耐えられるかもしれないが、それにしても時間の問題でトラフィックの増大が新しい問題を生んでいくことは間違いない。ソフトバンク・モバイルが取り組んでいるように、3G以外のネットワークにIPトラフィックをオフロードしていくしか方法はない。

●auのWiMAX/CDMAデュアルモード通信モジュール

auの「DATA01」

 3Gトラフィックのオフロード先としては、無線LANをいかに活用するかが1つのポイントいなっているが、今後は3.9Gネットワークの使い方が重要になってくる。auが発表したWiMAXとCDMA2000 1x EV-DO Rev.Aの両方に対応したデータ通信モジュールとサービスの料金プランは興味深い。

 KDDIグループが持つ異なる種類のネットワークをセット販売するだけではなく、両ネットワークをまたがるハンドオーバーにも対応し、IPアドレスも維持される。この技術での実績を積めば、スマートフォンでの利用も可能になるだろう。

 すでにWiMAXは、都内では利用できる場所が大幅に増えており、たとえば山手線に乗りながら通信をしていても、ごく一部(3Gでも切れる場所)を除いて使い続けることが可能なほどエリアの充実は進んできている。屋内へのリピータ設置や隙間への中継局設置も進んでいるので、今後はさらに使える印象が強くなっていくと思う。

 とはいうものの、3Gネットワークほど充実しているわけでもない。3GとWiMAXがシームレスに連携するというのはかなり魅力的なプランだ。従来、auのパソコン向けデータ通信サービスは、帯域制限が厳しく思い切って使えない印象があったが、今回は収容数に合わせて動的に帯域制限を行なうとのことなので、ここは期待したいところだ。

 海外では米スプリントがCDMA2000とWiMAXのデュアル端末発表している。これが日本で……という期待もあるだろうが、上記のような取り組みを行なっているのであれば、早晩、3GとWiMAXの両方を境目無く使えるスマートフォンが登場するのは時間の問題ではないだろうか。

 今回はデータ通信モジュールだけの発表だが、両ネットワークを自動切り替えするポータブルルーターが同じ料金プランで発売されたりすれば、おそらく筆者はすぐに買ってしまうだろう。

 KDDIは3.9Gネットワークについて携帯電話向けにはLTEを採用する意向を示していたが、スマートフォンへと端末のトレンドが移っていくならば、すでに基地局整備が進んでいるWiMAXを活用する方が賢明かもしれない。すでに基地局敷設が進んでいることもあるが(世界でもっともWiMAXのネットワークが充実しているのは日本だ)NTTドコモと同じ技術を使い、少し遅れたタイミングで事業を始めるよりも、異なるネットワークで基地局敷設も進んでいる方がいいと思うからだ。選ぶ側も特徴とコストの違いから、自分に合ったサービス選べる方がいい。

 NTTドコモも3.9GのLTEに対応した端末を年内に出すとアナウンスしており、来年以降は徐々にスマートフォンにも搭載されていくと思う。もともと、そうした計画は持っていたはずだが、スマートフォンの流行がさらに加熱していけば、次世代への移行も加速するのではないだろうか。

●正念場のマイクロソフト

 やや話が飛躍するように思えるかもしれないが、こうした状況の中で正念場を迎えるのはマイクロソフトだと思う。もちろん、マイクロソフトはいまだに大多数のパソコンが搭載するOSを握っており、オフィスでの文書作成ツールの標準のマイクロソフト。マイクロソフトの製品がなければ世界のビジネスは動かないと言っていいほどだ。

 しかし、一般消費者へのマイクロソフトのブランド浸透は、おそらくかなり下がっているのではないだろうか。パソコンを使わず携帯電話でインターネットの利用を完結させる若い世代のユーザーが〜〜と議論しているうちはまだいいが、若年層にもスマートフォンの利用が浸透していけば、いよいよPCを出先で使う必要がなくなってしまう。

 今のマイクロソフトは、あらゆる分野に手を出して、何か新しい枠組みで事業活動をしようにも、何かを壊してからでなければ前へと進めない状況にある。とはいえ、今のままではマイクロソフトの存在感は薄れていくばかりだ。

 マイクロソフトもWindows Mobile端末を継続して開発しているものの、本格的にiPhone追撃となっていくのはWindows Phone 7以降になる。そのWindows Phone 7は年内に米国で発売されるが、国際化されるのは来年の春以降。OS自身の国際化が間に合わないというのは、いったいどうしたことか。

 今年夏にはWindows LiveとLive Essentialsを一新し、コンシューマ向けのオンラインサービスを使えるものにしていくというマイクロソフトが、そのブランドを維持していきたいのであれば、もっとコンシューマに近い場所に自らの立ち位置を見つけなければならないように思う。

 そうした意味でも、再設計された新しいWindows Liveに期待したい。

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(2010年 6月 24日)

[Text by 本田 雅一]