井上繁樹の最新通信機器事情

インターネット経由でファイルのやり取りを簡単にする双子のUSBキー「iTwin」



iTwin

99ドル(送料別)



●ペアになったUSBキーを挿したPC間でファイルのやりとりができる

 「iTwin」はインターネット経由でファイルのやり取りをするためのツールだ。ペアになったUSBキーをPCにセットすると、自動で互いを見つけ出してエクスプローラー上でファイルのやり取りができるようにしてくれる。LAN内でも使えるがLANがインターネットに接続している必要がある。

 通常、インターネット経由でのファイルのやり取りは、メールアドレスかURL、ID、パスワードなどが必要になるが、iTwinではそういったものは一切要らない。iTwinとインターネットに繋がったWindows PCがあればよい。

同梱物一覧。マニュアルとiTwinが1セット。iTwinはコネクタがつながった状態で箱に収まっている箱についていたプラスチックの保護カバーにシリアル、名前、住所が記載。住所は日本語で印刷されていたコネクタで繋がった状態のiTwinを横から見たところ
iTwinの表面。USB端子の反対側にiTwinをペアリングするときに使うiTwinコネクタがあるiTwinの裏面。iTwinのロゴがプリントされているiTwin本体側面に見える小さな白い楕円は動作ランプ(LED)。2つ前の写真と比べてもらうとわかるが、動作ランプは両側面にある

 iTwinを手掛けているのはシンガポールに拠点を置くiTwinだ。現在のところ販売はWebサイトのみで、価格は99ドル。購入にはクレジットカードかPayPalアカウントが必要だ。今回日本からPayPalで購入したのだが、送料は自動で計算され、決済をするとPayPalに登録された日本の住所を使って送られてきた。

●持ち運ぶのはUSBキーの片割れだけでOK

 iTwin本体はUSB端子の反対側に組み木細工のような「iTwinコネクタ」が付いた独特の形状をしている。iTwinコネクタは2つのUSBキーをペアリングする際に使う。ペアリングは1度やればいいので、実際にはほとんど使うことは無い。本体の色はガンメタリックグレーとライムグリーンの2色ある。

 iTwinはUSBキーとPCにインストールする専用ソフトと連携して動作する。専用ソフトは本体に保存されていて、PCにつなぐと自動起動してインストールするよう促す仕組みだ。だからiTwinを使うのにPCを持ち歩く必要はない。インターネットにつながったWindows PC(XP/Vista/7)が確保できるなら、USBキーの片割れを持っていくだけでよい。

 ちなみに、iTwin自体にはUSBメモリとしての機能は無い。iTwin自体にデータは保存できない。

●セットアップでクリックするのは2画面だけ

 iTwinは本体にソフトを保存している(PCからはCDドライブとして見える)ので、セットアップはiTwin本体をPCに繋げばできる。あとは自動起動するiTwin.exeを許可してやればよい。セットアップの途中でクリックを要求されるのはわずか2画面。これなら英語が苦手な人でも簡単に扱えるだろう。

OSの設定によってはiTwinの実行の許可を要求する画面が開く最初にiTwinを繋げた状態でPCのUSBポートにつないでペアリングをする必要があるiTwinをリモートで停止するための停止コードはあらかじめメールアドレスを登録して受け取っておく必要がある

 セットアップではメールアドレスの登録を要求されるが、これは後述する停止コード入手のために必要なもので必須ではない。また、セットアップ完了後でもできるので、初回セットアップ時にメールアドレスの登録をキャンセルしたからと言って後で不利益になることはない。

 ちなみに、ソフトは「iTwin」の名前でインストールされている。iTwinを使わないときも常駐ソフトは動いているので、不要になったらアンインストールしておくべきだろう。

●ファイルのやり取りはエクスプローラーで

 iTwinでのファイルのやり取りは共有フォルダを使ったそれと似ている。共有フォルダと違うのは、リモート側の共有フォルダにファイルをドロップするとリモート側のデスクトップにファイルが転送される、ローカル側の共有フォルダにはローカル側のファイルやフォルダへのショートカットのみ保存できる、という2点。

 そのちょっと変わったiTwinの共有フォルダはエクスプローラー上ではシステムフォルダとして表示される。専用のアイコンが使われるなどデコレーションはされているが、見た目は普通のフォルダそのものだ。ローカルとリモートの切り替えはタスクトレイのアイコンのメニュー操作で行なう。

PCにiTwin本体をつなぐと管理ソフトが自動起動するiTwinはエクスプローラー上ではフォルダの一種として見えている。CDドライブとして見えているiTwinドライブには専用ソフトが保存されているiTwinのフォルダはタスクトレイの右クリックメニューでローカルとリモートを切り替えて使う
ローカル側のiTwinのフォルダにファイルやフォルダをドロップするとショートカットが登録される先の画面からの続きで、ローカル側で登録されたショートカットはリモートからも同様に見える。このショートカットを使ってファイルやフォルダの直接編集ができる

 速度は出先(Wireless Gateを使用)から自宅のPC(フレッツ光ネクスト回線を使用)に10MBのファイルをアップロードしてみたところおよそ6.3Mbpsだった。ダウンロードの速度も確認したかったのだが、Windows Vista 64bitではソフトの不具合(リモートからアクセスできるようiTwinフォルダにショートカットが登録できない)がありできなかった。

●iTwinのセキュリティ機能

 iTwinが採用しているセキュリティ機能は暗号化、パスワード、リモートからの停止機能、そして、iTwin本体がPCに繋がっていないと動作しないハードウェア的なプロテクトだ。パスワード以降はオプションなので使わないようにすることもできる。

 iTwinの暗号化には256bitAESが使われている。強固な暗号化方式なので現状漏洩のリスクはまず無いと言っていいだろう。暗号化はオフにできないのでヒューマンエラーが起きる心配も無い。

 パスワードには最大10文字まで使える。ちょっと心もとない気もするが、覚えてられるパスワードの長さとしては適当なところだろう。最悪iTwin本体を抜き取ってしまう奥の手があるので、そうこだわらなくてもいいと思うが、簡単過ぎるパスワードは当然避けるべきだ。

 リモートからの停止機能についてだが、これはiTwinの片方、もしくは両方を紛失してしまった時に必要な機能だ。あらかじめiTwinの機能停止に必要なコードと、そのコードを入力するWebサイトのURLを受け取っておき、いざという時に使用する。紛失したiTwinが見つかった時は再びペアリング操作を行なえばまた使えるようになる。

iTwinのペアリングやセキュリティ設定の変更は、双子のUSBキーを合体させた状態でPCにつないで行なう「Security Option」の項目はiTwinを合体した状態でPCに繋いでる時だけ表示されるパスワード設定画面
パスワード入力画面。パスワードを入力するまで管理ソフトは起動しないメールアドレスを登録するとiTwinの動作を遠隔操作で止めるために必要なURLと停止コードがメールで送られてくる

●まとめと感想とおまけ

 iTwinにはアドレスも無いし、アカウントも無いし、パスワードも使わずに済ませることができる。手抜きをすればiTwin本体をWindows PCに挿すだけで使える。ファイルをやり取りするツール類の中では最も簡単な部類に入るだろう。セキュリティ面についても不足は無い。

 ただ、残念なことに、現状USBキーだけを持っていけばOKという状況は減ってきている。ネックになるのはやはりソフトをインストールしなければいけないこと。結局自前のPCが必要になる。となるとノートPCに挿しっぱなしでカバンに入れたとき邪魔になる大きさのUSBキーが少し恨めしい。もちろん外して使えばいいことはわかっているのだが。

 もう1つの欠点は仕様上PCの電源をオフにできないこと。スリープモードにしてもHDDへのアクセスがありその分電力消費が上がってしまう。だからモバイル用途では電源を確保できない限り必要ないときはUSBキーを外して使うのが現実的だ。

 ちなみに、iTwinの片方を無くしてしまった場合だが、片方だけ追加購入することが可能だ。ただし、違う色のiTwinはペアリングできないので、誤って追加購入してしまうことがないようにしたい。

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(2011年 2月 28日)

[Text by 井上 繁樹]