Hothotレビュー
NECパーソナルコンピュータ「LaVie X LX850/JS」
~薄さを追求した15.6型フルHD液晶搭載Ultrabook
(2012/12/27 00:00)
2012年のNECパーソナルコンピュータ製ノートPCは、13.3型液晶搭載で900gを切る超軽量ボディを実現した「LaVie Z」、国内メーカー初となるWindows RTマシン「LaVie Y」など、攻めの姿勢を具現化した魅力的な製品が次々と投入された。そして、2012年の最後を飾る製品として、「LaVie X LX850/JS」が12月27日に発売される。LaVie Z、LaVie Yに続く新機軸は、15.6型液晶搭載で12.8mmという世界最薄ボディを実現している点だ。今回、市販モデルのLaVie X LX850/JSをいち早く試用する機会を得たので、ハード面を中心に見ていきたいと思う。販売価格はオープンプライスで、実売価格は175,000円前後。
15.6型液晶搭載ノートPCとして世界最薄を実現
「LaVie X LX850/JS」(以下、LaVie X)は、いわゆるデスクノートと同等の15.6型液晶を搭載しつつ、LaVie Zよりも2mm以上薄い、12.8mmという驚異的な薄さを実現している点が最大の特徴だ。この高さ12.8mmという数字は、15.6型液晶搭載ノートPCとして世界最薄となる。
実際に本体を見ると、その薄さに圧倒される。後方のポートが用意されている付近のみ、1mmほど高さが増しているものの、ほとんどの部分は12.8mmの高さで統一されている。LaVie Zでも高さは14.9mmと15mmを切っており十分薄かったが、そのLaVie Zよりもさらに2mm以上の薄型化を実現している点は、非常に思い切った仕様と言える。LaVie Zのように、本格モバイルをターゲットとした製品ならともかく、15.6型と大型の液晶を搭載する時点で、本格モバイルの範疇からは外れるため、極端な薄型化を追求する意味はあまりないと考えられるからだ。
しかし、LaVie Xでは「普段使っているパソコンをそのまま外出先に持ち出す」というコンセプトで、当初からモバイル用途を想定して開発されている。液晶の大きさは決まっているので、フットプリントは小さくできない。実際に、LaVie Xのフットプリントは375×225mm(幅×奥行き)と、かなり大きい。それなら、薄さを追求することで、携帯性を高めよう、というわけだ。12.8mmという薄さなら、薄いビジネスバッグなどにも余裕で収納できるし、机の引き出しにも収納しやすくなる。実際に、15.6型液晶を搭載するノートPCとして考えると、持ち運びは圧倒的に楽と感じた。
本体デザインは、非常にシンプルだ。天板および底面、キーボード面は、ボディ素材を活かしたシルバーカラーとなっているが、表面にはヘアライン加工に加えてアルマイト加工も施されており、高級感のある仕上がりとなっている。また、天板および底面ともに指紋が付きにくく、よごれが目立ちにくい点も嬉しい。
重量よりも薄さを追求
この薄さを実現するために、LaVie Xにはさまざまな技術が盛り込まれている。
まず、内部の基板は片面側にのみチップ類を実装するとともに、採用するチップや部品類も、同等品質でより薄いものを選別して採用することで、基板自体を薄型化。また、CPUの空冷ファンも、高さ5mmの非常に薄いファンを採用。ただし、超薄型ファン1つでは放熱能力が下がるため、LaVie Xではファンを2個搭載することで放熱能力をカバー。また、2個のファンをCPUの左右に搭載することで、ヒートパイプはCPUから左右に熱を分散して伝達させればよくなるため、ヒートパイプ自体も薄型化。加えて、マザーボードとバッテリは重ならないように本体の前方後方に並べて実装している。
次に、キーボード。キーボードは、LaVie Zで採用されたものと同様、本体フレームに直接ネジ止めする、筐体一体型キーボードを採用している。これによって、薄型化するとともに、キーボード自体のたわみも低減。
そしてもう1つは、液晶面だ。一般的なノートPCでは、液晶面のベゼル部分に樹脂や合金を利用した成型フレームを採用しているのに対し、LaVie Xではアクリル板を打ち抜いたシート素材を採用している。これによって、成型フレームを採用するよりも薄型化が可能となる。
こういったさまざまな工夫や技術を採用することによって、12.8mmという驚異的な薄型化を実現しているのだ。
ところで、薄型化を追求するとともに、モバイル性も高めるとなると、ある程度の強度の実現が不可欠となる。LaVie Zでは、軽さと強度を両立させるために、マグネシウムリチウム合金と呼ばれる素材を採用していた。ただ、マグネシウムリチウム合金はややコストがかかるという欠点がある。また、当然だがフットプリントの面積が広くなればなるほど、薄型化と強度を両立するのは難しくなる。そこでLaVie Xでは、薄型ノートでの採用例の多い、アルミニウム合金を採用している。
アルミニウム合金は、マグネシウム合金と比較して、約1.5倍の曲げ強度があるという。実際にLaVie Xを手に持ってひねってみても、ビクともしないような強度が確認できた。ベゼル部にシート素材を採用している液晶面ですら、他の薄型ノートを凌駕するような強度で、これだけの強度があれば安心して持ち運べると考えていい。
ただし、ボディ素材にアルミニウム合金を採用しているために、1つ犠牲になっている部分がある。それは重量だ。LaVie Xの重量は公称で約1.59kg、実測で1,569gと1.6kgは切っているものの、LaVie Zの圧倒的な軽さから考えるとかなり重い。これは、ボディ素材にアルミニウム合金を採用したり、ファンを2個搭載するといったことが影響している。つまり、LaVie Xでは、軽さよりも薄さを追求して開発されたというわけだ。おそらく、LaVie Zと同じマグネシウムリチウム合金を採用していれば、さらに軽くできたとは思うが、その場合には価格が大きく跳ね上がってしまう。重量は重くなってしまうものの、アルミニウム合金を採用することで、薄さに加えて強度とコストのバランスを保っているわけだ。
とはいえ、1.6kgを切る重量は、15.6型液晶搭載ノートPCとしては十分に軽い。実際に手に持ってみても、フットプリントの大きさがあるせいか、数字以上に軽く感じる。現在でこそ、13.3型液晶搭載のUltrabookで1.2kgを切る製品が多く存在するが、数年前までは13.3型液晶搭載のモバイルノートで1.6kg前後の重量のものも少なくなかった。そう考えると、LaVie Xの約1.59kgという重量も、十分にモバイルノートの範疇に入るわけで、十分に軽いと言っていいだろう。
また、アルミニウム合金は熱伝導性にも優れており、放熱性能を高める役割も果たしている。高負荷時でも特に熱く感じることはなかったが、底面はほんのりと温かくなり、熱がボディに伝わっていることが実感できる。また、この熱伝導性の高さによって、底面に吸気口を用意せずとも安定した冷却が可能となったそうだ。そのため、底面は穴などが一切ない非常にスッキリとした形状となっている。デザイン性を高めるという意味でも、アルミニウム合金の採用は理にかなっているというわけだ。
フルHD対応の15.6型IPS液晶を採用
液晶パネルは、1,920×1,080ドットフルHD表示に対応する、15.6型液晶を採用している。パネルの方式はIPS方式で、視野角が広く、多少視点が移動しても発色や明るさの変化はほとんど感じられない。また、フルHD解像度のため、広大な作業領域が確保でき、ExcelやWordなどビジネスアプリケーションも非常に快適に利用できる。最近では、11.6型や13.3型液晶でもフルHD表示に対応する液晶パネルを採用するノートPCが増えてきているが、それらと比較すると表示される文字が大きく、視認性に優れる点が大きな利点だ。
ただし、液晶表面が光沢処理となっているため、発色は鮮やかな反面、外光の映り込みが激しい点は少々気になる。特に、文字入力を行なう場合には、外光の映り込みがかなり気になり、やや作業効率が落ちるように感じた。
また、OSにWindows 8を採用していることを考えると、タッチパネル非搭載という点も少々残念。タッチパネルを搭載すれば、厚さや重量が増えるため、最大限の薄さを追求するために採用を見送ったものと思われるが、Windows 8の操作性という意味では、やはり残念ではある。この点は、次期モデルでの搭載を期待したい。
ちなみに、先ほども紹介したように、液晶ベゼル部はアクリル板を打ち抜いたシート素材が採用されているが、そのためベゼル部を触るとややペコペコとした感触で、やや強く押すとメリメリと音がする場合もある。そのため、液晶ベゼル部を強い力で掴むのは控えた方が良さそうだ。
キーボードの使い勝手はLaVie Zに近い
キーボードは、LaVie Zとほぼ同等の、アイソレーションタイプのキーボードとなっている。そして、本体が大きいため、右側にテンキーが用意されている点が大きな特徴となっている。
キーピッチは約18mm、ストロークは約1.2mmと、LaVie Zと同等。本体サイズを考えると、フルサイズのキーピッチが確保されなかった点は少々残念。また、クリック感もやや少なく、使い勝手はLaVie Zのキーボードとほぼ同等だ。Ultrabookとしては一般的な使い勝手ではあるが、ストロークの深いデスクトップ用キーボードと比較すると、やや違和感を感じてしまう。
ちなみに、筐体に下部からネジ止めした一体構造になっていることもあって、キーボードのしなりは全くと言っていいほど感じられない。この点は大きな魅力だ。
ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッド「NXパッド」を搭載する。マルチタッチおよびジェスチャー操作に対応しており、面積も十分広く、Windows 8の操作も快適だ。とはいえ、個人的にはこの本体サイズを考えると、独立したクリックボタンも搭載してもらいたかったように思う。
接続ポートは必要最小限だが全て標準サイズ
LaVie Xのスペックは、Ultrabook準拠ということもあり、ほかのUltrabookとかなり近い。
CPUは、Core i7-3517U(1.90GHz)、チップセットはIntel QS77 Expressを採用。メインメモリはPC3-12800 DDR3 SDRAMを標準で4GB搭載するが、増設は不可能。ストレージは、256GBのSSDを標準搭載する。デバイスマネージャで確認したところ、東芝製のmSATA SSD「THNSNF256GMCS」が採用されていた。
無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANとBluetooht 4.0+HSを標準搭載。ワイヤレスWANやWiMAXは非対応で、有線LANも非搭載なのは、LaVie Zと同様だ。
側面のポートは、左側面に角形の電源コネクタとSDXCカードスロット、HDMI出力が、右側面にヘッドフォンジャックとUSB 3.0×2がそれぞれ用意されている。ポートは必要最小限といった感じで、やや心許ない。特に、有線LANポートが用意されない点は、ビジネス用途を考えるとやや残念だ。それでも、全ポートとも標準サイズのコネクタとなっている点は嬉しい配慮だ。ちなみに、2つあるUSB 3.0ポートのうち一方は、電源オフUSB充電機能に対応している。
電源コネクタが角形となっていることからもわかるように、付属するACアダプタはLaVie Zに付属するものと同じ、薄型のものとなっている。ACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで実測297gと極端に軽いわけではないが、非常に薄型のため、本体の薄さと合わせ携帯性は抜群だ。
普段使いの大画面ノートを持ち歩きたい人におすすめ
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.0.4」、「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、セガの「ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版」の6種類。比較用として、日本エイサーの「Aspire S7」、東芝の「dynabook R822」、パナソニックの「Let'snote AX2」の結果も加えてある。また、PCMark Vantageは一部テストが正常に計測できなかったため、計測できたスコアのみを掲載している。
LaVie X LX850/JS | Aspire S7 | dynabook R822 | Let'snote AX2 | |
---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-3517U (1.90/3.00GHz) | Core i7-3517U (1.90/3.00GHz) | Core i5-3317U (1.70/2.60GHz) | Core i5-3427U (1.80/2.80GHz) |
チップセット | Inte QS77 Express | Inte HM77 Express | Inte HM76 Express | Inte QM77 Express |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 |
メモリ | PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB | PC3-10600 DDR3L SDRAM 4GB | PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB | PC3-10600 DDR3L SDRAM 4GB |
ストレージ | 256GB SSD | 128GB SSD | 256GB SSD | 128GB SSD |
OS | Windows 8 | Windows 8 | Windows 8 | Windows 8 Pro |
PCMark 7 v1.0.4 | ||||
PCMark score | 5241 | 4879 | 4421 | 4915 |
Lightweight score | 5397 | 3048 | 2823 | 3216 |
Productivity score | 4195 | 2177 | 2034 | 2326 |
Creativity score | 9902 | 9609 | 8612 | 9362 |
Entertainment score | 3741 | 3445 | 2983 | 3526 |
Computation score | 18209 | 18061 | 14451 | 17982 |
System storage score | 5382 | 4955 | 5214 | 5158 |
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a | ||||
PCMark Suite | N/A | N/A | N/A | N/A |
Memories Suite | 8643 | 7147 | 7025 | 7707 |
TV and Movies Suite | N/A | N/A | N/A | N/A |
Gaming Suite | 10663 | 9352 | 7786 | 10130 |
Music Suite | 16720 | 12664 | 13577 | 15823 |
Communications Suite | N/A | N/A | N/A | N/A |
Productivity Suite | N/A | N/A | N/A | N/A |
HDD Test Suite | 43277 | 40386 | 41122 | 38270 |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 9125 | 9150 | 7809 | 8389 |
Memory Score | 7277 | 7802 | 6367 | 7323 |
Graphics Score | 2900 | 2793 | 2416 | 2752 |
HDD Score | 51686 | 47585 | 49568 | 44636 |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | ||||
3DMark Score | 5339 | 5102 | 4511 | 5159 |
SM2.0 Score | 1749 | 1665 | 1435 | 1776 |
HDR/SM3.0 Score | 2241 | 2142 | 1931 | 2095 |
CPU Score | 3548 | 3451 | 3051 | 3298 |
Windows エクスペリエンスインデックス | ||||
プロセッサ | 7.2 | 7.1 | 6.9 | 7.0 |
メモリ | 5.9 | 5.9 | 5.9 | 5.9 |
グラフィックス | 5.6 | 5.4 | 4.8 | 5.5 |
ゲーム用グラフィックス | 6.4 | 6.4 | 6.2 | 6.4 |
プライマリハードディスク | 8.0 | 8.1 | 8.1 | 8.1 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】 | ||||
1,280×720ドット | 2496 | 2392 | 1869 | 2280 |
ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版 | ||||
横1,280ドットフルスクリーン | 304 | 283 | 451 | 571 |
結果を見ると、比較機種よりも若干スコアが上回っている部分がいくつか見られる。Core i5搭載のLet'snote AX2やdynabook R822を上回るのは当然としても、同じCore i7-3517U搭載のAspire S7よりもスコアが上回る部分が見られる。とはいえ、実際に使ってみてパフォーマンスにスコア差ほどの違いは感じられない。基本的には、Core i7-3517U搭載の他のUltrabookとほぼ同等と考えていい。最新3Dゲームのプレイは少々厳しいものの、ビジネスアプリケーションの利用やWebアクセス、HD動画の再生など、ビジネスシーンや家庭で利用する場合のほぼ大多数の作業は、快適にこなせるだろう。
ちなみに、高負荷時の空冷ファンの動作音は、やや耳につく高音の動作音で少々気になったが、通常時は動作音はほとんど聞こえず、十分に静かだ。
次に、バッテリ駆動時間のチェックだ。LaVie Xでは、容量3,000mAhのリチウムポリマーバッテリが内蔵され、公称で約7時間の駆動が可能とされている。そこで、Windowsの省電力設定を「省電力」に設定し、バックライト輝度を40%、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測してみたところ、約4時間30分の駆動時間を確認した。搭載バッテリの容量がやや少ないため仕方がないかもしれないが、Ultrabookとしてはやや短いという印象だ。ただ、LaVie Xでは、付属のACアダプタを利用して、1時間で約80%まで内蔵バッテリを充電できる、急速充電機能に対応している。この機能を活用すれば、バッテリ駆動時間の短さもある程度カバーできるだろう。とはいえ、できればもう少し駆動時間が長ければ、モバイル用途での活用度も高まるはずで、少々残念だ。
結論
LaVie Xは、大型の15.6型液晶を搭載しつつ、超薄型の薄さ12.8mm、1.6kgを切る軽量ボディを実現し、十分モバイル用途で活用できるノートPCに仕上がっている。また、パフォーマンス的にも十分満足できるレベルで、メインノートとしても活躍できる。しかも、液晶はフルHD表示対応で、広大な作業領域を確保できるとともに、フルHD動画も画質を損なうことなく楽しめる。バッテリ駆動時間の短さは、モバイル用途として活用するときにやや気になるものの、それもバッテリの急速充電機能の活用でカバーできる。そのため、普段使っているメインマシンをそのまま持ち運べる、メインノートとしてもモバイルノートとしても活用できるノートPCを探している人なら、間違いなく満足できる存在になるだろう。
ちなみに、今回試用した市販モデルは、Office Home and Business 2010がプリインストールされていることもあって、実売価格が175,000円前後と、Ultrabookとしてはかなり高価だ。それに対し、直販サイト「NEC Direct」で販売されるオンラインモデルでは、SSD容量を128GBまたは256GBから選択できるとともに、Office 2010の有無も選択可能となり、129,780円からとやや安価に購入できる。Officeが不要な場合には、こちらがおすすめだ。