山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Amazon.co.jp「Fire HD 7」

〜CPUとカメラを強化したAmazon専用タブレットのエントリーモデル

「Fire HD 7」。本体色はブラックのほか、ピンク、ブルー、ホワイト、シトラスの計5色がラインナップされる
起動時のロゴも「Kindle Fire」ではなく「Fire」のみとなっている

 「Fire HD 7」は、電子書籍や音楽、動画、ゲームなど、Amazon.co.jpが運営するデジタルストアで購入したコンテンツを楽しむための7型タブレットだ。E Ink電子ペーパーを採用した「Kindle」シリーズとは異なり、メディアタブレットの性格が強い製品だ。

 Amazonのカラータブレットは、これまで「Kindle Fire」というブランド名だったが、今年(2014年)秋に発表された新しいラインナップからは「Kindle」という単語が外され、「Fire」というのが正式な製品名となった。Kindleは電子書籍のブランド、Fireは音楽や動画などデジタルコンテンツ全般を指すブランドと考えれば、これは納得がいく変更だ。

 そのFireシリーズの中でエントリーモデルに当たるのが、本稿で紹介する「Fire HD 7」だ。2013年のモデルから「HD」がエントリーモデル、「HDX」がハイエンドモデルというラインナップ編成になっており、本製品はエントリーモデルの後継ということになる。

サイズや重量はほぼ同等、CPUやカメラが進化

 従来モデルに相当する「Kindle Fire HD 7」、および継続販売される上位モデル「Kindle Fire HDX 7」と比較したのが以下の表だ。参考までに、2012年に初めて日本国内に投入された「Kindle Fire」および「Kindle Fire HD(2012)」についても掲載している。価格は発売当時のもので、2014年4月を境に消費税率が変更になっている点は注意してほしい。


Fire HD 7 Kindle Fire HD 7 Kindle Fire HDX 7 Kindle Fire HD Kindle Fire
発売年月 2014年10月 2013年11月 2013年11月 2012年12月 2012年12月
サイズ(最厚部) 191×128×10.6mm 191×128×10.6mm 186×128×9.0mm 137×193×10.3mm 120×189×11.5mm
重量 約337g 約345g 約303g 約395g 約400g
OS Fire OS 4 Fire OS 3→Fire OS 4に対応予定 Fire OS 3→Fire OS 4に対応予定 独自(Androidベース) 独自(Androidベース)
CPU クアッドコア 1.5GHz×2、1.2GHz×2 デュアルコア 1.5GHz クアッドコア 2.2GHz デュアルコア 1.2GHz デュアルコア 1.2GHz
画面サイズ/解像度 7型/800×1,280ドット(216ppi) 7型/800×1,280ドット(216ppi) 7型/1,200×1,920ドット(323ppi) 7型/800×1,280ドット(216ppi) 7型/600×1,024ドット(169ppi)
通信方式 IEEE 802.11b/g/n IEEE 802.11a/b/g/n IEEE 802.11a/b/g/n IEEE 802.11a/b/g/n IEEE 802.11b/g/n
内蔵ストレージ 8GB(ユーザー利用可能領域は約5GB)
16GB (ユーザー利用可能領域は約12.2GB)
8GB(ユーザー利用可能領域は4.8GB)
16GB(ユーザー利用可能領域は11.9GB)
16GB(ユーザー利用可能領域は10.9GB)
32GB(ユーザー利用可能領域は25.1GB)
64GB(ユーザー利用可能領域は53.7GB)
16GB(ユーザー利用可能領域は12.6GB)
32GB(ユーザー利用可能領域は26.9GB)
8GB(ユーザー利用可能領域は5.5GB)
バッテリ持続時間(メーカー公称値) 8時間 10時間 11時間(書籍のみの場合17時間) 11時間 9時間
カメラ 前面、背面 なし 前面 前面 なし
価格(発売時) 16,280円(8GB)
18,280円(16GB)
15,800円(8GB)
17,800円(16GB)
24,800円(16GB)
29,800円(32GB)
33,800円(64GB)
15,800円(16GB)
19,800円(32GB)
12,800円(8GB)
カラーバリエーション ピンク、ブラック、ブルー、ホワイト、シトラス ブラック ブラック ブラック ブラック
備考

2014年10月以降も継続販売
Kindle Fireとしては第2世代に相当

 こうして見ると、7型/800×1,280ドット(216ppi)という仕様こそ従来モデルと同等だが、それ以外の箇所はかなりの違いがあることが分かる。1.5GHzのデュアルコアだったCPUは、1.5GHzが2つ、1.2GHzが2つというやや変則的な構成のクアッドコアに改められ、さらには前面と背面にカメラが追加された。カメラについては大画面モデル「HDX 8.9」と同じ仕様に揃えられたことになる。

 一方、エントリーモデルの弱点だった重量は約337gと、従来比で約8g軽くなってはいるものの、7型タブレットとしてヘビー級なのは相変わらずだ。本体の厚みも従来と同じ10.6mmと、お世辞にも薄いとは言えない。このあたりは上位モデルとの差別化要因として、あえて手を付けなかったということだろう。一方、無線LANはIEEE 802.11aが対応から外れるなど、従来モデルに比べて退化している部分も見られる。

 といった具合にプラスとマイナスが共存している格好だが、これがユーザーニーズを一から見直した結果辿りついた仕様変更なのか、それとも完成品に近い形で外部から仕入れたタブレットのリファレンスがたまたまこうした仕様だったのか、このあたりはなんとも判断しにくい。従来は横画面を前提としたキーやロゴの配置だったのが、今回のモデルでは縦画面が前提の配置になっているなど、設計のコンセプトそのものが大きく変更になっているのも、興味深いところだ。

本体外観。7型タブレットとしてはそれほど特徴のない無難なデザイン
正面上部中央にインカメラを搭載
背面右上にリアカメラを搭載
背面の「Amazon」ロゴは、従来モデルと異なり、縦画面を基準にした向きにレイアウトされている

見た目は「Kindle Fire」に先祖返り?

 ではざっと開封から使い始めまでを見ていこう。パッケージは各国語共通のフラストレーションフリーパッケージを日本語のスリーブで巻いた仕様で、開封すると透明な袋に包まれた本体が姿を現す。付属品はUSBケーブルのほか、Kindleシリーズでは別売になっているAC変換アダプタも同梱されている。電源の入れ方や製品保証について記された各国語版の小冊子2冊が封入されているのは、Kindleシリーズと同様だ。

製品パッケージ。Kindleと同じく、各国語共通のフラストレーションフリーパッケージを日本語スリーブで巻いた仕様。製品名から「Kindle」が外れていることが分かる
シールを切り取って開封。本体は透明な袋に封入されている。ちなみにKindleは蓋の裏面が青、Fireはオレンジと、イメージカラーが設定されているようだ
同梱品一覧。白と黒の小冊子はいずれも各国語版で、日本語で書かれているのはそれぞれ見開き2ページ程度のみ。Kindleと違い、AC変換アダプタが同梱されている

 本体デザインは、端が薄く感じられるよう斜めにカットされていた従来の筐体から一新され、あまり個性のない、ずんぐりしたデザインに改められている。特にブラックモデルは「Kindle Fire(第2世代)」と色もそっくりなため、並べて置くと見分けがつかないほどだ。本体が横向きではなく縦向きを基本としたデザインに改められており、背面のロゴも縦向きを前提とした方向にレイアウトされているが、この点でもKindle Fire(第2世代)に近い。

 筐体がリニューアルされたことで、ボタン類も従来とは全く異なる配置に改められている。電源ボタンとMicro USBコネクタは本体の上面に移動し、音量大/小キーは左側面に配置された。従来のKindle Fire HD 7は端部分が斜めにカットされているせいで、電源ボタンおよび音量大/小ボタンが背面に回りこんでレイアウトされていたが、今回のモデルでは多くのタブレット製品と同様、側面にレイアウトされている。より無難になった印象だ。

 縦向きで使用することを前提にしたデザインの中で、唯一横向きを前提にした配置になっているのがステレオスピーカーだが、音が正面ではなく背面に向けて出てしまう従来モデルの欠点は、本製品でも改善されていない。充電のステータスを表すLEDがないのも同様だ。なお従来モデルは本体の端が斜めにカットされていたため、差し込んだUSBケーブルが斜め上を向くという珍しい仕様だったが、これについては改められている。

従来モデルである「Kindle Fire HD 7」(右)との比較。サイズはまったく同一だが上部中央に前面カメラが追加されている
背面。かなり複雑な面構成だった従来モデルから改められ、シンプルなデザインになり、背面寄りについていた電源ボタンおよび音量大/小ボタンも上面および左側面に移動した。Amazonロゴの向きが異なることもよく分かる
本体断面の比較。薄く見えるように加工されていた従来モデル(右)と異なり、無難なデザインになった。意匠としてはFireシリーズよりもKindleシリーズに近い
右がKindle Fire(第2世代)。シンプルなデザイン、縦向きを前提としたロゴ配置など共通項が多く、遠目に見ると区別がつきにくい(実際には厚みがやや異なる)
電源ボタンとMicro USBコネクタ、およびイヤフォンジャックは本体の上面、音量大/小キーは左側面という配置
ステレオスピーカーは背面左側にレイアウトされる。縦画面を基準にしたレイアウトの中で唯一横向きを基準にした配置だ
従来モデル(写真奥)では、本体の端が斜めにカットされているUSBケーブルが斜め上を向く仕様だったが、本製品(写真手前)はそのようなこともない

セットアップの流れはほぼ同一。性能は順当に進化

 セットアップの手順は、言語選択からWi-Fi設定、Amazonアカウントの登録、SNSアカウントの登録などを経てホーム画面が表示されるという、従来とほぼ同じフローだ。今回試した際は、一通りの流れが完了したあとに最新OSであるFire OS 4へのアップデートが行なわれたため、再起動するプロセスが加わったが、流れ自体は分かりやすく、初心者も迷うことはないだろう。唯一の新しい要素として、バックアップを有効にするかを尋ねる画面が追加されているが、これについては後述する。

 ちなみにデザインについては、用いられているフォントが変わったことに加え、文字は全体的に大きく、項目によっては詳細な説明も付与されるなど、初心者向けに配慮した跡が見られる。配色も昨今のフラットデザインを取り入れたものに改められており、今風のデザインだ。以下、スクリーンショットで紹介する。

左が本製品、右が従来モデル(以下同じ)。起動してロゴが表示されたのち、まずは言語選択を行なう。言語の数が増えたためか、本製品では選択肢がスクロールする仕様になっている
Wi-Fiが検出されるので任意のSSIDを選んでパスワードを入力する。従来モデルと異なり、IEEE 802.11aには対応しない
アカウントの登録画面。レイアウトは変わっているが内容は従来と同一。あとで設定することも可能
アカウントの登録が終わるとタイムゾーンが自動選択される。今回の試用時はここで誤ったタイムゾーン(アメリカ)が検出されたが理由は不明
Fire OS 4の新機能であるバックアップを有効にするかどうか尋ねられる。ここのみ従来はなかった新しい画面だ。なお再セットアップの際は、バックアップから復元するかどうか尋ねる画面がこの前に追加される
SNSアカウントの登録画面。上段に説明テキストが追加され、SNSアカウントを登録する意味がより分かりやすくなっている。設定をパスしてそのまま進んでも問題ない
以上でセットアップ完了。画面各部の簡単な説明をはさみ、ホーム画面が表示される。ちなみに中央の巨大な球体はブラウザ「Silk」の新しいアイコン

 さて、手に持ってまず感じるのは、実際の数値以上に「分厚く」、「重い」ことだ。本製品の厚みは従来モデルと同じはずだが、従来モデルのように断面が斜めにカットされていないためか、手に持った際に厚く感じられる。また重量は従来モデルに比べて8g軽いはずが、体感的な厚みのせいか、むしろ重くなったように感じられる。デザインだけでここまで体感値が変わるのは意外だ。

 液晶はかなりの光沢があるが、視野角は広く、縦向きでも横向きでも見にくいといったことはない。安価なタブレットだからといってこの点は全く心配する必要はないのだが、しばらく使った限りでは、画面に指紋が付きやすく、また目立ちやすい。光沢がきついことも含めて、保護シートを貼るなどの対策が必要だと感じた。

 従来モデルは動画再生などで負荷をかけると本体上部が高熱を帯びる問題があったが、本製品もある程度は発熱する。ただし筐体がプラスチック感の強い素材に改められたせいか、部分的に高温になるのではなく、広いエリアが万遍なく熱を帯びる印象だ。熱自体は好ましいことではないが、従来モデルに比べるとこちらの方がまだ熱を気にせずに済む。

 本体裏面の素材はKindleの新モデルと共通で、お世辞にも高級感はなく、また滑り止めの加工も施されていないので、手から滑って落とさないように注意する必要がある。このあたりは、上位モデルに当たるKindle Fire HDX 7との差別化要因ということだろう。

 ベンチマークソフト「Quadrant Professional Ver.2.1.1」による比較は以下の通り。上位モデルのKindle Fire HDX 7のハードウェア性能が突出しているのは2013年の時点ですでに明らかだが、本製品も従来モデルのKindle Fire HD 7に比べると(3D性能を除いて)数値の伸びが見られる。特にデュアルコアからクアッドコアに進化したCPUの改善が顕著で、エントリーモデルとしては着実に進化していることが分かる。HDX 7はメモリ2GB、新旧HD 7は1GBなので、そのあたりも反映されていると見てよさそうだ。

製品名 OS Total CPU Mem I/O 2D 3D
Fire HD 7 Fire OS 4 5954 17235 6724 3242 360 2210
Kindle Fire HD 7 Fire OS 3 3208 7254 3895 2238 251 2402
Kindle Fire HDX 7 Fire OS 3 19840 73498 16747 6374 333 2249

OSアップデートで画面デザインが若干変更に。細いフォントがやや難

 画面の基本構成については、従来モデルと大きな違いはない。Fire OSがバージョン3から4に進化したことでデザインの小変更はあるものの、ホーム画面上段に「アプリ」、「ゲーム」、「本」といったコンテンツライブラリが並び、その下には最近使ったコンテンツが並ぶスライダーがあるという構成は、従来とまったく同一。本を読んだり動画を観るといった操作手順も、ざっと基本的なところを試した限りでは違いは見られなかった。

 気になるのは、メニューに用いられているフォントが改められ、デザインとしてはスタイリッシュになった一方、線が細くなったせいで文字が読みにくくなったことだ。本製品のように解像度が必ずしも高いとは言えない画面では、細い線がはっきりと表示されないことも多く、従来のフォントの方がくっきり見やすい。両者を並べてみるとその違いが明らかだ。以下、スクリーンショットで紹介する。

ホーム画面。左が本製品、右が従来モデル(以下同じ)。上段のコンテンツライブラリのテキストは線が細く読みにくくなっていることが分かる
画面を下から上にスワイプするとお気に入りが表示される。多くのアイコンデザインが改められているほか、カメラ機能が追加されたことで新たにカメラのショートカットが追加されている
「お買い物」。KindleストアをはじめとするAmazon運営のデジタルストアへのショートカットのほか、Amazon.co.jpで買い物をするためのリンクがまとめられている
「ゲーム」ライブラリ。クラウドおよび端末上のゲームアプリを切り替えて表示できるほか、ストアに移動することも可能。「クラウド」、「端末」を切り替える箇所のデザインが変更されたほか、カートのアイコンが右上に追加されている
「アプリ」ライブラリ。こちらもクラウド/端末を切り替えて表示できるほか、アプリストアにも移動可能。「天気」、「マイビデオ」などのショートカットが追加されている
「本」ライブラリ。こちらもクラウド/端末の切り替えができ、Kindleストアへも移動可能。サムネイルのサイズが一回り大きくなったのは、同時発売の6型モデル「Fire HD 6」で相対的に小さく表示されることへの対策だろうか
「ミュージック」ライブラリ。こちらもクラウド/端末の切り替えができ、Amazon MP3ストアへも移動可能。全体的に余裕のあるデザインに改められているが、その分1ページあたりの情報量は少なくなっている
「ビデオ」ライブラリ。Amazonインスタント・ビデオストアとライブラリを切り替えて表示できる
「ウェブ」ライブラリ。独自ブラウザ「Amazon Silk」が使用できる。使い方は一般的なブラウザと変わらない
「写真」ライブラリ。ローカルにある写真やスクリーンショットを表示できるほか、ストレージサービス「Cloud Drive」にアップロードした写真も表示できる
「ドキュメント」ライブラリ。パーソナルドキュメントにアップロード済みのコンテンツを表示できる。タップするとダウンロードされる
キャンペーン情報付きモデルとなしモデルを選べるKindleシリーズと異なり、本製品は「キャンペーン」が常設された“広告あり”モデルだが、スクリーンセーバーへの表示についてはこの画面の左上からオフにすることも可能
設定画面。階層構造がかなり変更されている
画面上部を下にスワイプすると基本機能にアクセスするためのクイック設定メニューが表示される。文字のコントラストが弱くなり、やや見にくくなった印象

 電子書籍周りの表示もチェックしておこう。コミック、テキストそれぞれをざっと比較した限りでは、ビューワとしての機能に大きな違いは見られないが、メニューについては文字サイズが全体的に大きく見やすく改められている一方、コントラストが弱くなって見にくく感じられる部分もある。

うめ著「大東京トイボックス 1巻」の比較。左が本製品、右が従来モデル(以下同じ)。特に違いは見られない
画面中央をタップすると上下にメニューが表示される。バーの面積が若干広くなっている以外は特に違いはない
左側のメニューを展開した状態。「最初のページに移動」、「最後のページ」への移動メニューが追加されている
太宰治著「グッド・バイ」の比較。1行あたりの文字数が若干異なっているが、全体的な見え方に大きな違いは見られない
オプションを表示したところ。明るさ調整のメニューが追加されているほか、全体的に表示が大きく、見やすくなっている
フォントはゴシック、明朝のほか、筑紫明朝を搭載している。新旧で違いは特にない
左端のメニューを展開した状態。文字サイズが大きくなっているが、コントラストは従来モデルの方がはっきりしている
単語を範囲選択するとマーカーなどのメニューが表示されるほか、下段にWikipediaによる意味が表示される
横方向にスワイプすると翻訳メニューが表示される
さらに横方向にスワイプすると内蔵辞書による説明が表示される

HD 7とHDX 7、解像度の差をチェック

 画面解像度もチェックしておこう。本製品は従来モデルと同じ216ppiという解像度だが、上位モデルであるKindle Fire HDX 7(323ppi)と比べると、不利であることは否めない。普段iPhone 5s/6(いずれも326ppi)など300ppi以上の端末で文字の滑らかさに見慣れているユーザーにとっては、どの程度の違いがあるかは、気になることだろう。

 以下、テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)について、標準サイズ(12段階の4段階目)から、最も小さいサイズ(12段階の1段階目)までの4つのサイズで本文を表示し、上位モデルであるKindle Fire HDX 7と比較したものだ。実際にこの大きさで目に入るわけではないが、本製品(216ppi)とKindle Fire HDX 7(323ppi)の違いはよく理解できるはずだ。

 このうち文字の実サイズが紙の本とほぼ等しいのは、フォントサイズ4と3。利用頻度が高いのはこの前後のサイズだと考えられるので、この違いが許容できるかどうかが、本製品とHDX 7のどちらを選ぶかの判断材料になるだろう。

フォントサイズ4
フォントサイズ3
フォントサイズ2
フォントサイズ1

新しい「Fire OS 4」ではバックアップなどの新機能をサポート

 さて、本モデルの発売に合わせて、Fire OSの最新版「Fire OS 4」が公開されている。従来のFire OS 3との違いについて見ていこう。

 「Sangria」という名前が付けられたこのFire OS 4は、Android 4.4をベースにしたOSとのことだが、従来とは何が変わったのだろうか。製品ページでは概略しか触れられていないが、既存のKindle Fire HD 7/HDX 7/HDX 8.9ユーザーに案内されたアップデート予告の文書によると、以下のような改良点があるとされている(抜粋)。

  • WordやExcel、PowerPointが編集可能に(WPS Office for Amazon搭載)
  • OfficeドキュメントをCloud Driveに自動バックアップする機能が追加
  • 端末を使わない時間帯を割り出してWi-Fiを切断しバッテリ消費を抑えるSmartSuspend機能の追加
  • 天気予報アプリと計算機アプリの追加
  • バックアップおよび復元機能の追加

 この中で目玉となるのは、バックアップと復元機能の追加だろう。これは端末の設定、メールおよびWi-Fiの構成、メモ、ブックマークなどをWi-Fi経由でクラウドに1日1回自動バックアップするというもの。端末にではなくアカウントに紐付けて保存されるので、端末を初期化した場合だけでなく、ハードウェアの紛失や故障、買い替えで別の端末に変わった場合でも、利用環境をすばやく復元できるというわけだ。

セットアップの時点でバックアップを有効にするかが尋ねられ、「有効にする」を選択すると1日1回自動バックアップされる仕組みになっている
セットアップ時に「有効にする」を選択しなかった場合も、あとから設定画面経由で有効にできる。手動バックアップも可能だ

 試した限りでは、バックアップの対象は端末内にのみ保存されている設定に限られ、Amazonのストアで購入してクラウドに格納されている電子書籍や音楽、映像などのコンテンツは対象に含まれない(手動でクラウドから再ダウンロードする必要がある)。これをうまく活用すれば、端末の記憶領域が残り少なくなった際、バックアップ→初期化→復元の操作を行なってコンテンツを一括消去することで、記憶領域を一気に空けることができる。もともとFireシリーズには、長期間使用していないコンテンツをクラウドに戻す「インスタントクラウド保存」という機能があるが、もっと根本的に、コンテンツを全クリアしたい場合に便利だ。

 このほか、試した限りでは、辞書に登録した単語データもバックアップできたので、辞書を鍛えて入力効率を高めているユーザーには朗報だろう。一方、外部からApkファイル経由でインストールしたアプリはバックアップの対象とならず、そのまま削除されてしまった。本来の使い方ではないので当然だが、Dropboxのように外部apkファイルからインストールしたアプリを複数用いている人は要注意だ。本体に保存した写真やスクリーンショットも、あらかじめクラウドにバックアップしておかないと、削除されてしまう。

 ちなみに復元が実行できるのはセットアップ時のみで、起動中の状態でバックアップを選択して復元を行なうことはできず、必ずいったん工場出荷状態にリセットしたのち実行する必要がある。つまり2段階のステップが必要になるわけで、ここは将来的に改善を希望したいところだ。またバックアップが作成できるのは1つの端末につき1つに限られているようで、例えば現在の設定をバックアップしたあと、それ以前に保存していた別のバックアップを試し、最終的にまた直近のバックアップに戻すといった操作はできない。

工場出荷状態に復元して再セットアップする際、クラウドにバックアップデータがあれば、それを用いて復元するかを尋ねられる
復元中。コンテンツそのものはバックアップデータに含まれず、復元されるのは設定内容だけなので、時間はそれほどかからない。1分〜長くても数分といった程度だ

 もう1つ、Fire OS 4の新機能として、オフィス文書の編集機能もチェックしておこう。従来は「ドキュメント」でWordやExcel、PowerPointなどのオフィス文書をタップして開くと、プリインストールの「OfficeSuite Viewer」が起動していた。このアプリで行なえるのは表示と印刷のみで、編集するには有料のPro版を別途購入する必要があったが、本モデルでは編集も可能なアプリ「WPS Office for Amazon」が搭載され、追加購入なしで編集が行なえるようになった。サードパーティ製なので100%の互換性とまではいかないだろうが、歓迎すべき機能ではある。

 ちなみにFire向けのアプリストアには、マイクロソフトの「OneDrive」アプリが用意されているので、例えばOneDriveに保存していたオフィス文書をクラウドからダウンロードしたのち、この「WPS Office for Amazon」で開いてFire上で編集する、といった連携も可能だ。個人向けの本製品でこの機能がどの程度必要になるかは未知数だが、使い方の幅を広げてくれるのは間違いないだろう。

従来モデル(右)はオフィス文書は表示と印刷のみだったが、本製品(左)では編集も行なえる。リボンインターフェイスを採用しており、Officeユーザーは馴染みやすいはずだ
このほかFire OS 4では天気予報アプリも追加されており、今日および今週の天気を表示できる。地域を選ぶだけで利用できる
本製品では新たに前面および背面にカメラが搭載された。HDR撮影のほか、パノラマ撮影にも対応するなど、上位モデルHDX 8.9の機能をそのまま継承している
Fire OS 4の新機能の1つ、消費電力を抑えるSmartSuspend機能。デフォルトではオンになっている

コストパフォーマンスは良好も、Fire OS 4非対応アプリに注意

 以上ざっと見てきたが、本製品のスタンスは明白だ。すなわち、コンパクトなタブレットが欲しいユーザーに対して、基本性能がしっかりした製品を充電アダプタも含めてなるべく低価格で提供し、その上でAmazonが提供するコンテンツを快適に使ってもらうということだ。

 上位モデル「Fire HDX 7」に比べると、重量や厚み、液晶の解像度などはネックだが、タブレットの性能の決め手となるCPUにはかなりこだわった仕様で、動きが重いなど快適さを妨げる致命的な要因はない。これで1万円台半ば〜後半という価格は、昨今の7型Androidタブレットの相場を考えると、劇的に安価とまでは言わないが、コストパフォーマンスは高い部類に入る。あとは(これがもっとも重要だが)Kindleストアやアプリストア、Amazonインスタント・ビデオストアなどに、好みのコンテンツがあるかどうかだろう。

 ただし、発売された直後の現在においては、1つ気をつけた方がよい点がある。それは、アプリストアで配布されているアプリの中で、現時点でFire OS 4にインストールできないアプリがあることだ。例えば「Hulu」は、アプリ自体はストアに存在しているが、本製品から検索すると表示されない。

従来モデル(右)では、アプリストアで「Hulu」を検索するとHuluアプリが表示されたが、本製品(左)では表示されない。おそらく検証が終わっていないことが理由だと考えられるが、従来モデルから乗り換えるユーザーは要注意だ

 これはおそらく動作検証が終わっていないことが原因で、ゆくゆくは解決されていくものと考えられるが、アプリストアのラインナップがお世辞にも多いとは言えない中、こうした検証待ちアプリが複数存在するであろうことを考えると、急いで購入しなくとも、少しばかり「待ち」の姿勢で望んでもよいかもしれない。特定のアプリを楽しむことを目的にしているユーザーは、下調べは必ず行なった上で、購入可否を判断した方がよいだろう。

(山口 真弘)