■平澤寿康の周辺機器レビュー■
東芝は、2008年末に、読み出し最大230MB/sec、書き込み最大180MB/secと、非常に高速なアクセス速度を誇る、同社として第3世代となるSSDを発表するとともに、2009年春以降、dynabook SSシリーズなどを中心に順次搭載を開始していた。ただ、秋葉原のパーツショップなどで東芝製のSSDが単体販売されることはほとんどなく、この第3世代SSDも発表当初から高速なアクセス速度で注目を集めてはいたものの、搭載ノートPCを購入する以外に利用する手段がほとんどなかった。
しかし、その注目の東芝製第3世代SSDがついに単体販売されることになった。アイ・オー・データ機器が、国内での単体販売を開始したのである。それが「SSDN-STB」シリーズである。今回、SSDN-STシリーズの256GBモデル「SSDN-ST256B」を試用する機会を得たので、パフォーマンスを中心に見ていきたいと思う。
●アイ・オー・データ機器が独占販売これまでアイ・オー・データ機器は、ASUSTeKのネットブック「Eee PC」向けのモジュール型SSDや、ExpressCard型SSDなどを販売してきたが、2.5インチHDDタイプのSSDは扱っておらず、競合他社に後れをとっていた。また、東芝もSSDの単体販売に向けた販売網の確保を以前より模索していた。つまり、アイ・オー・データ機器と東芝双方の思惑が一致し、アイ・オー・データ機器が東芝製SSDの単体販売を独占的に行なうことになったわけだ。
今回、アイ・オー・データ機器から発売されたSSDN-STシリーズは、東芝製第3世代SSDのベアドライブを、アイ・オー・データ機器が独自にパッケージングして販売するものだ。実際に試用した製品は、容量256GBのSSDN-ST256Bだが、アイ・オー・データ機器のロゴが入った小さなシールが貼られているだけで、以前「dynabook SS RX2/WAJ」に内蔵されているSSDを取り上げたこちらの記事と全く同じ外観だ。ドライブの型番は「THNS256GG8BBAA」。東芝セミコンダクター社のSSD特設サイトを見ると、43nmプロセス多値NANDフラッシュを採用し、読み出し最大230MB/sec、書き込み最大180MB/secを誇る、「Toshiba High Performance SSD(HG Series)」だとわかる。
形状は、厚さ9.5mmの2.5インチHDDと全く同じ。もちろん、ネジ穴の位置も同じなので、そのまま2.5インチHDDと交換して利用できる。接続インターフェイスはSATA II。重量は、実測値で78gと、HDDより若干軽量だ。
●ランダムアクセス性能はやや弱いものの、競合SSDに匹敵する十分高速な速度を確認
では、速度をチェックしていこう。ベンチマークソフトとして、CrystalDiskMark 2.2.0と、HD Tune Pro 3.50、Iometer 2008.06.28の3種類を用意し、デスクトップPCに取り付けて速度を計測した。また、比較用として、Intel製SSD「X25-M Mainstream SATA SSD」の第2世代モデル「SSDSA2MH160G2GC」(容量160GB)と、INDILINX製コントローラ「IDX110」を搭載する、OCZ製のSSD「Vertex」の2製品を用意し、同じテストを行なった。テスト環境は下に示す通りで、OSはWindows 7 Ultimateを利用した。
テスト環境 | |
CPU | Core i5-750 |
マザーボード | Intel DP55KG |
メモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 |
グラフィックカード | Radeon HD 4670 |
HDD | Western Digital WD3200AAKS(OS用) |
OS | Windows 7 Ultimate |
まず、CrystalDiskMarkの結果を見ると、SSDN-ST256Bはシーケンシャルリードが205MB/sec、シーケンシャルライトが181.1MB/secと、シーケンシャルリードこそ公称値の230MB/secに届かなかったものの、十分高速な速度が確認された。インテルのX25-MやOCZのVertexに比べると、シーケンシャルリードはやや劣っているが、これだけの速度が発揮されていれば、実際に利用する上で速度の差はほとんど体感できないレベルと考えていいだろう。シーケンシャルライトはかなり高速で、NANDフラッシュの書き込みの速さ、コントローラの優秀さがよく分かる。
アイ・オー・データ機器 SSDN-ST256B | |
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CrystalDiskMark 100MB | CrystalDiskMark 1000MB |
インテル SSDSA2MH160G2GC | |
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CrystalDiskMark 100MB | CrystalDiskMark 1000MB |
OCZ Technology Vertex | |
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CrystalDiskMark 100MB | CrystalDiskMark 1000MB |
HD Tuneのシーケンシャルリード・ライトの結果も、CrystalDiskMarkとほぼ同等の結果が得られている。ライト時には、速度やアクセスタイムにやや大きなばらつきが見られるものの、リード時は速度・アクセスタイムともに安定している。
アイ・オー・データ機器 SSDN-ST256B | |
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HD Tune 8MBリード | HD Tune 8MBライト |
HD Tune 512KBリード | HD Tune 512KBライト |
HD Tune 64KBリード | HD Tune 64KBライト |
HD Tune ランダムリード | HD Tune ランダムライト |
インテル SSDSA2MH160G2GC | |
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HD Tune 8MBリード | HD Tune 8MBライト |
HD Tune 512KBリード | HD Tune 512KBライト |
HD Tune 64KBリード | HD Tune 64KBライト |
HD Tune ランダムリード | HD Tune ランダムライト |
OCZ Technology Vertex | |
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HD Tune 8MBリード | HD Tune 8MBライト |
HD Tune 512KBリード | HD Tune 512KBライト |
HD Tune 64KBリード | HD Tune 64KBライト |
HD Tune ランダムリード | HD Tune ランダムライト |
それに対し、ランダムアクセス速度はX25-MやVertexにやや劣るようだ。CrystalDiskMarkのランダムアクセスの結果では、512KB時でリード190.8MB/sec、ライト121.6MB/secとなかなかの好結果が得られているが、HD Tuneの結果では、X25-MおよびVertexに大きく水を空けられている。
IO Meterの結果を見てもほぼ同様で、ランダムアクセス性能に関しては、X25-MやVertexに比べてやや劣ると考えて良さそうだ。とはいえ、キャッシュメモリを搭載しない低価格SSDのような、ランダムアクセス頻発時の大幅な速度低下、いわゆるプチフリーズといった現象は起きないうえに、HDDとの比較では十分に高速であり、実際の使用時に特に問題を感じることはないはずだ。
Iometer 2008.06.28 Windows 7 Ultimate | Toshiba | Intel X25-M(34nm) 160GB | Vertex | ||||
Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | ||
File Server Access Pattern | Read IOPS | 114.104743 | 114.150747 | 736.989418 | 939.809148 | 714.035026 | 805.142139 |
Write IOPS | 28.757998 | 28.631176 | 183.646239 | 236.023575 | 177.587951 | 202.107462 | |
Read MB/s | 1.233541 | 1.225945 | 7.960244 | 10.199597 | 7.689059 | 8.750265 | |
Write MB/s | 0.320134 | 0.305052 | 1.999104 | 2.594619 | 1.890045 | 2.147441 | |
Average Read Response Time | 0.459605 | 216.934474 | 1.037719 | 26.632036 | 1.336789 | 32.00669 | |
Average Write Response Time | 32.928185 | 250.944553 | 1.271007 | 29.51834 | 0.24797 | 30.829324 | |
Maximum Read Response Time | 3.416918 | 2743.380226 | 293.40168 | 334.463355 | 146.011878 | 258.866972 | |
Maximum Write Response Time | 591.590213 | 2313.54818 | 267.477994 | 332.584977 | 0.779839 | 254.704759 | |
4KB Random (Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 3077.22707 | 3838.325423 | 3410.626056 | 37621.712638 | 3817.34578 | 9032.625032 |
Write IOPS | 29.644481 | 29.807648 | 361.654132 | 335.019182 | 521.994448 | 591.660469 | |
Read MB/s | 12.020418 | 14.993459 | 13.322758 | 146.959815 | 14.911507 | 35.283692 | |
Write MB/s | 0.115799 | 0.116436 | 1.412711 | 1.308669 | 2.039041 | 2.311174 | |
Average Read Response Time | 0.323479 | 8.335456 | 0.291757 | 0.850107 | 0.260587 | 3.541734 | |
Average Write Response Time | 33.69294 | 1069.373481 | 2.762322 | 95.492683 | 1.914125 | 54.082405 | |
Maximum Read Response Time | 7.723102 | 26.827354 | 4.851836 | 266.948884 | 31.403587 | 9.117319 | |
Maximum Write Response Time | 596.923123 | 5761.812921 | 294.664939 | 841.194144 | 148.989166 | 225.467519 | |
16KB Random (Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 2543.433301 | 3078.805013 | 2783.975894 | 14560.597773 | 2293.003515 | 3994.940984 |
Write IOPS | 29.366268 | 29.298413 | 269.909281 | 273.89041 | 259.0235 | 292.722519 | |
Read MB/s | 39.741145 | 48.106328 | 43.499623 | 227.50934 | 35.82818 | 62.420953 | |
Write MB/s | 0.458848 | 0.457788 | 4.217333 | 4.279538 | 4.047242 | 4.573789 | |
Average Read Response Time | 0.391682 | 10.392021 | 0.357727 | 2.19678 | 0.434529 | 8.008828 | |
Average Write Response Time | 34.014988 | 1093.602861 | 3.702095 | 116.807974 | 3.859026 | 109.323204 | |
Maximum Read Response Time | 7.633254 | 27.80954 | 3.712599 | 5.354836 | 10.721153 | 444.775809 | |
Maximum Write Response Time | 593.832961 | 6451.117227 | 293.281881 | 596.067771 | 150.407544 | 297.084071 | |
64KB Random (Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 1601.465414 | 1816.560893 | 1638.263716 | 4024.135163 | 1333.651864 | 1712.051834 |
Write IOPS | 28.608995 | 28.962658 | 104.490053 | 112.253306 | 121.569702 | 141.845843 | |
Read MB/s | 100.091588 | 113.535056 | 102.391482 | 251.508448 | 83.353241 | 107.00324 | |
Write MB/s | 1.788062 | 1.810166 | 6.530628 | 7.015832 | 7.598106 | 8.865365 | |
Average Read Response Time | 0.622937 | 17.613767 | 0.608696 | 7.950986 | 0.748241 | 18.689597 | |
Average Write Response Time | 34.927026 | 1099.801296 | 9.568488 | 284.794174 | 8.22405 | 225.582682 | |
Maximum Read Response Time | 7.77225 | 47.868333 | 5.128678 | 13.010415 | 46.857145 | 40.117356 | |
Maximum Write Response Time | 770.332369 | 5795.804705 | 290.338757 | 677.961123 | 151.642001 | 440.642394 |
SSDN-ST256Bは、競合SSDに対して若干劣る部分も見られたが、過去にdynabook SS RX2/WAJを利用したテストの結果同様、全体として十分に高速なアクセス速度が発揮され、大きな魅力のある製品であることが改めて確認できた。
販売価格は、容量64GBのSSDN-ST64Bが24,800円、容量128GBのSSDN-ST128Bが47,800円、容量256GBのSSDN-ST256Bが85,800円(いずれも、直販サイト「アイオープラザ」における直販価格)とやや高価だが、アイ・オー・データのパッケージ品として販売されているために、保証などの面でも安心という部分は心強い。そしてなにより、これまで単体として手に入れることが難しかった東芝製SSDを、簡単に購入できるようになったということ自体を、大いに歓迎したい。価格も、出荷数が増えればこなれていくはずで、高性能SSDの有力な選択肢として、これから目が離せない存在となるだろう。
(2009年 10月 30日)